コンテンツにスキップ
角膜・外眼部疾患

Schnyder角膜ジストロフィ

Schnyder角膜ジストロフィ(Schnyder corneal dystrophy; SCD)は、UBIAD1(UbiA prenyltransferase domain containing 1)遺伝子の変異により角膜に脂質代謝異常が生じ、コレステロールおよびリン脂質が角膜実質に異常沈着する遺伝性の角膜ジストロフィである。遺伝形式は常染色体優性遺伝で、遺伝子座は1p36に位置する。

1924年にVan WentとWinbautにより最初に報告された。1929年にスイスの眼科医Schnyderが3世代にわたる家族例を報告して以降、本疾患名が定着した。IC3D分類では実質型角膜ジストロフィに分類される。

本疾患は両眼性に発症し、幼少期から角膜混濁が始まるが進行は緩徐である。角膜混濁の程度に比して視力低下が軽度であることが臨床的な特徴である。

Q 視力にはどの程度影響するか?
A

細隙灯顕微鏡所見の割には著明な視力低下は認められないことが多い。ただし加齢とともに混濁が進行し、眩輝(グレア)や光散乱による視機能障害が生じうる。50歳以上の約54%、70歳以上の約77%が最終的に角膜移植を必要としたとする報告がある。

Schnyder角膜ジストロフィの前眼部OCT
Schnyder角膜ジストロフィの前眼部OCT
Gimenez JB, Izdebska J, Szaflik JP. Schnyder Corneal Dystrophy in an Adolescent: A Case Report With Multimodal Imaging. Cureus. 2025 Aug 11; 17(8):e89786. Figure 3. PMCID: PMC12421702. License: CC BY.
前眼部OCTで、角膜前部に限局する高反射病変と厚みの変化を示している。脂質沈着が主にどの層に分布するかを断面で説明しやすい。
  • 眩輝(グレア):角膜内の結晶や混濁による光散乱で生じる。加齢とともに悪化する傾向がある。
  • 明所視力低下:光散乱に伴い、特に明所での視力が低下する。
  • 視力低下:混濁の進行とともに緩徐に進行するが、所見の割には軽度であることが多い。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

角膜所見は年齢とともに特徴的なパターンで進行する。

年齢層主な角膜所見
幼少期〜10代角膜中央部の結晶状混濁
20代〜30代老人環様の輪部混濁が出現
40代以降中央部・輪部混濁が全層に進行
  • 角膜結晶:約50%の症例に認められる。前実質(Bowman膜付近)に細かい針状の結晶が集積した混濁として観察される。
  • 中央部角膜混濁:初期は実質浅層に円形〜卵形の灰色混濁として出現する。進行すると中層から深層へ拡大する。
  • 老人環様の輪部混濁(arcus lipoides):20歳代から角膜周辺部に出現する。通常の老人環と異なり若年で認められることが特徴的である。
  • 中間部の透明帯:40代以降、中央部混濁と輪部混濁の間に挟まれた中間周辺部は比較的透明なまま残る。
  • 角膜知覚低下:角膜神経の消失が認められるが、明らかな神経栄養性角膜症の報告はない。

病理所見では、オイルレッドO染色で脂肪滴が赤く染色される。電子顕微鏡では角膜実質に空胞形成を認める。

SCDの原因はUBIAD1遺伝子(1p36)の変異である。UBIAD1はメナキノン-4(MK-4、ビタミンK2)を合成するプレニルトランスフェラーゼをコードする。この遺伝子変異により角膜の脂質代謝に異常が生じ、コレステロールが角膜実質に沈着する。確定診断には遺伝子検査が有用である。

  • 高脂血症(高コレステロール血症):全身的な脂質代謝異常を伴うことがある。
  • 外反膝(genu valgum):骨格異常の合併が知られている。
  • 手指の奇形:まれに脊椎や手指の奇形を伴う。
Q 全身に合併症はあるか?
A

高コレステロール血症の合併が知られており、脂質プロファイルの評価が推奨される。また、外反膝やまれに手指・脊椎の奇形を伴うことがある。

眼科的検査

細隙灯顕微鏡検査:診断の基本となる。角膜結晶、中央部混濁、老人環様変化を評価する。

共焦点顕微鏡検査:角膜神経の消失を確認できる。進行期に高反射沈着物が観察される。

前眼部OCT:上皮、前・中・後実質にびまん性の高反射所見を認める。

確定診断と全身検査

遺伝子検査:UBIAD1遺伝子変異の同定により確定診断が得られる。

血液検査:血清脂質プロファイル(総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪)を評価する。

  • Bietti結晶状網膜変性:網膜にも結晶沈着を伴う点で鑑別される。
  • 魚眼病(fish eye disease):LCAT活性の部分的欠損による角膜混濁。
  • Tangier病:HDLの著明な低下を伴う脂質代謝異常症。
  • LCAT欠損症:レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼの完全欠損。
  • 多発性骨髄腫:免疫グロブリン結晶の角膜沈着との鑑別を要する。

角膜混濁の原因として、SCDはIC3D分類で実質型角膜ジストロフィに位置づけられている1)

細隙灯顕微鏡所見の割には視力低下が軽度であることが多く、積極的な治療を必要としない症例が多い。定期的な経過観察が基本となる。

  • PTK(治療的エキシマレーザー角膜切除術)角膜上皮下の結晶が視力に影響を及ぼしている場合に、結晶の除去目的で施行される。
  • 深部層状角膜移植(DALK:混濁が実質深層に及ぶ進行例で検討される。
  • 全層角膜移植(PKP):強い混濁が全層に及ぶ場合に施行される。50歳以上の約54%、70歳以上の約77%が最終的に全層角膜移植を必要としたとする報告がある。

進行を止めるための薬物療法は現時点では存在しない。

Q 角膜移植後に再発するか?
A

全層角膜移植後に移植片へのコレステロール沈着が再発する可能性がある。再発の時期や程度は個人差があるが、移植後も定期的な経過観察が必要である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

SCDはUBIAD1遺伝子の変異に起因する。UBIAD1はメナキノン-4(ビタミンK2)を合成するプレニルトランスフェラーゼをコードしており、この酵素の機能異常が角膜における脂質代謝の破綻をもたらす。

角膜実質には通常ごく微量のコレステロールとリン脂質が存在するが、UBIAD1変異により特にHDLコレステロールの代謝が障害され、コレステロールおよびリン脂質が角膜実質内に過剰に蓄積する。蓄積した脂質は結晶として析出し、角膜の透明性を障害する。

  • オイルレッドO染色:角膜実質内の脂肪滴が赤色に染色される。
  • 電子顕微鏡所見:角膜実質に空胞形成を認める。これは脂質の蓄積を反映している。
  • Bowman膜:断裂が認められる場合がある。

共焦点顕微鏡検査で角膜神経の消失が確認されている。しかし、神経消失にもかかわらず明らかな神経栄養性角膜症は報告されていない。脂質沈着が角膜神経に与える影響の機序は十分には解明されていない。

  1. American Academy of Ophthalmology. Corneal Edema and Opacification Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます