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その他

拡大読書器・ルーペ・遮光眼鏡の選定

視覚的補助具は「見にくさを軽減するためのもの」の総称である。ロービジョン患者(視力0.02以上0.3未満程度)の日常生活・読書・学業・職業活動を補助するために処方される光学的・電子的補助具が含まれる。

公的給付が受けられるロービジョン補助具には、「補装具」と「日常生活用具」の2種類がある。給付対象は身体障害者手帳の取得者または指定難病・難病の該当者に限られる。

補装具(障害者総合支援法に基づく自立支援給付):

  • 眼鏡(矯正用・遮光用・コンタクトレンズ・弱視用)
  • 義眼
  • 視覚障害者安全つえ(白杖)

日常生活用具(障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業):

  • 視覚障害者用拡大読書器
  • 視覚障害者用ポータブルレコーダー
  • 視覚障害者用時計
  • 情報・通信支援用具、音声式補助具等

なお、義務教育での拡大教科書は「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の改正(2010年)により無償給付となっている。タブレット端末(iPad等)は自治体によって日常生活用具の給付対象に含める場合がある。

Q 補助具の給付を受けるには手帳が必要ですか?
A

補装具・日常生活用具の公的給付を受けるには、身体障害者手帳の取得者であるか、指定難病・難病の該当者であることが必要である。手帳の取得要件や申請手続きは市区町村の福祉窓口に相談されたい。

2. 補助具選定が必要な患者と症状

Section titled “2. 補助具選定が必要な患者と症状”
  • 「黒板の字が読めない」「本が読めない」(視力低下)
  • 「まぶしくて戸外に出づらい」(羞明
  • 「段差が見えにくい」「ものにぶつかる」(視野障害)

視覚障害部位別の特徴と適した補助具

Section titled “視覚障害部位別の特徴と適した補助具”

視覚障害の部位・性質によって必要な補助具が異なる。

中心視野障害

原因疾患黄斑変性・黄斑疾患・糖尿病黄斑浮腫など

主な困難:読書・細かい手作業が困難

適した補助具:拡大読書器・単眼鏡・弱視眼鏡

周辺視野障害

原因疾患緑内障網膜色素変性など

主な困難:歩行・空間認識・障害物の回避が困難

適した補助具:白杖・方向定位訓練・拡大読書器(読書支援)

羞明(まぶしさ)

原因疾患白皮症・先天無虹彩角膜疾患・眼内疾患など

主な困難:明るい場所での視機能低下・戸外活動制限

適した補助具:遮光眼鏡(短波長光カット)

コントラスト感度低下

原因疾患白内障視神経疾患など

主な困難:輪郭の認識が困難・文字の読み取りにくさ

適した補助具:タイポスコープ(リーディングスリット)

補助具を選定する前に、患者の読書能力と視機能を客観的に評価する。

MNREAD-J(エムエヌリードジェイ)

Section titled “MNREAD-J(エムエヌリードジェイ)”

MNREAD-Jはロービジョン患者の読書効率を定量評価するチャートである。以下の3つの指標を計測する。

  • 最大読書速度:最適文字サイズでの最大読書速度(文字/分)
  • 臨界文字サイズ:最大読書速度で読める最小の文字サイズ
  • 読書視力:読めるぎりぎりの文字サイズ

通常の発達基準として、小学校1年生の読書速度は200文字/分が目安とされる。この指標は補助具の効果判定や倍率の目安設定にも活用できる。

補助具の選定は以下の5ステップで進める。

ステップ内容
1「どのような状況で・どの程度見にくいか」を詳細に評価
2視力・視野・コントラスト感度など視機能の精密評価
3補助具の試用(1〜4週間の貸し出し)→ 適合性の確認
4視能訓練士による使用方法の指導(本人・保護者へ)
5家庭での使用状況の報告・フォローアップ
Q MNREAD-Jとはどのような検査ですか?
A

