前眼部所見
豚脂様KP(角膜後面沈着物):肉芽腫性炎症を示す特徴的所見。
ブサッカ結節:虹彩前面の肉芽腫性結節。
帯状角膜変性:慢性炎症の結果として出現。
貨幣状角膜混濁:角膜実質の混濁。
虹彩後癒着・前房細胞・フレア:炎症活動性の指標。

ブラウ症候群(Blau syndrome; BS)は、1985年にEdward Blauによって初めて記載された稀な自己炎症性疾患である1)。同年、Douglas Jabsによっても同様の疾患単位が報告された。
NOD2/CARD15遺伝子(第16染色体16q12.1–13)の機能獲得変異(gain-of-function mutation)が原因であり、常染色体優性(顕性)遺伝形式をとる1)。孤発例(新規変異)は「若年発症型サルコイドーシス(early-onset sarcoidosis; EOS)」とも呼ばれる。現在では、家族性のブラウ症候群と孤発性のEOSは同一疾患として統一的に扱われている1)。
肉芽腫性皮膚炎・多関節炎・両眼性ぶどう膜炎の三徴を特徴とし、10歳までに発症する。有病率は100万人あたり1人未満と推定される極めて稀な疾患であり、全世界で少なくとも200人以上の報告例が存在する1)。性差はなく、各人種で報告されている。
両者はNOD2遺伝子変異を共有する同一疾患の家族性・孤発性の2つの表現型である1)。家族歴があるものをブラウ症候群、孤発例をEOS(またはJabs症候群)と呼ぶが、現在は統一的に扱われている。
三徴の症状は時間差をおいて出現することが多く、同時に揃わない場合もある。
眼病変はほぼ常に両眼性である2)。詳細な多国間研究では、発症ぶどう膜炎の97%が両眼性で、汎ぶどう膜炎が51%、前部ぶどう膜炎が29%、混合型が20%を占めた2)。
前眼部所見
豚脂様KP(角膜後面沈着物):肉芽腫性炎症を示す特徴的所見。
ブサッカ結節:虹彩前面の肉芽腫性結節。
帯状角膜変性:慢性炎症の結果として出現。
貨幣状角膜混濁:角膜実質の混濁。
虹彩後癒着・前房細胞・フレア:炎症活動性の指標。
後眼部所見
多局性脈絡網膜炎:脈絡膜・網膜の多発性病変。
乳頭周囲結節:視神経乳頭周囲の肉芽腫性病変。
硝子体混濁:後部炎症の所見。
網膜血管鞘形成:血管周囲炎の反映。
視神経乳頭浮腫・蒼白:重症例で認められる。
繰り返す炎症により、白内障(55%)・眼圧上昇(36%)・帯状角膜変性(23%)・視神経萎縮(14%)・黄斑浮腫(14%)・網膜剥離(9%)が生じる3)。3年間の追跡研究では、平均28%の患者が20/50以下の視力となり、11%が20/200以下に低下した2)。
繰り返す炎症により、白内障が55%、眼圧上昇が36%で合併する3)。視神経萎縮や網膜剥離に至る例もあり、眼病変はQOLに対する最大の脅威となる。早期の生物学的製剤導入が視力保護に重要とされる。
NOD2タンパク質は自然免疫系の細胞内パターン認識受容体であり、単球・マクロファージ・腸管パネート細胞などの抗原提示細胞に主に発現する1)。通常、細菌由来のムラミルジペプチド(MDP)に応答してNF-κBを活性化し、炎症性遺伝子の転写を誘導する。
ブラウ症候群では、NOD2のNACHTドメインの機能獲得変異により、細菌などのトリガーがない状態でもNF-κBが過剰活性化し、全身性の肉芽腫性炎症が引き起こされる2)。最も多い変異はコドン334のミスセンス変異(R334W、R334Q)であり、確認された変異の半数以上を占める2)。
Zengら(2023)は、NOD2変異に関連する血管炎を過去40年間でまとめ、18例が報告されていることを明らかにした1)。その大多数は中〜大血管炎(大動脈炎・高安動脈炎様)であった。
5歳以下の小児が、ぶどう膜炎・関節炎・皮膚炎の三徴で受診した場合に本疾患を疑う。ただし三徴が同時に揃わず時間差をおいて出現することが多いため、診断は困難なことがある。若年性特発性関節炎と誤診されやすく、10〜20%の若年性特発性関節炎患者にしかぶどう膜炎は合併しないこと、また若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎はほぼすべてが前部ぶどう膜炎であることが鑑別点となる1)。
| 検査 | 目的 | 所見 |
|---|---|---|
