フォークト・小柳・原田病患者への効果
急性期フォークト・小柳・原田病(ミコフェノール酸モフェチル+ステロイド):93%の眼が20/20の視力を維持。再発性前部ぶどう膜炎および「夕焼け状眼底」の出現を全患者で予防(平均追跡期間37ヶ月)1)。

ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate Mofetil; MMF)は、ミコフェノール酸(MPA)のプロドラッグである。活性代謝物MPAは、1896年にイタリアの微生物学者ガセオによってPenicillium brevicompactumから最初に単離された化合物であり、その後アリソンとエグイによって臓器移植における免疫調節薬として開発され、1995年にFDAに承認された。
現在では臓器移植の拒絶反応予防のほか、ループス腎炎・SLE・ベーチェット病・炎症性眼疾患など多くの自己免疫疾患にも使用されている。日本ではぶどう膜炎への保険適用はないが、海外ではステロイドとの併用で頻繁に処方される薬剤である。
眼炎症性疾患においては、副作用プロファイルが良好なステロイド節約薬として、メトトレキサートと並んで重要な位置づけにある2)。
セルセプト(Cellcept)はミコフェノール酸モフェチル(ミコフェノール酸モフェチル)の商品名であり、MPAのプロドラッグである。経口投与後に加水分解されてMPAとなる。ミコフェノール酸ナトリウム(Myfortic)は腸溶性製剤であり、同じ活性代謝物MPAを生成するが製剤が異なる。ミコフェノール酸モフェチルは非経口投与よりも経口での生体利用率(約94%)が高い。
ミコフェノール酸モフェチルが使用される非感染性ぶどう膜炎患者が呈する症状。
ミコフェノール酸モフェチルが特に有効とされる疾患と使用場面。
ミコフェノール酸モフェチルを必要とするぶどう膜炎に対する免疫調節療法の開始を検討する主な理由は以下の通りである。
ミコフェノール酸モフェチルの前に以下のスクリーニングが推奨される。
ミコフェノール酸モフェチル治療中の定期的なモニタリングが重要である。
副作用を報告する患者は20%未満とされるが、用量依存性の胃腸障害と骨髄抑制が最も多く報告される副作用である。
フォークト・小柳・原田病患者への効果
急性期フォークト・小柳・原田病(ミコフェノール酸モフェチル+ステロイド):93%の眼が20/20の視力を維持。再発性前部ぶどう膜炎および「夕焼け状眼底」の出現を全患者で予防(平均追跡期間37ヶ月)1)。
慢性眼炎症全般
**成人85%・小児88%**で有効とされる(慢性ぶどう膜炎治療患者)。
副作用プロファイルが良好であり、他の免疫抑制療法の代替として価値がある2)。
最も重要な事項は以下の通り。
| 副作用カテゴリ | 具体的内容 |
|---|---|
| 胃腸障害 | 悪心・嘔吐・下痢(用量依存性) |
| 骨髄抑制 | 好中球減少・血小板減少・貧血 |
| 感染症 | サイトメガロウイルス・水痘帯状疱疹ウイルス・日和見感染 |
| 悪性腫瘍 | リンパ腫・皮膚癌 |
ミコフェノール酸モフェチルを含む免疫調節薬は効果発現に数週間〜数ヶ月を要する。臨床反応は通常、治療開始から2ヶ月後から認められる。ミコフェノール酸モフェチル治療開始時には経口ステロイドを同時に使用しながら、ミコフェノール酸モフェチルの効果発現を待つのが一般的な方法である2)。
ミコフェノール酸モフェチルは経口投与後に速やかに加水分解されてミコフェノール酸(MPA)となる。
MPAの主な作用機序は以下の通り。
イノシン一リン酸脱水素酵素(IMPDH)の可逆的阻害:DNA複製におけるイノシン一リン酸からグアノシン一リン酸への変換に必要な律速酵素を選択的に阻害する。
この変換ステップはプリンヌクレオチドのde novo合成における律速段階であり、このステップが阻害されると以下の結果が生じる。
選択的な作用機序:体内の多くの細胞はプリン塩基のサルベージ経路(既存の核酸塩基を再利用する経路)でも必要な核酸塩基を調達できる。一方、免疫担当リンパ球はde novo合成に強く依存しているため、ミコフェノール酸モフェチルは選択的にリンパ球の増殖を抑制する。これにより副作用が他の免疫抑制薬と比べて少ない選択性の高さが生まれる。
活性化Tリンパ球のアポトーシス誘導:ミコフェノール酸は活性化Tリンパ球に発現するイノシン一リン酸に結合して、これらのアポトーシスを誘導する。
フォークト・小柳・原田病における病態(ぶどう膜メラノサイトへの自己免疫攻撃)に対しても、リンパ球増殖の選択的抑制により炎症を制御できる1)。
非感染性ぶどう膜炎患者を対象としたランダム化比較有効性試験(FAST試験)では、後部・汎ぶどう膜炎ではメトトレキサートがミコフェノール酸モフェチルより有意に優れた治療成功率を示した一方、全形態ぶどう膜炎全体では有意差はなかった2)。このサブグループ解析はミコフェノール酸モフェチルの使用適応の精緻化に貢献している。
FAST試験の216例中93例が原田病患者であり、メトトレキサート(25 mg/週)とミコフェノール酸モフェチル(1.5 g×2回/日)のランダム化比較が行われた1)。原田病サブグループでの成績分析により、急性期・慢性期それぞれでの最適治療法の確立に向けたエビデンスが蓄積されている。
欧州甲状腺学会およびEUGOGOガイドラインでは、中等症から重症かつ活動期のグレーブス眼症患者に対する第一選択治療として、中等量のメチルプレドニゾロン静脈内投与と経口腸溶性ミコフェノール酸ナトリウムの連日投与の併用を推奨している。これは眼炎症疾患全般へのミコフェノール酸モフェチルの応用可能性を示している。