急性期
メチルプレドニゾロン静注:1 mg/kgを3〜5日間投与する。
血漿浄化療法:静注メチルプレドニゾロンの代替として施行可能である。

慢性再発性炎症性視神経症(Chronic Relapsing Inflammatory Optic Neuropathy; CRION)は、自己免疫性視神経症の稀な形態である。2003年にKiddらによって初めて報告された。1)
CRIONは以下の特徴で定義される。
CRIONは症候群的診断であり、除外診断である。AQP4-IgGおよびMOG-IgGの発見以降、CRIONと診断されたコホートの抗体検査で最大22%がAQP4-IgG陽性、最大25%がMOG-IgG陽性であったことが示されている。2)3)4) すなわちCRIONは、MOG抗体関連視神経炎やAQP4抗体関連視神経炎を含む異質な病因群を包含する可能性がある。5)
抗MOG抗体陽性視神経炎の概念が登場する以前から、ステロイドパルス療法が奏効しやすいが再発しやすく、特発性視神経炎と区別すべき疾患概念としてCRIONが提唱されてきた。近年、CRIONと診断された症例では抗MOG抗体が陽性である割合が高いことが報告されている。
女性に多く、男女比は1:1.7〜2.3である。アフリカ系またはアフリカ・カリブ系の人々で発症リスクが高い可能性が指摘されている。
特発性視神経炎(典型的視神経炎)は多くの場合単相性で、無治療でも3週間以内に約8割で改善が始まる。一方CRIONは再発性・ステロイド依存性の経過が特徴であり、治療中止で再発する点が根本的に異なる。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。
ほとんどの患者は急性の痛みに続く亜急性の視力低下を経験する。
再発回数は最大30回に達する報告がある。エピソード間の間隔は数日から数年と症例によって大きく異なる。エピソード頻度の増加は視力予後の悪化と相関するため、再発予防のための治療継続が重要である。
CRIONの正確な病因は不明であるが、免疫抑制療法への良好な反応性から免疫介在性の機序が想定されている。
主なリスク因子は以下のとおりである。
CRIONの診断は、他の原因による視神経炎を除外した上で行う。以下の5つの診断基準が推奨されている。
なお、MOG抗体関連疾患も除外すべきとの意見がある。また一部の研究では、ステロイド依存性の正確な特定が困難な場合があるとして、視神経炎の症状と進行性の視力低下を組み合わせた基準を推奨している。
非典型的視神経炎の要件として、(1)年齢が15〜45歳以外、(2)両眼発症、(3)発症後2週間以降の症状進行、(4)ステロイド依存性の経過、(5)全身症状の合併が挙げられており、これらに該当する場合はCRIONを含む詳細な原因検索が必要となる。
CRIONの鑑別疾患は多岐にわたる。
| 分類 | 主な鑑別疾患 |
|---|---|
| 脱髄性 | MS関連視神経炎、NMO |
| 免疫介在性 | SION、RION、UCON |
| 全身疾患 | サルコイドーシス、SLE |
| 感染性 | 単純ヘルペスウイルス、HIV、梅毒 |
| 血管性 | 巨細胞性動脈炎 |
特にNMOを評価するため、抗AQP4抗体を早期に検査することが重要である。
MOG-IgGの感度は57〜92%であり、診断基準にMOG-IgG陽性は含まれていない。したがってMOG抗体陰性であっても、5つの診断基準を満たせばCRIONと診断しうる。CRIONは臨床的特徴に基づく症候群的診断である。
CRIONの治療目標は、急性期の視機能回復と長期的な視力維持である。122症例のレビュー(2013年)に基づく治療フェーズ別の推奨ガイドラインを以下に示す。
急性期
メチルプレドニゾロン静注:1 mg/kgを3〜5日間投与する。
血漿浄化療法:静注メチルプレドニゾロンの代替として施行可能である。
中間期
経口プレドニゾン:1 mg/kgで開始し、最小有効量まで漸減する。
視機能モニタリング:漸減中は定期的に視機能を評価する。
長期維持
免疫抑制薬の追加:アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルが候補である。
骨粗鬆症予防:ステロイド長期使用例では必須である。
自己免疫性視神経炎の治療として、多くの症例ではステロイドが有効であるが、ステロイドの漸減とともに再発しやすい。再発予防として少量のステロイドを継続する。それでも再発する場合は免疫抑制薬を使用する。
プレドニゾロンの慢性使用はCRIONの慢性症例に対して有効であると報告されている。静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)も治療選択肢に含まれる。
CRIONは治療中止で再発する疾患であるため、症状の寛解後も長期的な免疫抑制療法の継続が必要となる場合が多い。ステロイドの最小有効量を特定した上で非ステロイド性免疫抑制薬を併用し、治療レジメンを個別に設計する。
CRIONの病態生理は視神経の炎症を基盤とする。炎症が痛みと視機能の喪失を引き起こし、脱髄および軸索損傷が長期的な視機能喪失の原因となる。
CRIONは元来、ステロイド反応性で再発傾向のある視神経炎を包括する症候群として提唱された。1) その後のCRIONコホートの抗体検査で、最大22%がAQP4-IgG陽性、最大25%がMOG-IgG陽性であることが判明した。2)3)4) このことから、CRIONはMOG抗体関連視神経炎やAQP4抗体関連視神経炎を含む異質な病因群を包含する症候群的診断であると考えられている。5)
MOG-IgGが関与する場合の推定される病態機序は以下のとおりである。
MOGADの発症契機としてワクチン接種や感染が報告されており、バイスタンダー活性化などの機序が想定されている。
Jeyakumarら(2024)のレビューによれば、トシリズマブ(IL-6受容体抗体)のMOG抗体関連疾患(MOGAD)に対するoff-label使用で、最大29ヶ月にわたり再発が予防されたと報告されている。5) IL-6はMOGADの病態生理においてB細胞の形質芽球分化と血液脳関門透過性の増大に関与しており、治療標的としての妥当性が示唆されている。
拡散テンソル画像(DTI)を用いたMRI研究では、CRIONに特徴的な白質異常パターンが多発性硬化症や視神経脊髄炎と区別できる可能性が示されている。今後の画像診断技術の発展により、CRIONの早期診断や病態分類の精緻化が期待される。
MOG-IgGおよびAQP4-IgGの抗体検査の普及に伴い、従来CRIONと診断されていた症例の一部がMOGADやNMOSDに再分類される動きがある。5) 今後、抗体プロファイルに基づくCRIONの疾患概念の再定義が進むと考えられる。