近視の症状
遠方視力低下:黒板が見えにくいことが最も特徴的な主訴。
目を細める行動:ピンホール効果による視力改善を無意識に行う。
近方は比較的明瞭:近視では近くは見えるため、手元の作業は問題なく行える。
学校健診での指摘:発見契機となることが多い。
スマートフォン・タブレット等デジタルデバイスの小児使用増加により、近見作業時間が増大し、近視の発症・進行促進が問題となっている。近視は通常の調節静止時に、無限遠からの平行光線が網膜前方に焦点を結ぶ状態を指す。
近視の重症度は以下のように分類される。
近視は必ず焦点の合う世界があるため、幼小児でも弱視を引き起こさない。しかし強度近視への進展では、脈絡膜・網膜・強膜の機械的伸展により網膜変性・黄斑変性・網膜剥離・緑内障のリスクが増大する。
デジタルデバイス使用に関連する眼の問題は、①近視の発症・進行、②デジタル眼精疲労、③急性後天性共同性内斜視(スマートフォン内斜視)の3つに大別される。小児の近視診断基準は、調節麻痺下屈折検査における等価球面度数が-0.5D以上とされる。2)
2021年のGIGAスクール構想によりICT端末が1人1台配布され、学校での端末使用時間が急増した。近業時間の増大は小児近視発症・進行のリスク因子として知られており、GIGAスクール以降の影響が注目されている。学校でのICT活用と近視予防の両立が課題となっている。
画面との距離が近い・長時間の近見作業・屋外活動の機会喪失が重なることで、近視進行が促進される可能性がある。定期的な学校健診と眼科受診を組み合わせた管理体制が重要となる。
デジタルデバイス使用に関連する小児の眼症状は、近視そのものによる症状とデジタル眼精疲労・急性内斜視に分けて理解することが重要である。
近視の症状
遠方視力低下:黒板が見えにくいことが最も特徴的な主訴。
目を細める行動:ピンホール効果による視力改善を無意識に行う。
近方は比較的明瞭:近視では近くは見えるため、手元の作業は問題なく行える。
学校健診での指摘:発見契機となることが多い。
デジタル眼精疲労
眼の疲れ・乾燥・痛み:長時間のデバイス使用後に生じる一時的な症状。
まばたき頻度の減少:通常毎分15〜20回が、デバイス使用中は毎分3〜5回に低下する。
頭痛・頸肩こり:姿勢不良や調節過多に伴う症状。
20-20-20ルール:20分ごとに約6m先を20秒見ることで軽減可能。
急性スマートフォン内斜視
近視とデジタル眼精疲労は病態が異なる。デジタル眼精疲労は一時的な症状であり休息で改善するが、近視は眼軸延長を伴う屈折異常であり不可逆的な変化である。長時間の近見作業は近視進行のリスク因子でもある。
近視進行の主なメカニズムは3つに整理できる。
近業(近見作業):デジタルデバイスの長時間使用により調節過多が生じ、眼軸延長が促進される。
屋外活動の減少:明るい光(ドーパミン仮説)の不足が眼軸延長を促進する。屋外の光強度(10,000〜100,000 lux)は網膜ドーパミン分泌を促進し、眼軸延長を抑制する。1)
遺伝的要因:両親が近視の場合、子どもの近視リスクが高まる。東アジア系に近視が多い遺伝的背景がある。同一民族(中国系)でもシドニー在住(3.3%)とシンガポール在住(29.1%)で近視有病率が大きく異なり、環境要因の重要性が示されている。1)
屋外活動時間の1日76分増加で近視発症を50%低減できる(メタ解析)。2,000 lux以上の光強度かつ15分以上の連続的屋外曝露が有効とされる。1) COVID-19パンデミック時の学校閉鎖期間中、近業増加・屋外活動減少が小児の眼軸延長を加速させた。1)
周辺遠視性デフォーカス(網膜周辺部の遠視性ぼやけ)も眼軸延長の信号となる。近視制御の制御系として①ドーパミン依存性の光強度・コントラスト検出、②ドーパミン非依存性の焦点検出の2つが存在する。1) 近視抑制眼鏡・コンタクトレンズはこの周辺デフォーカスを軽減することで眼軸延長を抑制する。3)
