環境因子
紫外線曝露:最大のリスク因子である。氷や雪から反射する紫外線、砂漠地帯の紫外線が関与する。
気候条件:高温、低湿度、砂嵐、低降雨量がリスクを高める。インド・ラジャスタン州南西部では有病率が高い2)。
職業的曝露:溶接による熱傷も職業上のリスクとして認識されている。

スフェロイド変性(spheroidal degeneration)は、角膜および結膜の上皮下に黄褐色の球状沈着物が蓄積する変性疾患である。瞼裂に沿った形で黄白色の沈着物が上皮下に蓄積する。Climatic droplet keratopathy、chronic actinic keratopathy、Bietti’s nodular corneal degeneration、Labrador keratopathyなど、地理的場所や好発人種に基づく多数の別名を持つ。
紫外線曝露と関連した変性疾患の一つと考えられている。熱帯地方に多くみられるが、本邦ではまれである。インド・ラジャスタン州南西部では高温・砂嵐・低降雨量のためスフェロイド変性の有病率が高い2)。男性に多くみられる。
Fraunfelderらは本症を以下の3型に分類している。
| 型 | 特徴 |
|---|---|
| 原発性角膜型 | 眼疾患と無関係に発症。加齢と関連。両眼性 |
| 続発性角膜型 | 長期にわたる眼疾患に続発。片眼性または両眼性 |
| 結膜型 | 単独または角膜型に続発。高齢者に多い |
原発性角膜型は眼疾患とは無関係に発症し加齢と関連する。続発性角膜型は緑内障、角膜ヘルペス、Fuchs角膜内皮ジストロフィ、格子状角膜ジストロフィなど種々の眼疾患に続発する。結膜型は瞼裂斑や翼状片と関連する。
Fraunfelder分類により3型に分けられる。原発性角膜型(type 1)は眼疾患と無関係に両眼性に発症し加齢と関連する。続発性角膜型(type 2)は角膜ヘルペスや緑内障などの長期にわたる眼疾患に続発する。結膜型(type 3)は瞼裂斑や翼状片と関連し高齢者に多い。

| Grade | 所見 |
|---|---|
| Trace | 片眼の瞼裂間の少数の病変 |
| Grade 1 | 瞼裂間を水平に巻き込むが中央に及ばない |
| Grade 2 | 中央角膜に及ぶが視力に影響なし |
| Grade 3 | 中央角膜に及び視力が低下 |
| Grade 4 | Grade 3に加え病変が隆起 |
紫外線曝露が最も重要な環境因子と考えられている。翼状片や瞼裂斑でみられるエラストイド変性を伴っている。紫外線との相互作用により角膜縁血管から血清蛋白質が角膜内に拡散し、変性・蓄積すると推定されている。
環境因子
紫外線曝露:最大のリスク因子である。氷や雪から反射する紫外線、砂漠地帯の紫外線が関与する。
気候条件:高温、低湿度、砂嵐、低降雨量がリスクを高める。インド・ラジャスタン州南西部では有病率が高い2)。
職業的曝露:溶接による熱傷も職業上のリスクとして認識されている。
個体因子・眼疾患
加齢:加齢とともに発症頻度が増加する。
先行眼疾患:角膜炎、格子状角膜変性、緑内障などが続発性角膜型のリスクとなる。
その他:ドライアイ、栄養不良、角膜外傷、風・砂・氷による微小外傷が関与する。
紫外線曝露が最大のリスク因子であるため、雪や氷から紫外線が反射する高緯度地域(ラブラドル地方など)や、砂漠地帯で紫外線が強い赤道付近の低緯度地域で有病率が高い。インド・ラジャスタン州南西部では高温・砂嵐・低降雨量のためスフェロイド変性の有病率が特に高い2)。
臨床診断
細隙灯顕微鏡検査:瞼裂部の角膜上皮下に黄褐色の球状沈着物を確認する。低倍率では滴状に見えるが高倍率では消失して見える。
Johnson-Ghoshグレーディング:Trace~Grade 4で病変の範囲と視力への影響を評価する。
