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神経眼科

慢性再発性炎症性視神経症(CRION)

1. 慢性再発性炎症性視神経症(CRION)とは

Section titled “1. 慢性再発性炎症性視神経症(CRION)とは”

慢性再発性炎症性視神経症(Chronic Relapsing Inflammatory Optic Neuropathy; CRION)は、自己免疫性視神経症の稀な形態である。2003年にKiddらによって初めて報告された。1)

CRIONは以下の特徴で定義される。

  • 再発性の視力低下:痛みを伴う場合と伴わない場合がある
  • 2回以上のエピソード:再発を繰り返す経過
  • 免疫抑制療法への反応性:ステロイドで症状が改善する
  • 治療中止時の再発:免疫抑制療法を中止すると症状が再燃する

CRIONは症候群的診断であり、除外診断である。AQP4-IgGおよびMOG-IgGの発見以降、CRIONと診断されたコホートの抗体検査で最大22%がAQP4-IgG陽性、最大25%がMOG-IgG陽性であったことが示されている。2)3)4) すなわちCRIONは、MOG抗体関連視神経炎やAQP4抗体関連視神経炎を含む異質な病因群を包含する可能性がある。5)

抗MOG抗体陽性視神経炎の概念が登場する以前から、ステロイドパルス療法が奏効しやすいが再発しやすく、特発性視神経炎と区別すべき疾患概念としてCRIONが提唱されてきた。近年、CRIONと診断された症例では抗MOG抗体が陽性である割合が高いことが報告されている。

女性に多く、男女比は1:1.7〜2.3である。アフリカ系またはアフリカ・カリブ系の人々で発症リスクが高い可能性が指摘されている。

Q CRIONと通常の視神経炎はどう違うのか?
A

特発性視神経炎(典型的視神経炎)は多くの場合単相性で、無治療でも3週間以内に約8割で改善が始まる。一方CRIONは再発性・ステロイド依存性の経過が特徴であり、治療中止で再発する点が根本的に異なる。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。

ほとんどの患者は急性の痛みに続く亜急性の視力低下を経験する。

  • 眼球運動時の痛み:最も一般的な症状である。頭痛や眼窩周囲痛として現れることもある
  • 視力低下:通常1〜2週間でピークに達する。軽度から光覚弁別不能まで重症度に幅がある
  • 片眼性または両眼性:両眼性の場合は同時発症と逐次発症がある
  • 色覚の変化:視覚異常の一つとして生じる
  • 痛みを伴わない視力低下:痛みなしに視力低下のみ出現する例もある

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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  • 相対的瞳孔求心路障害(RAPD):片側性の症状を呈する患者で認める
  • 視神経乳頭所見:軽度の乳頭浮腫を認めることがある。MOG抗体関連の場合は中等度〜重度の乳頭腫脹を伴うことがある
  • 視野異常:視野狭窄、暗点、水平視野欠損が見られる
  • 網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)で確認される。再発寛解型多発性硬化症の患者よりも有意に薄い
  • 再発の特徴:最大30回まで繰り返す。エピソード間の間隔は数日〜数年と幅広い
  • ぶどう膜炎:限られた症例で合併が報告されている
Q 再発はどのくらいの頻度で起こるのか?
A

再発回数は最大30回に達する報告がある。エピソード間の間隔は数日から数年と症例によって大きく異なる。エピソード頻度の増加は視力予後の悪化と相関するため、再発予防のための治療継続が重要である。

CRIONの正確な病因は不明であるが、免疫抑制療法への良好な反応性から免疫介在性の機序が想定されている。

  • 免疫介在性の病因:自己免疫機序により視神経に炎症が生じる
  • MOG-IgGとの関連:CRIONの57〜92%でMOG-IgG抗体が検出される。ただしMOG-IgGはCRION特異的ではなく、他の中枢神経系炎症性疾患でも検出される
  • 異質な病因群:CRIONコホートの最大22%がAQP4-IgG陽性、最大25%がMOG-IgG陽性であり、複数の自己免疫機序が関与する可能性がある2)3)4)

主なリスク因子は以下のとおりである。

  • 性別:女性に1.7〜2.3倍多い
  • 人種:アフリカ系またはアフリカ・カリブ系で発症リスクが高い可能性がある

CRIONの診断は、他の原因による視神経炎を除外した上で行う。以下の5つの診断基準が推奨されている。

  1. 再発を2回以上繰り返す視神経炎症状の既往
  2. 視機能喪失の臨床的証拠
  3. NMO-IgG(抗アクアポリン4抗体)が陰性であること
  4. 造影MRIで視神経の増強効果が認められること
  5. 免疫抑制治療に反応し、中止で再発すること

なお、MOG抗体関連疾患も除外すべきとの意見がある。また一部の研究では、ステロイド依存性の正確な特定が困難な場合があるとして、視神経炎の症状と進行性の視力低下を組み合わせた基準を推奨している。

非典型的視神経炎の要件として、(1)年齢が15〜45歳以外、(2)両眼発症、(3)発症後2週間以降の症状進行、(4)ステロイド依存性の経過、(5)全身症状の合併が挙げられており、これらに該当する場合はCRIONを含む詳細な原因検索が必要となる。

  • 造影MRI:視神経の腫大や造影剤による増強効果を確認する。眼窩部MRIでは冠状断脂肪抑制STIR法および造影T1強調画像が有用である
  • MRI病変の分布:CRIONの病変は視神経の眼窩内領域に好発する傾向がある
  • 拡散テンソル画像(DTI):CRIONを多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)と区別しうる白質異常を検出できる可能性がある
  • SD-OCT:RNFL菲薄化を定量的に評価する
  • MOG-IgG:感度57〜92%。陽性の場合は両眼性視力低下のリスク増加およびエピソード頻度上昇と関連する可能性がある
  • AQP4抗体・NMO-IgG:NMOの除外に必須。陽性であればNMOの疑いが強まる
  • ANA検査・CSF検査・血清学的精査:他の原因除外のために施行する