リスク因子の一覧:
| リスク因子 | 影響度 | 備考 |
|---|---|---|
| 屋外活動不足 | 強い | 1日2時間未満で発症リスク増大 |
| 近業時間の増加 | 中程度 | スクリーンタイム・読書等 |
| 近見距離の短縮 | 中程度 | 30cm未満での使用でリスク増 |
| 両親の近視 | 強い | 低年齢発症のリスク因子 |
| 都市化環境 | 中程度 | 都市の子どもは農村の約2倍 |
| 低年齢での近視発症 | 強い | 将来の強度近視のリスク |
「裸眼視力1.0未満の者」の割合は増加傾向にある。幼稚園・小学校では「むし歯(う歯)」に次いで、中学校・高等学校では最も多い疾病・異常として挙げられる。
裸眼視力の統計(文部科学省 2014年度):
| 学校種 | 裸眼視力1.0未満 | 裸眼視力0.3未満 |
|---|---|---|
| 幼稚園 | 26.53% | 0.97% |
| 小学校 | 30.16% | 8.14% |
| 中学校 | 53.04% | 24.97% |
| 高等学校 | 62.89% | 35.84% |
低年齢児童での近視増加と重症化が課題となっている。
世界の小児・青年の近視有病率は1990年の24.3%から2023年の35.8%に増加し、2050年には39.8%に達する見込みである。1) 東・東南アジアでは12歳児の49.7〜62.0%が近視を有し、他地域(6〜20%)を大きく上回る。1) 2050年には世界人口の約半数が近視となり、生産性損失は年間2,500億ドルと試算されている。3)
近視1D抑制ごとに、近視性黄斑症リスク58%・開放隅角緑内障リスク20%・後嚢下白内障リスク21%・網膜剥離リスク30%の低減が期待される。3) 近視進行抑制治療の早期介入が長期的なリスク低減に重要である。
幼小児は調節力が強く遠方への集中力に欠けるため、屈折検査時に調節麻痺薬の点眼が不可欠である。これが調節麻痺下屈折検査がゴールドスタンダードとされる理由である。
第一選択:サイクロジール(シクロペントラート塩酸塩1%)
完全調節麻痺:アトロピン1%
近業後は調節が残存しているため、近視度数の誤測定(過大評価)に注意が必要である。困難な場合は非調節麻痺下の検影法によるオーバーレフラクションを行う。2) 弱視を除外するため、年齢相応の視力発達を確認する。2) 眼軸長の定期的測定が近視進行の正確な評価に有用である。2)
年齢別正常屈折値(調節麻痺下):
| 年齢 | 正常屈折値(調節麻痺下) | 眼鏡処方を要する屈折値 |
|---|---|---|
| 3カ月 | S+4D | S+6D以上 |
| 1歳 | S+2D | S+4D以上 |
| 2歳 | S+1D | S+3D以上 |
| 3歳 | S+1D | S+3D以上 |
学校健診での視力検査が最初の発見契機となることが多い。フォトスクリーニングやオートレフラクトメーターは有用なスクリーニングツールであるが、定量的確定診断には不十分である。学校健診で視力低下を指摘された場合は、眼科での調節麻痺下屈折検査が必要である。
デジタルデバイス使用の管理は近視予防・進行抑制の基本である。
軽度近視(-3Dまで):近視は必ず焦点の合う世界があるので、幼小児でも弱視のおそれはない。中等度までの近視では眼鏡装用は急がず無理をしない。3〜6歳の子どもでは眼鏡処方度数の下限はS-3.00D以上と考えてよい。
中等度以上(-3D超):眼鏡装用は子どもの世界を広げるため、眼鏡装用のメリットを保護者に説く。
強度近視(-6D以上):網膜像縮小のため完全矯正は好ましくない場合がある。
眼鏡処方後のフォローアップは、近視例では3〜4カ月後に1回目の再診を行う。6カ月〜1年ごとにフレームサイズの更新を行う。
近視進行抑制の国内初承認薬として、リジュセア®ミニ点眼液0.025%(参天製薬、2024年12月承認)が使用可能となった。2)