画像検査
前眼部OCT:沈着物の深度と範囲を客観的に評価する。上皮下線維化と前部実質瘢痕の深度を計測できる1)。
組織学的検査:H&E染色で好酸性、トルイジンブルーで青緑色に染色される。診断に必須ではない。
通常は無症状であり治療は不要である。加齢性変化は緩徐に進行するが、視力障害の原因にもならないことが多い。
スフェロイド変性を合併する白内障では、角膜混濁により術中視認性が低下する2)。全層角膜移植が施行困難な地域ではSICS(小切開白内障手術)+ IOL挿入が有効な選択肢であり、92.85%の患者で視力改善が得られている2)。
ラジャスタン州の部族集団における56例のスフェロイド変性合併白内障に対するSICSでは、平均最高矯正視力(BCVA)が術前2.3±0.67 logMARから術後1か月で0.4±0.22 logMARに改善した(P < 0.0001)。63.3%が6/6~6/12の視力を達成した2)。
表層角膜移植や深層層状角膜移植術はスフェロイド変性に有効である。深層層状角膜移植術ではGrade 3症例で術後6/9の視力が報告されている1)。ただしスフェロイド変性の角膜は硬く、big bubble形成が困難となりうる1)。また角膜表層切除後・表層角膜移植後には再発の可能性がある。
病理学的にはヒアリン様の物質が上皮下およびBowman膜に蓄積する。沈着物質は蛋白質で構成されている。実質細胞から分泌された顆粒状蛋白が隣接するコラーゲン線維上に沈着したものとされている。
沈着物質の起源には複数の仮説がある。有力な仮説として、血漿蛋白(免疫グロブリンやアルブミン)が角膜縁の循環から角膜内に拡散し、紫外線によって変性・蓄積する機序が提唱されている。また実質や上皮の分泌産物(不完全なコラーゲンや分解された実質コラーゲン)が沈着するという仮説もある。
翼状片や瞼裂斑でみられるエラストイド変性を伴っている。紫外線による慢性的な組織障害が共通の病態基盤と考えられている。
光学顕微鏡では角膜の上皮下・Bowman膜・浅層実質に球状・細長い形状などさまざまなサイズの細胞外沈着物を認める。進行期にはBowman膜が局所的に断裂または消失する。通常、炎症細胞は認められない。電子顕微鏡では微細な顆粒状構造がコラーゲン束上に集積している。
沈着物質は蛋白質で構成されている。実質細胞から分泌された顆粒状蛋白がコラーゲン線維上に沈着したものとされる。血漿蛋白(免疫グロブリン・アルブミン)が角膜縁血管から拡散し紫外線により変性・蓄積するという仮説が有力である。H&E染色では好酸性、トルイジンブルーでは青緑色に染色される。
スフェロイド変性に対する深層層状角膜移植術の有効性が報告されている。Grade 3のスフェロイド変性に対し深層層状角膜移植術を施行した症例では、big bubble形成が困難であったためmanual dissectionに変更された1)。スフェロイド変性の角膜は硬いため、big bubble形成後に宿主のDescemet膜が前房側に膨隆し逆瞳孔ブロックによる続発性閉塞隅角緑内障を生じた1)。
65歳男性のGrade 3中央部スフェロイド変性に対する深層層状角膜移植術症例では、術後1日目に眼圧 46mmHgの急性閉塞隅角緑内障が発生した。前眼部OCTで宿主Descemet膜の膨隆と残存実質が確認された。Big bubbleの減圧により隅角閉塞が解除され、術後1か月で6/9の視力が得られた1)。
スフェロイド変性の有病率が高い地域では、合併白内障に対するSICSの安全性と有効性が検討されている2)。124例の硬い白内障と眼合併症を有する患者のうち45.16%がスフェロイド変性を合併していた2)。角膜混濁による術中視認性低下が術前嚢切開の困難さにつながるが、重篤な合併症は認められなかった2)。