皮膚病変
外観:青赤色・薄壁の嚢胞状病変。ゴム様の質感を呈する。
圧迫反応:圧迫で虚脱(空虚化)し、除圧後に緩徐に再充満する。この所見が診断的に特徴的である。
サイズ・数:1〜30 mm。1個〜数百個まで多様。臓器関与頻度(120例)では皮膚93%。
ブルーラバーブレブ母斑症候群は、皮膚および内臓(最多は消化管)に多発する静脈奇形(venous malformation, VM)を特徴とする、まれな全身性血管疾患である。Bean症候群とも呼ばれる。
1860年にGascoyenが初報告し、1958年にBeanが現在の病名で命名した。
疫学的には極めてまれであり、文献報告は約200〜350例規模にとどまる4)10)。全人種で報告されており、性別による明らかな偏りはない4)。
皮膚症状は出生時〜幼児期早期に顕在化し、内臓病変は成人期早期に明らかになることが多い。成人期に診断される割合は4%未満と報告されている4)。大部分は孤発性であるが、一部に常染色体優性遺伝(9p連鎖)が報告されている。
世界の文献報告が200〜350例規模にとどまる極めてまれな疾患である。成人期に診断される割合は4%未満と報告されており、多くは幼児期〜小児期に発症する。
皮膚病変
外観:青赤色・薄壁の嚢胞状病変。ゴム様の質感を呈する。
圧迫反応:圧迫で虚脱(空虚化)し、除圧後に緩徐に再充満する。この所見が診断的に特徴的である。
サイズ・数:1〜30 mm。1個〜数百個まで多様。臓器関与頻度(120例)では皮膚93%。
消化管病変
好発部位:小腸が最多。胃・十二指腸・大腸にも多発する。
内視鏡所見:青紫色の結節性病変。胃8・10・14 mm、十二指腸15 mm、大腸6〜8 mmの病変が報告されている3)。
特殊例:皮膚病変を欠く消化管孤立型が7%未満で報告される4)8)。
眼科的所見
カサバッハ・メリット症候群:血管腫内に血小板が捕捉され播種性血管内凝固症候群(DIC)が生じる重篤な合併症。血小板減少・フィブリン分解産物(FDP) > 150 μg/mL・フィブリノゲン32 mg/dLに至った症例が報告されており、ヘモグロビン2 g/dLの重篤な貧血を伴った5)。
可能性はある。皮膚病変を認めない消化管孤立型も少数ながら報告されている。原因不明の消化管出血や難治性鉄欠乏性貧血では、皮膚症状がなくてもBRBNSを鑑別診断に挙げることが重要である。
まれに眼窩・眼瞼・結膜・虹彩・網膜に静脈奇形が生じ、眼球突出・眼瞼下垂・視力低下・眼圧上昇などを呈することがある。眼窩病変は画像上、海綿状血管腫との鑑別が必要になる場合もある。
BRBNSの主要な病因はTEK遺伝子(TIE2受容体チロシンキナーゼをコードする)の体細胞性活性化変異である2)。
特徴的な皮膚病変(青赤色・ゴム様の圧迫空虚化する結節)に消化管出血または他臓器関与を組み合わせた臨床診断が基本となる。
単層内皮細胞に裏打ちされた血液充満空間・線維性隔壁・異栄養性石灰化が特徴的な所見である8)。粘膜下層を中心とした拡張した薄壁血管腔が確認される。
重篤な鉄欠乏性貧血を呈することが多い。ヘモグロビン1.7 g/dL・フェリチン2.0 ng/mL・鉄16 mg/dLの例が報告されている3)。
類似疾患との鑑別が重要である。
| 疾患名 | 鑑別ポイント |
|---|---|
| オスラー・ウェーバー・ランデュ病 | 毛細血管拡張・動静脈奇形が主体 |
| クリッペル・トレノーネイ症候群 | 静脈瘤・軟部組織肥大・骨肥大の三徴 |
| マフッチ症候群 | 軟骨腫を伴う血管腫 |
| スタージ・ウェーバー症候群 | 顔面血管腫・軟膜血管腫・緑内障 |
| カポジ肉腫 | HHV-8関連の血管肉腫 |
BRBNSに対する根治療法は確立されておらず、症状の程度・病変分布に応じた集学的治療が行われる。
鉄剤補充・輸血が貧血管理の基本となる。経過観察のみで対応可能な症例もある3)10)。
以下の薬物療法が報告されている。
| 薬剤 | 特徴・エビデンス |
|---|---|
| シロリムス(mTOR阻害薬) | 消化管・皮膚病変を中心に、病変縮小・出血抑制の報告あり1)3)10) |
| ランレオチド(月1回) | 7か月間の出血再発抑制を報告4) |
| オクトレオチド | 内臓血流低下・抗血管新生作用による出血抑制 |
| その他 | インターフェロンα、β遮断薬、ビンクリスチン、ベバシズマブ、サリドマイドなど10) |
