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ぶどう膜炎

中間部ぶどう膜炎

中間部ぶどう膜炎(Intermediate Uveitis; IU)は、硝子体および周辺部網膜に炎症の主座をもつ眼内炎症の総称である。2005年のSUN(Standardization of Uveitis Nomenclature)ワーキンググループにより定義され、毛様体扁平部炎(pars planitis)・後部毛様体炎(posterior cyclitis)・硝子体炎(hyalitis)を含む。

日本では全ぶどう膜炎の1〜2%程度を占め、欧米(15%前後)より少ない。小児ぶどう膜炎では最大20%に達する。推定発症率は10万人あたり1.4〜2.0人である。成人と10歳代の小児に発症のピークがあるとされる。

「毛様体扁平部炎」の名称は、原因不明でスノーバンク・スノーボールが存在する場合にのみ診断名として使用される(除外診断)。それ以外は、原因疾患(サルコイドーシス・結核・多発性硬化症など)に伴う中間部ぶどう膜炎と呼ぶ。

Q 毛様体扁平部炎と中間部ぶどう膜炎の違いは何か?
A

中間部ぶどう膜炎は解剖学的分類名であり、多様な原因疾患を含む総称。毛様体扁平部炎(pars planitis)はその特発性サブタイプで、全身疾患を除外した後に診断される。スノーバンクとスノーボールを特徴とし、小児から若年成人に多い。

典型的な症状は緩徐に始まる。

  • 飛蚊症:最も多い訴え。硝子体混濁による。
  • 霧視・視力低下:黄斑浮腫または硝子体混濁による。
  • 眼痛・充血・羞明:稀な症状(前部ぶどう膜炎に比べ少ない)。
  • 軽度の前房細胞・フレア(毛様体扁平部炎では通常軽微)
  • 小型の角膜後面沈着物
  • 帯状角膜変性:小児の中間部ぶどう膜炎で記録される
  • 虹彩後癒着(5.3%)
所見詳細
スノーボール球状黄白色の硝子体混濁。下方周辺部に多い。毛様体扁平部炎の最大100%で報告
スノーバンク毛様体扁平部の白色線維炎症性渗出(網膜最周辺部から毛様体扁平部にかけての堤防状渲出性変化)。毛様体扁平部炎の確定診断的所見。小児を含む若年者に比較的多い
周辺部静脈周囲炎16〜36%に出現。多発性硬化症患者で特に多い
周辺部血管鞘形成主に静脈に影響。10〜32%に出現
黄斑浮腫視力低下の主因。光干渉断層計(OCT)で嚢胞状黄斑浮腫として確認

小児の中間部ぶどう膜炎における視力障害(0.3 logMAR超)の発生率は0.05/eye-year(95%CI 0.02–0.11)であり1)、前部ぶどう膜炎(0.04/eye-year)と有意差なく経過する。

  • 白内障の進行(炎症やステロイドによる)
  • 嚢胞状黄斑浮腫
  • 視神経乳頭腫脹・周辺部血管炎
  • 硝子体出血新生血管による)
  • 網膜剥離
  • 脈絡膜新生血管(CNV):発症率約2%2)。傍乳頭型が多い
  • 血管増殖性腫瘍:中間部ぶどう膜炎の後期合併症として1%の眼で報告されている3)
Q 中間部ぶどう膜炎で視力低下するのはなぜか?
A

最大の原因は黄斑浮腫(嚢胞状黄斑浮腫)であり、慢性炎症に伴う血管透過性亢進が主因。次いで白内障の進行(炎症自体またはステロイド副作用)、硝子体混濁の持続、希に硝子体出血や網膜剥離が原因となる。

  • 人種:非ヒスパニック系白人に多い
  • 性別:小児では男女ほぼ均等。成人では女性にやや多い傾向
  • 発症年齢中央値:8〜11歳(小児集団)
  • 遺伝的要因:HLA-DR2・HLA-DR15との関連(患者の67〜72%に認められる)

