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緑内障

ストリームライン・サージカル・システム

1. ストリームライン・サージカル・システムとは

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ストリームライン・サージカル・システム(STREAMLINE Surgical System、New World Medical社、米国カリフォルニア州)は、線維柱帯(trabecular meshwork: TM)およびシュレム管(Schlemm’s canal: SC)を標的とする低侵襲緑内障手術MIGS)デバイスである1)2)

低侵襲緑内障手術は従来の線維柱帯切除術チューブシャント手術と比較して組織損傷が少なく、視力の早期回復が可能である4)5)低侵襲緑内障手術の中で本デバイスは「線維柱帯粘弾性拡張(trabecular viscodilation)」に分類され、ABiC(ab interno canaloplasty)やOMNI Surgical Systemと同じカテゴリーに属する1)4)

本デバイスはインプラントを使用せず、シュレム管内への粘弾性物質注入と局所的な隅角切開(goniotomy)の二つの機能を有する。米国FDAの510(k)承認(粘弾性流体の眼内注入)と、クラスI免除機能(線維柱帯組織の切開)の二つの適応を持つ。

項目内容
対象疾患高眼圧症開放隅角緑内障
手術形態単独または白内障手術併用
分類線維柱帯粘弾性拡張
Q ストリームライン・サージカル・システムはどのような低侵襲緑内障手術ですか?
A

シュレム管の経管的粘弾性拡張と線維柱帯の局所的切開を同時に行う低侵襲緑内障手術デバイスである。インプラントを留置しないため異物関連の合併症リスクがない。同カテゴリーのABiCやOMNIが360度のカテーテル通過を必要とするのに対し、本デバイスは複数箇所への局所的穿刺で治療を行う点が特徴的である。高眼圧症および開放隅角緑内障に適応があり、単独手術または白内障手術との併用で実施可能である1)2)

外筒(outer sleeve)の中にステンレス鋼製カニューレを収めた使い捨てデバイスである。アクチュエータボタンを押すとポンプが作動し、外筒が後退してカニューレが露出し粘弾性物質が注入される。1回の押し込みで約7マイクロリットルが供給され、最大8回の注入が可能である。

術前準備と手技

プライミング:術野外で粘弾性物質をデバイスに充填する。気泡がなくなるまで注入する

角膜切開:幅1.8 mm以上の透明角膜切開を作成する

隅角鏡検査:術中隅角鏡で隅角構造を確認する

穿刺手技:外筒を前部線維柱帯に接近させ、アクチュエータボタンを2秒間押し込む。カニューレがシュレム管内に位置し、粘弾性物質が注入される3)

治療範囲と術後管理

治療範囲:少なくとも3時計時間(90度)にわたり3箇所以上穿刺する。最大8回のボーラス投与が可能である

逆流出血:処置部位からの逆流出血が見られることがあり、シュレム管への到達の指標となる

粘弾性物質除去:処置完了後に通常の方法で粘弾性物質を除去し創口を閉鎖する

術後点眼:プレドニゾロンと抗菌薬の合剤を4週間漸減投与する3)

白内障手術との併用時は、水晶体再建術後に同一の角膜切開創からデバイスを挿入して手技を行う3)

前房隅角構造の可視化が困難な場合、患者の協力が得られない場合、手術への同意が得られない場合は禁忌となる。

軽度〜中等度の原発開放隅角緑内障患者37眼に対する白内障手術併用の前向き試験で以下の成績が報告されている3)

指標術前12ヶ月
平均眼圧23.2 mmHg16.2 mmHg
平均薬剤数2.1剤0.8剤
薬剤フリー率51.4%

眼圧は術後すべての時点で有意に低下した(p<0.0001)3)。12ヶ月時点で80%の眼がベースラインから20%以上の眼圧低下を達成し、48.6%が30%以上の低下を示した3)。薬剤使用量は12ヶ月時点で60.5%減少し、71.4%の眼が術前より少ない薬剤数であった3)

デバイスまたは経管的拡張手技に起因する有害事象の報告はなかった3)。複数眼に認められた唯一の有害事象は眼圧上昇(4眼)であり、いずれも短期的な点眼薬治療で改善した3)角膜内皮細胞密度は12ヶ月時点で16.8%減少したが、3ヶ月以降は安定しており、水晶体再建術単独で報告される範囲と同等であった3)

