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神経眼科

眼窩腫瘍

眼窩腫瘍(orbital masses)は、眼球が収まる骨性眼窩の内部に発生する腫瘍・腫瘤性病変の総称である。良性の嚢腫・血管腫から、生命を脅かす悪性腫瘍・感染性腫瘤まで多様な病態を含む。

眼腫瘍は眼科新患総数の約1〜5%を占める。日本での眼窩腫瘍の種類別頻度では、リンパ増殖性疾患(悪性リンパ腫、反応性リンパ組織過形成、IgG4関連眼疾患、特発性眼窩炎症を含む)が全体の50〜60%と最多で、次いで血管腫、嚢腫様病変、涙腺多形腺腫が続く。

下表に主要疾患の頻度をまとめる。

疾患症例数(比率)
特発性眼窩炎症150例(20%)
多形腺腫・海綿状血管腫各98例(各13%)
皮様嚢腫71例(10%)
反応性リンパ過形成70例(10%)
神経鞘腫38例(5%)

年齢による特徴も大きい。成人では特発性眼窩炎症・海綿状血管腫・涙腺多形腺腫・嚢腫が多く、小児では嚢腫・毛細血管血管腫・リンパ管腫・視神経膠腫が主体となる。悪性腫瘍は成人で悪性リンパ腫が多く、小児では横紋筋肉腫や白血病関連の緑色腫が重要である。

腫瘍の発生部位も診断に有用な手がかりとなる。

  • 筋円錐内:海綿状血管腫、神経鞘腫、視神経鞘髄膜腫
  • 涙腺部:リンパ増殖性疾患、多形腺腫、腺様嚢胞癌
  • 筋円錐外:リンパ増殖性疾患、副鼻腔腫瘍浸潤、転移性腫瘍
  • 眼窩外側縁:皮様嚢腫、表皮様嚢腫
Q 眼窩腫瘍で最も多いのはどのような種類か?
A

日本では、悪性リンパ腫・反応性リンパ組織過形成・IgG4関連眼疾患・特発性眼窩炎症を含むリンパ増殖性疾患群が全体の50〜60%を占め最多である。成人の良性腫瘍では特発性眼窩炎症と海綿状血管腫・多形腺腫が頻度が高い。

  • 眼球突出:最も多い症状。球後腫瘍では正面方向への突出、涙腺腫瘍では内下方への突出を呈する。スキルス癌(硬化型転移癌)では眼球陥凹を示すことがある。
  • 複視眼球運動障害:腫瘍が眼窩内スペースを占拠して眼球運動を制限する。眼窩先端部腫瘍では動眼・滑車・外転神経麻痺を伴い、眼瞼下垂も生じる。
  • 視力低下・視野異常:腫瘍が視神経を圧迫すると、視神経乳頭腫脹または蒼白化をきたし、RAPD(相対的求心性瞳孔反応欠陥)が陽性となる。
  • 疼痛:眼窩先端部症候群をきたす腫瘍や急速増大する腫瘍では眼痛が著明となる。
  • 眼瞼腫脹:涙腺腫脹が原因となることが多い。触診で硬い腫瘤を確認することが重要である。
  • 結膜充血・浮腫:急激に増大する腫瘍や著明な眼球突出を伴う場合に認められる。
  • サーモンピンク様結膜下腫瘤:悪性リンパ腫が結膜下に進展した際の特徴的所見である。
  • 脈絡膜皺襞:腫瘍が眼球を外側から圧迫する場合に生じる。
  • 浸潤性悪性腫瘍の所見:触診で眼窩全体が硬く抵抗感を呈し(compression test陽性)、眼球運動が著しく制限される。
  • 転移性腫瘍の所見:眼球運動制限が最多で、眼球偏位・突出、眼瞼下垂、触知可能な腫瘤、視力変化、疼痛、眼球陥凹(硬性乳癌に特有)の順に頻度が高い。
Q 眼球突出のほかにどのような症状が現れるか?
A

腫瘍の種類・部位によって症状は大きく異なる。複視・視力低下・眼瞼腫脹・眼痛が主な症状である。眼窩先端部の腫瘍では眼球運動麻痺・眼瞼下垂が加わる。転移性癌(特に硬性乳癌)では眼球陥凹を呈する場合がある。

