成長ホルモン
頻度:ONH患者の約70%に必要。
適応:成長ホルモン分泌不全が確認された場合に開始する。

視神経低形成(optic nerve hypoplasia; ONH)は、視神経軸索数の減少を特徴とする先天性視神経異常のうち最も頻度が高い疾患である。片眼性または両眼性に生じ、正中脳構造の欠損を伴うことがある。
1877年にBriereが初めて組織学的に記述し、1941年にReevesが臨床記載を行った。1956年にde Morsierが透明中隔欠損との合併を報告し、ド・モルシェ症候群(中隔視神経異形成症; septo-optic dysplasia, SOD)として知られるようになった。1970年にHoytらが詳細な臨床像を報告し、本疾患の認知が広がった。
SODは以下の3徴のうち2つ以上を満たす場合に診断される3)6)。
SODの有病率は約1/10,000出生と推定される2)6)。疫学的には、3歳未満の視力障害の原因として3番目に多い。イングランドでは人口10万あたり10.9、スウェーデンでは17.3と報告されている。
日本の新潟大学における16例の検討では、初診年齢中央値は2.4歳、女性が12/16例(75%)、両側性が11/16例(69%)であった1)。
上方分節型視神経低形成(superior segmental optic hypoplasia; SSOH)は上方のみの視神経線維が低形成となる特殊型であり、母体糖尿病との関連が指摘されている。日本における有病率は約0.3%と報告されている。
ONHは視神経単独の形態異常を指す。SODはONH・下垂体機能低下・正中脳構造異常の3徴のうち2つ以上を満たす症候群であり、ONHはSODの構成要素の一つである。ONH患者の約37.5%がSODの診断基準を満たすとの報告がある1)。
ONHの視力は正常から光覚なしまで幅広い。多くは0.1以下であり、視力は乳頭黄斑束の密度に依存する。視神経低形成はこの点で他の乳頭先天異常とは異なり、黄斑が形成されていても乳頭黄斑神経線維束の発達程度にばらつきがあるため、視力1.0を保つ例から極度に低い例まで幅広い。
日本人のデータでは、視力不良が11/16例(69%)、斜視が8/16例(50%)、眼振が5/16例(31%)であった1)。
検眼鏡的に特徴的な所見を認める。
主な眼所見と全身合併症の頻度を以下に示す。
| 所見 | 頻度 |
|---|---|
| 構造的CNS異常 | 約90% |
| 神経発達障害 | 約70% |
| 視床下部機能障害(両眼性) | 81% |
| 視床下部機能障害(片眼性) | 69% |
| 発達遅滞(両眼性) | 78% |
片眼性であっても視床下部機能障害は69%に認められ、無症状の患者でも18.2%に脳異常が存在する1)。片眼性でもMRIと内分泌スクリーニングは必須である。
ONHの病理は網膜神経節細胞(RGC)および神経線維の発生不全である。発生異常説と逆行性変性説の2つの仮説がある。前大脳動脈の血管障害による視交叉・視神経の虚血が病因とする仮説も提唱されている。
大多数の症例は孤発性である2)3)。
以下の遺伝子変異が関与することがある。
ONHの診断は検眼鏡所見を基盤とし、画像診断と内分泌スクリーニングを組み合わせて行う。
Double ring signの確認が診断の第一歩である。DM/DD比3以上(3.2以上で小乳頭)が目安となる。
日本人患者の検討では、脳異常が43.8%、SODが37.5%に認められた。注目すべきは、無症状であっても18.2%に脳異常が存在したことである1)。さらに、下垂体機能低下を示した3例中2例ではMRIで下垂体形態は正常であった1)。
全ONH患者に以下の検査が推奨される。
以下の疾患との鑑別が必要である。
あり得る。日本人患者の検討では、下垂体機能低下を示した3例中2例でMRI所見は正常であった1)。MRIの結果にかかわらず、内分泌スクリーニングは全例に行うべきである。
ONHそのものに対する根治的治療法は存在しない。管理の中心は、視機能の最適化と全身合併症(特に内分泌異常)への対応である。多職種チーム(眼科・内分泌科・小児科・神経科・リハビリテーション科)による連携が不可欠であり、成長は半年ごと、視機能は年1回の評価が推奨される。
成長ホルモン
頻度:ONH患者の約70%に必要。
適応:成長ホルモン分泌不全が確認された場合に開始する。
甲状腺ホルモン
頻度:約43%に必要。
適応:TSH・FT4異常で補充を開始する。
副腎皮質ホルモン
頻度:約27%に必要。
注意:副腎不全はストレス時に致命的となり得る。ストレスドージング(発熱・手術時の増量)の指導が不可欠である5)。
抗利尿ホルモン
頻度:約5%に尿崩症を合併。
注意:ナトリウムの急速補正は痙攣を引き起こし得る。補正速度は0.5mEq/L/時未満とする4)。
成人管理例では、レボチロキシン137μg、デスモプレシン、ヒドロコルチゾン10mg(朝)/7.5mg(夕)といった補充レジメンが報告されている2)。
視神経低形成自体は、緑内障を併発しなければ非進行性である。しかし内分泌異常は経時的に出現・悪化することがあり、長期フォローアップが不可欠である1)。早期に診断し、必要な症例には3歳までにホルモン補充療法を開始すると後遺症を残さないとされるため、片眼性の場合でも本疾患を念頭に置き見逃さないことが重要である。
視神経低形成そのものは非進行性であり、緑内障を合併しなければ視力は安定することが多い。ただし内分泌異常は後年に出現することがあるため、定期的な全身評価の継続が重要である。
ONHの本態は、網膜神経線維層(RNFL)および神経節細胞の減少であり、網膜外層への影響は少ない。発生機序には2つの主要仮説がある。
前大脳動脈の血管障害による視交叉・視神経領域の虚血が関与するとの仮説もある。
視床下部機能障害は片眼性ONHでも69%、両眼性では81%に認められる。下垂体と視神経は発生学的に近接しており、同一の発生障害が両者に影響すると考えられる。
発達遅滞は全体の75%に認められ、両眼性(78%)が片眼性(39%)より高率である。
SOD plusは古典的SODに加えて皮質形成異常(多小脳回、裂脳症など)を伴う病態であり、古典的SODよりも高頻度に認められるとの報告がある7)。神経発達予後がより不良であり、てんかんの合併リスクも高い。
SODに伴う肥満に対する薬物療法として、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストであるsetmelanotideの臨床試験(NCT06760546)が進行中である2)。視床下部性肥満はSOD患者のQOLを著しく低下させるため、新たな治療選択肢として注目されている。
正常血糖で診断されたSOD新生児に対し、テストステロン療法(25mg筋注、月1回×3か月)による小陰茎・停留精巣の管理や、組換えFSH療法の試みが報告されている5)。これらは内分泌補充の早期介入の可能性を示すものであるが、長期的な有効性と安全性はまだ確立されていない。