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ぶどう膜炎

点状内層脈絡膜症(PIC)

点状内層脈絡膜症(punctate inner choroidopathy)は、1984年にWatzkeらによって初めて報告された特発性の炎症性脈絡膜疾患である。白点症候群(white dot syndromes)の一つに分類され、外網膜脈絡膜毛細血管板・脈絡膜を侵す炎症性疾患群に属する7)

主に近視の若年女性(約90%が女性)に発生する5)。大規模研究では平均発症年齢36歳、平均近視度数−4.5ジオプターと報告されている5)。中等度近視眼の若年女性に好発し、急性期には後極部に小型の黄白色病巣を数個認め、時間経過で萎縮病巣となる。

点状内層脈絡膜症と多巣性脈絡膜炎(MFC)は、脈絡膜・網膜色素上皮(RPE)・外網膜を侵すという共通点から、同一疾患スペクトラムの可能性が示唆されている7)。両疾患の鑑別は、硝子体炎の有無と病変の分布域が鍵となる。点状内層脈絡膜症は硝子体炎を伴わず病変は後極部に限局するのに対し、MFCは硝子体炎を伴い病変が周辺部にも及ぶ6)

Q 点状内層脈絡膜症と多巣性脈絡膜炎(MFC)はどう違うのか?
A

点状内層脈絡膜症は硝子体炎を伴わず病変が後極部に限局するのに対し、MFCは硝子体炎や前房炎症を伴い、病変が中間周辺部にも及ぶ。両疾患は同一スペクトラムの可能性も指摘されている。

点状内層脈絡膜症の最も一般的な初発症状は片眼性の暗点と視力低下である。

  • 視力低下:初診時の視力は0.4〜0.05まで幅がある。Watzkeらの報告では12眼中8眼(66.7%)が矯正視力0.4以上を維持していた。
  • 暗点中心暗点や傍中心暗点を自覚する。
  • 光視症:閃光を感じることがある。
  • 変視症:ものが歪んで見える症状を訴えることがある。
  • 飛蚊症:一部の患者で認められる。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

眼底所見として、後極部に限局した100〜300μmの小さな黄白色斑点が12〜25個、ランダムなパターンで分布する。病変は外網膜・RPE・内層脈絡膜レベルで発生する。80%が両眼性だが左右非対称であることが多い1)

点状内層脈絡膜症病変の特徴を以下にまとめる。

活動性病変

黄白色の脈絡網膜病変:後極部に小型・境界鮮明な黄灰色斑点を認める。乳頭周囲は侵されない。

眼内炎症の欠如:前房炎症・硝子体炎を伴わないことが点状内層脈絡膜症の特徴である3)

神経感覚網膜剥離:活動性病変の上層に漿液性網膜剥離を伴うことがある。

瘢痕期病変

萎縮性脈絡網膜瘢痕:炎症消退後に境界鮮明な「打ち抜き状」瘢痕を残す。色素沈着や脱色素ハローを伴う。

瘢痕の経時的拡大:炎症が消退しても瘢痕が徐々に拡大し、中心窩近傍では視力低下の原因となる。

脈絡膜新生血管(CNV):40〜76%で発生し5)、視力低下の最大の原因となる。

SD-OCTでは点状内層脈絡膜症病変の5段階の進化が特徴付けられている2)

  1. 脈絡膜浸潤
  2. RPE下結節の形成
  3. 脈絡網膜結節
  4. 退縮
  5. 網膜ヘルニア

点状内層脈絡膜症の病因は不明であるが、感染・予防接種・ストレスなどの環境刺激によって誘発される、多遺伝子的な感受性を背景とした自己免疫疾患と考えられている。

  • HLA-DR2との関連:点状内層脈絡膜症とHLA-DR2の関連が報告されている。
  • IL-10ハプロタイプ:点状内層脈絡膜症とMFCがIL10およびTNF遺伝子座で同様の遺伝的関連を示す。
  • HLA-DRB1*15アレル:点状内層脈絡膜症患者でこのアレルの保有が報告されている6)
  • 家族性症例:母娘のコホートなど家族性の症例も知られている。
因子詳細
性別女性が約90〜93%
年齢18〜40歳(平均36歳)
近視−3.25〜−10.0D