眼窩腫瘍は原因・組織型により良性腫瘍・悪性腫瘍・感染性腫瘤・炎症性腫瘤・血管性病変に大別される。

  • 海綿状静脈奇形(旧称:海綿状血管腫):眼窩で最も多い血管性腫瘍。中年女性に無痛性眼球突出として発症する。単発性で被膜を有し、dynamic MRIで造影剤の「濃染遅延」が特徴的である。
  • 毛細血管血管腫:乳児期で最も多い眼窩腫瘍。生後6ヶ月以内に出現し、最大10ヶ月まで増殖した後に退縮する。完全消失には最大10年を要する場合がある。1歳以降に自然消退傾向を示す。
  • 視神経鞘髄膜腫:中年女性(30〜50歳)に好発する。全髄膜腫の約1〜2%、全眼窩腫瘍の約10%、視神経腫瘍の約33%を占める。optociliary shunt vessel(視神経乳頭周囲の側副血行路)が約60%で出現し、tram-track sign(電車軌道状サイン)がMRI・CTで特徴的である。
  • 神経鞘腫:眼窩腫瘍の約1〜2%。三叉神経第1枝由来が多く、40〜60%が上象限に発生する。16〜24%が上眼窩裂まで進展する。
  • 神経線維腫神経線維腫症1型(NF1)と関連する。限局性の約1/3が上眼窩裂まで進展する。
  • リンパ管腫:小児に多く、浸潤性のtrans-spatial増殖パターンを示す。CTで静脈石(phlebolith)を認めることがある。
  • 皮様嚢腫・表皮様嚢腫:発生過程の異常による迷入腫瘍であり、幼少時より出現する。眼窩外側縁に好発する。
  • 涙腺多形腺腫:初回手術で完全摘出できないと再発しやすく、数十年後に悪性転化する可能性がある。
  • 眼窩粘液腫(myxoma):きわめてまれな良性腫瘍である。文献21例のレビューでは男12例:女9例、発症年齢中央値50歳(10〜75歳)。主要初発症状は眼球突出(14例)で、発生部位は球後8例・上方6例・外側4例。極めて緩徐に増殖するため部分切除も許容される1)
  • ムコール症(Rhino-orbito-cerebral mucormycosis: ROCM):糖尿病(特にケトアシドーシス)が最大のリスク因子である。Rhizopus oryzaeなどの真菌菌糸が血管を侵襲し、血栓形成・組織虚血・黒色壊死瘢をきたす。死亡率は40〜80%、頭蓋内播種では80%に達する2)
  • 眼窩アスペルギルス症:Aspergillus fumigatusが副鼻腔から眼窩へ拡大する。免疫正常者にも発症しうる。特発性眼窩炎症(IOI)と誤診されやすく、CTで石灰化を認める場合はアスペルギルス症がほぼ確実である5)
  • 細菌性眼窩炎:最多の起炎菌は黄色ブドウ球菌・連鎖球菌・インフルエンザ菌(HiB)。副鼻腔感染からの波及が最も多い。
  • 寄生虫性:有鉤嚢虫・エキノコックスなどが発展途上国で多い。
  • 特発性眼窩炎症(IOI):眼窩腫瘍の約8〜10%を占める。急性発症の眼窩深部穿刺様痛と頭痛が特徴である。成人は片側性、小児は両側性が多い。
  • IgG4関連硬化性疾患:血清IgG4上昇と、罹患組織内のIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする。眼窩内では涙腺が最好発部位で、花筵状線維化(storiform fibrosis)と閉塞性静脈炎が組織学的特徴である。

悪性リンパ腫

頻度:悪性眼窩腫瘍の最大55%、全眼窩腫瘍の10〜15%。

特徴:片側性で軽度の眼球突出。上外側(筋錐外)が最多部位。

増殖様式:眼窩構造物の周囲を型取るように増殖(molding)するが骨浸食は伴わない。

横紋筋肉腫

頻度:小児期の最多原発性眼窩悪性腫瘍。小児悪性腫瘍の5〜8%。8歳未満に好発。

予後:胎児型5年生存率94%、肺胞型74%7)

関連疾患:Li-Fraumeni症候群・NF1・Noonan症候群との関連が知られる7)

転移性腫瘍

成人の原発巣:乳癌(53%)・前立腺癌(12%)・肺癌(8%)・メラノーマ(6%)・腎癌(5%)の順。

小児神経芽細胞腫が最多。神経芽細胞腫の11〜56%が眼窩転移をきたす。

特徴的所見:眼瞼溢血斑は神経芽細胞腫と白血病に特徴的。

副鼻腔悪性腫瘍の眼窩浸潤も重要である。副鼻腔腫瘍の90%は悪性で、80%は扁平上皮癌である。上顎洞原発が92.5%と最多で、浸潤性のため早期から機能障害をきたす。

