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小児眼科・斜視

小児のコンタクトレンズ

1. 小児のコンタクトレンズとは

Section titled “1. 小児のコンタクトレンズとは”

コンタクトレンズ(CL)装用が原因または誘因となって発症する角膜障害を、CL角膜障害という。無症候性のものや軽症のものから、角膜潰瘍に至る重症例まで程度はさまざまである。近年、小学生・中学生へのCL装用が増加しており、眼科外来でのCL障害の若年化が問題となっている。

小児におけるCL処方の目的は多岐にわたる。

弱視治療目的:無水晶体眼(先天白内障術後)・高度屈折異常・高度不正乱視などに対して処方する。生後早期から適応となり、保護者がレンズの装脱を行う。

屈折矯正目的近視乱視の光学的矯正を目的とする。自己管理能力を考慮し、一般に中学生以降が目安とされる。

近視進行抑制目的:多焦点ソフトCLやオルソケラトロジーを用いて眼軸延長を抑制する。小学校中〜高学年(8〜10歳程度)から適応となる場合がある。

スポーツ・美容目的:運動時の利便性や審美的理由による処方。年齢・管理能力を十分に評価してから行う。

レンズ種類特徴小児での主な使用場面
1日使い捨てSCL衛生面で最も安全、ケア不要屈折矯正・近視抑制
2週間/1カ月交換SCLケア必要、コスト低い屈折矯正(管理可能な年齢)
シリコーンハイドロゲルSCL高酸素透過性長時間装用・弱視治療
HCL(ハードCL)不正乱視矯正に優れる円錐角膜・高度不正乱視
オルソケラトロジー就寝時装用・近視進行抑制近視進行抑制(小学生〜)
多焦点SCL(MiSight等)周辺デフォーカス制御近視進行抑制

眼科学会から明確な年齢基準は示されていないが、自己管理能力と保護者の協力が前提条件となる。

  • 弱視治療(無水晶体眼):生後数週間から装用可能。保護者が装脱を行う。
  • 近視進行抑制(OrthoK・多焦点CL):小学校中〜高学年(8〜10歳程度)から適応を検討する。
  • 一般的な屈折矯正:自己管理能力を十分に評価したうえで中学生以降が目安となる。
  • 装飾用CL(カラーCL):管理リスクが高く、小児への処方は原則として慎重に行う。
Q 何歳からコンタクトレンズを使えますか?
A

弱視治療(無水晶体眼)では生後数週間から使用できる。近視進行抑制目的のオルソケラトロジーや多焦点CLは小学校中〜高学年(8〜10歳程度)から、一般的な屈折矯正は中学生以降が目安である。年齢よりも自己管理能力と保護者の協力が重要であり、眼科医が総合的に判断する。

CL角膜障害では、異物感・違和感・眼脂・充血眼痛・流涙・霧視視力低下などを生じる。無症候性のものも存在する。特に充血・眼脂・疼痛の3徴がすべて揃う場合は、角膜感染症を発症している可能性があり要注意である。

CL装用による角膜障害には特徴的な染色パターンが認められる。

軽症パターン

3時-9時ステイニング:HCL装用者のドライアイやスティープなフィッティングのレンズ装用でみられる。角膜3時・9時方向の上皮障害。

スマイルマークパターン:SCL装用者のドライアイに特有。下方弧状の染色パターンを呈する。

上方角膜弧状病変(SEAL):硬い素材のSCL装用時に角膜上方周辺部に弧状の上皮障害が出現する。

リング状角膜上皮ステイニング:シリコーンハイドロゲルレンズとケア剤との不適合の際にみられる。

重症パターン

角膜浸潤:機械的刺激による非感染性のものから感染性のものまで連続的なスペクトラムを呈する。

感染性角膜潰瘍充血・眼脂・疼痛の3徴を生じる。緑膿菌・アカントアメーバ・真菌などが原因となる。視力予後が不良となりうる重篤な病態である。

巨大乳頭結膜炎GPC:アレルギー反応によって上眼瞼結膜に巨大乳頭が形成される。瘙痒感・眼脂が特徴。

Q 子どものCL装用で受診すべき症状は?
A

充血・眼脂・疼痛の3徴が揃う場合は角膜感染症の可能性があり、直ちにCL装用を中止して眼科を受診する。異物感・霧視視力低下が続く場合も早めの受診が勧められる。症状がなくても定期的な眼科受診(3〜6カ月ごと)を継続することが重要である。

