画像検査
細隙灯顕微鏡検査:蜂巣状の上皮下混濁を確認する。初期には孤立した斑点状混濁として認められる。
前眼部OCT:Bowman膜に高輝度の鋸歯状パターン(sawtooth pattern)を認める。TBCDに特徴的な所見であり、RBCDとの鑑別に有用である。
共焦点顕微鏡:Bowman層および上皮内の不規則な反射性沈着物を描出する。

Thiel-Behnke角膜ジストロフィ(Thiel-Behnke corneal dystrophy: TBCD)は、蜂巣状(ハニカム状)角膜ジストロフィとも呼ばれる上皮-実質TGFBI関連角膜ジストロフィの一つである。常染色体優性遺伝であり、第5染色体5q31に位置するTGFBI遺伝子のArg555Gln(R555Q)変異が代表的な原因変異である。
TBCDは進行性で両眼性に発症する。初期には角膜中央部のBowman層を侵し、加齢とともに周辺部角膜や深部実質へと進行する。極めてまれな疾患であり、有病率は不明で、現在の文献は症例シリーズや症例報告に限られている。
TGFBI遺伝子の変異は、アミノ酸の変異部位が1つ異なるだけで異なる臨床像を呈する。2015年のIC3D改訂版では上皮-実質TGFBI関連ジストロフィとして分類されている。
| ジストロフィ | 変異 |
|---|---|
| TBCD | Arg555Gln |
| RBCD | Arg124Leu |
| 顆粒状1型 | Arg555Trp |
| 格子状1型 | Arg124Cys |
TBCDとRBCDはいずれもTGFBI遺伝子変異によるBowman層ジストロフィであり、かつては混同されていた。現在は別疾患として区別されている。TBCDの代表的変異はArg555Gln、RBCDはArg124Leuである。臨床的にはRBCDの方がより侵襲的な経過をたどり、不規則で境界鮮明な混濁を呈する。TBCDでは蜂巣状混濁と鋸歯状パターンが特徴的である。電子顕微鏡ではTBCDにcurly collagen fiber、RBCDにrod-shaped bodyが認められる。確定診断には遺伝子検査が有用である。
TGFBI遺伝子は細胞の移動・接着・分化・成長に関与するTGFβ誘導タンパク質(ケラトエピテリン)をコードする。Arg555Gln変異により産生されたケラトエピテリンが凝集タンパク質となり、角膜組織内に異常沈着すると考えられている。
TBCDの最も一般的な変異はArg555Glnであるが、Met502Val/Arg555GlnやGly623_His626delなどの他の変異も報告されている。
常染色体優性遺伝である。変異を有する親から50%の確率で子に遺伝する。
画像検査
細隙灯顕微鏡検査:蜂巣状の上皮下混濁を確認する。初期には孤立した斑点状混濁として認められる。
前眼部OCT:Bowman膜に高輝度の鋸歯状パターン(sawtooth pattern)を認める。TBCDに特徴的な所見であり、RBCDとの鑑別に有用である。
共焦点顕微鏡:Bowman層および上皮内の不規則な反射性沈着物を描出する。
病理・遺伝子検査
電子顕微鏡:curly collagen fiber(縮れ状コラーゲン線維)はTBCDに特異的(pathognomonic)な所見である。RBCDではrod-shaped bodyが認められる点で鑑別される。
遺伝子検査:TGFBI遺伝子のArg555Gln変異を確認する。確定診断に最も有用である。
光学顕微鏡:Bowman層が線維細胞性パンヌスに置換され、マッソン・トリクローム染色で陽性を示す。
RBCDとの鑑別が最も重要であり、臨床像が類似するため遺伝子検査が必須となる。格子状角膜ジストロフィ1型はアミロイド沈着による線状混濁を呈し、顆粒状角膜ジストロフィ1型は硝子様の顆粒状混濁を呈する。いずれもTGFBI遺伝子変異であるが、変異部位が異なる。
curly collagen fiber(縮れ状コラーゲン線維)は、TBCDにおいて電子顕微鏡で観察される特異的な所見である。正常なコラーゲン線維とは異なる形態を呈し、TBCD組織内に蓄積する。RBCDではrod-shaped body(棒状体)が特異的所見であり、この電顕所見の違いが両疾患の鑑別に役立つ。ただし電子顕微鏡検査は臨床的に容易でないため、実際の確定診断にはTGFBI遺伝子検査が推奨される。
TBCDに対する最適な治療法のコンセンサスは得られていない。
再発性角膜上皮びらんに対しては、頻回の人工涙液点眼、高張食塩水点眼、および治療用コンタクトレンズによる保護を行う。
初期の治療としてPTKが第一選択である。角膜混濁を除去し視力を改善させる。ただしPTK後には再発が生じる。1回のPTKでおよそ50 μmの角膜実質を切除するため、施行回数には制限がある。
PTK後の再発を繰り返す例では、混濁の深さに応じて表層角膜移植術または深層角膜移植術の適応となる。角膜移植後もホスト角膜上皮に被覆されたグラフト実質浅層で再発する可能性がある。再発を繰り返し実質深層に沈着をきたした場合は、全層角膜移植術が必要となる。
近年、ドナーのBowman層を移植するBowman層オンレイ移植が有望な外科的介入として報告されている。従来の層状角膜移植より侵襲性が低く、レシピエントの角膜組織を多く保存しながら再発やグラフト合併症のリスクを低減する利点がある。
TGFBI遺伝子の産物であるケラトエピテリンは、遺伝子変異により凝集タンパク質となり角膜組織内に沈着する。変異ごとに異なる凝集体を形成するため、同じTGFBI遺伝子の変異であっても臨床像が異なる。TBCDではcurly collagen fiberとして沈着し、RBCDではrod-shaped bodyとして沈着する。
オートファジー(自食作用)の障害が、角膜線維芽細胞における変異TGFBIタンパク質の蓄積を招くという仮説が提唱されている。正常では不要なタンパク質はオートファジーにより分解されるが、この機構が障害されることで異常タンパク質が蓄積し角膜混濁が進行すると考えられている。
上皮細胞層の厚さは不均一となり、上皮基底細胞層の一部欠損を認める。上皮と実質の間に線維性組織が鋸歯状に形成される。Bowman膜は線維細胞性パンヌスによって置換され、マッソン・トリクローム染色で陽性を呈する。
PTK後の再発は避けられないが、その時期は変異のホモ接合性・ヘテロ接合性により異なる。ヘテロ接合体では再発までの経過が比較的緩徐であり、再治療が必要な例は少ない。一方、ホモ接合体では術後1〜2年で再発し、繰り返しPTKや角膜移植が必要となることが多い。再発はPTK後の上皮修復面、すなわち上皮と実質の接する面で生じる。
本記事は日本の眼科診療ガイドラインおよび標準的な眼疾患教科書に基づいて作成されています。