  • 眼窩静脈瘤:バルサルバ法(息みや頭低位)で間欠的な眼球突出を呈する低圧静脈叢の拡張である。
  • 頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF):最大75%は外傷性。搏動性眼球突出・眼窩雑音・結膜充血が三主徴。DSAがゴールドスタンダードで、第一選択は血管内塞栓術である。
  • 海綿静脈洞血栓症(CST):稀で致命的な病態。起炎菌の約70%は黄色ブドウ球菌で、最大90%に結膜浮腫・眼球突出等が生じる。48時間以内に対側へ波及しうる。
Q 小児の眼窩腫瘍にはどのような特徴があるか?
A

小児では良性腫瘍として嚢腫・毛細血管血管腫・リンパ管腫が多く、多くは自然消退や経過観察が可能である。一方、悪性腫瘍として横紋筋肉腫が小児期最多の原発性眼窩悪性腫瘍であり、8歳未満に好発する。急速に増大する眼球突出を認めた場合は早急な専門的評価が必要である。

発症時期・増大速度・他臓器腫瘍の既往歴が重要な手がかりとなる。触診での硬度確認(compression test)・眼球突出の方向・眼球運動制限の程度も診断に直結する。

  • CT検査:充実性腫瘍は脳実質と等吸収域、嚢胞性病変は低吸収域を示す。石灰化・出血は高吸収域として描出される。骨破壊の評価に優れ、3D CTは骨変化の三次元評価に有用である。
  • MRI検査:軟部組織の評価に最適。T1強調では大部分の眼窩腫瘍は脂肪と比較して低信号を示す。T2信号強度は腫瘍性状の鑑別に有用である。

MRI T2信号強度による主な腫瘍の分類を下表に示す。

T2信号代表的疾患
低〜等信号(充実性・線維成分豊富)悪性リンパ腫、反応性リンパ過形成、扁平上皮癌、涙腺多形腺腫、横紋筋肉腫、転移性腫瘍
高信号(水成分・嚢胞性)海綿状血管腫、リンパ管腫、血性嚢腫、嚢胞性神経鞘腫
  • Dynamic MRI:海綿状血管腫では造影剤注入後の「濃染遅延」が特徴的で、他の腫瘍との鑑別に有用である。
  • PET/CT:悪性腫瘍の全身転移検索および転移性腫瘍の原発巣確認に用いる。
  • 腫瘍マーカー:CEAが5.0 ng/mL超であれば転移性腫瘍の可能性が高い。原発巣が不明な場合は肺癌・乳癌の腫瘍マーカーをチェックする。
  • 悪性リンパ腫のマーカー:sIL-2R、β2ミクログロブリン、LDH。眼窩限局例では正常範囲内が多い。
  • IgG4関連疾患:血清IgG4を測定する。
  • 感染性腫瘤のマーカー:アスペルギルス症では血清β-D-グルカンが陽性となる(ガラクトマンナンは陰性の場合あり)5)。ムコール症では次世代シーケンシング(NGS)による病原体メタゲノミクス検出が有用で、従来の真菌培養・病理検査と組み合わせる2)

確定診断は病理組織学的診断による。摘出腫瘍は必ず病理検査に提出する。浅層病変は積極的に生検を実施する。深部腫瘍の生検は視機能リスクを伴い困難な場合がある。涙腺多形腺腫は生検操作自体が再発・悪性化リスクを高めるため、生検の利益と不利益を十分に検討する必要がある。

PCR(AsperGenius kit)はパラフィン包埋組織からAspergillus fumigatusを高感度・高特異度で検出でき、アゾール耐性変異の同時検出も可能である5)

手術による全摘出が基本である。前方・側方・涙嚢切断・経頭蓋的・経副鼻腔アプローチなど腫瘍の部位に応じたアプローチを選択する。

  • 涙腺多形腺腫:被膜の内部のみを核出する術式(enucleation without capsule)では再発しやすく、長期経過後に悪性転化しうる。被膜を含む完全摘出が必要である。
  • 神経鞘腫:完全外科切除が主力で被膜の完全性維持を試みる。前方眼窩切開術が最も多く用いられる。
  • 眼窩粘液腫:良性かつ緩徐増殖のため、完全摘出が困難な場合は部分切除も許容される1)

