細隙灯顕微鏡所見
直接照明:多数の微小な灰色点状混濁として観察される。
間接照明:虹彩から反射する光により微細な混濁の集合として描出される。
徹照法:上皮内マイクロシストが屈折性のある透明な露の雫のように観察される。最も鋭敏な観察法である。
スクレラルスキャター法:角膜上皮内水疱の分布を広範囲に評価できる。

Meesmann角膜ジストロフィ(Meesmann corneal dystrophy; MECD)は、角膜上皮内に無数のマイクロシスト(微小嚢胞)が形成される常染色体優性遺伝の角膜ジストロフィである。1938年にドイツの眼科医Alois MeesmannがF. Wilkeとともに初めて組織病理学的特徴を記載した。若年性遺伝性上皮ジストロフィ(Juvenile Hereditary Epithelial Dystrophy)とも呼ばれる。
原因遺伝子は角膜上皮型ケラチンをコードするKRT3(12q13.13)およびKRT12(17q11-q12)である。KRT3変異によるものを1型(MECD1)、KRT12変異によるものを2型(MECD2)と分類する。これまでにKRT3に6種、KRT12に25種の変異が同定されている1)。
IC3D分類では上皮型角膜ジストロフィに位置づけられ、遺伝形式は常染色体優性遺伝(AD)である。不完全浸透を示す場合がある。
ほとんどの患者は無症状か軽度の症状にとどまり、視力への影響は通常軽微です。しかし、一部の患者では再発性角膜びらんや上皮下瘢痕により視力低下をきたすことがあります。特に高齢の患者では症状が進行しやすい傾向があります。
生後1〜2歳から上皮内嚢胞が出現するが、大部分の患者は思春期後半〜成人期まで無症状である。自覚症状としては異物感、羞明、流涙、一時的な霧視が挙げられる。
嚢胞を持つ上皮細胞が眼表面最表層に達すると上皮障害が生じ、刺激症状の原因となる。再発性角膜びらんを呈する場合があり、特に起床時に疼痛が生じやすい。
細隙灯顕微鏡で種々の大きさのマイクロシスト(微小嚢胞)が角膜上皮内に細かい混濁として観察される。小点状の白色混濁として認められ、病変は周辺部に比べ角膜中央部でより顕著である。眼瞼裂間領域に密度が高い。
細隙灯顕微鏡所見
直接照明:多数の微小な灰色点状混濁として観察される。
間接照明:虹彩から反射する光により微細な混濁の集合として描出される。
徹照法:上皮内マイクロシストが屈折性のある透明な露の雫のように観察される。最も鋭敏な観察法である。
スクレラルスキャター法:角膜上皮内水疱の分布を広範囲に評価できる。
先進的画像診断
成長に従ってマイクロシストの数は増加する。細胞診では周辺虹彩前癒着染色陽性を呈し、ムコ多糖の沈着が確認される。嚢胞に隣接する上皮は透明に保たれる。
MECDはKRT3またはKRT12遺伝子のヘテロ接合型変異により発症する。これらの遺伝子はそれぞれケラチン3(K3)およびケラチン12(K12)をコードする。K3とK12は角膜上皮に特異的に発現する中間径フィラメント(intermediate filament)のサブユニットであり、ヘテロポリマーとして会合して上皮の構造的枠組みを形成する。
変異ケラチンは正常な強度を欠くため、角膜上皮の脆弱性が生じる。嚢胞内には異常ケラチンタンパク質の凝集体や細胞破片が蓄積し、嚢胞が破裂すると眼刺激症状が引き起こされる。
スペインの家系で新規KRT3変異c.1527G>T(p.Glu509Asp)が同定されている1)。この変異はケラチンK3のhelix termination motifの高度に保存された509位に位置し、アイルランドの家系で報告された同一アミノ酸位置の既知変異(p.E509K)と同じ部位を侵すものである1)。
遺伝カウンセリングにおいては、常染色体優性遺伝であるため罹患者の子に50%の確率で変異が伝達されることを説明する。ただし表現型の変動が大きく、同一家系内でも症状の程度が異なる場合がある1)。
遺伝子検査により確定診断が可能であり、他の角膜ジストロフィとの鑑別や遺伝カウンセリングに有用です。2020年4月より日本でも角膜ジストロフィの遺伝子検査が保険収載されています。将来的な遺伝子治療の開発にも変異の同定が重要となるため、検討をお勧めします。
MECDの診断は主に細隙灯顕微鏡検査に基づく。両眼性に角膜上皮内のマイクロシストが観察されれば本疾患を強く疑う。家族歴の聴取が重要である。
徹照法が最も鋭敏な観察法であり、マイクロシストが屈折性のある透明な水滴様として描出される。直接照明では灰色の点状混濁として、間接照明では微細な混濁の集合として観察される。