| 皮膚または滑膜生検 | 確定的診断補助 | 非乾酪性肉芽腫 |
| NOD2遺伝子検査(NGS) | 確定診断 | 機能獲得変異の同定 |
| 眼科的検査(OCT・細隙灯) | 眼病変評価 | KP・虹彩結節・脈絡膜病変 |
非乾酪性肉芽腫の証明(皮膚生検が侵襲性が低く推奨)とNOD2変異の遺伝子検査により確定診断される。新規変異が見つかった場合、NF-κB活性の亢進を確認することが推奨される2)。
鑑別に必要な検査として、CBC・ESR・CRP・血清ACE・ANA・ANCA・リウマチ因子・HLAタイピング・ツベルクリン反応などが行われる。
若年性特発性関節炎・サルコイドーシス(若年型・成人型)・関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・血管炎・結核・ライム病・梅毒・ベーチェット病。
若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎の頻度は10〜20%であり、そのほとんどが前部ぶどう膜炎のみである1)。ブラウ症候群では両眼性の汎ぶどう膜炎(後部・中間部病変を含む)が51%と多く、皮疹(鱗屑性紅斑丘疹)や屈指症も鑑別の重要な手がかりとなる。NOD2遺伝子検査が確定に有用である。
ブラウ症候群の治療に関する公式なガイドラインは存在しない。多職種による包括的管理が必要であり、眼科・リウマチ科・皮膚科・小児科が連携する。
急性増悪期
疾患修飾・維持療法
抗TNF療法
代替生物学的製剤
Zhangら(2021)は、ステロイド・メトトレキサート・生物学的製剤に抵抗した3例の小児ブラウ症候群患者に対し、トファシチニブ(1.7〜2.5 mg/日)を投与し、全例で多関節炎の臨床的寛解と炎症マーカー(ESR・CRP・サイトカイン)の改善を得たと報告した4)。副作用は観察されなかった。
ぶどう膜炎の局所治療としてステロイド点眼・散瞳薬が用いられる。白内障・緑内障などの合併症に対しては手術が必要となる場合がある。
NOD2タンパク質は1040アミノ酸からなる多ドメインタンパクで、CARD(カスパーゼ動員ドメイン)・NACHT(ヌクレオチド結合ドメイン)・LRR(ロイシンリッチリピート)の3ドメインから構成される1)。
通常のNOD2はムラミルジペプチド(MDP)と結合すると、RIPキナーゼ(RICK)やIKK複合体を介してNF-κBを活性化し、IL-1β・IL-6・TNF-αなどの炎症性サイトカインを産生する。ブラウ症候群では、NACHTドメインの機能獲得変異によりこの経路が恒常的に活性化される1,2)。
クローン病関連変異(LRR領域の機能喪失変異)とは対照的に、ブラウ症候群の変異はNACHTドメインに集中する機能獲得変異である1)。この違いが両疾患の炎症パターンの差異を生む。
さらに最新の研究では、機能不全NOD2による過活性化Th17細胞がぶどう膜炎の発症に関与することが示唆されている2)。JAK-STAT経路もIFN-γ・IL-6の産生を介して病態形成に寄与し、これがJAK阻害薬の治療標的となっている4)。
血管炎(大動脈炎・高安動脈炎様)については、過去40年間で18例の報告があり、その大多数が中〜大血管の動脈炎であった1)。血管炎は無症候性に進行することが多く、臨床的に見逃されやすい。
JAK-STAT経路の恒常的活性化がブラウ症候群/サルコイドーシスの病態に関与することが示されており、JAK阻害薬(トファシチニブ・バリシチニブ)が注目されている4)。
Brichovaら(2024)の3家族7例の研究では、バリシチニブ導入により12歳時から寛解が維持された重症例を報告した3)。同研究では、ブラウ症候群の表現型が非常に多様であること、屈指症(カムプトダクティリー)のみを呈する軽症例から神経サルコイドーシスを伴う重症例まで幅広いスペクトラムが存在することが示された。
次世代シーケンシング(NGS)による自己炎症性疾患遺伝子パネル検査の普及により、未診断例や軽症例の診断が進んでいる3)。意義不明の変異(VUS)の解釈が今後の課題であり、機能解析との組み合わせが重要とされる。
ブラウ症候群に合併する神経サルコイドーシスは過去に稀な報告しかなかったが、近年の症例報告でその多様な表現型(髄膜脳炎・白質病変・水頭症)が明らかになっている3)。