FAF所見
眼底自発蛍光(FAF):全症例で黄色点に一致する過蛍光として描出される。BYDMの最も特徴的かつ安定した所見であり、診断に最も有用である。1) 2) 3)

良性黄色点状黄斑症(Benign Yellow Dot Maculopathy; BYDM)は、2017年にDev Bormanらによって初めて報告された新しい黄斑の表現型である1) 2) 3)。文献上の報告症例数は50例未満と非常に稀な疾患であり1)、Santos et al.(2024年)の報告時点で累積46例が確認されている2)。
本疾患の主な特徴は以下の通りである。
黄斑変性症やその他の黄斑疾患との類似性から誤診されやすく1)、マルチモーダルイメージングを駆使した正確な評価が診断の鍵となる。
孤発性の場合と常染色体優性遺伝を示す場合の双方が報告されている。原著36例中13例に家族歴が認められた3)。ただし、全エキソーム解析では既知の黄斑ジストロフィ遺伝子に病原性変異は同定されておらず、原因遺伝子は現時点では未同定である1)。
大多数の患者が無症状であり、ルーチンの眼科検査で偶発的に発見されることが多い2) 3)。
黄斑部の中心窩周囲に多発する小さな黄白色点が本疾患の特徴的所見である。これらはRPE(網膜色素上皮)レベルの網膜下病変として位置づけられる1) 2) 3)。
報告されている症例では視力低下は認められない。Santos et al.コホートの平均視力は0.04 logMAR(ほぼ正常)であり2)、平均5.8年の経過観察でも全例が安定していた2)。現時点では進行性の視力障害を来す疾患ではないと考えられている。
病因は不明である1) 3)。遺伝的背景が示唆されるものの、原因遺伝子は同定されていない。
BYDMは除外診断であり、包括的な病歴聴取・眼科検査・マルチモーダルイメージングが必要となる1)。
FAF所見
眼底自発蛍光(FAF):全症例で黄色点に一致する過蛍光として描出される。BYDMの最も特徴的かつ安定した所見であり、診断に最も有用である。1) 2) 3)
OCT所見
光干渉断層計(OCT):概ね正常所見が多いが、一部の症例でEZ(楕円体帯)/RPE不整が報告されている。1) 2) 3)
片眼性症例ではRPE-EZ不整がより顕著で、両眼性では正常が多い。1)
中心窩下平均厚はMishra et al.で右眼285μm、左眼273μmと正常範囲内。3)
OCTA所見
OCT血管造影(OCTA):両眼性4例で施行し全例正常。1)
Santos et al.でもOCTAは正常。2)
Balas et al.の片眼性症例では脈絡膜毛細血管板レベルで微細なchoroidal vessel rarefactionが報告された。1)
その他の検査所見:
両眼性と片眼性では臨床的特徴に差がある。
| 特徴 | 両眼性 | 片眼性 |
|---|---|---|
| 性別 | 女性優位 | 男性が多い |
| 黄色点の分布 | 中心窩周囲 | 側頭側にも拡大 |
| OCT所見 | 通常正常 | RPE-EZ不整あり |
BYDMは除外診断であるため、以下の疾患との鑑別が必須となる。
| 疾患名 | 鑑別ポイント |
|---|---|
| 家族性ドルーゼン | 蜂巣状分布、Bruch膜上沈着物 |
| 結晶性網膜症 | 全層に高/低反射焦点 |
| Gunn dots | 内境界膜レベル、乳頭周囲 |
さらに以下も鑑別対象として挙げられる2):Stargardt病、Best病、加齢黄斑変性(AMD)、常染色体優性ドルーゼン、薬剤性網膜症、Bietti結晶状ジストロフィ、White dot fovea(内網膜層に過反射顆粒)、NCMD(常染色体優性・完全浸透率の両眼性黄斑変性)3)。
除外診断であるため、眼底検査・FAF・OCT・OCTAなどのマルチモーダルイメージングが必要である。なかでもFAFでの過蛍光所見がBYDMに最も特徴的であり、全症例で認められる1) 2) 3)。家族歴の聴取と全エキソーム解析も鑑別の補助として有用である。
BYDMは非進行性の良性疾患であり、治療は不要である。定期的な経過観察のみが推奨される2)。
Santos et al.(2024年)は5例のコホートを対象に平均5.8年間の経過観察を行い、全例で病変が安定していることを報告した2)。視力・形態的所見ともに変化は認められなかった。
Balas et al.(2024年)の症例においても、6か月後の再診時に病変の進行は認められなかった1)。
治療は不要である。非進行性・良性の疾患であり、現時点では経過観察のみが推奨される2)。Santos et al.は平均5.8年の経過観察で全例が安定していたことを報告している2)。ただし、類似疾患との確実な鑑別のために定期的な眼科受診は継続すべきである。
BYDMの病態生理は現時点では不明である1) 3)。
黄色点はRPEレベルの網膜下病変として位置づけられる1) 2) 3)。FAFでの過蛍光はRPEレベルのリポフスチン蓄積または代謝異常を示唆するが、確証はない。
両眼性の特徴
性別:女性優位
黄色点の分布:中心窩周囲に均等分布
OCT所見:通常正常。RPE-EZ不整は少ない1)
OCTA所見:脈絡膜毛細血管に異常なし1)
片眼性の特徴
性別:男性に多い(これまで両例とも男性)1)
黄色点の分布:黄斑側頭側にも拡大する傾向1)
OCT所見:RPE-EZ不整がより顕著1)
OCTA所見:脈絡膜毛細血管板の微細な変化の可能性1)
片眼性と両眼性では病因・発現様式に差がある可能性が指摘されている1)。
全エキソーム解析では既知の黄斑ジストロフィ遺伝子変異は同定されなかった1)。ハプロタイプ共有解析によりNCMD遺伝子座との連鎖も否定されている1)。類似表現型を示す異なる疾患群が含まれている可能性(遺伝的異質性)も示唆されている3)。
BYDMは文献上の症例数がきわめて少なく1)、疾患の全容解明には今後の継続的な症例集積が不可欠である。
Balas et al.(2024年)は、より大規模な遺伝学的検査を実施することが原因遺伝子変異の同定に役立つと指摘した1)。イメージングデータと遺伝データを集積したリポジトリの構築が疾患理解を深めるための重要なステップとして提案されている1)。
なお、Santos et al.(2024年)は文献上3番目に大きなコホートを報告しており2)、症例の蓄積とともに疾患概念の整理が進んでいる。