COVID-19感染後の点状内層脈絡膜症発症・再活性化が報告されている。SARS-CoV-2感染は遺伝的素因を持つ個体で自己免疫の調節不全を誘発しうる。さらに、COVID-19ワクチン接種後の点状内層脈絡膜症再燃も報告されている3)

Scottら(2024)は、Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチン接種7日後に点状内層脈絡膜症が再燃し、炎症性脈絡膜新生血管膜(iCNVM)を伴った38歳女性の症例を報告した。免疫抑制下でのワクチン接種では再燃が認められなかったが、非免疫抑制下での4回目接種後に再燃した3)

Q COVID-19ワクチンで点状内層脈絡膜症が悪化する可能性はあるか?
A

COVID-19ワクチン接種後に点状内層脈絡膜症の再燃が報告されている3)。ただしワクチンの利益は眼炎症の再燃リスクを大きく上回る。既往のある方は接種前後の経過観察について眼科医に相談するとよい。

点状内層脈絡膜症の診断は臨床所見に基づく。補助的画像検査を組み合わせて確定診断を行う。ヒストプラズマ皮膚テストは陰性である。

フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)

Section titled “フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)”

FAでは活動性病変が動脈期初期に過蛍光を示し、後期に漏出・染色を認める7)。臨床検査よりも多くの病変が検出される。CNVMは不規則なレース状の新生血管ネットワークとして描出される。

インドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICG)

Section titled “インドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICG)”

後極部・乳頭周囲に中期低蛍光病変を認める7)。罹患眼の32%で臨床下の低蛍光斑を検出し、診断能を高める。

SD-OCTは点状内層脈絡膜症の診断・経過観察に有用である。活動性病変ではRPEの局所的高反射性隆起と、ellipsoid zone(EZ)の途絶を認める7)。脈絡膜新生血管陽性病変は脈絡膜新生血管陰性病変と比較して高さ・幅・体積が大きく、EZとブルッフ膜の途絶、外網膜の不鮮明化を伴う。

深部イメージングOCT(EDI-OCT)では活動性病変直下の脈絡膜厚が増加し、治療後に減少する(「スポンジサイン」)。これにより近視性脈絡膜新生血管との鑑別が可能である。

OCTAは点状内層脈絡膜症診断における重要な画像モダリティである。従来のFAやSD-OCTでは検出困難な二次性脈絡膜新生血管を高率に同定できる。

Levisonらは12名の点状内層脈絡膜症患者にOCTAを実施し、FAで結論が出なかった全症例を含む11名で脈絡膜新生血管の存在を証明できたと報告した。

Leclaire ら(2021)は、FAG・SD-OCTでは検出されなかった二次性脈絡膜新生血管がOCT-Aでのみ同定された症例を報告し、臨床的に無症候性の二次性脈絡膜新生血管の暗数が多い可能性を示唆した5)

Stattinら(2021)はSS-OCTAを用いて点状内層脈絡膜症続発脈絡膜新生血管の血管密度変化をモニタリングし、抗VEGF治療の判断指針としたと報告した4)

活動性点状内層脈絡膜症病変は低自発蛍光(hypoautofluorescence)として描出される1)。活動性病変を囲む高自発蛍光のハローは制御されていない炎症の間接的徴候である可能性がある。萎縮性の瘢痕病変も低自発蛍光斑として認められる1)

眼底自発蛍光は非侵襲的で迅速な検査であり、病変の分布把握・治療効果のモニタリング・再発の検出に有用である1)

約41%で盲点拡大を認め、中心暗点・傍中心暗点も見られる。45%の患者では正常視野を示す。

鑑別すべき疾患は以下の通りである。

  • 多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome; MEWDS):ほぼ片眼性で自然軽快する。花冠状の過蛍光が特徴6)
  • 多巣性脈絡膜炎汎ぶどう膜炎(MCP):硝子体炎を伴い病変が周辺部にも及ぶ。
  • 急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE):大型の斑状病変を呈する。
  • 推定眼ヒストプラズマ症(POHS:乳頭周囲萎縮と末梢の打ち抜き状病変を認める。
  • 近視性脈絡膜新生血管:EDI-OCTで炎症性脈絡膜新生血管との鑑別が可能。
  • 蛇行状脈絡膜炎:進行性で再燃性の経過をとる。
Q 点状内層脈絡膜症と多発消失性白点症候群の違いは?
A