他の低侵襲緑内障手術との比較

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低侵襲緑内障手術は多様なデバイスから構成され、現在Streamline Surgical Systemの大規模前向き試験または後ろ向き試験は利用できない状況にある4)。ただし既存のデータでは、他の線維柱帯バイパスデバイスや経管的拡張術と同等以上の成績が示されている3)

低侵襲緑内障手術は全般的に15〜50%の眼圧低下と0.4〜1.8剤の薬剤減少を示す5)白内障手術との併用は単独の低侵襲緑内障手術と比較して追加的な眼圧低下効果(2〜2.8 mmHg)と低い再手術率(2年で3% vs 24%)が報告されている5)

Q ストリームライン・サージカル・システムと他の低侵襲緑内障手術の違いは?
A

同カテゴリーの粘弾性拡張術であるABiCはマイクロカテーテルでシュレム管全周(360度)を通過させて粘弾性物質を注入する2)。OMNIは屈曲可能なマイクロカテーテルで180度ずつ2回のパスを行い粘弾性拡張と線維柱帯切開の両方が可能である2)4)。ストリームラインは全周カテーテル通過ではなく、複数箇所への局所的穿刺で粘弾性物質を注入する点が異なる。いずれもインプラント留置を必要としない点は共通している。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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緑内障眼では線維柱帯房水流出の主要な抵抗部位であり、シュレム管および集合管にも付加的な流出抵抗が存在する3)

ストリームライン・サージカル・システムの作用機序は二段階である。まず線維柱帯を穿刺することで線維柱帯シュレム管内壁の抵抗を直接的に減少させる。次にシュレム管内に粘弾性物質を注入することで管腔を拡張し、集合管開口部を開放して遠位流出路の抵抗を低減する。

この作用により前房水が生理的流出路であるシュレム管→集合管→房水静脈→上強膜静脈の経路をより効率的に通過できるようになり、眼圧が下降する。

低侵襲緑内障手術の眼圧下降限界

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線維柱帯/シュレム管を標的とする低侵襲緑内障手術眼圧下降効果は、遠位流出路の抵抗と上強膜静脈圧によって制限される2)。そのため、到達可能な最低眼圧は上強膜静脈圧(通常8〜10 mmHg)付近となる。軽度〜中等度の開放隅角緑内障が主な適応であり、高度な眼圧下降が必要な重症例ではブレブ形成手術が推奨される1)

Q 経管的粘弾性拡張はなぜ有効なのですか?
A

緑内障眼では線維柱帯房水流出抵抗増大に加え、シュレム管の虚脱や集合管開口部の狭窄が流出障害に寄与している。粘弾性物質シュレム管内に注入して管腔を物理的に拡張することで、集合管やその遠位の流出路への房水アクセスが改善される。これにより線維柱帯の切開単独では到達できない追加的な眼圧下降が期待できる。ストリームラインは局所穿刺部位で線維柱帯切開と粘弾性拡張の両方を同時に達成する。

ストリームライン・サージカル・システムは比較的新しいデバイスであり、以下の研究が進行中である。

  • 前向き非ランダム化オープンラベル試験(NCT05089474)が進行中であり、有効性と安全性のさらなるデータが蓄積されている
  • 白内障手術との併用で12ヶ月時に眼圧 30.2%低下・51.4%薬剤フリーの成績が報告されている3)
  • 低侵襲緑内障手術の臨床エンドポイント報告に関する標準化の取り組みが進んでおり、デバイス間の比較がより正確になることが期待される4)

今後の課題として以下が挙げられる。

  • 大規模RCTの実施
  • スタンドアロン手術としての有効性評価
  • 長期成績(5年以上)のデータ蓄積
  • 他の低侵襲緑内障手術(OMNI、ABiC)との直接比較試験
  • 最適な穿刺箇所数・粘弾性物質注入量の標準化
Q ストリームライン・サージカル・システムは日本で使用できますか?
A

ストリームライン・サージカル・システムは米国FDA承認(510(k))を取得しているが、2024年時点で日本国内での薬事承認は得られていない。日本で使用可能な同様の低侵襲緑内障手術としてはマイクロフックトラベクロトミーiStent inject Wなどがある。今後の臨床データの蓄積と規制当局の評価次第で、日本を含む各国での使用可能性が拡大する可能性がある。

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