MNREAD-Jは、文字サイズを段階的に変えた日本語の読書用チャートを用いて、最大読書速度・臨界文字サイズ・読書視力の3指標を測定する検査である。補助具の倍率選定の根拠や、リハビリテーションの効果測定に活用される。

ロービジョン患者に処方される主な補助具の特徴を以下に示す。

補助具主な用途倍率・特徴注意点
卓上式拡大鏡(ルーペ)手元の読書・手作業3〜4倍から開始書見台の使用を推奨
単眼鏡中距離〜遠方観察6〜8倍小学生以上。ピント合わせの訓練要
弱視眼鏡近見・遠見・遠近高倍率(3倍以上可)高価・心理的抵抗あり
拡大読書器読書・書き作業・黒板観察可変倍率倍率調整・白黒反転の習得要
遮光眼鏡羞明の軽減短波長光カット型
タイポスコープ読書補助コントラスト感度低下例に有用
手持ちルーペ(卓上式拡大鏡)の外観
手持ちルーペ(卓上式拡大鏡)の外観
Tomomarusan. Magnifying glass. Wikimedia Commons. 2005. Source ID: File:Magnifying_glass.jpg. License: CC BY-SA 3.0.
プラスチック製フレームの手持ちルーペ(卓上式拡大鏡)を正面から撮影した写真であり、レンズ部分と持ち手の形状が明瞭に示されている。本文「4. 各補助具の特徴と選び方」の項で扱う卓上式拡大鏡(ルーペ)に対応する。
  • 当初3〜4倍の低倍率から開始し、使用状況に応じて倍率を調整する
  • 顔が下を向くため書見台の使用を指導する
  • 手暗がりにならないよう照明を配慮する。ライト付き拡大鏡が便利である
  • 1〜4週間程度貸し出して家庭での使用状況を確認した後、購入・市区町村への申請を行う
  • 中距離から遠方の観察に用いる中〜遠用補助具である
  • ピント合わせ操作が必要なため、小学生以上で使用する
  • 倍率は通常6〜8倍が多く用いられる
  • 対象物を正しくとらえること・焦点を合わせることを視能訓練士が時間をかけて指導する
  • 一定期間貸し出して家庭でも使えるよう訓練を重ねる

弱視眼鏡(眼鏡フレーム内蔵式拡大レンズ)

Section titled “弱視眼鏡(眼鏡フレーム内蔵式拡大レンズ)”
  • 近見用・遠見用・遠近両用の3種類がある
  • 両手がフリーになるのが最大の利点であり、書き作業や料理にも対応できる
  • 高価であり、取り扱える専門眼鏡店が限られる
  • 整容面・心理的抵抗が大きい患者もいるため、十分なカウンセリングを要する
  • 高倍率(3倍率以上)焦点調整式(単眼鏡型):補装具上限額18,600円
ロービジョン用CCTVビデオ拡大読書器(小型据え置きタイプ)
ロービジョン用CCTVビデオ拡大読書器(小型据え置きタイプ)
MuseScore. Small CCTV reader for low vision users. Wikimedia Commons. 2013. Source ID: File:Small_CCTV_reader_for_low_vision_users.jpg. License: CC BY 2.0.
楽譜を読むためにロービジョン用の小型CCTV拡大読書器を使用している場面を撮影した写真であり、モニター画面上に拡大された文字が表示されている様子が確認できる。本文「4. 各補助具の特徴と選び方」の項で扱う拡大読書器に対応する。
  • 内蔵カメラで対象物を高倍率にテレビモニターに映し出す電子補助具である
  • 近用・遠用・遠近両用、および据え置き型から携帯型まで多くの種類がある
  • カラーオートフォーカスタイプが操作しやすく推奨される
  • 遠近両用型は黒板など遠方にある対象物を机上のモニターで観察でき、学校での授業に有用である
  • 使用にあたっては倍率調整白黒反転機能作業距離の設定の習得が必要である
  • 日常生活用具の給付対象:据え置き型・携帯型・音声読書器の3種のうち1機種のみ支給。基準額198,000〜268,000円、耐用年数8年。対象:1〜6級・学齢児以上

