猫ひっかき病(最多)
病原体:Bartonella henselae(グラム陰性桿菌)
媒介動物:猫(特に幼猫)、犬、猫ノミ、スナバエ
潜伏期間:3日〜3週間
パリノー眼腺症候群(Parinaud oculoglandular syndrome: POGS)は、片側性の肉芽腫性濾胞性結膜炎と、同側の局所リンパ節腫脹(耳前・耳下・顎下・頸部)を特徴とする臨床症候群である1。
最も一般的な原因は猫ひっかき病(cat scratch disease: CSD)である。CSDは、グラム陰性桿菌のBartonella henselaeが猫のひっかき傷や咬傷、ノミの刺咬部位から侵入して発症する人獣共通感染症であり、CSD患者の5〜7%にPOGSが発生する2,3。マレーシアの三次医療機関における眼バルトネラ症の後ろ向き研究では、確認症例の約23%にPOGSが認められ、特に若年者に多い傾向が示されている2。
本症候群を引き起こす原因微生物は多岐にわたるが、大多数は猫ひっかき病によるものであり、予後は一般に良好である。全身・眼病変ともに1〜2か月で自然治癒することが多い1,3。
B. henselaeは猫に引っかかれた手で眼を触る「手から眼への接触」が主な感染経路である。直接的な猫の引っかき傷から発症することは眼腺型では稀である。エアロゾル化した猫ノミの糞便も伝播経路の一つとして提唱されている。
同側の耳前・耳後・顎下・頸部リンパ節の有痛性腫脹が特徴的である1。若年患者は頸部リンパ節腫脹を呈しやすく、15歳以上では鼠径部や腋窩のリンパ節腫脹を呈する傾向がある。
POGSに加え、CSDは以下の眼合併症を引き起こすことがある。
なお、眼バルトネラ症全体では小さな網膜白色病変が最も多く(82.6%)、神経網膜炎が次いで多い(47.8%)と報告されている2。
猫ひっかき病(最多)
病原体:Bartonella henselae(グラム陰性桿菌)
媒介動物:猫(特に幼猫)、犬、猫ノミ、スナバエ
潜伏期間:3日〜3週間
野兎病
スポロトリコーシス
その他の原因として、結核、梅毒、コクシジオイデス症、サルコイドーシス、単純ヘルペス、軟性下疳、ハンセン病、リステリア症、ムンプスなどが報告されている。
猫を飼育しているだけで感染するわけではない。B. henselaeを保有する猫に引っかかれるなどの直接的な接触が必要である。幼猫は保菌率が高く、ノミが媒介するため、定期的なノミ駆除が有効な予防策となる。

動物接触歴(猫・犬・ウサギ・ダニ)、屋外活動歴、旅行歴、職業歴の問診が最重要である。
| 原因 | 推奨検査 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 猫ひっかき病 | 血清学(IgM・IgG) | IgM≥1:20, IgG≥1:256 |
| 野兎病 | 血清学 | 力価>1:128で感染示唆 |
| スポロトリコーシス | 培養(サブロー培地) | 真菌の同定 |
CSDは自己限定性疾患であり、基本的には支持療法である。
猫ひっかき病によるPOGSは自己限定性であり、免疫が正常な患者では1〜2か月で自然治癒することが多い。ただし、肉芽腫の消失には数週間、リンパ節腫脹の消失には数か月を要する場合がある。遷延例では抗菌薬投与が検討される。
B. henselaeはグラム陰性の小型桿菌で、培養困難な偏性細胞内寄生菌である。猫の引っかき傷や咬傷から侵入した菌は、受傷1〜2週間後に接種部位に赤色丘疹(一次病変)を形成する。さらに1〜2週間後に所属リンパ節の腫脹と圧痛が出現する。
眼への感染は、菌で汚染された手による「手→眼」接触が主要経路である。結膜に到達したB. henselaeは結膜上皮下で増殖し、肉芽腫性炎症反応を惹起する。同側の所属リンパ節(耳前・耳下・顎下)に炎症が波及し、有痛性リンパ節腫脹を生じる。
角膜の神経支配に関連する神経伝達因子(サブスタンスP、CGRP等)の関与は本疾患では主要ではなく、菌の直接侵入と宿主の細胞性免疫反応が病態の中心である。
CSDに伴う神経網膜炎では、視神経乳頭から黄斑に及ぶ浮腫が生じ、星芒状白斑(star figure)が特徴的に出現する。B. henselaeの血行播種が視神経や網膜への直接的な菌の侵入を引き起こすと考えられている。
Dixon MK, Dayton CL, Anstead GM. Parinaud’s Oculoglandular Syndrome: A Case in an Adult with Flea-Borne Typhus and a Review. Tropical Medicine and Infectious Disease. 2020;5(3):126. PMID: 32751142. PMCID: PMC7558689.
Tey MS, Govindasamy G, Vendargon FM. The clinical spectrum of ocular bartonellosis: a retrospective study at a tertiary centre in Malaysia. Journal of Ophthalmic Inflammation and Infection. 2020;10:31. PMID: 33191467. PMCID: PMC7667203.
Sabir S, Daley SF, Huang B. Cat Scratch Disease. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025. Bookshelf ID: NBK482139.
Nagy KI, Pribelszki E, Sira Á, Fullajtár B, Rácz T, Major T. Francisella tularensis Infection Causing Parinaud Oculoglandular Syndrome. The American Journal of Case Reports. 2024;25:e944321. PMID: 38941282. PMCID: PMC11332965.
Ferreira CP, Nery JAC, de Almeida ACO, Ferreira LC, Corte-Real S, Conceição-Silva F. Parinaud’s oculoglandular syndrome associated with Sporothrix schenckii. IDCases. 2014;1(3):38–39. PMID: 26955523. PMCID: PMC4762793.
Bass JW, Freitas BC, Freitas AD, et al. Prospective randomized double blind placebo-controlled evaluation of azithromycin for treatment of cat-scratch disease. Pediatric Infectious Disease Journal. 1998;17(6):447–452. PMID: 9655532.