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ぶどう膜炎

ぶどう膜炎の治療

ぶどう膜炎治療の目的は、治療による副作用を最小限に抑えつつ、炎症を制御して視力低下を防ぐことである。治療戦略は炎症の原因・重症度・経過によって異なる。

基礎疾患が感染性の場合は、まず病原体に対する適切な治療を行う。非感染性または自己免疫性の場合は、抗炎症療法や免疫調節療法を用いた段階的アプローチ(stepladder approach)が必要となる。全身性の自己免疫疾患を伴う場合はリウマチ科などの他科と連携することが多い1)

53か国221名のぶどう膜炎専門医を対象とした国際調査では、全身免疫調節薬を使用する際に68.8%が他の専門医(93.4%がリウマチ科)と共同管理を行っていた1)

Q 感染性と非感染性で治療方針はどう異なるか?
A

感染性ぶどう膜炎では原因病原体への抗微生物薬が最優先となる。ステロイド単独投与は感染を悪化させることがある。非感染性ではステロイドによる消炎を基本とし、必要に応じて免疫調節薬を段階的に追加する。

ぶどう膜炎の自覚症状は炎症の部位と重症度により異なる。

  • 霧視(かすみ目)前房内のフレアや硝子体混濁による。最も多い訴えの一つである。
  • 眼痛:前部ぶどう膜炎で生じやすい。毛様体筋の痙攣が原因となる。
  • 羞明(まぶしさ):毛様体筋・瞳孔括約筋の痙攣に関連する。
  • 充血:毛様充血が典型的である。
  • 飛蚊症:硝子体中の炎症細胞による。中間部・後部ぶどう膜炎で多い。
  • 視力低下:黄斑浮腫や硝子体混濁により生じる。

炎症の部位と重症度に応じた所見を認める。

  • 前房炎症:前房内細胞・フレア。SUN分類で重症度を評価する。
  • 角膜後面沈着物:微塵状(非肉芽腫性)または豚脂様(肉芽腫性)。
  • 虹彩後癒着虹彩水晶体前面の癒着。散瞳不良の原因となる。
  • 硝子体混濁:中間部・後部ぶどう膜炎で認める。雪玉状・数珠状など形態は多様である。
  • 黄斑浮腫:ぶどう膜炎における視力低下の主要原因である。
  • 網膜血管炎:血管周囲の白鞘化や閉塞性変化を呈する。

ぶどう膜炎の原因は大きく感染性と非感染性に分類される。

  • 感染性:細菌、ウイルス(ヘルペス・CMVなど)、真菌、寄生虫が原因となる。
  • 非感染性:自己免疫疾患や全身性炎症性疾患に関連するものと、特発性のものがある。
  • 代表的な関連疾患ベーチェット病サルコイドーシスVogt-小柳-原田病、HLA-B27関連疾患、若年性特発性関節炎(JIA)など。

日本ではサルコイドーシスがぶどう膜炎の原因疾患の第1位である。

ぶどう膜炎の治療を開始する前に、感染性か非感染性かの鑑別が不可欠である。

  • 細隙灯顕微鏡検査:前房内細胞・フレアの評価。SUN Working Group分類が標準的な重症度評価法として広く使用されている1)
  • 眼底検査:硝子体混濁、網膜血管炎、黄斑浮腫の有無を確認する。
  • 蛍光眼底造影:網膜血管炎・黄斑浮腫・無灌流領域の評価に有用である。
  • 光干渉断層計(OCT):黄斑浮腫の定量的評価に必須である。

原因疾患の検索には血液検査、画像検査、他科への紹介が重要である。

免疫調節薬の開始前には全例で前処置スクリーニングが実施される1)。国際調査では血液化学検査(98.2%)、血液検査(93.7%)、クォンティフェロン検査(88.7%)が報告されている1)

散瞳薬は毛様体筋・瞳孔括約筋の痙攣を緩和し、疼痛・羞明を軽減する。虹彩後癒着の予防・解除にも用いられる。虹彩後癒着がみられる場合は散瞳薬の頻回点眼により癒着解除を試みる。