シロリムスはPI3K/AKT/mTOR経路の阻害薬であり、BRBNSの主要な分子病態に直接作用する。消化管・皮膚病変を中心に有効性が報告されており、現時点で最も有望な薬物療法と位置づけられる。
**ソマトスタチンアナログ(ランレオチド・オクトレオチド)**は内臓血流低下と抗血管新生作用を介して出血を抑制する。ランレオチドの月1回投与で7か月間の出血再発抑制が報告されている4)。
消化管病変に対しては以下の内視鏡的治療が選択される。
内視鏡的治療が困難な多発病変や大量出血には外科的切除が適用される。
確立された管理法は存在しない。眼窩・結膜病変では視機能障害や眼圧上昇の有無を評価し、全身病変の治療方針と合わせて眼科と内科が連携する。
シロリムスはBRBNSの主要な分子病態であるPI3K/AKT/mTOR経路を阻害することで、病変の縮小と出血抑制効果が期待できる。消化管・皮膚病変を中心に報告が蓄積している。ただし標準的な用量・投与期間は確立されておらず、専門的な管理下での使用が必要である。
BRBNSの中核的な病態はTEK遺伝子の体細胞性活性化変異によるTIE2受容体の恒常活性化である2)。
Xingら(2025)は全エクソーム解析によりBRBNS症例にTEK c.596A>C変異(T1105N-T1106Pダブルシス変異を含む)を同定し、PI3K/AKT/mTOR経路の恒常活性化が異常な血管新生を駆動することを示した2)。また、単巣性静脈奇形の約20%にはPIK3CA変異が関与することも報告されている。
TIE2はアンジオポエチン(Ang-1, Ang-2)の受容体チロシンキナーゼであり、血管内皮の恒常性維持に必須の役割を担う。TEK変異によりリガンド非依存的なシグナル活性化が起こり、血管平滑筋の欠如した異常に拡張した薄壁血管腔が形成される。
BRBNSに関連するとして同定された遺伝子は粘膜類天疱瘡9・NOTCH3・CCM2・PDGFRA・TSC2など多岐にわたる2)。特にTSC2変異はmTOR経路の上位調節因子であり、結節性硬化症とBRBNSの合併例における共通分子病態の存在を示唆する6)。
血管腫内での血小板の機械的捕捉が慢性消費性凝固障害の引き金となる。さらに炎症をはじめとするsecond hitが加わることでDICが進展すると考えられている5)。
Jitsuikiら(2022)はBRBNSにカサバッハ・メリット症候群と心不全を合併した症例を報告した5)。ヘモグロビン2 g/dL・血小板10.7万・フィブリン分解産物 > 150 μg/mL・フィブリノゲン32 mg/dLの重篤な状態を呈し、治療後に左室駆出率が30%から55%まで回復した。ガレン大静脈瘤の合併も確認された。
ソマトスタチンアナログは内臓血流低下作用と抗血管新生作用の双方を介して消化管病変からの出血を抑制すると考えられている4)。
主な原因はTEK遺伝子(TIE2受容体をコードする)の体細胞性活性化変異である。変異によりPI3K/AKT/mTOR経路が恒常活性化し、異常な血管形成が引き起こされる。関連遺伝子として粘膜類天疱瘡9・NOTCH3・TSC2なども同定されており、遺伝的多様性が示唆されている。
シロリムスを用いた症例報告・小規模研究が蓄積している。消化管出血や重症貧血の制御を目的としたmTOR阻害療法の標準化に向け、用量・投与期間・再発予防に関する知見の蓄積が続いている2)10)。
Xingら(2025)は複数のBRBNS症例に全エクソーム解析を施行し、TEK変異以外にも粘膜類天疱瘡9・NOTCH3・PRSS1・PDGFRA・CCM2・TNFAIP6を含む広範な遺伝子異常を同定した2)。BRBNSの遺伝的不均一性の解明が進むことで、個別化医療への応用が期待される。
Mithanthayaら(2023)は抗凝固療法中にもかかわらず消化管出血を来したBRBNS患者において、静脈血栓塞栓症のリスクという新たな問題を提起した4)。200個以上の小腸病変を有するこの患者では、ランレオチド月1回投与が7か月間の出血再発抑制に有効であった。BRBNSにおける抗凝固・抗血栓管理は今後の検討課題である。
結節性硬化症とBRBNSの合併例が報告されており6)、mTOR経路に着目した治療戦略の検討につながる可能性がある。
Lekamalageら(2024)は術中内視鏡でBRBNS小腸病変を確認し、シアノアクリレート注入後に腸間膜静脈塞栓による小腸虚血が発生した症例を報告した9)。内視鏡的治療の適応と手技の安全性に関する検討が必要である。
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