眼皮膚白子症(眼白子症)
ひとめでわかるポイント
Section titled “ひとめでわかるポイント”1. 眼皮膚白子症(眼白子症)とは
Section titled “1. 眼皮膚白子症(眼白子症)とは”眼皮膚白子症(oculocutaneous albinism; OCA)および眼白子症(ocular albinism; OA)は、先天的なメラニン産生の低下によって皮膚・頭髪・眼に色素欠乏をきたす遺伝性疾患群の総称である。
2大類型として、(1)皮膚・頭髪・眼の広範な色素低下を呈するOCA(常染色体劣性遺伝)と、(2)眼に症状が限局するOA(X連鎖劣性遺伝)がある。
OCAはさらに原因遺伝子の違いにより複数の型に分類されており、最も頻度が高いのはOCA2(OCA2遺伝子変異)、最も重症なのはOCA1(TYR遺伝子変異)である。OA1は男性患者に症状が現れ、保因者の母親は通常眼症状を欠くが、眼底の特徴的なモザイク所見が診断の手がかりとなる。
症候群性白皮症として、Chédiak-Higashi症候群(免疫不全を合併)およびHermansky-Pudlak症候群(出血傾向を合併)が知られており、全身合併症への注意が必要である。
| 型 | 原因遺伝子 | 遺伝形式 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| OCA1a | TYR(チロシナーゼ活性ゼロ) | AR | 最重症。皮膚・毛髪・眼が完全に色素を欠く |
| OCA1b | TYR(チロシナーゼ活性低下) | AR | 年齢とともに少量のメラニンが産生される |
| OCA2 | OCA2 | AR | 最も頻度が高い。アフリカ系に多い |
| OCA3 | TYRP1 | AR | アフリカ系に多い。赤みがかった皮膚色 |
| OCA4 | SLC45A2 | AR | 東アジア系に比較的多い |
| OA1 | GPR143 | XLR | 眼症状のみ。男性に発症。母親の眼底にモザイク所見 |
各型に共通する眼科的異常として、眼振・羞明・視力低下・黄斑低形成・虹彩透光性亢進が挙げられる。OCAでは眼底の脱色素所見が強く、虹彩の透光性も顕著に亢進する。OAでは網膜の脱色素所見は比較的軽い。
3. 主な症状と臨床所見
Section titled “3. 主な症状と臨床所見”白子様眼底が特徴的である。網膜色素上皮のメラニン欠乏により脈絡膜血管の透見性が亢進し、眼底全体が橙赤色に見える。OCAでは脱色素所見が強く、OAでは比較的軽度である。
黄斑低形成(foveal hypoplasia): 胎生期の中心窩分化にメラニンまたはRPEシグナルが必要であり、これが欠乏すると中心窩の分化・形成が完了しない。OCTでは中心窩陥凹(foveal pit)が欠如し、蛍光眼底造影では黄斑周囲無血管領域(FAZ)が消失または縮小する。
OCAでは虹彩にも色素欠乏があるため、側方から光を当てると瞳孔様に光が透見できる(虹彩透光性亢進)。OAでは虹彩の透光性の変化は軽度である。
OA1では一般にERGは正常とされる。強度近視を伴うタイプでは不全型停在性夜盲様のERG所見を呈することがある。
OA1保因者のモザイク眼底
Section titled “OA1保因者のモザイク眼底”OA1の保因者(母親)では周辺部網膜に斑状の脱色素・色素沈着が混在するモザイク眼底を認めることがある。これが母親の保因者診断の手がかりとなる重要な所見である。
4. 原因とリスク要因
Section titled “4. 原因とリスク要因”メラニン合成経路の異常
Section titled “メラニン合成経路の異常”メラニンの合成経路は、チロシン → DOPA → ドーパキノン → メラニン であり、チロシナーゼ(TYR)が律速酵素として機能する。
- OCA1: TYR(チロシナーゼ)の活性欠損または低下 → メラニン産生の完全または部分的消失
- OCA2: OCA2タンパク(メラノソームpHの調節)の機能異常 → メラニン合成低下
- OCA3: TYRP1(チロシナーゼ関連タンパク1)の異常
- OCA4: SLC45A2(メラノソーム膜輸送体)の異常
- OA1: GPR143(Gタンパク共役受容体143)の異常 → メラノソームの巨大化(macromelanosomes)
OCA(常染色体劣性)の場合、両親がともに保因者であれば、子への発症確率は25%(4人に1人)となる。OA1(X連鎖劣性)では保因者の母親から生まれた男児の50%が発症し、女児は原則として保因者にとどまる。
5. 診断と検査方法
