脱髄性視神経炎
原因疾患:多発性硬化症(MS)が代表的。
機序:自己免疫性の炎症攻撃により、視神経を髄鞘化する希突起膠細胞(oligodendrocytes)が障害される。髄鞘の主な役割は軸索での電気伝導速度の増大であり、片側の脱髄により両眼間に伝導速度の差が生じる。

プルリッヒ現象(Pulfrich phenomenon)は、両眼から視覚皮質への信号伝達時間に左右差が生じることにより、単一平面内を移動する動体が奥行きをもつ3次元の動きとして知覚される神経眼科的現象である。
1922年、ステレオスコピーの専門家カール・プルリッヒが初めて記述し、「ステレオ効果(stereo effect)」と命名した。後に「プルリッヒ効果」として広く知られるようになった。
古典的には脱髄性視神経炎(多発性硬化症に伴うものが代表)で報告されるが、片眼性白内障など他の眼疾患でも観察される。また3Dメガネなど、2D画像から3D視覚効果を誘発するメディアにも応用されてきた。
スポーツや運転など、動体を追う場面で気づきやすい。古典的なデモンストレーションでは、左右に揺れる振り子が円を描いて動くように見える。日常生活での動体知覚に違和感があれば、本現象を疑う一つの手がかりとなる。
プルリッヒ現象の根本的な原因は、視覚皮質への求心性信号伝導(afferent signal conduction)の片側性遅延である。
代表的な原因疾患を以下に示す。
脱髄性視神経炎
原因疾患:多発性硬化症(MS)が代表的。
機序:自己免疫性の炎症攻撃により、視神経を髄鞘化する希突起膠細胞(oligodendrocytes)が障害される。髄鞘の主な役割は軸索での電気伝導速度の増大であり、片側の脱髄により両眼間に伝導速度の差が生じる。
片眼性白内障
原因疾患:片眼性白内障(特に対側が偽水晶体眼の場合)。
機序:水晶体の混濁により罹患眼の網膜照度が低下し、信号伝達に遅延が生じる。片眼性白内障と対側偽水晶体眼を有する29名を対象とした研究で、コンピュータ画像の振り子を用いてプルリッヒ効果が確認された。
なお、健常者でも非罹患眼にNDフィルターを装着することでプルリッヒ現象を人工的に再現できる。片眼の網膜照度を1/10に低下させると約15ミリ秒の遅延が生じる。
片眼性白内障でも報告されている。片側性の求心性伝導遅延を引き起こすいずれの疾患も原因となりうる。重要なのは基礎疾患の特定であり、脱髄性疾患か白内障かによって治療方針が大きく異なる。
プルリッヒ現象の診断には、臨床的検査と電気生理学的検査を組み合わせる。基礎疾患の特定が治療方針の決定に不可欠である。
以下に主な検査法の特徴を示す。
| 検査法 | 主な用途 |
|---|---|
| 振り子テスト | 動体の立体的誤知覚を確認 |
| NDフィルターテスト | 効果の中和・定量的評価 |
| VEP(視覚誘発電位) | 両眼間伝導時間差の定量化 |
鑑別においては、基礎疾患の特定が重要である。脱髄性疾患が疑われる場合はMRIなどの神経画像検査、片眼性白内障が疑われる場合は細隙灯顕微鏡検査を実施する。
片側性の伝導遅延の原因となる基礎疾患を治療することで、プルリッヒ現象の消失を目指す。
基礎疾患が不可逆的な場合(視神経炎後の脱髄など)、非罹患眼または軽症眼にNDフィルターを装着する。軽症眼の信号伝達を意図的に遅延させ、重症眼の遅い伝導に一致させることで両眼間の時間差を補正する。
基礎疾患が不可逆的な場合、長期にわたる使用が必要となる。長期研究では数年間にわたり効果の持続が報告されている。疾患が進行性の場合はフィルター濃度の再調整が必要になることがあるため、定期的な通院が求められる。
正常な両眼視では、両眼からの網膜信号が同一の速度で視覚皮質に伝達され、動体は単一平面上のものとして解釈される。
プルリッヒ現象では、片方の視路に伝導遅延が生じることで、動体の網膜像が両眼間で時間的にずれる。視覚皮質での処理時に、この時間差が空間的な奥行き差として誤認され、2次元の動きが3次元として知覚される。
発症に関わる主な機序は以下の通りである。