CRIONの鑑別疾患は多岐にわたる。

分類主な鑑別疾患
脱髄性MS関連視神経炎、NMO
免疫介在性SION、RION、UCON
全身疾患サルコイドーシスSLE
感染性単純ヘルペスウイルス、HIV、梅毒
血管性巨細胞性動脈炎

特にNMOを評価するため、抗AQP4抗体を早期に検査することが重要である。

Q MOG抗体が陰性でもCRIONと診断されるか?
A

MOG-IgGの感度は57〜92%であり、診断基準にMOG-IgG陽性は含まれていない。したがってMOG抗体陰性であっても、5つの診断基準を満たせばCRIONと診断しうる。CRIONは臨床的特徴に基づく症候群的診断である。

CRIONの治療目標は、急性期の視機能回復と長期的な視力維持である。122症例のレビュー(2013年)に基づく治療フェーズ別の推奨ガイドラインを以下に示す。

急性期

メチルプレドニゾロン静注:1 mg/kgを3〜5日間投与する。

血漿浄化療法:静注メチルプレドニゾロンの代替として施行可能である。

中間期

経口プレドニゾン:1 mg/kgで開始し、最小有効量まで漸減する。

視機能モニタリング:漸減中は定期的に視機能を評価する。

自己免疫性視神経炎の治療として、多くの症例ではステロイドが有効であるが、ステロイドの漸減とともに再発しやすい。再発予防として少量のステロイドを継続する。それでも再発する場合は免疫抑制薬を使用する。

プレドニゾロンの慢性使用はCRIONの慢性症例に対して有効であると報告されている。静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)も治療選択肢に含まれる。

Q 免疫抑制療法はいつまで続ける必要があるか?
A

CRIONは治療中止で再発する疾患であるため、症状の寛解後も長期的な免疫抑制療法の継続が必要となる場合が多い。ステロイドの最小有効量を特定した上で非ステロイド性免疫抑制薬を併用し、治療レジメンを個別に設計する。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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CRIONの病態生理は視神経の炎症を基盤とする。炎症が痛みと視機能の喪失を引き起こし、脱髄および軸索損傷が長期的な視機能喪失の原因となる。

CRIONは元来、ステロイド反応性で再発傾向のある視神経炎を包括する症候群として提唱された。1) その後のCRIONコホートの抗体検査で、最大22%がAQP4-IgG陽性、最大25%がMOG-IgG陽性であることが判明した。2)3)4) このことから、CRIONはMOG抗体関連視神経炎やAQP4抗体関連視神経炎を含む異質な病因群を包含する症候群的診断であると考えられている。5)

MOG-IgGが関与する場合の推定される病態機序は以下のとおりである。

  • 免疫寛容の破綻:末梢循環においてB細胞が形質芽球に分化し、病的自己抗体を産生する
  • 血液脳関門の透過:IL-6が血液脳関門の透過性を増大させ、形質芽球の分化を促進する
  • 脱髄の誘導:MOG-IgG抗体はIgG1サブクラスが主体であり、補体経路の活性化を介してオリゴデンドロサイトを障害し脱髄を引き起こす
  • 免疫細胞の浸潤:CD4陽性T細胞およびマクロファージの動員により、神経細胞とオリゴデンドロサイトが損傷される

MOGADの発症契機としてワクチン接種や感染が報告されており、バイスタンダー活性化などの機序が想定されている。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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IL-6受容体抗体(トシリズマブ)

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Jeyakumarら(2024)のレビューによれば、トシリズマブ(IL-6受容体抗体)のMOG抗体関連疾患(MOGAD)に対するoff-label使用で、最大29ヶ月にわたり再発が予防されたと報告されている。5) IL-6はMOGADの病態生理においてB細胞の形質芽球分化と血液脳関門透過性の増大に関与しており、治療標的としての妥当性が示唆されている。

拡散テンソル画像(DTI)を用いたMRI研究では、CRIONに特徴的な白質異常パターンが多発性硬化症や視神経脊髄炎と区別できる可能性が示されている。今後の画像診断技術の発展により、CRIONの早期診断や病態分類の精緻化が期待される。

MOG-IgGおよびAQP4-IgGの抗体検査の普及に伴い、従来CRIONと診断されていた症例の一部がMOGADやNMOSDに再分類される動きがある。5) 今後、抗体プロファイルに基づくCRIONの疾患概念の再定義が進むと考えられる。


  1. Kidd D, Burton B, Plant GT, Graham EM. Chronic relapsing inflammatory optic neuropathy (CRION). Brain. 2003;126:276-84.
  2. Petzold A, Woodhall M, Khaleeli Z, Tobin WO, Pittock SJ, Weinshenker BG, et al. Aquaporin-4 and myelin oligodendrocyte glycoprotein antibodies in immune-mediated optic neuritis at long-term follow-up. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019;90:1021-6.
  3. Lee H-J, Kim B, Waters P, Woodhall M, Irani S, Ahn S, et al. Chronic relapsing inflammatory optic neuropathy (CRION): a manifestation of myelin oligodendrocyte glycoprotein antibodies. J Neuroinflammation. 2018;15:302.
  4. Petzold A, Pittock S, Lennon V, Maggiore C, Weinshenker BG, Plant GT. Neuromyelitis optica-IgG (aquaporin-4) autoantibodies in immune mediated optic neuritis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010;81:109-11.
  5. Jeyakumar N, et al. MOG antibody-associated optic neuritis. Eye. 2024;38:2289-2301.

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