CL装用に伴う角膜障害の主な原因は以下のとおりである。

  • レンズの過装用(長時間装用・使用期限超過)
  • 誤使用(就寝時装用すべきでないレンズでの就寝時装用)
  • レンズケア不足(洗浄・消毒の不徹底)
  • ケア剤不適合(シリコーンハイドロゲルとケア剤の不適合)
  • ケア剤の消毒効果不足
  • レンズケース汚染
  • 原因不明の場合も存在する

小児では以下の要因によって角膜障害のリスクが高まる。

  • 自己管理能力の未熟さ:低年齢ほどケアの遵守率が低い。装脱時の不衛生操作が多い。
  • 眼を擦る習慣角膜上皮障害を悪化させ、円錐角膜への進行リスクをもたらす。
  • 入浴・水泳時の装用:水道水・プールの水はアカントアメーバの汚染源となる。
  • 装飾用CLの使用:カラーCLや未承認レンズは品質管理が不十分な場合がある。
  • 定期検診の欠如:異常の早期発見が遅れる。

アカントアメーバ角膜炎のリスク要因

Section titled “アカントアメーバ角膜炎のリスク要因”

再使用SCLは1日使い捨てに比べ、アカントアメーバ角膜炎(AK)のリスクが3.84倍(OR 3.84; 95% CI 1.75–8.43)高いことが報告されている。2)

1日使い捨てレンズでもリスクを高める要因として以下が挙げられる。2)

リスク要因オッズ比(OR)
定期検診の欠如10.12
1日使い捨てレンズの再使用5.41
夜間装用3.93
レンズ装用中のシャワー3.29

30〜62%のAK症例は、再使用レンズから1日使い捨てへの変更によって予防可能と推定されている(PAR%推定)。2)

小児へのCL処方前には以下の評価を行う。

  1. 屈折検査:小児では調節麻痺薬を用いた完全調節麻痺下の屈折検査が必須である。
  2. 角膜形状解析オルソケラトロジー処方時には必須。角膜の形状・曲率を評価する。
  3. 裂隙灯顕微鏡検査:前眼部の細隙灯所見を確認し、CLの適応を評価する。
  4. 眼圧測定緑内障や高眼圧がないことを確認する。
  5. 眼底検査:高度近視では網膜周辺部の変性も確認する。
  6. 自己管理能力の評価:年齢・性格・衛生習慣・意欲を包括的に評価する。
  7. 保護者の理解と協力の確認:特に低年齢児では保護者の積極的関与が不可欠である。
  • 裂隙灯顕微鏡検査が必須である。
  • フルオレセイン染色:上皮欠損のパターン判定に有用。染色パターンから原因を推定できる。
  • 感染性角膜炎疑い時角膜擦過物の培養検査(細菌・真菌・アカントアメーバ)を行う。
  • 共焦点顕微鏡:アカントアメーバシストの検出に有用で、早期診断に役立つ。

CLのフィッティング評価では、以下を確認する。

  • レンズの動き(過度に動かない・貼り付かない)
  • レンズの中心安定性
  • 涙液交換の十分性
  • フルオレセイン染色による上皮障害パターンの有無

感染性と非感染性の角膜障害を鑑別することが臨床上最も重要である。

  • 感染性角膜障害充血・眼脂・疼痛の3徴、角膜浸潤・潰瘍
  • 非感染性角膜障害ドライアイ関連(3時-9時ステイニング・スマイルマークパターン)、SEAL、GPC
  • アカントアメーバ角膜炎:強い疼痛・輪状浸潤・リング状混濁

水晶体眼(先天白内障術後)ではシリコーンハイドロゲルSCLまたはHCLが選択される。高度不正乱視にはHCLが適している。生後早期から処方可能であり、保護者がレンズの装脱を行う。適切なCL装用により弱視視力改善を図る。