各介入の近視進行抑制効果を以下に示す。
| 介入 | 屈折抑制効果 | 眼軸抑制効果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 低濃度アトロピン0.05% | 最大67% | — | LAMP試験1) |
| オルソケラトロジー | — | 32〜59% | 感染リスク管理が重要1) |
| DIMS眼鏡レンズ | 52% | 62% | 2年間データ1) |
| HALT眼鏡レンズ | 67% | 60% | フルタイム装用時1) |
| MiSight 1 day CL | 59% | 52% | +2.00D加入3) |
2025年4月時点で、低濃度アトロピン点眼液を除く近視進行抑制治療は国内未承認である。2)
オルソケラトロジーは「オルソケラトロジー・ガイドライン」で適応年齢20歳以上と明記されている。夜間視力の低下・角膜高次収差の増加・アカントアメーバ角膜炎等の重篤な角膜感染症リスク・就寝時装用による角膜酸素不足・角膜内皮細胞減少などの影響が危惧される。眼軸長延長抑制効果が報告されているが、現時点では長期予後が不明であり慎重な対応が必要である。
完全に禁止する必要はない。重要なのは①1回の連続使用を20〜30分以内に区切る、②画面との距離を30cm以上確保する、③1日2時間以上の屋外活動を確保することである。1) これらを実践することで、近視発症・進行リスクを軽減できる。
近視の発症・進行には複数のメカニズムが関与する。
近業→調節過多→眼軸延長:デジタルデバイスの長時間使用による近見作業が調節負荷を増大させ、眼軸延長を促進する。
調節安静位(empty field myopia):固視標のない状態での調節位置は遠点から平均0.5〜1.7D手前(眼前60〜150cm)にある。暗い場所や画面注視が続くと調節安静位の近位化が起こり、近視方向への変化をきたす。
ドーパミン仮説:屋外の明るい光(10,000〜100,000 lux)が網膜ドーパミン放出を促進し、眼軸延長を抑制する。赤色光(650nm)のメタ解析では最も有効に眼軸延長を抑制することが示されている。1)
周辺遠視性デフォーカス:網膜周辺部の遠視性ぼやけが眼軸延長の信号となる。近視制御の制御系として①ドーパミン依存性の光強度・コントラスト検出、②ドーパミン非依存性の焦点検出の2つが存在する。1)
低濃度アトロピンの機序:眼内に移行し、網膜・強膜のムスカリン受容体を介して強膜リモデリングに関与し、眼軸延長を抑制する。2)
強度近視の合併症機序:眼軸延長の高度進行により脈絡膜・網膜・強膜に機械的伸展が生じ、後部ぶどう腫・黄斑変性・網膜剥離・緑内障のリスクが増大する。
近視は一般に小学校入学前後に発症し、中学校卒業まで急速に進行する。10代後半〜20代前半に進行が停止する傾向があるが、早期発症・強度近視の場合は病的近視のリスクが増加する。眼軸延長による屈折変化は不可逆的である。
反復低強度赤色光(RLRL)療法:650nmの赤色光照射により脈絡膜厚を増加させ眼軸延長を抑制する。近視発症予防にも約50%の発症低減が示唆されているが、長期安全性データが不十分である。1)
併用療法の検討:オルソケラトロジー+0.01%アトロピンが最もエビデンスが蓄積されている。急速進行例にはオルソケラトロジー+RLRL療法、デュアルフォーカスCL+0.05%アトロピンも検討されている。1)
新規眼鏡レンズ技術:PLARI・NLARI・CAREなど新しい光学設計のレンズが開発中である。1)
環境・社会的アプローチ:学校での屋外活動時間の政策的確保が台湾・シンガポール・中国で効果が実証されている。近視制御1Dごとの眼疾患リスク低減効果(近視性黄斑症58%減・開放隅角緑内障20%減・後嚢下白内障21%減・網膜剥離30%減)が示されており、3) 早期介入の長期的意義が強調されている。