Cochrane システマティックレビューでは、電子拡大読書器は光学的拡大鏡より読書速度が速い傾向にあり、据え置き型が頭部装着型を上回るとされる一方、エビデンスの質は中〜低であり、デバイス選択は患者特性とタスクに応じて個別化することが推奨される(Virgili, 2018)。携帯型電子拡大装置(p-EVES)と光学的拡大鏡を比較したランダム化クロスオーバー試験では、最大読書速度に差はなかったものの、p-EVES では小さい文字へのアクセスが可能となり、約70%の被験者が余暇読書に p-EVES を選好した(Taylor, 2017)。標準的視覚リハビリテーションに据え置き型ビデオ拡大読書器を追加した前向きランダム化試験でも、ビデオ拡大群は連続文章読書速度およびスポット読書課題で対照群を上回った(Jackson, 2017)。

遮光眼鏡は、まぶしさの主原因である短波長光の青色(500nm未満)を選択的にカットする。サングラスが反射光全体の光量を均等に減弱させるのに対し、遮光眼鏡では眼への入光量をあまり減らさず、明るさ感の変化を少なくしながら羞明を軽減できる。

適応白皮症・先天無虹彩角膜疾患・眼内疾患による羞明

処方の流れ

  1. 戸外用と室内用の各種カラーレンズを試用する
  2. 最も効果的かつ快適なものを患者と一緒に選択する
  3. 処方意見書を作成し補装具給付申請を行う

主なレンズの種類

  • RETINEX:YE・OR・RE・YB・OBの5色
  • CCP:LY・YL・OY・RO・YG・UG・BRの7色
  • ビーダハード5:YL・OR・BRの3色

遮光眼鏡処方意見書の必須記載事項

  1. 羞明がある
  2. 羞明の軽減に遮光眼鏡より優先される治療法がない
  3. 装用の効果が認められる
Q 遮光眼鏡とサングラスの違いは何ですか?
A

サングラスは可視光全体の光量を均等に減少させるのに対し、遮光眼鏡はまぶしさの主原因となる短波長光(500nm未満の青色)を選択的にカットする。そのため遮光眼鏡では眼への入光量があまり減らず、暗くなりすぎる感覚が少ない。適応は白皮症・先天無虹彩角膜疾患・眼内疾患による羞明であり、補装具として公的給付の対象となる。

補装具の給付は障害者総合支援法に基づき、市区町村が実施する。利用者負担は定率1割(ただし高額所得者世帯は支給対象外)。補装具の個数は原則1種目1個であるが、職業上または教育上必要な場合は2個まで支給可能(例:遠用と近用の矯正眼鏡)。

補装具の給付基準(主な眼科関連種目)

Section titled “補装具の給付基準(主な眼科関連種目)”

以下に補装具の種目別の上限価格と耐用年数を示す。

種目種類上限価格耐用年数
眼鏡(矯正用)6D未満16,900円4年
眼鏡(遮光用)前掛け式22,400円4年
眼鏡(コンタクトレンズ)1枚13,000円2年
眼鏡(弱視用)掛けめがね式38,200円4年
眼鏡(弱視用)焦点調整式(単眼鏡)18,600円
義眼レディメイド17,900円2年
義眼オーダーメイド86,900円
白杖普通用2,700〜4,200円2〜5年
白杖携帯用3,300〜5,200円2〜4年

拡大読書器は補装具ではなく「日常生活用具」として地域生活支援事業から支給される。給付基準は以下のとおり。

  • 給付対象:1〜6級の視覚障害を有する学齢児以上
  • 支給数:据え置き型・携帯型・音声読書器の3種のうち1機種のみ
  • 基準額:198,000〜268,000円
  • 耐用年数:8年
Q 遮光眼鏡の給付を受けるにはどのような書類が必要ですか?
A

遮光眼鏡の補装具給付申請には、眼科医が作成する処方意見書が必要である。意見書には①羞明がある、②羞明の軽減に遮光眼鏡より優先される治療法がない、③装用の効果が認められる、の3点を必ず記載する。その後、市区町村の窓口で補装具支給申請を行い、支給決定を受けてから購入する。

