IC-8 眼内レンズ適応眼
乱視軽度:1.5D未満の角膜乱視を有する患者。
高次収差増大:収差量が0.5μmを超え、多焦点眼内レンズが不適応となる可能性がある眼。
中間瞳孔径:暗所(mesopic)での瞳孔径が6mm以下の患者。

ピンホール眼内レンズ(Pinhole Intraocular Lens, Pinhole IOL)は、ピンホール原理(stenopeic principle)を眼内レンズの面に応用したプレミアム眼内レンズである。小開口(スモールアパーチャー)を通して中心部の細い光線のみを取り込み、周辺の拡散光を排除することで、網膜上の錯乱円(circle of blur)を減少させ、焦点深度(depth of focus)を深める。
ピンホール効果は、ピンホールオクルーダーや眼鏡、虹彩の外科的縮瞳など様々な形で眼科領域で古くから用いられてきたが、近年この概念が眼内レンズに導入された。
ピンホール原理の利点と欠点:
多焦点眼内レンズは入射光を複数の焦点に分割して近方・遠方視力を提供するが、グレアやハローが生じやすい。ピンホール眼内レンズは回折リングを持たず、ピンホール効果により焦点深度を延長するためグレアやハローが少ない。ただし、開口が光量を制限するため薄暗い環境での視力低下が生じうる。
ピンホール眼内レンズ挿入の適応となる患者が訴える症状は以下の通りである。
IC-8 眼内レンズ適応眼
乱視軽度:1.5D未満の角膜乱視を有する患者。
高次収差増大:収差量が0.5μmを超え、多焦点眼内レンズが不適応となる可能性がある眼。
中間瞳孔径:暗所(mesopic)での瞳孔径が6mm以下の患者。
Xtrafocus 眼内レンズ適応眼
高度不正乱視:円錐角膜、外傷後、全層角膜移植術後、放射状角膜切開術後による中等度〜重度の不正乱視。
光過敏症:ウレッツ・ザバラ症候群など難治性の光過敏症例。
IC-8 眼内レンズは、カムラ・コーネアル・インレイ(KAMRA Corneal Inlay)と同様の原理を利用した単焦点ピンホール眼内レンズである。
構造の特徴:
挿入方法:
視力成績:
光学的利点:
Xtrafocus 眼内レンズは、すでに嚢内にレンズが挿入されている偽水晶体眼に対して、毛様溝へピギーバック方式で挿入する小開口眼内レンズである。2016年にCEマークを取得済みで、FDA治験中である。
構造の特徴:
視力成績:
特記事項:
焦点深度延長型眼内レンズは回折または屈折の光学設計で焦点深度を延長するが、グレア・ハローを生じうる。IC-8 眼内レンズはピンホール効果による機械的な焦点深度延長で回折リングを持たないため、光学的現象(グレア・ハロー)が少ない。黄斑疾患や高次収差が大きい眼では焦点深度延長型眼内レンズより適応となりやすい。
適応:
禁忌・慎重適応:
主に円錐角膜・外傷・全層角膜移植術・放射状角膜切開術後に起因する中等度から重度の不正乱視を有する患者を対象とする。小開口と不透明な光学部により周辺視野が著しく制限される可能性があるため、患者選択と十分な説明が重要である。
ピンホール光学系の原理は、開口数(数値開口)を制限することで焦点深度を拡大するものである。瞳孔径が大きいほど収差による錯乱円は拡大するが、小開口が周辺光線(paraxial rayを外れた光線)を遮断することで焦点深度が深まる。
小開口が視覚特性に与える影響:
眼の節点に近い位置に配置されることで、角膜インレイ(例:カムラインレイ)と比較してデセントレーション(光軸ずれ)に対するロバスト性が高い。これは眼内レンズの利点の一つである。
Xtrafocus 眼内レンズは2016年にCEマークを取得しているが、米国ではMorcher社によるFDA治験を待機中である。難治性の光過敏症(ウレッツ・ザバラ症候群)に対する使用報告では顕著な改善が得られており、さらなる症例集積が期待される。
症例報告レベルではあるが、ピンホール眼内レンズを挿入した眼での網膜手術が大きな障害なく実施可能であることが示されており、今後の適応拡大が検討されている。
将来的な課題として、後嚢を保存する調節眼内レンズとピンホール光学系の組み合わせが研究されている。後嚢の完全性が保たれることが調節眼内レンズの機能に不可欠であり、後発白内障の予防との両立が検討されている。