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小児眼科・斜視

パターン斜視

パターン斜視(pattern strabismus)は、上方視と下方視の間で水平斜視の偏位量に有意な差が生じる状態である。A-V型斜視(A-V pattern strabismus)とも呼ばれ、「アルファベットパターン」という別名でも知られる。

以下の5つの型に分類される。

  • V型:上方視と下方視の偏位量の差が15プリズムディオプトリー(Δ)以上。最も頻度が高い
  • A型:上方視と下方視の偏位量の差が10Δ以上
  • Y型:第1眼位および下方視と比較して、上方視でのみ外斜位・外斜視が増大する型
  • X型:第1眼位で外斜位・外斜視を認め、上方視および下方視の両方で偏位量が増大する型
  • λ(ラムダ)型:上方視および第1眼位では正位であるが、下方視で外斜位・外斜視を認める型

A型またはV型パターンは全水平斜視症例の15〜25%に認められる。全体としてV型が最も多い。

Q V型とA型の違いは何ですか?
A

V型は上方視と下方視の偏位量の差が15Δ以上、A型は10Δ以上と定義される。偏位の方向も異なり、たとえばV型外斜視では上方視で偏位が増大するのに対し、A型外斜視では下方視で偏位が増大する。詳細は「主な症状と臨床所見」の項を参照。

パターン斜視に伴う自覚症状は、パターンの型と合併する水平斜視の種類によって異なる。

  • 複視:特に偏位量が大きくなる視線方向で自覚しやすい。下方視で著しい複視を訴える場合がある
  • 代償性頭位:良好な眼位が得られる視線方向を利用するため、特徴的な顎の位置をとる
    • A型外斜視:上方視で眼位が良好→顎下げ
    • V型外斜視:下方視で眼位が良好→顎上げ
    • A型内斜視顎上げ
    • V型内斜視:顎下げ(両眼視し大まかな立体視を獲得していることがある)
  • 眼精疲労:特にA型外斜視の成人において、下方視での両眼視が困難となるため生じやすい
  • 小児の立体視への影響:A型外斜視では下方視での両眼視が困難となり、立体視獲得の妨げとなる

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

V型

V型外斜視:上方視で外斜視の偏位量が増大し、下方視で減少する。

V型内斜視:下方視で内斜視の偏位量が増大し、上方視で減少する。

下斜筋過動:V型では下斜筋過動の合併頻度が高い。内転眼が内上方に偏位する所見を認める。

A型

A型外斜視:下方視で外斜視の偏位量が増大し、上方視で減少する。

A型内斜視:上方視で内斜視の偏位量が増大し、下方視で減少する。

上斜筋過動:A型では上斜筋過動の合併頻度が高い。

まれな型として以下がある。

  • Y型:第1眼位および下方視と比較して上方視でのみ外斜位が増大する。外直筋への異常神経支配が原因と考えられている
  • X型:上方視・下方視の両方で外斜位が増大する。長期外斜視における拘縮した外直筋の「リーシュ効果」による
  • λ型:上方視・第1眼位は正位で、下方視でのみ外斜位を認める
Q パターン斜視で頭を傾ける癖があるのはなぜですか?
A

代償性頭位と呼ばれる現象である。パターン斜視では特定の視線方向で偏位量が小さくなるため、その方向を正面視として使えるよう顎の上げ下げで調整する。たとえばV型外斜視では下方視で眼位が良好なため、顎上げの姿勢をとりやすい。

パターン斜視の発生には複数の機序が関与する。

  • 斜筋の機能異常:最も頻度の高い原因である
    • 下斜筋過動:V型パターンを生じる。V型外斜視は下斜筋過動を伴いやすい
    • 上斜筋過動:A型パターンを生じる。A型外斜視は上斜筋過動を伴いやすい
    • 上下筋過動は原発性のものと、上下筋麻痺に続発する二次的なものがある
  • 眼窩プーリーシステムの異常:斜筋過動を模倣するA型またはV型パターンを生じうる。頭蓋顔面異常ではV型パターンが多い。Crouzon病に代表される頭蓋骨早期癒合症では眼窩画像上すべての外眼筋が外方へ回旋しており、上直筋が耳側に位置するためV型斜視となる。またCrouzon病ではしばしば上斜筋の先天的欠損を伴うことがある
  • 眼球回旋
    • 外回旋:上直筋が耳側に、下直筋が鼻側に変位し、V型パターンを生じる
    • 内回旋:上直筋が鼻側に、外直筋が耳側に変位し、A型パターンを生じる
  • 水平直筋の制限:大角度外斜視における外直筋の拘縮がX型パターンの原因となる
  • 異常神経支配:単独または先天性脳神経異常支配症候群(CCDDs)に伴いY型パターンを生じる
  • 水平筋の上下方向への付着部異常・眼窩骨の形態異常:A型またはV型の寄与因子として指摘されている