多発消失性白点症候群はほぼ片眼性で数週間以内に自然軽快し、瘢痕や脈絡膜新生血管をほとんど残さない6)。点状内層脈絡膜症は両眼性が多く、萎縮性瘢痕を残し脈絡膜新生血管を高率に合併する。OCTAでの血流所見の有無も鑑別に役立つ。

脈絡膜新生血管を伴わない場合

Section titled “脈絡膜新生血管を伴わない場合”

脈絡膜新生血管の証拠がない場合、視力予後は良好であり大多数で治療は不要である。唯一の例外は固視点に非常に近い活動性炎症病変を有する場合で、内科的治療が検討される。

日本の教科書ではプレドニゾロン40〜60mg×1週間から1か月かけて漸減する治療法が記載されている。トリアムシノロンTenon嚢下注射の報告もある。中心窩外の脈絡膜新生血管がステロイドに反応しない場合は光凝固が試みられる。

脈絡膜新生血管合併例では積極的な治療が必要である。

脈絡膜新生血管合併点状内層脈絡膜症に対する中心的な治療である。ベバシズマブラニビズマブアフリベルセプトが使用される。

Stattinら(2021)は、点状内層脈絡膜症続発脈絡膜新生血管に対しSS-OCTA監視下でラニビズマブ(0.5mg)のpro re nata投与を行い、計6回の注射で最終視力20/20を達成した4)

抗VEGF薬とステロイドの二方向性アプローチが有効とされる4)

全身性ステロイドは通常1mg/kg/日(60〜80mg/日)で3〜5日間開始し、その後漸減する4)。経口ステロイドの使用はiCNVM発生リスクを半減させるとの報告がある3)

硝子体内ステロイド製剤としては以下がある。

  • トリアムシノロン硝子体内注射(4mg):光線力学的療法(PDT)との併用でlogMAR BCVAが0.52→0.20に改善。
  • デキサメタゾン硝子体内インプラント(0.7mg/0.35mg):6か月間持続放出。抗VEGFとの併用で使用。
  • フルオシノロンアセトニドインプラント(0.59mg):36か月間持続放出。全身療法に耐容性がない場合や妊娠計画中の女性に有用。
  • ミコフェノール酸モフェチル:再発性点状内層脈絡膜症における発作頻度を減少させる。
  • シロリムス(ラパマイシン):IL-2分泌を阻害し、中心窩近傍脈絡膜新生血管の治療に使用された報告がある。

脈絡膜新生血管合併例でPDTの有効性が報告されている。経口プレドニゾロン(1mg/kg/日)との併用で平均2回のPDT後に15文字の視力改善が得られた。

Q 点状内層脈絡膜症の脈絡膜新生血管に抗VEGF注射は何回くらい必要か?
A

症例により異なる。SS-OCTAガイド下のpro re nata投与で6回の注射が報告されている4)。定期的な画像検査で脈絡膜新生血管活動性を評価し、再燃時には追加投与が必要となることがある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

点状内層脈絡膜症の病態生理は完全には解明されていない。内層脈絡膜を起点とする炎症性疾患であるという仮説が有力である。

点状内層脈絡膜症続発CNVMの病理研究では、脈絡膜毛細血管板が保たれている一方、内層脈絡膜レベルにリンパ球浸潤が認められた。この所見は点状内層脈絡膜症が脈絡膜を起点とする炎症性疾患であるという仮説を超微形態的に裏付けるものである。

ICG所見では、低蛍光領域は局所的な脈絡膜低灌流に対応し、血管壁の局所的な過蛍光点は血管炎を示唆する可能性がある。大きな脈絡膜血管がこれらの低蛍光領域を横切ることから、血管炎プロセスは小血管・脈絡膜毛細血管板に限局していると考えられている。

点状内層脈絡膜症に伴う脈絡膜新生血管はtype 2(網膜色素上皮上)であり、Bruch膜および網膜色素上皮の障害を通じて発生する。周細胞が乏しい新生血管ユニットは抗VEGF薬に対する感受性が高いことが示されており、周細胞が重要な治療標的となる可能性がある。

