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神経眼科

SIBOの眼科的症状

SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth:小腸内細菌異常増殖症)は、小腸内に細菌が異常増殖する病態である。原因菌としては大腸菌、腸球菌、肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリスなどが挙げられる。

消化器症状(消化不良、腹痛、悪心、嘔吐)が主体であるが、増殖した細菌が宿主の必須栄養素を寄生的に摂取・消費することで栄養吸収障害が生じる。チアミン(B₁)、ピリドキシン(B₆)、葉酸、ビタミンB₁₂などの欠乏を介して、栄養欠乏性視神経症が引き起こされる。

ビタミンB₁₂は髄鞘合成に不可欠な役割を果たす。その欠乏は脊髄症・末梢神経障害・視神経萎縮と関連する1)。なお、米国のデータではビタミンB₁₂欠乏の有病率は20〜39歳で少なくとも3%、40〜59歳で4%、60歳以上で6%と報告されている2)

Q SIBOとはどのような病気ですか?
A

SIBOは小腸内で細菌が異常に増殖する疾患であり、消化不良・腹痛・悪心などの消化器症状を引き起こす。増殖した細菌が必須ビタミンを消費することで栄養欠乏が生じ、栄養欠乏性視神経症などの眼科的合併症をきたしうる。

消化器症状が眼症状に先行することが多い。眼症状として以下が認められる。

  • 両眼対称性の視力低下:無痛性であり、緩徐に進行する。
  • 色覚異常(dyschromatopsia):色の見え方の変化として自覚される。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”
  • 中心周囲暗点(centrocecal scotoma)視野検査で中心と盲点をつなぐ暗点として検出される。栄養欠乏性視神経症に特徴的な視野変化である。
  • 視神経乳頭耳側蒼白:ビタミンB₁₂欠乏性視神経症では視神経乳頭の耳側が蒼白化し、神経線維束欠損が認められる。
  • 視神経萎縮:進行例では視神経萎縮に至る。診断が遅れた場合に生じる不可逆的な変化である。

小腸内で増殖した細菌が宿主のチアミン、ピリドキシン、葉酸、ビタミンB₁₂などの必須栄養素を消費し、吸収可能な量が著しく減少する。この栄養吸収障害が栄養欠乏性視神経症の根本的な原因となる。

  • 肥満外科手術(特にルーワイ胃バイパス術):盲係蹄(ブラインド・ループ)を形成し、SIBOの主要な素因となる。吸収不良型の手術は制限型手術よりも眼合併症のリスクが高い。
  • 高FODMAP食:発酵性のオリゴ糖・二糖類・単糖類・ポリオール(FODMAP)を多く含む食生活がSIBOの発症・再発を促進する。
Q 肥満外科手術を受けた後、眼の症状にも注意が必要ですか?
A

ルーワイ胃バイパス術などの肥満外科手術はSIBOの主要なリスク因子であり、ビタミンB₁₂などの栄養欠乏を介して視神経症を引き起こすことがある。手術後は定期的なビタミン値のモニタリングを行い、視力低下や色覚異常が生じた場合は速やかに眼科を受診することが重要である。

  • 水素・乳糖呼気試験(Hydrogen/Lactose breath test):一定量の糖を摂取した後に腸内細菌が産生するメタンおよび水素の量を呼気中で測定する。SIBOの診断に用いられる非侵襲的な検査である。
  • 血清ビタミン値の測定:チアミン、ピリドキシン、葉酸、ビタミンB₁₂の血清値を測定する。
  • 代謝マーカー:葉酸・ビタミンB₁₂低値はメチルマロン酸・ホモシステインの上昇として現れることがある。
  • 視力検査・視野検査:中心周囲暗点の検出のため、視野検査(Goldmann視野計や自動視野計)を実施する。
  • 色覚検査:色覚異常の有無と程度を評価する。

栄養欠乏性視神経症の診断にあたっては、他の視神経症との鑑別が必要である。

  • Leber遺伝性視神経症:ミトコンドリア遺伝子変異による遺伝性疾患。若年男性に多い。
  • 薬物性視神経症:エタンブトール(抗結核薬)など薬剤による視神経症。
  • 圧迫性視神経症:腫瘍や動脈瘤による圧迫。MRIによる除外が必要。
  • 視神経炎:炎症性疾患。MRIや血液検査で除外する。

ビタミンB₁₂やB₁不足による視神経症はまれであるが、原因不明の両眼性視神経症では鑑別に含めることが重要である。

SIBOの治療(消化器科との連携)

Section titled “SIBOの治療(消化器科との連携)”
  • 抗菌薬治療(リファキシミン):SIBOの治療に対して非常に効果的であり、腹部症状の軽減につながる。執刀医または消化器内科医への紹介が推奨される。
  • 低FODMAP食:抗菌薬治療後に細菌の再増殖を抑制するために導入する。

細菌の増殖が十分に抑制された後に、ビタミン補充を行う。

  • ビタミンB₁₂内服または筋肉内投与:栄養欠乏性視神経症の治療の基本である。吸収不良が持続する場合は筋肉内投与を選択する。
  • チアミン(ビタミンB₁)補充:Wernicke脳症(眼球運動障害・注視眼振)の予防・治療のため、チアミン100〜1,000mgを投与する。
  • その他のビタミン補充:ピリドキシン(B₆)・葉酸なども必要に応じて補充する。
Q 視力の回復にはどのくらいの期間がかかりますか?
A

栄養欠乏性視神経症の視機能回復は半年〜2年程度と緩徐である。早期に診断してSIBOの治療とビタミン補充を開始することが視機能回復の鍵となる。診断が遅れると視神経萎縮が不可逆的になる場合がある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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栄養欠乏性視神経症の発症機序は完全には解明されていないが、ビタミン欠乏が酸化リン酸化を阻害し、酸化ストレスを引き起こすと考えられている。

ビタミンB₁₂は髄鞘合成に不可欠であり、欠乏は脊髄症・末梢神経障害・視神経萎縮と関連する1)。各ビタミン欠乏と眼所見の対応を以下に示す。

各ビタミン欠乏と主な眼科所見の対応は以下の通りである。

ビタミン眼科所見
B₁(チアミン)視神経萎縮、Wernicke脳症による眼球運動障害(外転神経麻痺、注視眼振)
B₆(ピリドキシン)視神経症(過剰摂取でも知覚障害・視神経症を来しうる)
B₁₂(コバラミン)栄養欠乏性視神経症、視神経萎縮
ニコチン酸(ナイアシン)眼球運動障害

細菌の寄生的栄養摂取が病態の中心を担う。小腸内で増殖した細菌が宿主の必須栄養素を優先的に消費し、腸管から吸収可能なビタミン量が著しく減少する。これが視神経を含む神経組織の代謝障害につながる。


  1. Reynolds E. Vitamin B12, folic acid, and the nervous system. Lancet Neurol. 2006;5:949-60.
  2. Shipton MJ, Thachil J. Vitamin B12 deficiency - a 21st century perspective. Clin Med. 2015;15:145-50.

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