この疾患の要点
ゴニオパンクチャーは非穿孔性緑内障 手術(NPGS)後の眼圧 上昇に対するNd:YAGレーザー処置である
線維柱帯 ・デスメ膜 (TDM)に微小穿孔を作成し、房水 流出を回復させる
NPGSが実質的に穿孔性手術に転換されるが、安全な術後期間に行うため低眼圧 のリスクは低い
1回の処置で約50%の症例において2年間以上の眼圧 低下が得られる
最も重要な合併症は虹彩 嵌頓であり、最大25%に発生する
NPGS後の眼圧 上昇に対する第一選択のレーザー治療 として位置づけられる
Nd:YAGレーザー・ゴニオパンクチャーは、非穿孔性緑内障 手術(NPGS)の不可欠な構成要素である。NPGSには深層強膜切除術 、管状形成術(canaloplasty)、粘弾性管形成術(viscocanalostomy)が含まれる1) 2) 。
NPGS後の眼圧 コントロールは、線維柱帯 ・デスメ膜 (trabeculo-Descemet’s membrane: TDM)を介した房水 濾過に依存する。このTDMが術中の剥離不全や術後の線維化により肥厚すると、房水 流出抵抗が上昇し眼圧 が上昇する。
ゴニオパンクチャーはTDMに微小穿孔を作成し、前房 から強膜 内スペースへの直接的な房水 流出を回復させる処置である。これにより機能不全に陥った非穿孔型の濾過が穿孔型に転換されるが、濾過胞がすでに形成された後の安全な時期に行うため、低眼圧 関連合併症のリスクは大幅に低下する。
NPGSは線維柱帯切除術 (trabeculectomy)と比較して低眼圧 関連合併症が少ないが、長期的な眼圧 降下効果は劣る1) 2) 。ゴニオパンクチャーはNPGSの成功率を向上させる重要な補助的処置である。
Q
ゴニオパンクチャーは線維柱帯切除術後にも行えるのか?
A
ゴニオパンクチャーは非穿孔性緑内障 手術(NPGS)に特化した処置であり、線維柱帯切除術 (trabeculectomy)後には適応とならない。NPGSでは線維柱帯 ・デスメ膜 が残存する構造であるため、そこにレーザーで穿孔することで房水 流出を回復させるという原理である。線維柱帯切除術 ではすでに全層穿孔が行われているため、ゴニオパンクチャーの対象にはならない。
NPGS後に十分な眼圧 コントロールが得られない場合にゴニオパンクチャーが検討される。
術後早期の適応(1週〜2か月)
原因 :術中のTDM剥離不全による房水 流出抵抗の上昇。
隅角 所見 :TDMウィンドウが厚く、強膜 内湖への凹みがみられない。
注意 :術後4週間以内は急激な減圧や前房 消失のリスクがあり、相対的禁忌である。
術後晩期の適応(数か月〜数年後)
原因 :TDMの線維化、色素沈着による進行性の房水 流出抵抗上昇。
隅角 所見 :強膜 内湖に血液・デブリ・新生血管 が存在する場合は切迫した線維化の兆候である。
注意 :強膜 内湖が完全に線維化または虚脱する前に施行すべきである。
隅角検査 :TDMウィンドウ部位の流出障害の有無を評価する
前眼部画像診断 :AS-OCT やUBM でTDMの肥厚、強膜 内湖の形成状態を確認する
TDMが凹状の外観を呈している場合は房水 透過が不十分であることを示す
点眼麻酔に加え、1%アプラクロニジンとピロカルピンを点眼する。ピロカルピンによる縮瞳は虹彩 嵌頓のリスクを軽減する。眼圧 が高い場合は全身性炭酸脱水酵素阻害薬 を併用する。
隅角 鏡用コンタクトレンズを装用し、Nd:YAGレーザーのエイミングビームを半透明のTDMに合わせる。フリーランニングQスイッチモードで以下のパラメータを使用する。
スポットサイズ: 3〜10 μm
出力: 5〜15 mJ
照射数: 4〜15ショット
照射部位は虹彩 脱出や周辺虹彩前癒着 形成のリスクを最小限にするため、前方(角膜 側)に行う。レーザー後の虹彩 嵌頓リスクを減らすため、TDMウィンドウ近傍にアルゴンレーザー虹彩成形術 を併施することもある。
ステロイド 点眼薬(1%酢酸プレドニゾロン)を1日3回、3日間投与する。緑内障 治療薬はフォローアップ受診まで継続する。1〜3週間後に再診し、眼圧 と合併症の有無を確認する。
最も重要な合併症は虹彩 嵌頓であり、最大25%に発生する。以下の場合にリスクが高い。
開口部が大きすぎる場合
穿孔部が後方(虹彩 側)に作成された場合
処置前に眼圧 が十分に下降していない場合
処置後に眼球マッサージが行われた場合
その他の合併症として、炎症、前房出血 、脈絡膜 剥離を伴う低眼圧 、前癒着がある。いずれも稀である。
ピロカルピンによる十分な縮瞳
眼圧 が高い場合はアプラクロニジンまたは全身性CAIで前処置
穿孔部を角膜 側に作成する
眼球マッサージは絶対に行わない
虹彩 嵌頓が生じた場合、縮瞳薬による保存的管理を試み、無効であればレーザーまたは手術による癒着解離術を検討する。
注意点
術後4週間以内のゴニオパンクチャーは急激な減圧のリスクがあり、相対的禁忌です
強膜 内湖が完全に線維化・虚脱してからでは効果が期待できないため、適切なタイミングの判断が重要です
虹彩 嵌頓の予防のため、処置後の眼球マッサージは絶対に避けてください
Q
ゴニオパンクチャーの成功率はどの程度か?
A
1回のゴニオパンクチャーにより、約50%の症例で少なくとも2年間、処置前と比較して20%以上の眼圧 低下が得られると報告されている。NPGSの成功率向上に不可欠な処置として位置づけられており、NPGS後の眼圧 上昇に対する第一選択のレーザー治療 である。
Lingam Vijaya; Panday Manish; George Ronnie; et al. Management of complications in glaucoma surgery. Indian J Ophthalmol. 2011 Jan;59(Suppl 1):S131-S140. Figure 2. PM
CI D: PMC3038515. License: CC BY.
血管に富む厚い壁を持つ被包化濾過胞を示す術後写真である。結膜 下に限局した高い濾過胞と周囲血管増生が、被包化により流出が不十分な状態を示している。
Pazos M, Traverso CE, Viswanathan A; European Glaucoma Society. European Glaucoma Society - Terminology and guidelines for glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025;109(Suppl 1):1-212. doi:10.1136/bjophthalmol-2025-egsguidelines. PMID:41026937.
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