典型的ON
第一選択:ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000mg/日点滴静注×3日間)。
後療法:3日間点滴後のプレドニゾロン内服は行わない。
効果:回復期間を短縮するが、発症1年後の視力に有意差はない。
適応判断:発症2週間程度で改善傾向を示す場合、積極的適応はない。両眼発症・高度視機能障害・唯一眼・再発例・MRI脱髄斑ありの場合に投与を検討する。

脱髄性視神経炎(Demyelinating Optic Neuritis)は、視神経における炎症性脱髄疾患である。髄鞘抗原を標的とする自己免疫性障害が主体と考えられている。障害の部位により以下に分類される。
中枢神経の炎症性脱髄性疾患のうち、視神経炎を合併しうるものは以下の通りである。
日本での年間発症率は成人10万人あたり1.6人である。好発年齢は15〜45歳で、女性が約7割を占める。日本の臨床研究では年齢14〜55歳の範囲で発症が確認されている。世界的な有病率はおよそ10万人あたり1〜5人と推定されている。
MSとの関連は非常に深い。米国の臨床研究(ONTT)では、特発性視神経炎発症後15年間のMS移行累積確率は50%であった。初回発症時のMRIにおける脳の脱髄病変の有無が移行リスクと強く関連し、病変が1つ以上あれば累積確率は72%、なければ25%であった。
特発性視神経炎の約50%が15年以内にMSに移行するとされる。ただし、初回発症時の脳MRIで脱髄病変がなければ移行率は25%にとどまる。発症後は脳MRIによるリスク評価を行い、神経内科と連携した経過観察が重要である。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。
急性発症パターンを呈し、以下の症状が特徴的である。
Uhthoff徴候は体温上昇に伴い一過性の視覚障害を呈する現象である。入浴後や運動後に視力低下や霧視を自覚する。数分後に出現し1時間以内に消失する。MSに伴う視神経炎で知られるが、他の視神経症でも報告があり、MSに特異的ではない。
脱髄性視神経炎は、自己免疫性の炎症性脱髄プロセスによって発症する。ミクログリアなどの炎症関連細胞が視神経内に浸潤し、髄鞘を破壊することで視機能障害を引き起こすと考えられている。
抗AQP4抗体陽性視神経炎は特発性視神経炎の約10%を占める難治性の病型である。通常の視神経炎に比べ発症時の視力がより不良で、ステロイド治療への反応が悪く、再発が多い。両眼性に移行しやすい点も異なる。診断には血清抗AQP4抗体の測定が必須である。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
脱髄性視神経炎は臨床診断である。急性片眼性視力低下、眼球運動痛、RAPD陽性、視野欠損の組み合わせにより診断する。
乳頭周囲網膜神経線維層(pRNFL)厚を測定する。ON発症6〜8週間後の視神経萎縮を定量化でき、患者教育や経過記録に有用である。ただし球後視神経炎では初期に正常であり、回復後に初めてpRNFLや黄斑神経節細胞の消失を示す。
パターン視覚誘発電位(P-VEP)でP100潜時の延長を認める。脱髄を反映する所見である。
非典型的な経過を示す場合は以下を測定する。
視神経炎がMSの初発症状である可能性を評価するために適用する。中枢神経における炎症性脱髄病変の時間的および空間的多発性を証明し、他の疾患を除外することで診断する。脳室周囲・皮質直下・テント下・脊髄の4領域のうち2領域以上にT2高信号病変があれば空間的多発性を証明できる。
NMOSD-ON、MOG-ON、MS-ONは以下の特徴で鑑別する。
| 特徴 | NMOSD-ON | MOG-ON | MS-ON |
|---|---|---|---|
| 罹患パターン | 両側性 | 両側性 | 片眼性 |
| 好発部位 | 頭蓋内・視交叉 | 球後(前方) | 球後・管内 |
| 病変の長さ | 長範囲 | 長範囲 | 短い分節 |
感染性・圧迫性・中毒性・虚血性の視神経症を除外する必要がある。
