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角膜・外眼部疾患

クロスリンキング関連感染症

1. クロスリンキング関連感染症とは

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角膜クロスリンキング(CXL)は、リボフラビンと紫外線A(UVA)を用いて角膜コラーゲン線維の結合を強化する手技である。円錐角膜やその他の進行性角膜拡張症に対して広く用いられている3)。CXL自体は活性酸素種(ROS)の産生を通じて抗菌作用をもつが、あらゆる角膜手術と同様に術後感染のリスクが存在する1)

CXL後の感染性角膜炎の発生率は報告によって異なる。Shetty et al.は2,350眼中4眼(0.0017%)と極めて低い発生率を報告し1)、南インドの大規模シリーズでは3,842眼中11眼(0.21%)、イランのシリーズでは4,863眼中6眼(0.12%)とされている。

一方、CXLは感染性角膜炎の治療としても用いられる。PACK-CXL(Photo Activated Chromophore for Keratitis)と呼ばれるこの応用は、2008年にIseli et al.が初めて報告した1)。薬物療法に抵抗性の微生物性角膜炎に対し、角膜融解の進行抑制と殺菌効果を発揮する1)2)

Cross Linking Related Infections image
Cross Linking Related Infections image
Ayşe Bozkurt Oflaz, Banu Bozkurt, Ümit Kamış, Bengü Ekinci Köktekir Corneal Collagen Crosslinking Treatment in a Case with Pneumococcal Keratitis 2017 Jun 1 Turk J Ophthalmol. 2017 Jun 1; 47(3):161-164 Figure 2. PMCID: PMC5468530. License: CC BY.
角膜中央に白色の浸潤とびまん性混濁があり、周囲結膜には強い充血がみられる。角膜クロスリンキング後に生じた感染性角膜炎の重症例を示す臨床写真である。

CXL後の感染性角膜炎は典型的には術後1〜5日で発症する。眼痛、充血、視力低下を主訴とする。

  • 角膜浸潤: 実質内の白色結節性浸潤。中央〜傍中心部に好発する。衛星状病変を伴うことがある
  • 前房蓄膿: 重症例では前房に蓄膿が認められる
  • 角膜浮腫: びまん性の結膜充血と角膜浮腫
  • 上皮欠損: エピオフ法後は上皮再生過程にあるため、上皮欠損を伴うことが多い
  • 角膜穿孔: 重症例ではデスメ膜瘤から角膜穿孔に至る。Rana et al.は2例の角膜穿孔を報告している

報告された症例の予後は様々である。軽症例(表皮ブドウ球菌)では治療後に矯正視力20/22を達成した例がある一方、重症例(緑膿菌、MRSA、アカントアメーバ)では角膜移植が必要となり視力が著しく制限された例もある。

起炎菌

黄色ブドウ球菌(MSSA/MRSA):最も一般的な起炎菌。フィブロネクチン結合タンパク質による角膜細胞への付着能をもつ

緑膿菌:コンタクトレンズ使用に関連。7種のプロテアーゼを分泌し重度の角膜損傷を引き起こす

その他:表皮ブドウ球菌、大腸菌、アスペルギルス、アカントアメーバ、単純ヘルペスウイルス

リスク要因

エピオフ法:上皮バリアの喪失により感染リスクが上昇する3)

保護用コンタクトレンズ:術後使用するバンデージCLが感染の温床となりうる

フルオロキノロン耐性:CXL後感染の大半がフルオロキノロン耐性であったと報告されている

単純ヘルペスウイルス既往眼ではUV照射によるウイルス再活性化リスクがあり、CXLは禁忌とされる1)3)。Kymionis et al.はCXL後に単純ヘルペスウイルス角膜炎を発症した症例を報告しており、術後5日目に地図状上皮欠損、実質浮腫、前房内炎症が出現し、PCRで単純ヘルペスウイルス DNAが検出された。

Q 経上皮(トランスエピセリアル)CXLは感染リスクが低いですか?
A

エピオフ法と比較して、経上皮法は角膜上皮を温存するため理論的には感染リスクが低い。しかし、Rana et al.の報告では経上皮CXL後にも細菌性角膜炎が発症している。上皮バリアは重要な保護因子だが、完全な感染予防を保証するものではない。