**IVCM(生体内共焦点顕微鏡)**では上皮内の低反射円形マイクロシストが定量的に評価可能である。マイクロシスト径は12〜32μm、密度は38〜64個/mm²と報告されている1)。高反射物質(細胞破片)やBowman層の変化、活性化した角膜実質細胞も観察される1)。
AS-OCT上皮厚マップは非侵襲的な定量評価法として有用である。眼瞼裂間領域で上皮の肥厚が認められ、上方・下方では菲薄化パターンを示す1)。
確定診断にはKRT3/KRT12遺伝子の変異解析が推奨される。
| 鑑別疾患 | 鑑別点 |
|---|---|
| 上皮基底膜ジストロフィ | 地図状・点状・指紋状の上皮所見 |
| Reis-Bücklersジストロフィ | Bowman層の変化が主体 |
| Lisch上皮性角膜ジストロフィ | X連鎖優性遺伝 |
| ソフトCL連続装用後のmicrocyst | CL装用歴あり。片眼性のことあり |
MECDの治療は対症療法が中心である。多くの患者は症状が軽微であり、積極的な治療を要しない。
保存的治療として、角膜保護薬点眼や人工涙液による対症療法が行われる。刺激症状が強い場合は治療用コンタクトレンズの装用で対処する。就寝前の眼軟膏点入は上皮保護と再発性角膜びらんの予防に有用である。
再発性角膜びらんに対しては段階的な治療を行う。まず就寝前の眼軟膏点入と起床時の人工涙液点眼を継続する。改善が得られない場合は治療用ソフトコンタクトレンズの連続装用を試みる。
外科的治療は保存的治療に抵抗する症例に適応となる。PTK(治療的角膜切除術)が現在推奨される第一選択の外科的治療であり、表層角膜混濁の除去、角膜表面の平滑化、上皮接着の促進が達成される。ただし術後もジストロフィの再発が高率に生じる。
重症例では表層角膜移植や全層角膜移植が必要になることがあるが、移植片にもジストロフィが再発するため、可能な限り先延ばしにすることが望ましい。
近年、自己血漿由来成長因子点眼(is-ePRGF)による角膜上皮修復促進効果が症例報告レベルで報告されている1)。
現時点で根治療法は確立されていません。しかし研究段階として、変異ケラチン遺伝子を標的としたsiRNA(小干渉RNA)やCRISPR/Cas9による遺伝子治療が試験管内および動物実験で有望な結果を示しています。臨床応用にはさらなる研究が必要ですが、将来的な治療選択肢として期待されています。
MECDの病態の本質は、角膜上皮特異的ケラチン(K3/K12)の構造異常に起因する上皮の脆弱性である。
K3とK12はヘテロポリマーとして中間径フィラメントを形成し、角膜上皮の構造的枠組みを維持する。KRT3またはKRT12遺伝子の変異により異常ケラチンが産生されると、フィラメント形成が障害される。中間径フィラメントの集合異常は上皮細胞の機械的脆弱性をもたらし、細胞内に嚢胞が形成される。
組織病理学的には角膜上皮の厚さが不均一となり、上皮内のさまざまなレベルにマイクロシストが分布する。嚢胞内には変性した上皮細胞や細胞破片が蓄積し、周辺虹彩前癒着染色陽性(ムコ多糖の沈着)を示す。電子顕微鏡では「peculiar substance」と呼ばれる電子密度の高い線維顆粒状物質が上皮細胞内に観察される。
上皮基底膜は粗く不規則に肥厚し多層化する。一方、Bowman層と角膜実質は通常侵されない。ただし近年のIVCM所見では、Bowman層の変化や角膜実質細胞の活性化など、慢性的な上皮炎症の影響が深層にも及ぶ可能性が示唆されている1)。
嚢胞を含む上皮細胞が眼表面最表層に達すると上皮障害が生じ、再発性角膜びらんの原因となる。嚢胞の自然破裂により角膜表面に微小な上皮欠損が形成される。
世界各地でMECDの新規遺伝子変異の同定が進んでいる。スペインの家系でKRT3遺伝子の新規病的バリアントc.1527G>T(p.Glu509Asp)が報告され、疾患の遺伝的多様性がさらに拡大した1)。変異の同定は正確な診断のみならず、将来の遺伝子治療戦略の基盤となる。
AS-OCTによる上皮厚マップは、MECDにおける上皮変化を定量的に評価する新たなツールとして注目されている1)。眼瞼裂間の上皮肥厚パターンは疾患の進行モニタリングや治療効果判定に有用である可能性がある。
変異K12の発現を抑制するアレル特異的siRNAがヒトMECD細胞株で有望な結果を示している1)。CRISPR/Cas9による変異K12のin vivoでの発現抑制も実験的に成功している1)。ただし、これらの治療法の臨床応用には有効性と安全性のさらなる検証が必要である。
- De Faria A, Charoenrook V, Larena R, et al. A novel pathogenic variant in the KRT3 gene in a family with Meesmann corneal dystrophy. J Clin Med. 2025;14:851.