特発性視神経炎の視機能予後は良好である。ONTTの長期成績では、発症1年後の視力が0.5以上となるものが93%、1.0以上となるものが70%以上と報告されている。9割以上の視神経炎で視力回復が期待できる。
典型的ON
第一選択:ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000mg/日点滴静注×3日間)。
後療法:3日間点滴後のプレドニゾロン内服は行わない。
効果:回復期間を短縮するが、発症1年後の視力に有意差はない。
適応判断:発症2週間程度で改善傾向を示す場合、積極的適応はない。両眼発症・高度視機能障害・唯一眼・再発例・MRI脱髄斑ありの場合に投与を検討する。
抗AQP4抗体陽性ON
急性期:ステロイドパルス療法が第一選択である。
無効時:血漿交換療法を選択する。
慢性期:再発予防のためプレドニゾロン少量内服が推奨される。第一選択となる治療法は確立されていない。
注意点:特発性ONと異なりステロイド内服による再発予防が重要である。
ONTTにおいて、標準用量(1mg/kg/日)の経口プレドニゾロン単独療法はプラセボや静脈内ステロイドと比較して再発率が高かったため推奨されない。ステロイド内服療法は再発率をさらに高めるとされている。
MS合併例では視力改善後に再発予防のための治療を考慮する。神経内科と連携のうえ以下の疾患修飾薬を検討する。
EBMに基づく明確なエビデンスはないが、ADEMの部分症状として認められることが多いため、積極的にステロイド療法を行うことが推奨されている。ステロイドパルスに反応が乏しい場合は免疫グロブリン大量点滴静注や血漿交換療法が選択肢となる。
ONTTの結果では、ステロイドパルス療法は回復速度を短縮するが、発症1年後の最終的な視力には有意差を認めなかった。特発性視神経炎では無治療でも93%が0.5以上の視力に回復する。ただし抗AQP4抗体陽性の場合はステロイド抵抗性のため、早期の血漿交換療法を含む積極的治療が求められる。
脱髄性視神経炎の本態は視神経の免疫介在性炎症性脱髄である。
繰り返し視神経の炎症を経験すると、神経線維への蓄積的ダメージにより視神経萎縮へ移行する。
ウイルス感染が自己免疫反応の引き金となるという仮説が提唱されている。一部のON患者の髄液中に水痘帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスのDNAが検出されたとの報告がある。
COVID-19感染後に脱髄性視神経炎を発症する症例が報告されている。
Jossyら(2022)は、COVID-19感染回復期に視神経炎を発症した3例を報告した。3例中2例で脱髄病変が確認され、1例では抗MOG抗体が陽性であった。全例がONTTプロトコールに基づくステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン静注後に経口ステロイド)で視力回復を得た。1)
COVID-19ワクチン接種後に視神経炎を発症した報告が集積されている。
Bhattiら(2023)の総説では、ワクチン接種後のON報告を包括的にレビューした。Martinez-Alvarezらの10か国55例の分析では、ワクチン接種からON発症までの中央値は18日であった。55例中14例がMOG-IgG陽性であり、AQP4-IgG陽性例はなかった。最終視力の平均は20/20と良好であった。2)
Boselloら(2023)は、COVID-19感染後にMOG抗体関連球後視神経炎を発症した74歳女性の症例を報告した。血清MOG-IgG抗体価は1:5120と高値であった。ステロイドパルス療法で視力は改善したが、その後急性炎症性脱髄性多発ニューロパチーを発症した。同一患者にこの2つの神経学的合併症が出現した初の報告である。3)
COVID-19感染およびワクチン接種後の視神経炎の発症機序は完全には解明されていない。分子擬態や自然免疫・獲得免疫の活性化、炎症性サイトカインの産生が関与すると推定されている。VAERS解析では約3億600万回接種中の神経学的有害事象は0.03%であり、SARS-CoV-2感染後の神経学的イベント発生リスクはワクチン後の617倍高いと報告されている。