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角膜・外眼部疾患

格子状角膜ジストロフィ

1. 格子状角膜ジストロフィとは

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格子状角膜ジストロフィ(LCD)は、角膜実質にアミロイドが沈着し格子状の線状混濁を生じる遺伝性角膜ジストロフィである。IC3D分類では1型とそのvariant(従来の3型、3A型、1/3A型、4型)に分類される。これらはTGFBI遺伝子の変異による常染色体優性遺伝である。

1型の代表的変異はTGFBI遺伝子の124番目のアルギニンがシステインに変異したもの(R124C)である。組織学的にコンゴレッド染色で赤色を呈し、偏光顕微鏡でアップルグリーンの複屈折を示すことでアミロイドと確定できる。

従来の2型はGSN(ゲルソリン)遺伝子変異による全身性アミロイドーシス(Meretoja症候群)の眼症状であり、IC3D分類では格子状角膜ジストロフィとは別に分類される。

病型遺伝子変異発症年齢
1型TGFBI R124C10〜20歳代
3A型TGFBI L527R等30〜50歳代
2型GSN30〜40歳代
Q 1型と2型はどう違いますか?
A

1型はTGFBI遺伝子変異による角膜限局性のアミロイド沈着であり、10〜20歳代に中心角膜から発症する。再発性上皮びらんを高頻度に生じる。2型はGSN(ゲルソリン)遺伝子変異による全身性アミロイドーシスの眼症状であり、30〜40歳代に周辺部角膜から発症する。2型では皮膚弛緩・末梢神経障害・心臓不整脈などの全身症状を伴う2)。IC3D分類では2型は格子状角膜ジストロフィとは独立に分類される。

1型では初期に再発性上皮びらんによる疼痛や異物感を訴える。40歳までに視力不良となる。羞明やグレアも認める。3A型・4型では晩年に視力障害が生じ、上皮びらんは1型ほど頻繁ではない。

2型では眼症状は通常30〜40歳代に出現するが、重大な視力障害は60歳代まで見られないことが多い。GSN p.Glu580Lys変異を有するスロベニア家族では角膜格子状ジストロフィに加え、皮膚弛緩(dermatochalasis)、心臓不整脈、視神経障害が報告されている2)

1型では両眼の瞳孔領に初発する。Bowman層あるいは実質浅層に二重の輪郭を持った糸状・線状混濁が絡みあい、網目状・星状の混濁となる。進行に従い中央部角膜の混濁は卵黄形あるいは円形の混濁となる。反帰照明法で実質層周辺部に白い微細な線状混濁が明瞭に観察される。フルオレセイン染色では上皮への「のり」がroughとなる特徴がある。

3A型では角膜中央に太い格子状の線状混濁がみられ、実質深層に存在する。最周辺部の実質層、Descemet膜や内皮細胞は巻き込まない。3A型には格子状線・小粒状沈着・両者の混在の3つの表現型パターンがある。同一個体内で左右眼が異なる表現型を示す場合や片眼性の症例もある。

2型では格子状沈着はより少数で繊細さに欠け、周辺部に位置する。上皮びらんは少ないか認められない。「仮面様」の顔貌、運動障害を伴う突出した唇、垂れ下がった耳、眼瞼皮膚弛緩症を呈することがある。

格子状角膜ジストロフィの原因遺伝子と遺伝形式を以下に示す。

TGFBI関連(1型・3A型・4型)

遺伝子座:5q31(TGFBI遺伝子)

遺伝形式:常染色体優性遺伝

1型の変異:R124C(Arg124Cys)が代表的である。

3A型の変異:L527R(Leu527Arg)等が報告されている。

de novo変異:TGFBI L509P変異がde novoで発生しLCD IIIAの表現型を呈した症例が報告されている1)。両親には変異がなく、子の一人に変異が遺伝していた1)

GSN関連(2型)

遺伝子座:9q34(GSN遺伝子)