6. フォローアップと実践のポイント

Section titled “6. フォローアップと実践のポイント”

補助具の選定では、処方後すぐに購入を決定するのではなく、1〜4週間の試用期間を設けて家庭での適合性を確認してから購入・申請する流れが推奨される。この期間に使い方のコツを習得し、生活場面での有用性を検討する。

補助具の効果を最大限に引き出すには、視能訓練士による継続的な指導が不可欠である。

  • 卓上式拡大鏡:書見台の使い方・照明の配慮・正しい視距離の指導
  • 単眼鏡:対象を正確に捉えること・焦点合わせの訓練(時間をかけて習得)
  • 拡大読書器:倍率調整・白黒反転・作業距離設定の操作習得
  • 拡大読書器の遠近両用型は黒板など遠方の対象物を机上モニターで観察でき、学校の授業での利用に適している
  • 職業上必要な場合は補装具が2個まで支給可能(例:遠用眼鏡と近用眼鏡)
  • スマートフォンのアクセシビリティ機能(拡大鏡アプリ・音声読み上げ等)を補助的に活用する選択肢もある

補助具は一度処方したら終わりではない。視機能の変化・生活環境の変化・習熟度の向上に合わせて補助具の変更・追加を検討する。家庭での使用状況を次回受診時に報告してもらい、問題点を把握して指導を継続する。米国の多施設前向き観察研究(28施設・468名解析)では、外来ロービジョンリハビリテーション後に約47%の患者が視覚的能力の臨床的に意義のある改善を示し、効果サイズは大きく(Cohen d = 0.87)、読書領域の改善率は44%と最も高かった(Goldstein, 2015)。新規拡大装置の処方後トレーニングについては、テレリハビリテーション群と対面群を比較した多施設ランダム化比較試験でも読書能力の改善(1か月で平均0.61 logits、4か月までにさらに0.44 logits)に有意差はなく、遠隔指導の有用性も示されている(Bittner, 2024)。

Q 補助具は買う前に試すことができますか?
A

はい、試用が推奨される。特に拡大読書器や単眼鏡のような操作習得が必要な補助具は、1〜4週間程度の貸し出し試用を経てから購入・申請を決定するのが原則である。視能訓練士が使用方法を指導し、家庭での実際の使いやすさを確認した上で最終判断することが重要である。

補助具の給付基準・給付額は制度改正により変更される場合があるため、最新情報は市区町村の福祉窓口または厚生労働省の通知を参照されたい。

  1. Virgili G, Acosta R, Bentley SA, Giacomelli G, Allcock C, Evans JR. Reading aids for adults with low vision. Cochrane Database Syst Rev. 2018;4(4):CD003303. PMID: 29664159. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29664159/
  2. Taylor JJ, Bambrick R, Brand A, et al. Effectiveness of portable electronic and optical magnifiers for near vision activities in low vision: a randomised crossover trial. Ophthalmic Physiol Opt. 2017;37(4):370-384. PMID: 28497480. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28497480/
  3. Jackson ML, Schoessow KA, Selivanova A, Wallis J. Adding access to a video magnifier to standard vision rehabilitation: initial results on reading performance and well-being from a prospective, randomized study. Digit J Ophthalmol. 2017;23(1):1-10. PMID: 28924412. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28924412/
  4. Goldstein JE, Jackson ML, Fox SM, Deremeik JT, Massof RW; Low Vision Research Network Study Group. Clinically meaningful rehabilitation outcomes of low vision patients served by outpatient clinical centers. JAMA Ophthalmol. 2015;133(7):762-769. PMID: 25856370. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25856370/
  5. Bittner AK, Kaminski JE, Yoshinaga PD, et al. Outcomes of telerehabilitation versus in-office training with magnification devices for low vision: a randomized controlled trial. Transl Vis Sci Technol. 2024;13(1):6. PMID: 38214688. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38214688/

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