感染性原因

結核:発展途上国(インドなど)では中間部ぶどう膜炎の主要感染性原因。スノーボール・スノーバンク様所見を呈することがある。

サイトメガロウイルス(サイトメガロウイルス):免疫正常者での両眼性中間部ぶどう膜炎が報告されている4)。前房水PCRで診断。

梅毒・ライム病・トキソカラ症・ハンセン病:鑑別に挙げる。

非感染性原因

サルコイドーシス:中間部ぶどう膜炎患者の2〜10%がサルコイドーシス。サルコイドーシス患者の25%が中間部ぶどう膜炎を発症。長期難治化で血管増殖性腫瘍などの合併症をきたしうる3)

多発性硬化症:中間部ぶどう膜炎患者の7〜30.4%に多発性硬化症合併。網膜静脈周囲炎は多発性硬化症および視神経炎のリスクを増加させる。

炎症性腸疾患・ぶどう膜腎炎症候群(TINU)など

中間部ぶどう膜炎は臨床診断であり、感染症と全身疾患の除外が必要である。

必須検査

  • 全血算・CRP・赤沈
  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)・リゾチーム(サルコイドーシス)
  • 梅毒検査(RPR/VDRL + FTA-ABS)
  • インターフェロンγ遊離試験(IGRA)・ツベルクリン反応(結核)
  • 胸部X線または胸部CT

眼科画像診断

  • 光干渉断層計(OCT):嚢胞状黄斑浮腫・網膜前膜黄斑円孔・IS/OS層の状態を評価
  • 蛍光眼底造影(FA):血管炎の活動性、無灌流域・新生血管の検出
  • 超音波・超音波生体顕微鏡(UBM):スノーバンク・毛様体膜の評価

強膜圧迫子を用いた眼底検査が周辺部病変(スノーボール・スノーバンク)の確認に不可欠である。

以下の場合に必要となる:

  • 悪性腫瘍の疑い
  • 網膜炎・眼内炎を除外できない
  • 内科治療抵抗性

SUNワーキンググループは以下を毛様体扁平部炎の診断基準としている:

  • 炎症の主座が硝子体にある
  • 周辺部スノーバンクまたはスノーボールが存在する
  • 既知の感染性・非感染性全身疾患が除外されている

以下の場合に治療開始を検討する:

  • 視力低下(黄斑浮腫・硝子体混濁による)
  • 実質的な硝子体混濁
  • 網膜血管炎
  • その他のぶどう膜炎合併症

軽度の硝子体細胞のみで無症状の場合は経過観察可能(患者の25〜35%に該当)。

第一段階:ステロイド療法

  • 眼球周囲注射(Tenon嚢下トリアムシノロン):片眼性・黄斑浮腫に有益
  • 硝子体内ステロイド:緊急の視力低下時の緊急処置として
  • デキサメタゾンインプラント(オズデックス®):中間部・後部ぶどう膜炎に承認
  • 経口ステロイド:両眼性・重症例でプレドニゾロン内服(4ヶ月以上の長期投与を要することがある)。小児ではプレドニゾロン0.5 mg/kg/日程度から開始し漸減する

第二段階:免疫調節療法

再発・難治例、ステロイド依存例、副作用例に追加する。シクロスポリン(ネオーラル)・メトトレキサート等が用いられる。

第三段階:手術・レーザー

  • 周辺部冷凍凝固術(cryopexy)・間接レーザー光凝固:新生血管・スノーバンクへの直接的治療
  • 硝子体手術:難治性硝子体混濁・牽引性網膜剥離・治療抵抗性黄斑浮腫に対して

傍乳頭の脈絡膜新生血管が合併した場合、抗VEGF療法ベバシズマブ1.25mg硝子体内注射など)で有効な退縮が報告されている2)。MUST試験では全身療法とフルオシノロンアセトニドインプラントを比較し、黄斑厚の改善度に差があることが示された。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

