GCD1(R555W)
顆粒状混濁:角膜中央部に境界鮮明で比較的小さい白色〜灰白色の顆粒状混濁が散在する。パン屑状・雪片状。
沈着物質:ヒアリン(硝子質)のみ。マッソントリクローム染色で赤色。アミロイドは含まない。
進行:加齢とともに顆粒の数が増え、境界が不明瞭となる。

顆粒状角膜ジストロフィ(granular corneal dystrophy:GCD)は、角膜実質に顆粒状の沈着物が生じることを特徴とする遺伝性の角膜疾患である。IC3D分類では上皮-実質TGFBI関連ジストロフィに分類される。
TGFBI遺伝子(染色体5q31)の点突然変異が原因であり、変異の違いにより以下の2型に分類される。
| 分類 | 主な変異 | 別名 |
|---|---|---|
| GCD1 | Arg555Trp(R555W) | 古典的顆粒状・Groenouw 1型 |
| GCD2 | Arg124His(R124H) | Avellino角膜ジストロフィ |
GCD2は2型としてGCD1から分離されたのは1992年であり、最初の家系がイタリアのアベリーノ地方に由来したことからAvellino角膜ジストロフィと呼ばれた1)。
四大角膜ジストロフィ(顆粒状I型・II型、格子状I型・IIIA型、膠様滴状、斑状)が遺伝子診断例の約96%を占める。
ホモ接合体では幼少期(4〜7歳)から著明な視力低下を来し、10歳前後で治療が必要となる。
GCD1(R555W)
顆粒状混濁:角膜中央部に境界鮮明で比較的小さい白色〜灰白色の顆粒状混濁が散在する。パン屑状・雪片状。
沈着物質:ヒアリン(硝子質)のみ。マッソントリクローム染色で赤色。アミロイドは含まない。
進行:加齢とともに顆粒の数が増え、境界が不明瞭となる。
GCD2(R124H)
顆粒状混濁:GCD1より大きい白色〜灰白色の境界鮮明な混濁で発症する。金平糖状、線状、星状など表現型が多様。
沈着物質:ヒアリンとアミロイドの両方。マッソントリクローム染色+コンゴレッド染色ともに陽性。
進行:25〜30歳以上で実質中層に棒状・星状の濃い白色混濁が加わる。浅層にびまん性の面状沈着が強くなる1)。
いずれの型でも混濁は角膜中央部に位置し、輪部周辺部には及ばない。通常両眼性で左右差は少ない。
ホモ接合体変異では表現型が著しく異なる。
ホモ接合体は幼少期(4〜7歳)に発症し、進行が速い。角膜全面に隙間なく白色混濁が生じ、10歳前後でPTKや角膜移植が必要となる。ヘテロ接合体は緩徐に進行し、通常50代まで良好な視力を維持できる。
GCDはTGFBI遺伝子の点突然変異により発症する。TGFBI遺伝子は細胞外マトリックス蛋白であるTGFBIp(ケラトエピセリン)をコードしている。変異TGFBIpは蛋白分解への感受性が低下し、角膜実質内に異常な不溶性沈着物として蓄積する1)。
臨床診断は細隙灯顕微鏡による前部実質の境界鮮明な顆粒状混濁の観察と、陽性の家族歴に基づく。充血と角膜浮腫のない両眼性の角膜混濁(沈着)を認めた場合、角膜ジストロフィを疑う。
角膜ジストロフィの鑑別では、沈着が「境界明瞭」か「びまん性」かをまず判断する。境界明瞭な顆粒状沈着であれば、沈着のサイズによりGCD1(小さい)とGCD2(大きい)を鑑別する。GCD2では強膜散乱法で顆粒状沈着の間にびまん性の濁りを確認できる。
2020年4月から角膜ジストロフィ遺伝子検査として保険収載されている。ただし施設認定が必要であるため、検査実施可能な施設は限られている。臨床所見が疑わしい場合は遺伝子検査による確定診断が望ましい。
視力低下や再発性角膜上皮剥離がない初期段階では治療は不要である。
沈着の深さに応じて治療法を選択する。最終目標はできるだけ角膜移植を先延ばしにすることである。
PTK
適応:前部実質の混濁。第一選択として推奨される。
利点:反復施行可能。移植片拒絶のリスクがない。上皮下のびまん性混濁はPTKの良い適応である。
限界:1回で約50μmの実質を切除するため施行回数に限界がある。約1.5Dの遠視化が生じる。
DALK/ALK
適応:深い実質混濁。PTKが角膜厚の制約で施行不能な場合。
利点:内皮が正常であるためDALKが好まれる。内皮型拒絶反応のリスクがない。
再発:ホスト-グラフトジャンクションやグラフト実質浅層で再発する。
PK
適応:再発を繰り返し実質深層に沈着を来した場合の最終手段。
再発までの中央値:PKは13.7年と最も長い。PTK・ALK・DALKは2.7〜3.7年。
最終矯正視力:いずれの術式でも同等(20/25〜20/30)。
GCDはLASIK、LASEK、PRK、SMILEのいずれも禁忌である。術後に角膜混濁が急速に増悪し、重度の視力低下を来す1)。LASIK後はフラップとストロマベッドの間に多数の小顆粒状沈着が形成される。LASIKはPRKと比較して増悪がより重篤で、最終視力も不良である1)。
TGFBI遺伝子は細胞外マトリックス蛋白であるTGFBIp(ケラトエピセリン)をコードする。TGFBIpは細胞接着、遊走、増殖に関与する1)。TGFBI遺伝子に変異が生じると、変異TGFBIpは蛋白分解を受けにくくなり、角膜実質内に不溶性の沈着物として蓄積する。
GCD1はArg555Trp(R555W)変異に起因する。変異TGFBIpはヒアリン(硝子質)として角膜実質に沈着する。
GCD2はArg124His(R124H)変異にほぼ限定される1)。GCD2ではヒアリンとアミロイドの両方が沈着する。
LASIK後にフラップとストロマベッドの間にTGFBIpが急速に沈着する。これは角膜中央部での手術操作が変異TGFBIpの蓄積を促進するためと考えられる1)。白内障手術時の角膜切開(輪部近傍)では増悪しないことから、血管化した輪部との距離が関連すると推定されている1)。
GCD2に対する新たな治療法の開発が進められている1)。
塩化リチウムはTGFBI蛋白産生を減少させることが報告されている。メラトニンとラパマイシンの併用療法はTGFBI蛋白発現を阻害すると同時に、変異TGFBIpの分解を促進する可能性が示されている1)。
small interfering RNA(siRNA)やshort hairpin siRNAを用いた変異TGFBI発現のサイレンシングが研究されている。CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術も候補に挙がるが、正常アレルや他の遺伝子への意図しないオフターゲット効果が課題である1)。