急性CME
発症時期:術後4〜12週がピーク。
眼底所見:黄斑部に浮腫を認め、中心窩を中心とした花弁状の嚢胞配列を呈する。
OCT所見:黄斑部に嚢胞様変化を伴う網膜肥厚。
経過:多くは3〜4か月以内に自然消退する。

白内障術後嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema; CME)は、白内障手術後に黄斑部網膜の神経細胞間隙に組織液が貯留し、嚢胞様の浮腫をきたす状態である。特に白内障術後に生じるものをIrvine-Gass症候群と呼ぶ。
臨床的に有意なCMEは、合併症のない水晶体乳化吸引術後の1〜3%に発生する2)。多くの症例は局所抗炎症薬に良好な反応を示すが、治療抵抗例(約0.02%)では永続的な視力障害を伴うことがある2)。
臨床的に有意なCMEの発生率は最大2%と報告されている1)。大部分は自然消退する自己限定的な経過をたどるが、遷延または悪化する症例では治療が必要となる1)。
CMEの症状は通常、術後数週間で顕在化する。
初期・軽度の場合は視力低下を自覚しないこともあるが、中等度以上では明らかな視力低下をきたす。
病理学的には外網状層および内顆粒層に生じる嚢胞様変化である。特に中心窩周囲の外網状層(Henle線維層)に組織液が貯留しやすい。嚢胞の隔壁はMüller細胞や軸索線維により形成される。
急性CME
発症時期:術後4〜12週がピーク。
眼底所見:黄斑部に浮腫を認め、中心窩を中心とした花弁状の嚢胞配列を呈する。
OCT所見:黄斑部に嚢胞様変化を伴う網膜肥厚。
経過:多くは3〜4か月以内に自然消退する。
慢性CME
定義:6〜9か月以上持続するもの。
組織変化:永久的な網膜線維化を生じうる。
視細胞障害:浮腫消退後も視細胞構造の変化により永続的な視力障害が残存する可能性がある。
NSAIDsの役割:慢性CMEの管理にも有用だが、治療中止後の再発に注意を要する1)。
術後4〜12週にピークを迎えることが多い。多くは3〜4か月以内に自然消退するが、6か月以上持続する慢性例もある。視力低下が持続する場合は早期に眼科を受診すべきである。
CMEの発症には眼内の炎症が中心的な役割を果たす。白内障手術による組織侵襲が炎症カスケードを惹起し、血液網膜関門の破綻と血管透過性亢進をもたらす。
リスク因子は以下の通りである2)。
糖尿病患者は糖尿病網膜症がなくてもCME発症リスクが高い1)。
網膜前膜(ERM)はCME発症の重要なリスク因子であり、術前の中心網膜厚が高いほどリスクが上昇する。術前にスペクトラルドメインOCTを施行し、眼底検査では見逃されやすい黄斑上膜の存在を確認することが推奨される1)。
糖尿病網膜症がなくてもCME発症リスクは高まる1)。そのためステロイドとNSAIDsの併用点眼が推奨されており、糖尿病網膜症がある場合はトリアムシノロンのデポ注射の追加も検討される1)。
CMEの診断は臨床所見と画像検査を組み合わせて行う。
| 検査法 | 特徴 | 役割 |
|---|---|---|
| OCT | 非侵襲的 | 標準的な画像診断2) |
| FA | 花弁状蛍光漏出 | ゴールドスタンダード |
| 眼底検査 | 花弁状嚢胞 | 初期スクリーニング |
Snellen視力検査のみではCMEが視機能に与える影響を過小評価する可能性がある2)。
NSAIDsとステロイドの併用点眼は、通常の白内障手術後の炎症およびCME予防に対してエビデンスに基づく推奨がなされている1)。
ESCRS PRIMEDランダム化比較試験では、ブロムフェナク0.09%(1日2回)とデキサメタゾン0.1%(1日4回)の併用が、いずれかの単剤使用よりもCME予防に有効であることが示された1)2)。
主なエビデンスを以下に示す。
NSAIDs点眼の視力回復への短期的効果は示されているが、3か月以上の長期予後改善に関するレベルIエビデンスは未確立である2)。
糖尿病患者ではステロイドとNSAIDsの併用点眼が推奨される1)。
CMEに対する第一選択は局所NSAIDsまたはステロイドである1)。しかし最適な治療法を確立するエビデンスは現時点で不十分である1)。
主な治療薬は以下の通りである。
2〜3か月間のNSAIDs投与では視力改善が得られない場合もあるが、3〜4か月の長期投与で改善が認められる場合がある1)。治療中止後のCME再発に注意を要する1)。
改善が不十分な場合は、NSAIDsの種類を変更し(例:ネパフェナク、ブロムフェナク)、さらに4〜6週間経過を観察する。それでも改善が得られない場合は硝子体内ステロイド注入を検討する。治療抵抗例ではテノン嚢下トリアムシノロン注入も選択肢となる。
白内障術後のCME予防には非ステロイド性抗炎症点眼薬も用いられる。遷延するCMEに対しては、内境界膜剥離を併用した硝子体手術や嚢胞切開を併用した硝子体手術の報告もある。
NSAIDsとステロイドの併用点眼が予防に有効であることが複数のRCTで示されている1)。特に糖尿病やぶどう膜炎の既往がある高リスク患者では積極的な予防投与が推奨される。処方された点眼薬は指示通りに継続することが重要である。
CMEの病態形成には炎症が中心的な役割を果たす。白内障手術の組織侵襲により以下の炎症カスケードが惹起される。
CMEの正確な機序は未だ完全には解明されていない。上記の炎症機序に加え、以下の因子も関与が示唆されている。
CMEは浮腫が消退した後であっても永続的な視力障害をもたらしうる。これは慢性的な浮腫による視細胞構造の不可逆的変化に起因すると考えられている。
手術の組織侵襲によりVEGF・プロスタグランジンなどの炎症性メディエーターが放出され、血液網膜関門の透過性が亢進する。その結果、中心窩周囲の毛細血管から液体が漏出し黄斑部に嚢胞様の浮腫を形成する。詳細は「病態生理学・詳細な発症機序」の項を参照。
治療抵抗性CMEに対する硝子体内注射薬の検討が進んでいるが、エビデンスは限定的である1)。
ESCRSガイドラインによれば、硝子体内ステロイド・抗VEGF・TNF-α阻害薬、テノン嚢下ステロイド注射、硝子体内ステロイドインプラントの有効性に関するエビデンスは限られており、選択されたすべての研究がバイアスリスク中〜高であった。現時点でこれら注射薬の臨床的有効性について確定的な結論は得られていない1)。
PREMED 2試験では、結膜下トリアムシノロン40 mgが術後6〜12週の黄斑厚・黄斑体積を減少させたのに対し、硝子体内ベバシズマブ1.25 mgには効果が認められなかった2)。
術中の結膜下または前房内ステロイド注射により術後点眼を省略する「dropless cataract surgery」の有効性が検討されているが、従来の局所点眼療法と同等の安全性・有効性を持つかは未確立である1)。コンプライアンス不良が予想される患者では選択肢となりうる。
CME管理における最適な治療法・治療期間は未確立である1)。NSAIDs・ステロイド・抗VEGF・併用療法のそれぞれについてさらなる検証が必要とされている。糖尿病網膜症の病期に応じた術後投薬戦略の最適化、トリアムシノロンの至適用量の決定も今後の課題である1)。