軽症パターン
3時-9時ステイニング:HCL装用者のドライアイやスティープなフィッティングのレンズ装用でみられる。角膜3時・9時方向の上皮障害。
スマイルマークパターン:SCL装用者のドライアイに特有。下方弧状の染色パターンを呈する。
上方角膜弧状病変(SEAL):硬い素材のSCL装用時に角膜上方周辺部に弧状の上皮障害が出現する。
リング状角膜上皮ステイニング:シリコーンハイドロゲルレンズとケア剤との不適合の際にみられる。
コンタクトレンズ(CL)装用が原因または誘因となって発症する角膜障害を、CL角膜障害という。無症候性のものや軽症のものから、角膜潰瘍に至る重症例まで程度はさまざまである。近年、小学生・中学生へのCL装用が増加しており、眼科外来でのCL障害の若年化が問題となっている。
小児におけるCL処方の目的は多岐にわたる。
弱視治療目的:無水晶体眼(先天白内障術後)・高度屈折異常・高度不正乱視などに対して処方する。生後早期から適応となり、保護者がレンズの装脱を行う。
屈折矯正目的:近視・乱視の光学的矯正を目的とする。自己管理能力を考慮し、一般に中学生以降が目安とされる。
近視進行抑制目的:多焦点ソフトCLやオルソケラトロジーを用いて眼軸延長を抑制する。小学校中〜高学年(8〜10歳程度)から適応となる場合がある。
スポーツ・美容目的:運動時の利便性や審美的理由による処方。年齢・管理能力を十分に評価してから行う。
| レンズ種類 | 特徴 | 小児での主な使用場面 |
|---|---|---|
| 1日使い捨てSCL | 衛生面で最も安全、ケア不要 | 屈折矯正・近視抑制 |
| 2週間/1カ月交換SCL | ケア必要、コスト低い | 屈折矯正(管理可能な年齢) |
| シリコーンハイドロゲルSCL | 高酸素透過性 | 長時間装用・弱視治療 |
| HCL(ハードCL) | 不正乱視矯正に優れる | 円錐角膜・高度不正乱視 |
| オルソケラトロジー | 就寝時装用・近視進行抑制 | 近視進行抑制(小学生〜) |
| 多焦点SCL(MiSight等) | 周辺デフォーカス制御 | 近視進行抑制 |
眼科学会から明確な年齢基準は示されていないが、自己管理能力と保護者の協力が前提条件となる。
CL角膜障害では、異物感・違和感・眼脂・充血・眼痛・流涙・霧視・視力低下などを生じる。無症候性のものも存在する。特に充血・眼脂・疼痛の3徴がすべて揃う場合は、角膜感染症を発症している可能性があり要注意である。
CL装用による角膜障害には特徴的な染色パターンが認められる。
軽症パターン
3時-9時ステイニング:HCL装用者のドライアイやスティープなフィッティングのレンズ装用でみられる。角膜3時・9時方向の上皮障害。
スマイルマークパターン:SCL装用者のドライアイに特有。下方弧状の染色パターンを呈する。
上方角膜弧状病変(SEAL):硬い素材のSCL装用時に角膜上方周辺部に弧状の上皮障害が出現する。
リング状角膜上皮ステイニング:シリコーンハイドロゲルレンズとケア剤との不適合の際にみられる。
重症パターン
充血・眼脂・疼痛の3徴が揃う場合は角膜感染症の可能性があり、直ちにCL装用を中止して眼科を受診する。異物感・霧視・視力低下が続く場合も早めの受診が勧められる。症状がなくても定期的な眼科受診(3〜6カ月ごと)を継続することが重要である。
CL装用に伴う角膜障害の主な原因は以下のとおりである。
小児では以下の要因によって角膜障害のリスクが高まる。
再使用SCLは1日使い捨てに比べ、アカントアメーバ角膜炎(AK)のリスクが3.84倍(OR 3.84; 95% CI 1.75–8.43)高いことが報告されている。2)
1日使い捨てレンズでもリスクを高める要因として以下が挙げられる。2)
| リスク要因 | オッズ比(OR) |
|---|---|
| 定期検診の欠如 | 10.12 |
| 1日使い捨てレンズの再使用 | 5.41 |
| 夜間装用 | 3.93 |
| レンズ装用中のシャワー | 3.29 |
30〜62%のAK症例は、再使用レンズから1日使い捨てへの変更によって予防可能と推定されている(PAR%推定)。2)
小児へのCL処方前には以下の評価を行う。
CLのフィッティング評価では、以下を確認する。
感染性と非感染性の角膜障害を鑑別することが臨床上最も重要である。
