乳頭浮腫
両側性乳頭浮腫(うっ血乳頭):頭蓋内圧亢進による最も重要な眼底所見。視力障害を招く。
RAPD:視神経障害が非対称性の場合に陽性となる。
蛍光眼底造影:乳頭周囲の色素漏出を確認。OCTが補助診断として有効。

コロイド嚢胞(colloid cyst; CC)は神経外胚葉由来の稀な良性脳室内腫瘍である。最も一般的には第三脳室前方のモンロー孔(室間孔)付近に発生する。
疫学:発生率は100万人に最大3人。原発性脳腫瘍の0.5〜3%、脳室内腫瘍の15〜20%を占める。全頭蓋内腫瘍の0.5〜1%との報告もある1)。発見年齢は全年齢にわたるが、30〜50代に特に多い1)。家族性発生の報告があるが、既知の遺伝的関係は不明である。
発生部位:第三脳室・モンロー孔高さが最多。稀に前頭葉・小脳・橋中脳にも発生する。
病因:原始神経上皮(パラフィシス成分)の異常な内反に由来するとされるが、現在も議論中である。
100万人に最大3人という発生率で、原発性脳腫瘍の0.5〜3%、脳室内腫瘍の15〜20%を占める稀な良性腫瘍である。30〜50代での発見が多いが全年齢で発症しうる。
大部分は無症候で画像検査による偶然発見となる1)。162例の後方視的研究では60%が偶然発見であった。
有症状例では非交通性水頭症(頭蓋内圧亢進)による症状が主体となる。
頭蓋内圧亢進による眼所見が主体であり、以下の3つが重要である。
乳頭浮腫
両側性乳頭浮腫(うっ血乳頭):頭蓋内圧亢進による最も重要な眼底所見。視力障害を招く。
RAPD:視神経障害が非対称性の場合に陽性となる。
蛍光眼底造影:乳頭周囲の色素漏出を確認。OCTが補助診断として有効。
外転神経麻痺
背側中脳症候群
垂直注視麻痺:特に上方衝動性眼球運動が障害される(Parinaud症候群)。
輻凑麻痺・輻凑後退眼振:後交連の障害による。
眼瞼後退(Collier徴候):両側性に認める。視蓋瞳孔(光反射低下・輻凑反応保存)を伴う。中脳水道閉塞時はうっ血乳頭を合併する。
また、振戦視(oscillopsia)や特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)に類似した臨床像を呈することもある。
モンロー孔の急性閉塞により急性水頭症→脳ヘルニア→突然死の報告がある1)。無症候であっても経過観察中に死亡例が報告されており、頭蓋内圧亢進症状について患者教育を行うことが重要である。
モンロー孔付近での嚢胞増大がCSF(脳脊髄液)流路を閉塞し、非交通性水頭症→頭蓋内圧亢進を引き起こす。嚢胞がボールバルブ(球弁)として機能することで間欠性閉塞が生じ、体位依存性の間欠的症状をきたす。
急性閉塞時は脳ヘルニアから突然死に至る可能性があり、臨床的に最も重要なリスクである1)。
Hussein et al. が提唱した無症候性CCの管理リスクスコアを以下に示す1)。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 65歳未満 | 1点 |
| 嚢胞径 7mm以上 | 1点 |
| 前方位置(モンロー孔直上) | 1点 |
| FLAIR/T2高信号 | 1点 |
| 病変関連頭痛 | 1点 |
合計3点以上を高リスクとして手術を考慮する。
症状出現のリスクを高める因子として、若年・嚢胞増大・脳室拡大・T2信号増強が挙げられる1)。
CT・MRIがそれぞれ特徴的な所見を呈する。主な画像所見を以下に示す。
| 検査 | 主な所見 |
|---|---|
| CT | 単房性・境界明瞭・円形の高吸収域、石灰化稀 |
| MRI T1 | 約50%で円形高信号、ガドリニウムで嚢胞は非造影 |
| MRI T2 | 多くは低信号(高粘性の「モーターオイル」様内容物)、均一高信号パターンもあり |