  • 角膜擦過培養: 起炎菌の同定と感受性試験
  • 強化抗菌薬点眼: セファゾリン50 mg/mL+トブラマイシン14 mg/mL(またはゲンタマイシン)などを30分間隔で点眼
  • 経口抗菌薬: 重症例ではシプロフロキサシン750 mgなどを併用
  • 角膜穿孔への対処: シアノアクリレート接着剤による一時的閉鎖、結膜弁手術
  • 全層角膜移植: 重症例では治療的角膜移植が必要。Farrokhpour et al.のシリーズでは6例中5例がPKを要した

PACK-CXL(感染性角膜炎に対するCXL治療)

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PACK-CXLは薬物療法に抵抗性の感染性角膜炎に対する補助療法として用いられる1)2)

感染のタイプ有効性備考
細菌性(表層)高い最も効果的1)2)
真菌性中等度細菌より効果が劣る1)
アカントアメーバ限定的補助的に使用1)

Iseli et al.(2008)の初報告では、抗菌薬抵抗性の感染性角膜炎5眼全例で角膜融解の進行が阻止され、緊急角膜移植が回避された1)。Makdoumi et al.は抗菌薬なしのPACK-CXL単独治療で16眼中14眼の細菌性角膜炎を治癒させたと報告している1)

AAO Bacterial Keratitis PPP(2024)は、PACK-CXLについて薬物療法抵抗性の細菌性角膜炎に有益である可能性を認めている。メタアナリシスでは細菌性角膜炎の治療に潜在的に有効で角膜融解を抑制できるとされている。より表層の感染に対して効果が高く、標準的抗菌療法との併用が推奨される。ただし、この適応はFDA未承認である。2)

深部角膜炎や内皮プラークを伴う症例ではPACK-CXLの効果は限定的である1)。UVAエネルギーが角膜前層で吸収されるため、深部感染には到達しにくい2)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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CXLでは光活性化されたリボフラビンが励起状態となり、環境中の酸素と反応して**活性酸素種(ROS)**を産生する1)。ROSは以下の機序で殺菌効果を発揮する:

  1. 微生物DNAの損傷による複製阻害
  2. 細胞質膜の損傷による細胞内容物の漏出
  3. 酵素および膜輸送系の不活性化1)

また、CXLによるコラーゲン線維の架橋強化は角膜実質酵素分解に対してより抵抗性にし、微生物によるコラーゲン融解の進行を抑制する1)

CXLの抗菌作用にもかかわらず感染が生じる理由として、以下が考えられる:

  • 上皮バリアの喪失: エピオフ法では角膜上皮が完全に除去されるため、細菌侵入に対する最も重要な物理的バリアが失われる
  • 涙液防御の低下: 涙液中のホスホリパーゼA2などの抗菌因子は、コンタクトレンズ長期使用で減弱する
  • 術後免疫抑制: ステロイド点眼による局所免疫抑制
  • 上皮治癒遅延: CXL後は上皮再生が遅延する場合があり、無防備な期間が延長する3)

PACK-CXLは感染性角膜炎の有望な治療法として注目されている1)。複数のメタアナリシスで細菌性角膜炎に対する有効性が示されているが、真菌性感染に対しては結果が一貫していない2)。深部感染への有効性の限界を克服するため、照射プロトコルの最適化が進められている。

CXL後感染の予防に関しては、フルオロキノロン耐性菌の問題が重要である。術後抗菌薬としてフルオロキノロン以外の選択肢を考慮すべきとの指摘がある。経上皮法の普及により上皮バリアを温存した術式が増加しているが、感染リスクの低減効果については長期データが求められる。

  1. Lim L, Lim EWL. Current trends in corneal cross-linking. Open Ophthalmol J. 2018;12:181-213.
  2. American Academy of Ophthalmology Cornea/External Disease Preferred Practice Pattern Panel. Bacterial Keratitis PPP — 2024. Ophthalmology. 2024.
  3. American Academy of Ophthalmology Cornea/External Disease Preferred Practice Pattern Panel. Corneal Ectasia PPP — 2024. Ophthalmology. 2024.

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