主な散瞳薬の持続時間を以下に示す。

薬剤持続時間
トロピカミド 0.5〜1%6時間
シクロペントラート 0.5〜1%24時間
ホマトロピン 2%最大2日間
アトロピン 1%最大2週間

日本ではトロピカミド(ミドリンM)が1日1〜3回の点眼で処方されることが多い。

コルチコステロイドはぶどう膜炎治療の主軸である。投与経路は点眼・局所注射・全身投与の3つに大別される。

前部ぶどう膜炎の第一選択である。炎症の程度に合わせて1〜8回/日で点眼し、消炎とともに漸減する。

  • 軽度の炎症:1日4回投与
  • 中等度〜重度の炎症:1〜2時間ごとに投与
  • 負荷投与:5分間は1分ごと投与後、30分〜1時間ごとに移行

日本ではベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン0.1%)が1日4〜6回で使用されることが多い。0.05%ジフルプレドナートの1日4回投与は、1%プレドニゾロン酢酸エステルの1日8回投与と同等の効果を示す。

炎症が落ち着いた後は、ステロイド緑内障を防ぐためNSAIDs点眼やフルオロメトロンへの切り替えが重要である。

重症の片眼性ぶどう膜炎、囊胞様黄斑浮腫(CME)の合併、全身療法が禁忌の場合などに検討される。投与経路は結膜下・テノン嚢下・硝子体内がある。

  • デキサメタゾン結膜下注射:前眼部の強い炎症に有効である。
  • トリアムシノロンアセトニド後部テノン嚢下注射:後眼部の炎症や嚢胞様黄斑浮腫に用いられる。硝子体内注射(IVTA)では50%以上に眼圧上昇がみられるが、手術を要するのは1〜2%とされる2)
  • 硝子体内インプラント:デキサメタゾン(オズデックス、持続6ヶ月)やフルオシノロンアセトニド(レティサート、持続30ヶ月)などの徐放性デバイスがある。

局所治療で効果不十分な場合、両眼性・全身性疾患を伴う場合に適応となる。

  • 経口プレドニゾン:初期投与量は通常1mg/kg/日。国際調査でも76.9%の専門医がこの用量を採用している1)
  • メチルプレドニゾロン静脈内投与:重症例では1g/日を3日間(パルス療法)。
  • 漸減期間:7.5mg/日超で3ヶ月以上継続する場合は免疫調節薬の追加を検討する。
  • 国際調査では、最大投与量を4週間未満に限定する専門医が93.7%、6ヶ月を超える長期投与は38.0%で行われ、その場合も長期最大用量は10mg/日以下が91.7%であった1)

ベーチェット病ではステロイド全身投与の漸減・中止後に激しい炎症発作を引き起こすことがある。黄斑部の滲出性変化が著しい場合に限り1週間程度の短期使用にとどめる。

Vogt-小柳-原田病ではステロイド大量投与(パルス療法)が一般的である。減量はゆっくり行い、再発がなくても6ヶ月以上かけて中止する。

ステロイドの副作用

眼の副作用白内障、眼圧上昇、緑内障。3ヶ月以上の長期使用で眼圧上昇リスクが高まる2)

全身の副作用:糖尿病、高血圧、消化性潰瘍、不眠、骨粗鬆症、満月様顔貌、離脱症候群。

長期使用時の対策:カルシウムとビタミンDの補給、定期的な眼圧測定が必要。

ステロイド減量の原則

急速漸減:60〜30mg/日では10mgずつ2日ごとに減量。

標準漸減:60〜30mg/日では10mgずつ毎週減量。15mg以下では2.5mgずつ慎重に減量。

再発時:いったん増量し、前回よりも時間をかけて減量する。

ステロイドの長期使用を回避するため、非感染性ぶどう膜炎の管理に免疫調節療法が不可欠である。

全身免疫調節薬の主な開始適応は以下の通りである1)

  • 経口プレドニゾロンで炎症制御不良(94.1%)
  • 特定のぶどう膜炎診断名(89.1%)
  • プレドニゾロン不耐容(84.2%)
  • 局所ステロイド注射・インプラントが禁忌(71.9%)
分類主な薬剤
代謝拮抗薬メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルアザチオプリン
カルシニューリン阻害薬シクロスポリン、タクロリムス
アルキル化薬シクロホスファミド、クロラムブシル