毛様体扁平部炎の病態は、内因性抗原に対するCD4+ T細胞介在性免疫反応と考えられている。硝子体内全細胞型の最大95%がCD4+ T細胞であり、活性化マーカーCD69を発現している。活動性の中間部ぶどう膜炎患者の硝子体ではインターロイキン6レベルの上昇が確認されており、自己免疫の関与を裏付けている。

中間部ぶどう膜炎の硝子体液ではフックス虹彩毛様体炎症候群と比較して、CD4+ T細胞の割合(32.0 ± 8.6% vs 19.2 ± 8.9%)とインターロイキン2産生量(1810 ± 220 vs 518 ± 94 pg/ml)が有意に高く、より積極的な炎症と血液眼関門破綻に関与していると考えられる。

スノーボール・スノーバンクの組織学

Section titled “スノーボール・スノーバンクの組織学”

スノーボールおよびスノーバンクは、単核白血球と線維細胞様細胞を含む線維血管層と、硝子体コラーゲン・ミューラー細胞・線維性星状膠細胞で構成されている。慢性炎症が続くと線維化が進み、スノーバンクが固い雪玉状堤防状渗出物として残存する。

不十分にコントロールされた炎症、周辺部血管漏出、および毛様体扁平部領域の低酸素変化が、網膜の盛り上がりと血管増殖性腫瘍形成につながると推測されている3)。血管増殖性腫瘍を続発するまでの期間(ぶどう膜炎診断からの中央値)は160ヶ月と長期に及ぶ。

HLA-DR2・HLA-DR15との関連が患者の67〜72%に認められ、同じHLA-DR15関連疾患である多発性硬化症や視神経炎との遺伝的共通背景が示唆されている。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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サイトメガロウイルスによる免疫正常者の中間部ぶどう膜炎

Section titled “サイトメガロウイルスによる免疫正常者の中間部ぶどう膜炎”

Othmanら(2025)は免疫正常者での両眼性孤立性中間部ぶどう膜炎がサイトメガロウイルス感染によって引き起こされた稀な症例を報告した4)。前房水のPCR検査でサイトメガロウイルスが確認され、ガンシクロビル全身投与で改善した。サイトメガロウイルス中間部ぶどう膜炎はFuchs虹彩毛様体炎に類似した形態を呈し、診断が困難である点が指摘されている4)

サルコイドーシス関連の中間部ぶどう膜炎と血管増殖性腫瘍

Section titled “サルコイドーシス関連の中間部ぶどう膜炎と血管増殖性腫瘍”

Abdel Jalilら(2024)はサルコイドーシス関連慢性中間部ぶどう膜炎に続発した血管増殖性腫瘍誘発性滲出性網膜剥離の症例を報告した3)。ステロイド全身投与・シクロスポリン・硝子体手術(冷凍凝固+レーザー光凝固)の組み合わせで良好な視力回復が得られた。血管増殖性腫瘍の二次性原因の最多2位が毛様体扁平部炎(21%)であることが改めて示された3)

非感染性中間部・後部・汎ぶどう膜炎を対象としたMUST試験では、フルオシノロンアセトニドインプラントが全身療法と比べ追跡期間中の黄斑厚改善が大きかったことが示されており、徐放型眼内インプラントの長期データの蓄積が続いている。


  1. Multicenter study. Anterior and intermediate uveitis in children: visual impairment incidence. Br J Ophthalmol [12969_2018_Article_266]. 2018.
  2. Nageeb MR. Intermediate Uveitis Complicated by Peripapillary Choroidal Neovascularization. Cureus. 2022;14(11):e31040.
  3. Abdel Jalil S, Jaouni T, Amer R. Vasoproliferative Tumor Secondary to Sarcoidosis-Associated Intermediate Uveitis. Turk J Ophthalmol. 2024;54:108–111.
  4. Othman I, Tai Li Min E, Abu N. Unusual Manifestation of Bilateral Intermediate Uveitis Caused by Ocular Cytomegalovirus (CMV) in Immunocompetent Individual. Cureus. 2025;17(1):e77737.

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