無水晶体眼(先天白内障術後)ではシリコーンハイドロゲルSCLまたはHCLが選択される。高度不正乱視にはHCLが適している。生後早期から処方可能であり、保護者がレンズの装脱を行う。適切なCL装用により弱視の視力改善を図る。
1日使い捨てSCLを第一選択として推奨する。高度乱視にはトーリックSCLまたはHCLを選択する。装用時間の遵守指導と定期的なフォローアップが重要である。
多焦点ソフトCL(MiSight等)
周辺デフォーカス制御設計の多焦点CLは、12件のRCT・比較試験(11件がLevel I)において全て有意な近視進行抑制効果が確認されている。1)
MiSight 1 day(+2.00D加入デュアルフォーカス)の3年RCT(Chamberlain 2019)では以下の結果が得られた。1)
12件の臨床試験を通じて重篤な有害事象の報告はない。1) 最適装用期間・長期予後・中止後のリバウンドに関するデータは現時点で限定的である。1)
オルソケラトロジー(OrthoK)
就寝時に特殊なリジッドレンズを装用し、角膜中央部を一時的に平坦化する手法。日中は裸眼で過ごせるため活動的な小児に適している。2年間で眼軸伸展を32〜59%抑制することが報告されている。3)
日本の多施設研究(1,438名)では、微生物性角膜炎(MK)発生率は5.4/10,000 patient-yearsであった。3) 夜間装用であるため角膜感染リスクに特に注意が必要であり、定期的な角膜曲率・度数変化のモニタリングが必須である。
Level Iエビデンスで支持されている。MiSight 1 dayの3年RCTでは屈折進行を59%、眼軸延長を52%抑制した。1) 12件の臨床試験すべてで有意な抑制効果が確認されており、重篤な有害事象の報告もない。1) ただし最適装用期間や中止後のリバウンドに関するデータは限定的であり、継続的な眼科管理が必要である。
1日使い捨てCLが衛生面で最も安全である。再使用SCLに比べアカントアメーバ角膜炎リスクが約4分の1(OR 3.84)に低下する。2) ケアの手間がなく、小児の衛生管理リスクを最小化できるため第一選択として推奨される。
CL装用による角膜障害は4つの主要メカニズムによって生じる。
1. 機械的刺激
CLが角膜上皮と直接接触することで、上皮細胞の脱落・びらんが起こる。フィッティングが不適切(スティープすぎる・フラットすぎる)と機械的刺激が増大する。これが3時-9時ステイニングやSEALなど特有の染色パターンをもたらす。
2. 低酸素状態
CLが角膜上に乗ることで角膜への酸素供給が制限される。特に非シリコーン素材のSCL長時間装用や就寝時装用では低酸素が著明となる。低酸素状態は角膜浮腫・内皮細胞減少・角膜血管新生(パンヌス形成)を引き起こす。シリコーンハイドロゲルレンズは高酸素透過性(Dk/t値が高い)により低酸素リスクを低減する。
3. 感染
角膜上皮に生じた微小な欠損から病原体が侵入することで感染性角膜炎が発症する。
4. アレルギー反応
レンズ素材・ケア剤・沈着物に対するアレルギー反応によって上眼瞼結膜に巨大乳頭が形成される(巨大乳頭結膜炎:GPC)。上眼瞼の乳頭径が0.3mm以上のものを乳頭と定義する。
単焦点レンズでは、中心部で網膜上に焦点が合うが、周辺部では網膜後方にずれる(周辺遠視性デフォーカス)。これが眼軸延長のシグナルとなり、近視進行につながると考えられている。1)
多焦点CLは周辺部に加入度数を配置することで、周辺遠視性デフォーカスを軽減・解消する。1)
小児の角膜は弾力性が高く、CL装着時の順応が成人より早い傾向がある。一方で眼を擦る習慣がある場合、角膜上皮への繰り返し機械的刺激が円錐角膜進行のリスクをもたらす。CL装用中に眼を擦らないよう指導することが重要である。
近視進行抑制における単独療法の効果を超えるため、複数の治療法の組み合わせが研究されている。3)
多焦点CLの最適装用期間に関するデータは現時点で限定的である。1) 3年超の長期フォローアップデータ、および多焦点CL中止後の近視進行リバウンドに関する検証が今後の課題である。1)
EDOF(extended depth of focus)設計(MYLO等)を含む多様な光学設計の比較研究が進行中である。3) パワーグラジエント設計・高加入多焦点設計など、より効果的なデフォーカス制御を目指した次世代CLの開発が続いている。
12件の多焦点CL臨床試験において重篤な有害事象は報告されていない。1) オルソケラトロジーの長期微生物性角膜炎発生率に関しては、さらなる大規模前向き研究の蓄積が必要である。