Section titled “5. 診断と検査方法”臨床診断のポイント
Section titled “臨床診断のポイント”白子様眼底 + 眼振 + 羞明 + 虹彩透光性亢進の組み合わせで臨床的に疑われる。
OCT(光干渉断層計): 中心窩陥凹の欠如が黄斑低形成の確認に有用。黄斑低形成は本症に特徴的であり、診断根拠となる。
蛍光眼底造影: 黄斑周囲無血管領域の消失または縮小を確認できる。
VEP(視覚誘発電位): chiasmal misrouting(視交叉での神経線維の過剰交叉)の検出に有用である。通常、側頭網膜の神経線維は同側の外側膝状体に投射するが、白子症では過剰に交叉する。VEPでは刺激した眼とは反対側の後頭部に大きな反応が得られる非対称性が特徴的である。立体視障害の原因でもある。
ERG: OA1で正常であることが鑑別診断に有用。
遺伝子検査: OCA1〜4(TYR・OCA2・TYRP1・SLC45A2)やOA1(GPR143)の原因遺伝子変異を検索する。
保因者診断(OA1): 母親の眼底を検査し、モザイク状の脱色素・色素斑を確認する。
Waardenburg症候群: 虹彩異色(両眼の色が異なる)と全身性の色素異常・難聴を特徴とする常染色体優性遺伝疾患(PAX3・MITF遺伝子異常)。眼底には軽度の脱色素所見を認めるが、黄斑低形成はみられない点が白子症との鑑別点である。
6. 標準的な治療法
Section titled “6. 標準的な治療法”根治療法はない
Section titled “根治療法はない”現時点で眼皮膚白子症・眼白子症の根治療法は確立されていない。管理の目標は残存視機能の最大化と生活の質向上である。
近視・乱視の適切な矯正が最も重要な治療介入である。小児期には弱視合併を防ぐため、早期からの適切な眼鏡処方が必要である。
片眼性の視力差がある場合は弱視治療(健眼の遮閉訓練)を行う。
羞明対策として遮光眼鏡(特定の波長をカットするフィルターレンズ)やサングラスが有用である。室内外を問わず着用が勧められる。
眼振への対応
Section titled “眼振への対応”外科的介入(外眼筋手術)は原則として一般的ではない。頭位異常(代償頭位)がある場合には、プリズム眼鏡の使用や眼振緩和を目的とした外眼筋手術を検討することがある。
ロービジョンケア
Section titled “ロービジョンケア”拡大鏡・拡大読書器・タブレット端末などの視覚補助具を積極的に活用する。照明環境の最適化(間接照明の活用、まぶしさを軽減する工夫)も重要である。学童期には教育環境の整備(座席配置・拡大教材・フォントサイズ調整)が学習支援に直結する。
OCAでは皮膚のメラニン欠乏により紫外線防護能が著しく低下している。紫外線防止指数(SPF)の高い日焼け止めの使用、帽子・長袖の着用、日陰の活用などを日常的に実践する必要がある。皮膚癌リスクの増加に注意が必要である。
遺伝カウンセリング
Section titled “遺伝カウンセリング”発症形式(AR・XLR)に応じた家族への遺伝情報提供が重要である。
7. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “7. 病態生理学・詳細な発症機序”メラニン合成経路と各型の異常
Section titled “メラニン合成経路と各型の異常”メラニンはメラニン細胞(メラノサイト)内のメラノソームという小胞で産生される。チロシナーゼ(TYR)が律速酵素として機能し、チロシン → DOPA → ドーパキノン → ユーメラニン(黒褐色)またはフェオメラニン(黄赤色)へと変換される。
OCA1aではチロシナーゼが全く機能しないため、メラニンは産生されない(完全白子)。OCA1bではチロシナーゼ活性が低下するのみで、微量のメラニンが産生される(不全白子)。OCA2のOCA2タンパクはメラノソーム内pHの調節に関与し、その機能喪失によりチロシナーゼ活性が間接的に低下する。OCA4のSLC45A2はメラノソーム膜の輸送体であり、色素合成の補助因子供給に必要である。
網膜色素上皮への影響
Section titled “網膜色素上皮への影響”網膜色素上皮(RPE)のメラニン欠乏は光の散乱を増大させ、視覚の質を低下させる。正常ではRPEの黒色メラニンが光を吸収してバックグラウンドノイズを低減しているが、白子症ではこの機能が損なわれる。
黄斑低形成の機序
Section titled “黄斑低形成の機序”胎生期の中心窩分化には、RPEのメラニンやRPEが産生するシグナル分子が必要とされる。色素欠乏によりこのシグナルが不十分となり、中心窩の陥凹形成が完了しない(中心窩形成不全)。OCTでの中心窩陥凹欠如がその結果として現れる。
