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角膜・外眼部疾患

顆粒状角膜ジストロフィ(GCD)

1. 顆粒状角膜ジストロフィ(GCD)とは

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顆粒状角膜ジストロフィ(granular corneal dystrophy:GCD)は、角膜実質に顆粒状の沈着物が生じることを特徴とする遺伝性の角膜疾患である。IC3D分類では上皮-実質TGFBI関連ジストロフィに分類される。

TGFBI遺伝子(染色体5q31)の点突然変異が原因であり、変異の違いにより以下の2型に分類される。

分類主な変異別名
GCD1Arg555Trp(R555W)古典的顆粒状・Groenouw 1型
GCD2Arg124His(R124H)Avellino角膜ジストロフィ

GCD2は2型としてGCD1から分離されたのは1992年であり、最初の家系がイタリアのアベリーノ地方に由来したことからAvellino角膜ジストロフィと呼ばれた1)

  • 遺伝形式:常染色体優性遺伝。高い浸透率を示す
  • 1型:欧米に多い。日本では少ない
  • 2型:日本・韓国など東アジアに多い。韓国での有病率は約1万人に11.5人1)
  • 頻度:GCD2はTGFBI関連角膜ジストロフィの72〜91%を韓国・日本で占め、米国では36%、ポーランドでは3%にとどまる1)

四大角膜ジストロフィ(顆粒状I型・II型、格子状I型・IIIA型、膠様滴状、斑状)が遺伝子診断例の約96%を占める。

  • 無症状〜軽度:ヘテロ接合体ではグレアや羞明を訴えるが、通常50代まで良好な視力を維持できる
  • 再発性角膜上皮剥離:沈着物がボウマン層や上皮基底部を障害し、睡眠中や起床時に鋭い角膜痛を生じる。流涙・充血・視力低下を伴う
  • 視力低下:沈着物間の透明領域が不透明化すると劇的に視力が低下する

ホモ接合体では幼少期(4〜7歳)から著明な視力低下を来し、10歳前後で治療が必要となる。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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GCD1(R555W)

顆粒状混濁:角膜中央部に境界鮮明で比較的小さい白色〜灰白色の顆粒状混濁が散在する。パン屑状・雪片状。

沈着物質:ヒアリン(硝子質)のみ。マッソントリクローム染色で赤色。アミロイドは含まない。

進行:加齢とともに顆粒の数が増え、境界が不明瞭となる。

GCD2(R124H)

顆粒状混濁:GCD1より大きい白色〜灰白色の境界鮮明な混濁で発症する。金平糖状、線状、星状など表現型が多様。

沈着物質:ヒアリンとアミロイドの両方。マッソントリクローム染色+コンゴレッド染色ともに陽性。

進行:25〜30歳以上で実質中層に棒状・星状の濃い白色混濁が加わる。浅層にびまん性の面状沈着が強くなる1)

いずれの型でも混濁は角膜中央部に位置し、輪部周辺部には及ばない。通常両眼性で左右差は少ない。

ホモ接合体変異では表現型が著しく異なる。

  • GCD1ホモ接合体:角膜上皮下〜実質浅層の同一深度に白色の細網状混濁がほとんど隙間なく存在する。進行すると虹彩前房が観察不能となる
  • GCD2ホモ接合体:充実性の円形白色混濁が最周辺部を除く角膜全面に隙間なく生じる。肉眼でも白さが認識できるほど重症である1)。I型(点状灰白色沈着)とII型(網状灰白色沈着)の2つの表現型が報告されている1)
Q ホモ接合体とヘテロ接合体で経過はどう違いますか?
A

ホモ接合体は幼少期(4〜7歳)に発症し、進行が速い。角膜全面に隙間なく白色混濁が生じ、10歳前後でPTKや角膜移植が必要となる。ヘテロ接合体は緩徐に進行し、通常50代まで良好な視力を維持できる。

GCDはTGFBI遺伝子の点突然変異により発症する。TGFBI遺伝子は細胞外マトリックス蛋白であるTGFBIp(ケラトエピセリン)をコードしている。変異TGFBIpは蛋白分解への感受性が低下し、角膜実質内に異常な不溶性沈着物として蓄積する1)