パターン斜視の評価には、複数の視線方向での眼位測定が不可欠である。

  • 3方向眼位測定:第1眼位(正面視)に加え、上方約25度(顎引き位)および下方約35度(顎上げ位)で眼位を測定し、偏位量の差を定量する。これがパターン斜視診断の基本である
  • 屈折矯正下の測定:調節性要因を最小限に抑えるため、適切な屈折矯正(眼鏡など)を装着した状態で測定を行う
  • 代償性頭位の観察:顎上げ・顎下げなどの代償性頭位の有無を確認する。A型内斜視では顎上げ位が見られることがある
  • 遮蔽試験(cover test):水平斜視・上下斜視の有無と程度を評価する基本検査である
  • 交代遮蔽試験:斜位を含めた偏位量の測定に用いる。交代性上斜位(DVD)の合併も確認する
  • 斜筋過動の評価:水平むき眼位(側方視)で内転眼の上下偏位を観察し、下斜筋過動・上斜筋過動の程度を評価する。左右の非対称性にも注意する

鑑別として、交代性上斜位(DVD)との区別が重要である。DVDは下斜筋過動との合併頻度が高く、V型パターンと類似した所見を呈することがある。

パターンが臨床的に有意である場合、または代償性頭位がある場合は斜視手術が適応となる。手術では併存する水平偏位も同時に矯正する。内斜視では立体視予後が一般的に不良であり、立体視獲得の時期を過ぎていれば整容目的の手術となるため、パターンを積極的に治すかどうかは整容的な目立ち具合による。

V型の術式

斜筋過動あり:下斜筋弱転術(減弱術)が第一選択。両側の斜筋手術を行うことで上方視と下方視の差20〜25PDに対応することが可能である。

斜筋過動なし:水平直筋の垂直移動術(Trick法)。内直筋を下方に、外直筋を上方に移動する。

DVD合併時:下斜筋を下直筋付着部に縫いつける下斜筋前方移動術が有効。水平斜視手術と併用することが多い。

A型の術式

斜筋過動あり:上斜筋弱転術(減弱術)が第一選択。

斜筋過動なし:水平直筋の垂直移動術(Trick法)。内直筋を上方に、外直筋を下方に移動する。

Trick法(水平直筋付着部の上下移動術)では、筋肉を腱幅の半分から全幅分移動させる。覚え方として「MALE」がある(Medial to Apex=内直筋は頂点方向へ、Lateral to Empty space=外直筋は開いている側へ)。

その他の型の術式は以下の通りである。

  • Y型:外直筋の上方移動術
  • X型:外直筋の後転術
  • λ型:上斜筋の弱転術

水平直筋付着部の斜縫着術であるSlanting法の有用性も報告されている。

Q 手術ではどのような方法が選ばれますか?
A

斜筋過動の有無によって術式が異なる。過動がある場合は該当する斜筋の弱転術(減弱術)を行い、過動がない場合は水平直筋の付着部を上下に移動させるTrick法を併施する。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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パターン斜視の発生機序は、外眼筋の走行・作用方向の変化を中心に理解される。

下斜筋と上斜筋は眼球の回旋と上下転に関与する。下斜筋は外方回旋・上転・外転作用を持ち、過動すると上方視で外斜位が増大してV型パターンを生じる。上斜筋は内方回旋・下転・内転作用を持ち、過動するとA型パターンを生じる。上下筋過動は原発性のものと、対側の筋麻痺に続発する二次的なものがある。

眼球が外回旋(外方回旋)すると、上直筋の付着部が耳側に、下直筋の付着部が鼻側に変位する。この結果、上方視で外転作用が増し、V型パターンが形成される。逆に内回旋では上直筋が鼻側、外直筋が耳側に変位し、A型パターンが生じる。

外眼筋の機能的な起始点として作用する眼窩プーリーの位置異常は、筋の作用方向を変化させ、斜筋過動がなくてもA型またはV型パターンを生じうる。頭蓋顔面異常症例では眼窩の形態異常によりプーリー位置が変化し、V型パターンの頻度が高い。

長期にわたる外斜視で外直筋が拘縮すると、上方視・下方視いずれにおいても外直筋が「紐で引かれるように」眼球を外転方向に牽引する。これがX型パターンの成因である。

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