Chiasmal misrouting(視交叉での異常交叉)
Section titled “Chiasmal misrouting(視交叉での異常交叉)”正常では側頭網膜からの視神経線維の約40%が視交叉で交叉せず同側の外側膝状体に投射するが、白子症ではこの割合が低下し、過剰な交叉が起こる。その結果、両眼の対応する視野領域が同じ半球の外側膝状体に投射されず、立体視の基盤となる双眼相関が損なわれる。VEPの非対称性はこの神経解剖学的異常を反映している。
OA1のメラノソーム異常
Section titled “OA1のメラノソーム異常”GPR143(Gタンパク共役受容体)の機能喪失によりメラノソームの巨大化(macromelanosomes)が起こる。巨大メラノソームは電子顕微鏡や眼底検査で確認できることがあり、OA1診断の組織学的・画像的手がかりとなる。
8. 予後と経過
Section titled “8. 予後と経過”眼皮膚白子症・眼白子症は非進行性の疾患である。視力低下の重症度は型により異なり、OCA1aが最重症(矯正視力0.1以下が多い)、OCA2・OA1はやや良好な場合がある。
成長とともに眼振が目立たなくなる傾向がある。視力そのものは大きく改善することは少ないが、適切なロービジョンケアにより残存視機能を最大限活用することが可能である。
症候群性白皮症(Chédiak-Higashi症候群・Hermansky-Pudlak症候群)では、免疫不全・出血傾向などの全身合併症が予後を左右するため、小児科・内科との連携が重要である。
OCAは皮膚・頭髪・眼の広範な色素低下を伴うのに対し、OAは眼のみに症状が限局する。OAはX連鎖劣性遺伝であり、保因者の母親の周辺眼底にモザイク状の脱色素斑がみられることが診断の手がかりとなる。遺伝子検査でGPR143変異を確認することで確定診断できる。
遮光眼鏡の常用(羞明対策)、紫外線防護(日焼け止め・帽子の着用)、室内照明環境の最適化が重要である。ロービジョンケアとして拡大鏡・拡大読書器の活用も有用である。学童期には教育環境の調整(座席配置・拡大教材)が学習支援に必要となる。皮膚癌リスク低減のため、紫外線防護を日常的に実践することも大切である。
- Thomas MG, Kumar A, Mohammad S, et al. Structural grading of foveal hypoplasia using spectral-domain optical coherence tomography: a predictor of visual acuity? Ophthalmology. 2011;118(8):1653-1660. PMID: 21529956
- Seo JH, Yu YS, Kim JH, Choung HK, Heo JW, Kim SJ. Correlation of visual acuity with foveal hypoplasia grading by optical coherence tomography in albinism. Ophthalmology. 2007;114(8):1547-1551. PMID: 17337060
- Dorey SE, Neveu MM, Burton LC, Sloper JJ, Holder GE. The clinical features of albinism and their correlation with visual evoked potentials. Br J Ophthalmol. 2003;87(6):767-772. PMID: 12770978
- Fernández A, Hayashi M, Garrido G, et al. Genetics of non-syndromic and syndromic oculocutaneous albinism in human and mouse. Pigment Cell Melanoma Res. 2021;34(4):786-799. PMID: 33960688
- Ma EZ, Zhou AE, Hoegler KM, Khachemoune A. Oculocutaneous albinism: epidemiology, genetics, skin manifestation, and psychosocial issues. Arch Dermatol Res. 2023;315(2):107-116. PMID: 35217926