1日使い捨てSCLを第一選択として推奨する。高度乱視にはトーリックSCLまたはHCLを選択する。装用時間の遵守指導と定期的なフォローアップが重要である。

多焦点ソフトCL(MiSight等)

周辺デフォーカス制御設計の多焦点CLは、12件のRCT・比較試験(11件がLevel I)において全て有意な近視進行抑制効果が確認されている。1)

MiSight 1 day(+2.00D加入デュアルフォーカス)の3年RCT(Chamberlain 2019)では以下の結果が得られた。1)

  • 屈折進行:治療群 −0.51±0.64D、対照群 −1.24±0.61D(P<0.0001)
  • 眼軸延長:治療群 +0.30±0.27mm、対照群 +0.62±0.30mm(P<0.0001)
  • 屈折進行59%・眼軸延長52%の抑制効果

12件の臨床試験を通じて重篤な有害事象の報告はない。1) 最適装用期間・長期予後・中止後のリバウンドに関するデータは現時点で限定的である。1)

オルソケラトロジー(OrthoK)

就寝時に特殊なリジッドレンズを装用し、角膜中央部を一時的に平坦化する手法。日中は裸眼で過ごせるため活動的な小児に適している。2年間で眼軸伸展を32〜59%抑制することが報告されている。3)

日本の多施設研究(1,438名)では、微生物性角膜炎(MK)発生率は5.4/10,000 patient-yearsであった。3) 夜間装用であるため角膜感染リスクに特に注意が必要であり、定期的な角膜曲率・度数変化のモニタリングが必須である。

  1. CL装用の即時中止:最も重要な初期対応である。原因が除去されれば非感染性の角膜障害は予後良好である。
  2. 感染性角膜:抗菌点眼薬(広域スペクトラム)を開始し、培養結果に応じて変更する。緑膿菌に対してはフルオロキノロン系を使用する。
  3. アカントアメーバ角膜炎:ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)やプロパミジン点眼を長期使用する。治療が困難で予後不良となりやすい。
  4. 非感染性角膜上皮障害:抗炎症点眼(ステロイド慎重投与)・人工涙液・ヒアルロン酸点眼を用いる。
  5. ドライアイ関連:人工涙液・ヒアルロン酸点眼による潤滑を行う。
  6. GPC巨大乳頭結膜炎:CL装用中止+抗アレルギー点眼(抗ヒスタミン薬・ケトチフェン等)を行う。
  • 1日使い捨てCLが最も衛生的であり推奨される。ケアの手間がなく、衛生管理リスクを最小化できる。
  • 保護者への十分な指導(洗浄液・保存液の正しい使用法)を行う。
  • 定期検査は3〜6カ月ごとに徹底する。無症状でも定期受診を継続させる。
  • 学校・課外活動中の使用ルール設定(水泳時の取り外し等)。
  • 「長時間装用」「眼痛時の無理な継続」の禁止を徹底教育する。
  • レンズ装用中の入浴・水泳・シャワーの禁止を指導する。
Q 多焦点CLは子どもの近視進行を本当に抑えられますか?
A

Level Iエビデンスで支持されている。MiSight 1 dayの3年RCTでは屈折進行を59%、眼軸延長を52%抑制した。1) 12件の臨床試験すべてで有意な抑制効果が確認されており、重篤な有害事象の報告もない。1) ただし最適装用期間や中止後のリバウンドに関するデータは限定的であり、継続的な眼科管理が必要である。

Q 1日使い捨てCLと2週間交換CLではどちらが安全ですか?
A

1日使い捨てCLが衛生面で最も安全である。再使用SCLに比べアカントアメーバ角膜炎リスクが約4分の1(OR 3.84)に低下する。2) ケアの手間がなく、小児の衛生管理リスクを最小化できるため第一選択として推奨される。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

CL装用による角膜障害は4つの主要メカニズムによって生じる。

1. 機械的刺激

CLが角膜上皮と直接接触することで、上皮細胞の脱落・びらんが起こる。フィッティングが不適切(スティープすぎる・フラットすぎる)と機械的刺激が増大する。これが3時-9時ステイニングやSEALなど特有の染色パターンをもたらす。