| FLAIR | T2低信号CCはCSFと類似し認識困難 |
MRIが最適な診断法である。T1等信号・T2高信号(内部に低信号焦点あり)のパターンも報告されている1)。
急性発症時は緊急頭部CTで急性水頭症の有無を優先確認する。
嚢胞壁は単層円柱上皮で被覆される。周辺虹彩前癒着染色・ケラチン・EMA陽性。内容物はムチン・ヘモジデリン・コレステロール・各種イオンを含むゼラチン状物質。
室管膜下巨細胞性星細胞腫(結節性硬化症)・室管膜下腫・頭蓋咽頭腫・室管膜腫・ジャーミノーマ・出血・リンパ腫・下垂体腫瘍などを鑑別する。
急性水頭症を呈する場合はABC確保のうえ、脳室外ドレナージ(EVD)を緊急留置する。
開頭術
経脳梁的アプローチ:左右前頭葉を分離し、脳梁膝部吻側端から嚢胞に到達する。
経皮質的アプローチ:右前頭中回→側脳室経由。手術リスクはやや高いが再発率は低い。
完全摘出による再発率は低く、根治的な治療法とされる。
低侵襲手術
内視鏡的摘出:開頭術よりリスクが低い可能性があるが、再手術・再発率がやや高い。
定位吸引術:嚢胞縮小・症状軽減が可能だが、再発リスクがあり再治療を要することがある。
占拠性病変の摘出術や脳室腹腔シャント術が基本となる。早期に頭蓋内圧を下降させればうっ血乳頭は速やかに吸収され、視機能障害を残さない。治療が遅れると不可逆性の視機能障害が残存する。
サイズ1cm未満で中心寄りの場合は閉塞リスクが低く、定期的な画像検査による経過観察が選択肢となる。ただしCCRS 3点以上の高リスク例では手術を考慮する1)。経過観察中の突然死報告もあり、必ず脳外科専門医へのコンサルテーションが推奨される。
第三脳室・モンロー孔付近の嚢胞が増大するとCSF流路が閉塞される。非交通性水頭症が生じると頭蓋内圧が上昇し、以下の神経眼科的合併症が引き起こされる。
嚢胞が振り子様に動くことで間欠的な閉塞が生じる。体位変換に伴う急性閉塞→急性水頭症→脳ヘルニアが突然死の機序である1)。
後交連(PC)障害による。上方注視信号はriMLF(内側縦束吻側間質核)から両側動眼神経核へPCを介して到達する。PC障害により上方注視麻痺が生じ、輻凑後退眼振・眼瞼後退(Collier徴候)・視蓋瞳孔が出現する。中脳水道閉塞を合併するとうっ血乳頭も加わる(中脳水道症候群)。
内容物はムチン・ヘモジデリン・コレステロール・各種イオンを含む高粘性(「モーターオイル」様)のゼラチン状物質である。この高粘性がMRI T2低信号を反映し、定位吸引術の難易度にも影響する。
CCが治療なしに自然退縮する現象が稀ながら報告されている。
Lee et al.(2022)は第10例目のCC自然退縮を報告した1)。49歳男性、初期径12mm→18か月後4mmへ縮小し、30か月後も4mmを維持。文献上の10例をまとめると、初期サイズは5〜30mm、退縮期間は15か月〜9年。5例は完全消失に至った。CCRSによるリスク分類では、中リスク5例・低リスク3例・高リスク2例であった。
退縮機序の仮説:未認識の嚢胞自然破裂→内容物の脳室内吸収。無菌性髄膜炎のリスクは低いとされる1)。ただし自然退縮は非常に稀な現象であり、現時点では治療方針の根拠とするには不十分である。
Pollock et al.の162例の後方視的研究(Lee et al. 2022が引用)では、無症候性CCにおける定期画像フォローの妥当性が示されている1)。一方で経過観察中の突然死報告も存在し、無症候例に対するリスク層別化の重要性が指摘されている。
文献上10例の自然退縮が報告されており、初期5〜30mm・期間15か月〜9年の範囲で縮小・消失が観察されている1)。退縮機序は嚢胞破裂→内容物吸収と推測されているが、非常に稀な現象であり治療方針の根拠として用いることはできない。