国際調査では、メトトレキサートが第一選択として最も多く(57.0%)使用されている1)。メトトレキサートは70%以上のぶどう膜炎患者で炎症制御に成功するが、肝機能障害・悪心・脱毛などの副作用により初年度の中止率は約30%である2)。葉酸補充の併用が推奨される2)

ミコフェノール酸モフェチルは副作用リスクが低く有用な代替薬である2)。FAST試験ではメトトレキサートとミコフェノール酸モフェチルの有効性が同等であることが示された。

シクロスポリンは有効な二次選択薬であるが、腎機能障害や高血圧などの副作用のため使用が制限される2)。日本ではベーチェット病に対し5mg/kg/日を目安に投与し、血中濃度(トラフ値50〜200ng/mL)と腎機能の定期的モニタリングが必要である。コルヒチンとの併用時にはミオパチーに注意する。

シクロホスファミドはメトトレキサートやミコフェノール酸モフェチルより強い免疫抑制力を持つ2)。クロラムブシルはステロイドおよびステロイド減量薬に抵抗する重症例に用いられる2)

国際調査では、97.7%の専門医がアダリムマブを生物学的製剤の第一選択としていた1)

アダリムマブはVISUAL I・II・III試験で非感染性の中間部・後部・全ぶどう膜炎における有効性が実証されている。

ベーチェット病では、コルヒチンやシクロスポリンで炎症発作を抑制できない場合、インフリキシマブ(レミケード)5mg/kgの2ヶ月ごと点滴静注が行われる。多くの症例で発作抑制が期待できるが、1次無効・2次無効の症例も存在する。

従来のステップラダーアプローチでは従来型薬剤を先に使用するが、60.2%の専門医が特定の診断名を理由に生物学的製剤を先行使用した経験があると報告している1)。効果判定は3〜6ヶ月間(81.9%)の試用後に行われる1)

Q ステロイドを長期間使い続けてもよいか?
A

プレドニゾン7.5mg/日超を3ヶ月以上継続する場合は、副作用軽減のためステロイド減量薬(免疫調節薬)の導入が推奨される。国際調査でも大多数の専門医がステロイドの長期高用量投与を避けている1)

ぶどう膜炎の合併症に対して外科的治療が必要となることがある。

  • 白内障手術併発白内障やステロイド白内障に対して施行する。炎症が落ち着いた時期に行うのが望ましい。遷延例ではステロイド内服を継続しながら手術を行う。
  • 緑内障手術続発緑内障・ステロイド緑内障に対し、降圧点眼薬(β遮断薬プロスタグランジン関連薬炭酸脱水酵素阻害薬)で眼圧コントロールが得られない場合に施行する。ぶどう膜炎に伴う続発緑内障では線維柱帯切開術が有効であることが多い。
  • 硝子体切除術:硝子体混濁、囊胞様黄斑浮腫(薬物治療抵抗性)、黄斑上膜の除去に適応される。
  • 網膜光凝固術:閉塞性血管炎による無灌流領域や網膜新生血管に対して行う。ベーチェット病では激しい眼炎症発作を誘発することがあるため、安易に行うべきでない。

黄斑浮腫はぶどう膜炎における視力低下の主要原因である。

  • ステロイド局所投与:POINT試験ではテノン嚢下トリアムシノロン・硝子体内トリアムシノロン・デキサメタゾンインプラントがいずれも有効で、硝子体内投与群がより高い改善率を示した。
  • 抗VEGF薬ベバシズマブラニビズマブの硝子体内注射が難治性嚢胞様黄斑浮腫に使用される。MERIT試験ではデキサメタゾンインプラントがラニビズマブより解剖学的改善に優れていた。
  • 脈絡膜上腔投与PEACHTREE試験でトリアムシノロンアセトニドの脈絡膜上腔注射の有効性が評価された。
Q ぶどう膜炎の疾患ごとに推奨される免疫調節薬は異なるか?
A

異なる。国際調査では、若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎にはメトトレキサート(93.2%)とアダリムマブ(97.3%)、バードショット網脈絡膜症にはミコフェノール酸モフェチル(39.8%)とアダリムマブ(93.2%)が選択される傾向にあるなど、疾患ごとに推奨薬剤が異なる1)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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非感染性ぶどう膜炎の病態は自己免疫・自己炎症機序が中心である。