2. 低酸素状態

CLが角膜上に乗ることで角膜への酸素供給が制限される。特に非シリコーン素材のSCL長時間装用や就寝時装用では低酸素が著明となる。低酸素状態は角膜浮腫・内皮細胞減少・角膜血管新生(パンヌス形成)を引き起こす。シリコーンハイドロゲルレンズは高酸素透過性(Dk/t値が高い)により低酸素リスクを低減する。

3. 感染

角膜上皮に生じた微小な欠損から病原体が侵入することで感染性角膜炎が発症する。

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa):CL関連感染性角膜炎の最多原因菌。急速に進行する潰瘍を形成する。
  • アカントアメーバ(Acanthamoeba):水道水・プール水などに生息する原虫。再使用SCLや水系曝露でリスクが高まる。強い疼痛と輪状浸潤が特徴的である。
  • 真菌:比較的まれだが難治性。

4. アレルギー反応

レンズ素材・ケア剤・沈着物に対するアレルギー反応によって上眼瞼結膜に巨大乳頭が形成される(巨大乳頭結膜炎GPC)。上眼瞼の乳頭径が0.3mm以上のものを乳頭と定義する。

多焦点CLによる近視進行抑制の機序

Section titled “多焦点CLによる近視進行抑制の機序”

単焦点レンズでは、中心部で網膜上に焦点が合うが、周辺部では網膜後方にずれる(周辺遠視性デフォーカス)。これが眼軸延長のシグナルとなり、近視進行につながると考えられている。1)

多焦点CLは周辺部に加入度数を配置することで、周辺遠視性デフォーカスを軽減・解消する。1)

  • デュアルフォーカス設計(MiSight等):中心矯正ゾーン+同心円治療ゾーン(プラス度数)。周辺部の光を網膜前方に焦点合わせし、眼軸延長シグナルを抑制する。
  • EDOF(拡張焦点深度)設計(MYLO等):レンズ全体で可変屈折力を持ち、より連続的なデフォーカス制御を行う。2年RCTで眼軸延長を有意に抑制した(SE:治療群 −0.62D vs 対照群 −1.12D、AL:治療群 0.37mm vs 対照群 0.67mm;P<0.001)。3)

小児の角膜は弾力性が高く、CL装着時の順応が成人より早い傾向がある。一方で眼を擦る習慣がある場合、角膜上皮への繰り返し機械的刺激が円錐角膜進行のリスクをもたらす。CL装用中に眼を擦らないよう指導することが重要である。

近視進行抑制における単独療法の効果を超えるため、複数の治療法の組み合わせが研究されている。3)

  • OrthoK+低濃度アトロピン(0.01%):現時点で最もエビデンスが蓄積されている併用法である。
  • デュアルフォーカスCL+0.05%アトロピン屈折進行の急速な症例に有効との報告がある。
  • OrthoK+反復低強度赤色光(RLRL)療法:急速進行例・強度近視に対する選択肢として研究されている。

最適装用期間と中止後リバウンド

Section titled “最適装用期間と中止後リバウンド”

多焦点CLの最適装用期間に関するデータは現時点で限定的である。1) 3年超の長期フォローアップデータ、および多焦点CL中止後の近視進行リバウンドに関する検証が今後の課題である。1)

EDOF(extended depth of focus)設計(MYLO等)を含む多様な光学設計の比較研究が進行中である。3) パワーグラジエント設計・高加入多焦点設計など、より効果的なデフォーカス制御を目指した次世代CLの開発が続いている。

12件の多焦点CL臨床試験において重篤な有害事象は報告されていない。1) オルソケラトロジーの長期微生物性角膜炎発生率に関しては、さらなる大規模前向き研究の蓄積が必要である。

  1. Cavuoto KM, Trivedi RH, Prakalapakorn SG, et al. Multifocal soft contact lenses for the treatment of myopia progression in children: a report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology. 2024.
  2. Carnt N, Minassian DC, Dart JKG. Acanthamoeba keratitis risk factors for daily wear contact lens users: a case-control study. Ophthalmology. 2023;130:48-55.
  3. Yam JC, Zhang XJ, Zaabaar E, et al. Interventions to reduce incidence and progression of myopia in children and adults. Prog Retin Eye Res. 2025;109:101410.

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