感染性
CMV前部ぶどう膜炎:前房水CMV-PCR陽性が必須。
単純ヘルペスウイルス(HSV)前部ぶどう膜炎:片側性で、前房水PCR陽性または分節状虹彩萎縮等が基準。
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)前部ぶどう膜炎:片側性で、前房水PCR陽性または皮膚帯状疱疹等が基準。
梅毒性前部ぶどう膜炎:トレポネーマ検査陽性が必須。

SUN II分類基準は、ぶどう膜炎命名法の標準化(Standardization of Uveitis Nomenclature: SUN)ワーキンググループが2021年にAmerican Journal of Ophthalmology誌に発表した分類体系である。最も一般的な25種類のぶどう膜炎に対し、再現性のある分類基準を提示した。
ぶどう膜炎は先進国における失明原因の第5位を占める。従来は炎症部位に基づく解剖学的分類(前部・中間部・後部・全ぶどう膜炎)が用いられてきた。しかし同一の解剖学的部位でも病因・臨床経過・予後は異なる。2021年以前には個々のぶどう膜炎を体系的に分類する検証済みのアプローチが存在しなかった。専門家間の合意形成は中程度にとどまり、眼科文献の統一性が欠如していた。
SUN II分類基準の目的は研究における患者集団の均一性確保にある。すべての研究参加者がその疾患と認められる確率を最大化するため、特異度を重視した設計となっている。
SUN II分類基準は研究用であり、特異度を優先する。臨床的に診断された患者が分類基準を満たさないことはありうる1)。分類基準は研究における患者集団の均一化を目的としたものであり、臨床診断を否定するものではない。
SUN II分類基準は25種類のぶどう膜炎を対象とする。解剖学的分類(前部・中間部・後部・全ぶどう膜炎)と病因分類(感染性・全身疾患関連・眼限局性)の二軸で整理される。
ぶどう膜炎の基本分類は以下の通りである。
前部ぶどう膜炎には感染性4疾患、全身疾患関連4疾患、眼限局性1疾患が含まれる。
感染性
CMV前部ぶどう膜炎:前房水CMV-PCR陽性が必須。
単純ヘルペスウイルス(HSV)前部ぶどう膜炎:片側性で、前房水PCR陽性または分節状虹彩萎縮等が基準。
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)前部ぶどう膜炎:片側性で、前房水PCR陽性または皮膚帯状疱疹等が基準。
梅毒性前部ぶどう膜炎:トレポネーマ検査陽性が必須。
全身疾患関連
若年性特発性関節炎関連前部ぶどう膜炎:慢性経過と若年性特発性関節炎(少関節炎等)の合併が基準。
HLA-B27関連前部ぶどう膜炎:急性・再発性で、脊椎関節炎またはHLA-B27陽性。
ぶどう膜腎炎症候群(TINU):前部ぶどう膜炎と尿細管間質性腎炎の証拠が必要。
サルコイドーシス関連:非乾酪性肉芽腫または両側肺門リンパ節腫脹が基準1)。
フックスぶどう膜炎症候群(眼限局性)は片側性である。虹彩異色症またはびまん性虹彩萎縮と星状角膜後面沈着物が特徴的所見となる。
中間部ぶどう膜炎は硝子体に炎症の主座がある。2005年のSUNワーキンググループにより、周辺部白色滲出物(snowbank)や雪玉状硝子体混濁(snowball)を有する特発性の病態のみを毛様体扁平部炎(pars planitis)と定義した。欧米ではぶどう膜炎全体の約15%を占めるが、日本では1〜2%と頻度が低い。
| 疾患名 | 病因 | 主要基準 |
|---|---|---|
| 梅毒性中間部ぶどう膜炎 | 感染性 | 梅毒検査陽性 |
| MS関連中間部ぶどう膜炎 | 全身疾患関連 | McDonald基準によるMS |
| サルコイドーシス関連 | 全身疾患関連 | 非乾酪性肉芽腫等 |
眼限局性には毛様体扁平部炎(スノーボール/スノーバンクあり)と非毛様体扁平部炎型(なし)がある。いずれも多発性硬化症・梅毒・サルコイドーシス・ライム病が除外基準となる。
後部ぶどう膜炎には感染性5疾患、全身疾患関連1疾患、眼限局性6疾患が含まれる。
感染性後部ぶどう膜炎の主な分類基準は以下の通りである。