ぶどう膜組織への免疫細胞の遊走と活性化が炎症の本態である。T細胞、マクロファージ、好中球などの浸潤により組織障害が進行する。TNF-αをはじめとするサイトカインが炎症の増幅と維持に中心的な役割を果たす。

正常では血液眼関門(blood-ocular barrier)が眼内への免疫細胞・蛋白質の流入を制限している。ぶどう膜炎ではこの関門が破綻し、血管透過性の亢進によりフレアや細胞浸潤が生じる。

  • ベーチェット病:好中球の機能異常とTNF-αなどのサイトカイン異常に基づく炎症反応が発作性・反復性に生じる。閉塞性血管炎が主要な病変である。
  • サルコイドーシス:全身に類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患で、肉芽腫性ぶどう膜炎を呈する。嫌気性菌のPropionibacterium acnesの関与が示唆されている。
  • Vogt-小柳-原田病:メラニン蛋白に対するT細胞性自己免疫疾患と考えられている。
  • HLA-B27関連前部ぶどう膜炎:若年男性に多く、急性の非肉芽腫性前部ぶどう膜炎を呈する。

各治療薬は以下の機序で炎症カスケードに介入する。

  • コルチコステロイド:広範な抗炎症・免疫抑制作用。
  • 代謝拮抗薬(メトトレキサートなど):リンパ球増殖を抑制。
  • カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンなど):T細胞の活性化を抑制。
  • 抗TNFα抗体(アダリムマブなど):TNF-αを中和し炎症シグナルを遮断。
  • フィンゴリモド:免疫細胞の網膜への遊走を阻害する。多発性硬化症の治療薬であるが、ぶどう膜炎の動物モデルで網膜炎症とマクロファージ・CD4+ T細胞浸潤を有意に低減する。

ぶどう膜炎治療に関する重要な臨床試験を以下に示す。

  • SITE研究免疫抑制療法の長期安全性を評価。代謝拮抗薬やカルシニューリン阻害薬による癌死亡リスクの上昇は認められなかった。
  • MUST試験:全身療法とフルオシノロンアセトニド硝子体内インプラントを比較。両群とも視力改善と炎症制御において同様の効果を示した。
  • FAST試験:ミコフェノール酸モフェチルとメトトレキサートの有効性が同等であることを示した。後部・全ぶどう膜炎ではメトトレキサートの成功率がやや高かった1)
  • VISUAL I・II・III試験:非感染性の中間部・後部・全ぶどう膜炎におけるアダリムマブの有効性と安全性を実証した。
  • SYCAMORE試験:若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎でメトトレキサートとアダリムマブの併用が治療失敗率を低下させた。
  • ADVISE試験:アダリムマブが従来の免疫抑制薬よりも高いステロイド減量成功率を示した。

53か国の国際調査(Branfordら、2025)では、従来のステップラダーアプローチに反して、60.2%の専門医が特定の診断名を理由に生物学的製剤を従来型薬剤に先行して使用した経験があると報告した1)。疾患ごとの最適な薬剤選択や個別化治療へと治療戦略が移行しつつある。

新世代の薬剤として、経口TYK2/JAK1デュアル阻害薬ブレポシチニブを評価する第III相CLARITY試験(非感染性中間部・後部・全ぶどう膜炎対象)が進行中である。また、硝子体内投与のIL-6経路阻害薬バミキバートを評価する第III相MEERKAT/SANDCAT試験(ぶどう膜炎性黄斑浮腫対象)も実施されている。IL-6の局所阻害は全身副作用を回避しつつ眼局所の炎症・黄斑浮腫を制御できる可能性がある。

Q 新しい生物学的製剤や分子標的薬の開発は進んでいるか?
A

JAK阻害薬(トファシチニブ・バリシチニブ)などの低分子標的薬が新たな治療選択肢として注目されている。また、抗IL-17A(セクキヌマブ)や抗IL-12/23(ウステキヌマブ)など、さまざまなサイトカイン経路を標的とする薬剤も検討されている。


  1. Branford JA, et al. Systemic immunomodulatory drug treatment of non-infectious uveitis: current real-world practice reported by members of an international study group. Br J Ophthalmol. 2025;109:482-489.
  2. Siddique SS, Suelves AM, Baheti U, Foster CS. Glaucoma and uveitis. Surv Ophthalmol. 2013;58:1-10.

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