  • 家族歴:常染色体優性遺伝であり、罹患者の子の50%が発症する
  • ホモ接合体:同じ変異のホモ接合体ではより重篤な表現型を示す
  • 角膜外科手術:GCD2は角膜外傷後に急速に進行する。レーザー屈折矯正手術後に混濁が著明に増悪する
  • 人種:GCD2は東アジア(韓国・日本)に多い

臨床診断は細隙灯顕微鏡による前部実質の境界鮮明な顆粒状混濁の観察と、陽性の家族歴に基づく。充血と角膜浮腫のない両眼性の角膜混濁(沈着)を認めた場合、角膜ジストロフィを疑う。

角膜ジストロフィの鑑別では、沈着が「境界明瞭」か「びまん性」かをまず判断する。境界明瞭な顆粒状沈着であれば、沈着のサイズによりGCD1(小さい)とGCD2(大きい)を鑑別する。GCD2では強膜散乱法で顆粒状沈着の間にびまん性の濁りを確認できる。

  • 細隙灯顕微鏡:境界鮮明な白色顆粒状混濁を直接観察する。強膜散乱法・反帰光も活用する
  • 前眼部光干渉断層計AS-OCT:前部実質の高反射混濁を描出する。PTKの切除深度計画にも有用
  • 共焦点顕微鏡:上皮-ボウマン層間に不規則で高反射なパン屑状混濁を認める
  • 超音波生体顕微鏡(UBM):表層実質内の高反射顆粒を検出する
  • 角膜形状解析:混濁の密度に関する追加情報を提供する
  • 遺伝子検査:TGFBI遺伝子解析が確定診断に有用。2020年4月から角膜ジストロフィ遺伝子検査として保険収載されている
  • GCD1:マッソントリクローム染色で赤色に染まるヒアリン沈着物。アミロイドは含まない。電子顕微鏡で棒状・台形の沈着物
  • GCD2:ヒアリン(マッソントリクローム染色陽性)とアミロイド(コンゴレッド染色陽性、偏光顕微鏡で黄緑色)の両方が沈着。電子顕微鏡で棒状電子密度沈着物とアミロイド細線維1)
  • 格子状角膜ジストロフィ1型(LCD1):TGFBI R124C変異。実質にアミロイド沈着による線状・格子状の混濁を呈する。再発性角膜上皮びらんを伴いやすい
  • 斑状角膜ジストロフィ(MCD):CHST6遺伝子変異。常染色体劣性。角膜全体がびまん性に混濁する
  • Reis-Bücklers角膜ジストロフィ:TGFBI R124L変異。ボウマン層の地図状混濁
  • 斑点状角膜ジストロフィ(FCD):PIP5K3変異。実質全体に小さな白い斑点。通常無症状
  • Schnyder角膜ジストロフィ:UBIAD1変異。脂質沈着による角膜混濁
Q 遺伝子検査は保険で受けられますか?
A

2020年4月から角膜ジストロフィ遺伝子検査として保険収載されている。ただし施設認定が必要であるため、検査実施可能な施設は限られている。臨床所見が疑わしい場合は遺伝子検査による確定診断が望ましい。

視力低下や再発性角膜上皮剥離がない初期段階では治療は不要である。

  • 人工涙液:乾燥と刺激を軽減する
  • 治療用ソフトコンタクトレンズ:再発性上皮剥離に対し、眼表面を保護し治癒を促進する
  • 抗菌点眼薬・眼軟膏:上皮剥離時の二次感染予防