全摘出が困難であるため、生検による確定診断後に放射線療法・化学療法を開始する。

  • 低悪性度リンパ腫:30 Gy程度の放射線照射。
  • 中等度以上の悪性度:40 Gy程度の照射と化学療法を組み合わせる。
  • 30 Gy超では放射線白内障網膜症・視神経症のリスクが増大する。

全摘出の適応はほぼない。化学療法・放射線療法など原発癌に有効な治療が基本となる。乳癌・前立腺癌にはホルモン療法が有効である。ER陽性乳管癌(神経内分泌分化、CK7陰性)では、nab-パクリタキセルによる導入後にレトロゾール+アベマシクリブ(CDK4/6阻害薬)の組み合わせで著明縮小・視力改善をきたした報告がある6)

化学療法と放射線療法の組み合わせが標準である。化学療法にはVAC療法(ビンクリスチン+アクチノマイシンD+シクロホスファミド)が用いられる7)

上皮性悪性腫瘍(副鼻腔癌・涙腺腺様嚢胞癌など)

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早期完全摘出により根治が可能である。進行例は頭蓋内浸潤傾向があり、早期からの積極的治療が必要である。炭素イオン線(重粒子線)照射が著効する場合がある。摘出不能と判断された場合は眼窩内容除去術を積極的に検討する。

  • ムコール症(ROCM):早期診断と外科的デブリードマンが予後を左右する。ESCMIDおよびECMMガイドラインでは、リポソーマルアンフォテリシンBとイサコナゾールが第一選択(B推奨)、ポサコナゾールが維持療法(C推奨)とされている2)
  • 眼窩アスペルギルス症:ボリコナゾールが第一選択である。免疫正常者でも経口ボリコナゾール単独2年間治療で完全寛解をきたした報告があり、以前の根治的外科切除中心のアプローチから、保存的抗真菌療法が推奨される傾向に変化している5)
  • 特発性眼窩炎症(IOI):副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)が第一選択。無効例にはメトトレキサートシクロスポリンインフリキシマブ等の免疫抑制薬を使用する。
  • IgG4関連疾患:ステロイド、リツキシマブ、放射線療法が用いられる。
  • Castleman病(涙腺):単発型(UCD)は外科切除で根治。多発型(MCD)は化学療法・ステロイド・免疫調節薬・モノクローナル抗体などの全身療法を要し予後不良である3)
Q 悪性リンパ腫にステロイドが効いた場合、良性と判断してよいか?
A

判断してはならない。悪性リンパ腫はステロイドで一時的に縮小することがあるが、縮小をもって良性疾患と判断することは危険である。確定診断のための生検は必ず実施すべきである。

Q 眼窩の真菌感染症はどのように治療するか?
A

病原体によって第一選択薬が異なる。ムコール症ではリポソーマルアンフォテリシンBとイサコナゾールが第一選択(B推奨)で、外科的デブリードマンの迅速な実施が生死を左右する2)。アスペルギルス症ではボリコナゾールが第一選択で、免疫正常者では保存的治療による寛解も報告されている5)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

Rhizopus oryzaeなどの接合菌の菌糸が眼窩血管壁を侵襲し、フィブリン反応を惹起して血栓・動脈瘤を形成する。その結果、組織虚血・梗塞をきたし黒色壊死瘢として観察される。血管閉塞は抗真菌薬の患部への浸透を妨げ、治療抵抗性の悪循環を形成する。糖尿病患者での感受性増大は、宿主血清中の遊離鉄増加が真菌増殖を促進することによると考えられている2)

Aspergillus fumigatusは上気道・副鼻腔に定着後、眼窩へ拡大する。上眼窩裂または視神経管を介して頭蓋内へ進展すると致命的となりうる。CTで石灰化を認める場合はアスペルギルス症の可能性が極めて高い。初回生検で組織学的に陰性でも、PCRが陽性を示すことがある5)

IgG4陽性形質細胞に富むリンパ形質細胞浸潤、花筵状線維化(storiform fibrosis)、閉塞性静脈炎(眼窩病変では頻度は少ない)が三主徴である。眼窩病変では涙腺が最好発部位で、血清IgG4値の上昇を伴う。

悪性リンパ腫のmolding増殖パターン

Section titled “悪性リンパ腫のmolding増殖パターン”

