ステロイド減量効果
治療開始6ヶ月後: 前部ぶどう膜炎46.1%、中間部41.3%、後部・汎ぶどう膜炎20.7%でステロイド減量成功。
治療開始12ヶ月後: それぞれ62.6%、68.8%、39.1%に上昇。

メトトレキサート(Methotrexate; MTX)は葉酸の類似体であり、葉酸代謝拮抗機序を持つ免疫抑制薬に分類される。抗悪性腫瘍薬・抗リウマチ薬・妊娠中絶薬などとして使用されており、眼炎症性疾患への使用は1960年代から報告されている。
メトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を阻害し、DNAの合成・修復・細胞複製を妨害する。一般的に高用量では抗癌薬として、低用量では抗炎症薬として用いられる。
ぶどう膜炎の治療においては免疫調節薬(antimetabolites)の中で第一選択薬として位置づけられる。2023年のSITE(眼疾患に対する全身性免疫抑制療法)コホート研究などの大規模研究に基づき、メトトレキサートはミコフェノール酸モフェチル・アザチオプリン・シクロスポリンよりも優位または同等とされている1)。
日本では、メトトレキサートはぶどう膜炎に対して保険適用外であるが、リウマチに伴う小児ぶどう膜炎や強膜ぶどう膜炎では実際に処方されることが多い。
メトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を阻害してDNA合成を妨げるほか、T細胞のアポトーシス率を高め、内因性アデノシン濃度を上昇させ、サイトカイン産生・体液性免疫応答を変化させる。これら複合的な作用によって免疫応答が抑制され、眼内炎症が制御される。
メトトレキサートが使用される非感染性ぶどう膜炎の患者が呈する症状。
メトトレキサートの対象となるぶどう膜炎の主な疾患と、使用される場面を示す。
| 疾患 | メトトレキサートを用いる場面 |
|---|---|
| 若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎 | 第一選択(93.2%の医師が選択)1) |
| HLA-B27陽性ぶどう膜炎 | 第一選択(80.1%)1) |
| サルコイドーシス関連ぶどう膜炎 | 第一選択(62.4%)1) |
| 毛様体平坦部ぶどう膜炎(pars planitis) | 第一選択(55.2%)1) |
| 交感性眼炎 | 第一選択(32.1%)1) |
メトトレキサートを必要とするぶどう膜炎に対する全身性免疫調節療法の開始を検討する主な理由は以下の通りである。
メトトレキサート治療は若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎のリスクを有意に低減する(HR 0.14〜0.63)ことが報告されており2)、アダリムマブとの併用によりリスクがさらに低下する(HR 0.09)2)。
メトトレキサート治療の管理においては、以下の定期的なモニタリングが重要である。
寛解維持中の非感染性ぶどう膜炎患者は、薬剤毒性スクリーニングを含め6〜12週ごとの評価が推奨される1)。ルーチン検査(血液生化学・全血算)は約12週ごとに繰り返すことが多い。
日本での標準的な投与法は以下の通りである。
慢性ぶどう膜炎では1日10 mg未満のプレドニゾロンと組み合わせることが多い。
メトトレキサート治療の効果を以下に示す。
ステロイド減量効果
治療開始6ヶ月後: 前部ぶどう膜炎46.1%、中間部41.3%、後部・汎ぶどう膜炎20.7%でステロイド減量成功。
治療開始12ヶ月後: それぞれ62.6%、68.8%、39.1%に上昇。
炎症制御効果
160例後方視的研究:ぶどう膜炎患者の70%以上で炎症コントロール達成、90%で視力改善または安定3)。
後部・汎ぶどう膜炎:メトトレキサートはミコフェノール酸モフェチルと比較して有意に高い治療成功率1)。
最も一般的な薬剤組み合わせはメトトレキサートとアダリムマブであり、188施設のうち158施設(84%)が使用している1)。若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎に対するアダリムマブ+メトトレキサート併用療法は、メトトレキサート単独に比べて有意な優位性を示したランダム化比較試験(ADJUVITE試験)が報告されている。
メトトレキサート内服の翌日か翌々日に葉酸を内服することにより、肝機能障害や悪心などの副作用を軽減できることが知られている。葉酸の同時補充は標準的な実践として推奨される。
多くの免疫抑制薬は効果発現に数週間を要する。メトトレキサートも同様であり、治療開始後3〜6ヶ月で効果を評価することが多い。治療期間は通常2年以上に及び、炎症が寛解状態を維持している間は継続される1)。
メトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を阻害し、テトラヒドロ葉酸の産生を妨げる。テトラヒドロ葉酸はDNA合成・修復・細胞複製に不可欠であるため、増殖中の細胞に対して選択的に作用する。
具体的な免疫抑制機序は多岐にわたる。
イノシン一リン酸からグアノシン一リン酸への変換に必要なイノシン一リン酸脱水素酵素の阻害と同様の機序でイノシン一リン酸脱水素酵素経路を抑制することにより、プリンヌクレオチドのde novo合成が阻害される。
硝子体内アデノ随伴ウイルスベクター遺伝子治療後の慢性ぶどう膜炎においても、メトトレキサートが全身ステロイドやペリオキュラーステロイドデポが無効だった3症例で有効であったことが報告されており、遺伝子治療関連眼炎症の管理への応用が研究されている4)。
非感染性後部・汎ぶどう膜炎を対象としたランダム化比較有効性試験(FAST試験)では、後部および汎ぶどう膜炎においてメトトレキサートがミコフェノール酸モフェチルより有意に高い治療成功率を示した。全形態のぶどう膜炎全体では有意差はなかったが、後部・汎ぶどう膜炎に限定すると有意にメトトレキサートが優れていた1)。
硝子体内アデノ随伴ウイルスベクター遺伝子治療後の慢性ぶどう膜炎に対してメトトレキサートが有効であった症例が報告されている。再活性化の予防・炎症フレアの頻度・重症度の低下において、1〜2年間の長期使用で効果を示した4)。
北欧の若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎スクリーニングガイドラインでは、メトトレキサート治療が疾患発症リスクを有意に低下させることが認識され(HR 0.14〜0.63)、メトトレキサート治療中やモノクローナル腫瘍壊死因子阻害薬治療中の小児に対するスクリーニング頻度の合理化が検討されている2)。