遺伝形式:常染色体優性遺伝

代表的変異:p.Asp214Asn(フィンランド型)が最も多い。

新規変異:GSN p.Glu580Lys変異がスロベニア家族で報告され、角膜格子状ジストロフィ・皮膚弛緩・心臓不整脈を伴う全身性アミロイドーシスを呈した2)

分子構造:p.Glu580Lys変異はG4-G5ドメイン境界に位置し、負電荷から正電荷への置換により静電的反発を生じさせる2)

遺伝性疾患であるため、家族歴が最も重要なリスク因子である。ただし両親に変異がなくde novoで発生する症例もあり、家族歴がないことだけでは除外できない1)

臨床検査

細隙灯顕微鏡検査:直接照明では格子状線状混濁の検出が困難な場合がある。反帰照明法で半透明な細い格子状線が明瞭に観察される。

フルオレセイン染色:上皮接着性の低下により「のり」がroughとなる。上皮びらんの範囲を評価できる。

前眼部光干渉断層計OCT:FD-OCTによる病変深度の定量的評価がPTKの切除深度の決定に有用である1)

確定診断

遺伝子検査:TGFBI遺伝子またはGSN遺伝子の変異検出により確定診断が可能である。同じ遺伝子変異でも表現型が異なる場合があるため、遺伝子検査が不可欠である。

病理検査:コンゴレッド染色で赤色を呈し、偏光顕微鏡でアップルグリーンの複屈折を示すことでアミロイドと確定できる。

鑑別診断として顆粒状角膜ジストロフィ(ヒアリン沈着)、斑状角膜ジストロフィ(グリコサミノグリカン沈着)、膠様滴状角膜ジストロフィ(常染色体劣性)、続発性角膜アミロイドーシス(慢性刺激による二次的沈着)が挙げられる。続発性アミロイドーシスは遺伝がないこと、睫毛乱生円錐角膜など慢性眼表面刺激の背景があることが鑑別のポイントとなる。

角膜表層のアミロイド沈着が主体である1型で中央部混濁が強い場合、あるいは再発性上皮びらんが繰り返す場合にPTKが第一選択である。通常早期には再発しないが、経時的に再発が生じる。PTK治療は2回程度施行可能である。

TGFBI L509P変異によるLCD IIIAの症例では、FD-OCTガイド下に60 μmのPTKを施行し、最高矯正視力(BCVA)が20/400から20/50に改善した1)。術後45ヶ月時点で視力低下や有意な再発は認められなかった1)

ヘテロ接合体では再発は緩徐であり再治療を要する例は少ないが、ホモ接合体ではヘテロ接合体に比べ早期に再発する。

再発を繰り返す例、あるいは実質中層より深い層に混濁がある場合は角膜移植を選択する。1型では通常40歳を過ぎるまで角膜移植の適応とならない。角膜内皮細胞は正常であるため、混濁の深さにより以下の術式を選択する。

術式適応
表層角膜移植浅層の混濁
深層前部角膜移植中層〜深層の混濁
全層角膜移植全層に及ぶ混濁

角膜移植後のLCD再発率は全層角膜移植後5年で17.8%、15年で56%と報告されている。移植片の再発性混濁はPTKで除去可能であり、再移植の必要性を回避・遅延できる。

Q PTKはどの程度有効ですか?
A

PTKは表層のアミロイド沈着を効果的に除去でき、視力改善が得られる。LCD IIIAの症例では60 μmのPTK後に最高矯正視力が20/400から20/50に改善し、45ヶ月間再発がなかったと報告されている1)。ヘテロ接合体では再発は緩徐であるが、ホモ接合体では早期再発がみられる。深い病変はPTKでは除去できないため、深層混濁には角膜移植が必要となる。PTKのリスクとして遠視化と実質混濁がある。