沈着の深さに応じて治療法を選択する。最終目標はできるだけ角膜移植を先延ばしにすることである。

PTK

適応:前部実質の混濁。第一選択として推奨される。

利点:反復施行可能。移植片拒絶のリスクがない。上皮下のびまん性混濁はPTKの良い適応である。

限界:1回で約50μmの実質を切除するため施行回数に限界がある。約1.5Dの遠視化が生じる。

DALK/ALK

適応:深い実質混濁。PTKが角膜厚の制約で施行不能な場合。

利点:内皮が正常であるためDALKが好まれる。内皮型拒絶反応のリスクがない。

再発:ホスト-グラフトジャンクションやグラフト実質浅層で再発する。

PK

適応:再発を繰り返し実質深層に沈着を来した場合の最終手段。

再発までの中央値:PKは13.7年と最も長い。PTK・ALK・DALKは2.7〜3.7年。

最終矯正視力:いずれの術式でも同等(20/25〜20/30)。

  • GCD2ホモ接合体:初回PTK後18ヶ月で再発し、2回目・3回目以降は3ヶ月で再発する1)
  • GCD2ヘテロ接合体:PTK後の再発は平均38.4ヶ月と緩徐である1)
  • マイトマイシンC(MMC):PTK時のマイトマイシンC使用は推奨されない。マイトマイシンCは角膜実質のケラトサイトのアポトーシスを誘導し、TGFBIpの再吸収・分解を担う細胞を減少させるためである1)
  • LASIK後の増悪例:PTK施行可能だが、LASIKフラップ除去後の方が効果が高い1)

GCDはLASIK、LASEK、PRK、SMILEのいずれも禁忌である。術後に角膜混濁が急速に増悪し、重度の視力低下を来す1)。LASIK後はフラップとストロマベッドの間に多数の小顆粒状沈着が形成される。LASIKはPRKと比較して増悪がより重篤で、最終視力も不良である1)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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TGFBIp(ケラトエピセリン)の蓄積

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TGFBI遺伝子は細胞外マトリックス蛋白であるTGFBIp(ケラトエピセリン)をコードする。TGFBIpは細胞接着、遊走、増殖に関与する1)。TGFBI遺伝子に変異が生じると、変異TGFBIpは蛋白分解を受けにくくなり、角膜実質内に不溶性の沈着物として蓄積する。

GCD1はArg555Trp(R555W)変異に起因する。変異TGFBIpはヒアリン(硝子質)として角膜実質に沈着する。

GCD2はArg124His(R124H)変異にほぼ限定される1)。GCD2ではヒアリンとアミロイドの両方が沈着する。

  • オートファジーの障害:GCD2ではオートファジーの障害が報告されており、TGFBIpの分解が低下することで蓄積が促進される1)
  • ミトコンドリア機能不全:変異TGFBIp自体が角膜線維芽細胞に影響し、ミトコンドリア機能不全を引き起こす可能性が示唆されている1)
  • 角膜新生血管の影響:角膜新生血管を伴う領域では沈着物が減少・再吸収される傾向がある。血管供給のない角膜中央部に沈着が集中する機序を裏付ける所見である1)

LASIK後にフラップとストロマベッドの間にTGFBIpが急速に沈着する。これは角膜中央部での手術操作が変異TGFBIpの蓄積を促進するためと考えられる1)白内障手術時の角膜切開(輪部近傍)では増悪しないことから、血管化した輪部との距離が関連すると推定されている1)

GCD2に対する新たな治療法の開発が進められている1)

塩化リチウムはTGFBI蛋白産生を減少させることが報告されている。メラトニンとラパマイシンの併用療法はTGFBI蛋白発現を阻害すると同時に、変異TGFBIpの分解を促進する可能性が示されている1)

small interfering RNA(siRNA)やshort hairpin siRNAを用いた変異TGFBI発現のサイレンシングが研究されている。CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術も候補に挙がるが、正常アレルや他の遺伝子への意図しないオフターゲット効果が課題である1)

  • 角膜電気分解(corneal electrolysis):角膜移植後の再発例に対する試験的使用が報告されている。長期成績は不明である
  • 機械学習による診断支援:臨床写真からGCDを自動識別するAIモデルの開発が報告されている
  1. Chang MS, Jun I, Kim EK. Mini-Review: Clinical Features and Management of Granular Corneal Dystrophy Type 2. Korean J Ophthalmol. 2023;37(4):340-347.

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