OCT-A所見では、活動性の炎症性脈絡網膜病変は脈絡膜毛細血管板レベルで血流信号が検出不能として示される7)。脈絡毛細血管板の一次的な関与が外網膜変化に先行するのか、あるいはその逆であるかは議論が続いている7)

白点症候群の患者とその家族では全身性自己免疫疾患の有病率が高い6)。点状内層脈絡膜症患者はIL-10ハプロタイプやHLA-DRB1*15アレルの保有が報告されており、遺伝的素因に環境因子が加わることで発症すると考えられている6)

Jampol・Becker(2003)は、MEWDS・MCP・PIC・AZOORを「AZOORコンプレックス」として単一の臨床的概念に統合することを提唱した。遺伝的素因に多様な環境トリガーが加わることで異なる臨床表現型が生じるとの仮説である6)

Liuら(2024)は、点状内層脈絡膜症の亜型であるsolitary punctate chorioretinitis(SPC)の91か月間追跡例を報告した。SPCは単一病変が黄斑中心窩近傍に出現するサブタイプであり、点状内層脈絡膜症に比べ脈絡膜新生血管二次発生率が低い(16% vs 約50%)。91か月の経過中、病変は孤立性を維持し、OCTA上の血管様構造は自然退縮した。最終視力は0.8に回復し、抗VEGF療法は不要であった2)

Stattinら(2021)はSS-OCTAのen face画像により、脈絡膜新生血管の血管構造変化(分枝・ループ・吻合)を経時的に追跡し、SD-OCTでは間接的活動性所見がなくてもSS-OCTAで新生血管の変化を捉えられることを示した4)。OCTA所見に基づく脈絡膜新生血管活動性評価と治療判断は、今後の点状内層脈絡膜症管理の標準的手法となる可能性がある。

ワクチン関連再燃と予防的免疫抑制

Section titled “ワクチン関連再燃と予防的免疫抑制”

Scottら(2024)の報告では、免疫抑制下でのCOVID-19ワクチン接種時には点状内層脈絡膜症再燃が認められなかった3)。高リスク患者に対するワクチン接種時の予防的免疫抑制の役割は今後の検討課題である。

点状内層脈絡膜症と多発消失性白点症候群の共存

Section titled “点状内層脈絡膜症と多発消失性白点症候群の共存”

Waltersら(2021)は、長期経過の点状内層脈絡膜症患者に急性発症の多発消失性白点症候群が併発した稀な症例を報告した。点状内層脈絡膜症と多発消失性白点症候群の共存はAZOORコンプレックスの概念を支持するものであり、共通の遺伝的基盤の存在を示唆する6)


  1. Olazaran L, Jiménez A, González de los Mártires P, et al. White Dot Syndromes: Report of Three Cases. Case Rep Ophthalmol. 2024;15:202-211.
  2. Liu C, Liu M, Lan X, Zhu J, Zhang Z. 91-month follow-up of solitary punctate chorioretinitis in a Chinese patient. BMC Ophthalmol. 2024;24:297.
  3. Scott DAR, Niederer RL. Punctate Inner Choroidopathy (PIC) disease recurrence with inflammatory choroidal neovascular membrane (iCNVM) post-COVID-19 vaccine. Eur J Ophthalmol. 2024;34(5):NP78-NP82.
  4. Stattin M, Forster J, Ahmed D, Krepler K, Ansari-Shahrezaei S. Swept Source-Optical Coherence Tomography Angiography for Management of Secondary Choroidal Neovascularization in Punctate Inner Choroidopathy. Case Rep Ophthalmol. 2021;12:232-238.
  5. Leclaire MD, Clemens CR, Eter N, Mihailovic N. Choroidale Neovaskularisation infolge einer “punctate inner choroidopathy”, dargestellt mittels optischer Kohärenztomographie-Angiographie. Ophthalmologe. 2021;118:842-846.
  6. Walters AR, Choi RY, Flaxel CJ. Multiple Evanescent White Dot Syndrome Presenting in a Patient With Punctate Inner Choroidopathy. J VitreoRetinal Dis. 2021;5(3):270-274.
  7. Testi I, Vermeirsch S, Pavesio C. Multimodal imaging in white dot syndromes. J Ophthalmic Inflamm Infect. 2021;11:32.

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