眼窩内の構造物(眼球・外眼筋・骨壁)の形状を鋳型のように型取りながら増殖する特徴(molding pattern)がある。骨浸食を伴わない点が副鼻腔癌浸潤との鑑別に有用である。

リンパ組織の異常増殖による疾患である。硝子血管型(胚中心の萎縮と血管壁の硝子化、“lollipop on a stick”外観)と形質細胞型(濾胞間領域の形質細胞シート)がある。涙腺発生の形質細胞型Castleman病ではIgG4/IgG比が40%未満のことが多く、IgG4関連疾患との鑑別に重要である3)

眼窩粘液腫は原始間葉細胞に由来する良性腫瘍である。粘液物質の基質中にCD34陽性紡錘形細胞が散在し、神経堤細胞との発生学的関連から心臓(心臓粘液腫)と頭頸部に好発する。Carney complexとの関連も報告されている1)


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

Lever ら(2021)は、78歳免疫正常女性の眼窩アスペルギルス症において、PCR(AsperGenius kit)をパラフィン包埋組織に適用することでAspergillus fumigatusの同定とアゾール耐性変異の同時検出に成功した5)。初回生検の組織学的診断ではIOIと誤診されており、PCRは組織学的陰性例での確定診断に寄与しうることを示した。

Ding ら(2023)は、次世代シーケンシング(NGS)を用いたメタゲノミクスによりRhizopus oryzaeを同定したROCM症例を報告した2)。従来の真菌培養・病理診断に加えてNGSを組み合わせることで、治療方針の迅速な決定が可能となる可能性がある。

エナメル上皮腫の分子標的療法

Section titled “エナメル上皮腫の分子標的療法”

Zhang ら(2025)は、下顎から眼窩へ転移した再発性エナメル上皮腫に対し2回の外科的掻爬術を施行し、視機能を保存した症例を報告した4)。下顎型エナメル上皮腫はBRAF変異と関連し、上顎型はSMO変異と関連する。BRAF/MEK阻害薬のデュアル阻害による8年間フォローアップでの有効性が報告されており、術後再発予防への応用が注目される。

眼窩転移乳癌に対する新規薬物療法

Section titled “眼窩転移乳癌に対する新規薬物療法”

Togashiら(2021)は、神経内分泌分化を伴うCK7陰性乳管癌の眼窩転移例において、nab-パクリタキセル3コース後にレトロゾール+アベマシクリブ(CDK4/6阻害薬)を投与した結果、腫瘤の著明縮小(Hertel値22 mm→17 mm)と視力改善(logMAR 2.5→正常域)をきたしたと報告した6)。CDK4/6阻害薬は眼窩転移に対する選択肢の一つとなりうる。

Zhang Y ら(2021)の3例の新生児悪性眼窩腫瘍報告では、末梢性PNET(Ki-67 70〜80%、CD99陽性)は眼窩内容除去+VACA/VAC-IE化学療法にもかかわらず3ヶ月で死亡した7)。一方、胎児型横紋筋肉腫はVAC化学療法7サイクルで1年無再発を達成した。PNETと胎児型RMSでは予後が大きく異なることが示された。


  1. Matsuo T, Tanaka T. Resection of orbital myxoma with magnetic resonance imaging evidence of ethmoid sinus origin: case report and review of 20 patients in the literature. J Investig Med High Impact Case Rep. 2023;11:1-6.
  2. Ding JQ, Xie Y. A case report on clinical features, diagnosis, and treatment of rhino-orbito-cerebral mucormycosis. Immun Inflamm Dis. 2023;11:e1080.
  3. Xu L, Li J, Xu X, et al. Plasma cell type Castleman’s disease of lacrimal gland: a case report and literature review. BMC Ophthalmol. 2024;24:508.
  4. Zhang R, Huang X, Huo Y, et al. Metastatic recurrent giant orbital ameloblastoma: a rare case report and literature review. Medicine. 2025;104:e43348.
  5. Lever M, Wilde B, Pförtner R, et al. Orbital aspergillosis: a case report and review of the literature. BMC Ophthalmol. 2021;21:22.
  6. Togashi K, Nishitsuka K, Hayashi S, et al. Metastatic orbital tumor from breast ductal carcinoma with neuroendocrine differentiation initially presenting as ocular symptoms: a case report and literature review. Front Endocrinol. 2021;12:625663.
  7. Zhang Y, Li YY, Yu HY, et al. Rare neonatal malignant primary orbital tumors: three case reports. World J Clin Cases. 2021;9(26):7825-7832.

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