Q 角膜移植後に再発しますか?
A

角膜移植後の再発は避けられない。全層角膜移植術後の再発率は5年で17.8%、8年で26%、15年で56%と報告されている。ただし再発混濁は通常表層に限局するため、PTKで除去でき移植片の寿命を延ばすことができる。深層層状角膜移植術(DALK)は全層角膜移植術に比べ拒絶反応のリスクが低く、新たな第一選択として注目されている。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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LCD1の病態生理にはTGFBIp(kerato-epithelin)の異常蓄積が関与する。TGFBI遺伝子変異により産生されたミスフォールドタンパク質が凝集し、不溶性のアミロイドとして角膜実質に沈着する。1型では沈着はBowman層〜実質浅層に初発し、進行に伴い実質深層へ広がる。

アミロイド沈着は前部角膜の上皮接着構造に変化を生じさせ、再発性角膜びらんを引き起こす。さらにLCD1の病理学的検討では、Descemet膜近傍の後部角膜にもアミロイド沈着が存在することが示された3)。後部角膜のアミロイド沈着がDescemet膜の接着に影響を及ぼし、白内障手術時のDescemet膜剥離に寄与する可能性がある3)。前部角膜でのアミロイド沈着が上皮接着を障害するメカニズムと同様の機序が後部角膜でも作用している可能性が示唆されている3)

2型はGSN遺伝子変異によるゲルソリンタンパク質の異常折り畳みと全身性沈着に起因する。ゲルソリンは細胞質および細胞外タンパク質であり、アクチン結合を介した細胞運動・細胞分裂・アポトーシスに関与する。新規のGSN p.Glu580Lys変異はG4-G5ドメイン境界に位置し、負電荷から正電荷への置換が静電的反発を生じ、ドメイン間の連結性と安定性を低下させる2)

TGFBI遺伝子のアミノ酸変異が1つ異なるだけで臨床像が大きく異なるという特徴があり、これらはTGFBI関連角膜ジストロフィとして包括的に分類される。

TGFBI遺伝子のde novo変異によるLCDの発生が報告されている1)。家族歴がない症例でもde novo変異の可能性を考慮し、遺伝子検査による確認が推奨される1)。L509P変異は稀であるが、Reis-Bücklers角膜ジストロフィ様からLCD IIIA様まで多様な表現型を呈する1)

GSN遺伝子では従来のp.Asp214Asn/Tyr変異に加え、新規のp.Glu580Lys変異が報告され、角膜格子状ジストロフィ・皮膚弛緩・心臓不整脈・腎障害・視神経障害を伴う全身性アミロイドーシスを呈した2)

LCD1患者の後部角膜にアミロイド沈着が存在し、Descemet膜の接着に影響を及ぼす可能性が病理学的に示された3)。白内障手術をはじめとする内眼手術時のDescemet膜剥離リスクへの注意が必要である。

フェムトセカンドレーザー補助層状角膜切除術(FLK)やフェムトセカンドレーザー補助層状角膜移植術(FALK)など、より精密な手術手技の開発が進められている。深層層状角膜移植術は拒絶反応リスクの低減と全層角膜移植術に匹敵する視力転帰により新たな第一選択として注目されている。

  1. Ji YW, Ahn H, Shin KJ, Kim Ti, Seo KY, Stulting RD, Kim EK. De Novo L509P Mutation of the TGFBI Gene Associated with Slit-Lamp Findings of Lattice Corneal Dystrophy Type IIIA. J Clin Med. 2022;11(11):3055.
  2. Potrc M, Volk M, de Rosa M, Pizem J, Teran N, Jaklic H, Maver A, Drnovsek-Olup B, Bollati M, Vogelnik K, Hocevar A, Gornik A, Pfeifer V, Peterlin B, Hawlina M, Fakin A. Clinical and Histopathological Features of Gelsolin Amyloidosis Associated with a Novel GSN Variant p.Glu580Lys. Int J Mol Sci. 2021;22(3):1084.
  3. Matsumoto A, Fukuoka H, Sotozono C. Descemet’s Membrane Detachment During Cataract Surgery in Lattice Corneal Dystrophy Type I: Histopathological Analysis of Posterior Corneal Involvement. Cureus. 2025;17(3):e81431.

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