眼限局性には急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)、バードショット網脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、多巣性脈絡膜炎、点状内層脈絡膜症(PIC)、蛇行状脈絡膜炎が含まれる。
全ぶどう膜炎には感染性(梅毒・結核)、全身疾患関連(ベーチェット病・サルコイドーシス)、眼限局性(交感性眼炎・原田病)が含まれる。原田病は初期と晩期が別基準として設定されている。
SUN II分類は25種類の代表的なぶどう膜炎を対象としており、すべてのぶどう膜炎を網羅するものではない。分類に含まれない疾患は従来の臨床診断基準で判断する。
SUN II分類基準は以下の4段階で開発された。
検証セットにおける各クラスの精度を以下に示す。
| ぶどう膜炎クラス | 精度(%) | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 前部(9疾患) | 96.7 | 92.4–98.6 |
| 中間部(5疾患) | 99.3 | 96.1–99.9 |
| 後部(9疾患) | 98.0 | 94.3–99.3 |
全ぶどう膜炎(7疾患)は94.0%(89.0–96.8)であった。感染性後部/全ぶどう膜炎(5疾患)は93.3%(89.1–96.3)であった。いずれのクラスでも93%以上の精度が得られている。
SUN II分類では各疾患に除外基準が設定されている。共通して高頻度に用いられる除外項目は以下の通りである。
SUN II分類基準は研究目的で開発されたものであり、臨床での直接適用にはいくつかの制限がある。
日本の眼科診療ではぶどう膜炎を部位・病因・性質の3軸で分類してきた。日本で頻度の高いサルコイドーシス、ベーチェット病、原田病はいずれもSUN II分類基準に含まれている。
前房内炎症の評価にはSUNグレーディングが世界標準として用いられる。細隙灯顕微鏡による1×1mmスリット光の視野内で観察される炎症細胞数を6段階(0〜4+)で評価する方法である。
SUN II分類基準は国際的な研究用分類であり、日本でも臨床研究における患者集団の定義に用いられる。ただし日常診療では従来の臨床所見と各種検査に基づく総合的な診断が優先される。
SUN II分類基準は各疾患の病態生理学的特徴を反映した設計である。主要な病因別の分類根拠を以下に示す。
感染性ぶどう膜炎の分類では病原体の同定が中核となる。前房水や硝子体液のPCR検査が重要な役割を果たす。
全身疾患の確定診断が前提条件となる。
全身疾患と感染症の除外が前提となる。フックスぶどう膜炎症候群では虹彩異色症や星状角膜後面沈着物が特徴的所見である。バードショット網脈絡膜炎ではHLA-A29との強い関連が知られている。
前房水PCR検査は主にウイルス性前部ぶどう膜炎の鑑別に重要である。すべてのぶどう膜炎で必須ではないが、ヘルペス性やCMV感染が疑われる場合に有用となる。臨床所見と合わせて適応を判断する。
SUN II分類基準は発表以来、約50件以上の臨床研究で実装されている1)。特にサルコイドーシス関連ぶどう膜炎や結核性ぶどう膜炎の領域で広く引用されている。
SUN II分類基準は研究目的で開発されたが、将来的な臨床診断基準への拡張が検討されている。現在の分類基準は特異度を優先するため、感度が不十分な場面がある。
結核性ぶどう膜炎の領域では、SUN基準はCOTSガイドラインより制限的であると指摘されている2)。臨床現場ではCOTSガイドラインの方が広く適用可能とされ、両者の位置づけの整理が今後の課題である。
小児ぶどう膜炎166例の後方視的研究では、前部ぶどう膜炎が75.3%と最多であった3)。若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎では前部が97.8%を占め、白内障(9.3%)、眼圧上昇(11%)、虹彩後癒着(19.5%)が合併症として報告されている。SUN分類に基づく小児データの蓄積が進んでいる。