この疾患の要点
花火関連眼外傷は全花火関連負傷の20〜31%を占め、65.9%が18歳以下に発生する。
鈍的外傷・熱傷・化学損傷(燃焼後の火薬によるアルカリ性損傷)が複合的に生じる。
一般消費者向けまたは自家製花火が全花火関連眼外傷の99%を占める。
開放性眼外傷では眼球探査・硝子体 切除術など緊急手術が必要となる場合がある。
初診時の視力 (BCVA)が視力予後の最も重要な予測因子である。
厳しい花火規制がある地域では眼科的負傷率が87%低い。
受傷後も隅角後退緑内障 ・増殖硝子体網膜症 ・交感性眼炎 が遅発することがあり、長期経過観察が必要である。
花火は世界中でレクリエーション・宗教・文化・愛国的祝典に用いられる。しかし、一般消費者向け花火による負傷は壊滅的で、永続的視力喪失・四肢切断・死亡に至りうる。
花火関連負傷は全眼外傷の約2%を占める。米国消費者製品安全委員会(CPSC)の2021年報告では、同年に11,500件の花火関連負傷が治療され、うち推定8,500件が6月18日〜7月18日の独立記念日前後に集中した。
眼外傷の割合 :全花火関連負傷の20%(米国眼科学会; AAO )、一部研究では31%以上
年齢分布 :65.9%が18歳以下。10〜19歳の負傷率が最も高い
性別 :71.9〜89%が男性
負傷源 :99%が一般消費者向けまたは自家製花火による
傍観者リスク :子どもは使用者よりも傍観者として負傷することが多い。傍観者が負傷者の65%を占める
規制の効果 :より制限的な花火法規制を持つ地域では眼科的負傷率が87%低い(系統的レビュー)
専門家花火 :専門家による打ち上げ花火による眼外傷は全花火関連負傷のわずか1%
爆発・破片(シュラプネル)外傷においても、眼は高リスク臓器である。爆発生存者の最大28%に眼外傷が発生し、二次爆傷(飛散物による損傷)は軍事戦闘における眼外傷の約80%を占める1) 。
Q 花火による眼外傷はどの年齢層に多いか?
A 65.9%が18歳以下で発生し、10〜19歳の負傷率が最も高い。子どもは花火の使用者よりも傍観者として受傷することが多く、傍観者が負傷者の65%を占める点に注意が必要である。
Firework-related penetrating eye injury
Kumar R, Puttanna M, Sriprakash KS, et al. Firecracker eye injuries during Deepavali festival: A case series. Indian J Ophthalmol. 2010;58(2):157. Figure 5. PMCID: PMC2854452. License: CC BY.
Clinical photograph of an open-globe penetrating firecracker injury. The image gives a clear example of the kind of severe ocular trauma caused by fireworks and shrapnel.
眼痛 :異物感から激しい疼痛まで重症度に幅がある
視力低下 :受傷直後から高度の低下を呈することがある
充血 :毛様充血・結膜 充血
流涙 :受傷直後から認められる
羞明 :炎症や角膜 損傷に伴い生じる
異物感 :角膜異物 ・結膜異物の混在により生じる
顔面や四肢の損傷が眼外傷に併発することも珍しくない。
花火外傷では、鈍的外傷・熱傷・化学損傷が同時に発生する複合外傷となる。主要な眼球損傷を以下に示す。
各部位の損傷頻度(複数の研究報告より)は次の通りである。
損傷部位 頻度(概数) 眼火傷 62.9% 角膜損傷 67% 前房出血 42% 眼瞼外傷 39% 硝子体出血 19% 網膜 損傷17% 緑内障 15% 白内障 13% 眼窩 骨折12%
開放性眼外傷(眼球破裂・穿通) :2.8〜17%に発生。大部分は角膜と強膜 の両方に及ぶ全層裂傷
視神経 症 :3%に認められる
大規模爆発の場合 :飛散物による表面損傷(眼瞼裂傷 ・眉毛裂傷・角膜損傷)が最多で、開放性眼外傷率は20.8%に達する1)
日本の教科書では、打ち上げ花火は鈍的外傷と熱傷が同時に発生し、急性期に角膜びらん・前房出血・高眼圧 を生じ、慢性期に角膜白斑 ・外傷性白内障・続発緑内障 により高度の視力低下に至りうると記載されている。また、燃焼後の火薬はアルカリ性となるため、熱傷と化学外傷が併発する可能性がある。
ロケット・臼砲型
主な損傷 :眼球破裂・重篤な前房出血・角膜損傷と有意に関連する。
特徴 :高速の飛翔体が眼球に直撃するため、最も重篤な外傷をきたしやすい。
爆竹
主な損傷 :眼火傷(熱傷)と関連する。
特徴 :爆発時の高熱・衝撃波が眼表面を直接損傷する。燃焼後の残渣がアルカリ性化学損傷を引き起こすこともある。
打ち上げ花火
主な損傷 :眼球内への異物飛入と関連する。
特徴 :降下する燃焼残渣や破片が眼に飛入することがある。専門家花火の鑑賞中にも傍観者が被害を受ける場合がある。
保護用アイウェアの欠如 :適切な保護具がなければ飛散物が直接眼に達する
花火との距離が近い :誤作動(異常な飛行経路・早期爆発・転倒)が最も一般的な危険パターン
一般消費者向け・自家製花火の使用 :自家製・違法花火は爆薬量が多く、より重篤な損傷を引き起こす
親の監督不足 :子どもの傍観者受傷率が高い主因
アルコール・レクリエーションドラッグの使用 :判断能力の低下により危険行動につながる
負傷の大部分は家庭で発生
予防・日常のケア
花火は専門家による打ち上げ花火を安全な距離から鑑賞するのが最も安全です。
一般消費者向け花火を扱う際は、必ず保護メガネを着用してください。
不発弾(打ち上がらなかった花火)には絶対に近づかないでください。
お子さんが花火の近くにいる場合は、大人が常に監督してください。
アルコール飲用後は花火を扱わないでください。
Q 花火による眼外傷を防ぐにはどうすればよいか?
A 最も効果的な予防は、専門家による打ち上げ花火を安全な距離から鑑賞することである。一般消費者向け花火を扱う際は保護メガネの着用が必須で、不発弾に近づかないことも重要である。規制の厳しい地域では眼科的負傷率が87%低いとの系統的レビューがある。
受傷状況の詳細な把握が治療方針の決定に直結する。
受傷日時・受傷機転・花火の種類
物体の大きさ・重量・速度・組成
保護メガネの使用の有無
アルコール・薬物使用の有無
過去の眼科手術歴・他眼の視力障害
服用薬・アレルギー・破傷風免疫状態
最終食事時間(緊急手術に備えて)
視力検査 :散瞳検査 や処置の前に必ず評価する
視神経機能 :対光反射・色覚・対座法視野検査
眼球運動・眼球位置異常 :異物侵入部位の特定に有用
細隙灯顕微鏡検査 :異物の位置と深さを評価
サイデル(Seidel)試験 :フルオレセイン染色 で角膜・強膜・結膜の全層裂傷を確認し、房水 漏出の有無を判定する
眼外傷スコア(OTS) :初診時所見に基づく視力予後予測ツール
各モダリティの用途と注意点を以下に示す。
検査法 主な用途 注意点 CT(1mmスライス) 眼窩骨折・眼内異物 ・眼球破裂の検出 金属異物疑いでも施行可 MRI 脂肪脱出の検出 金属異物の可能性があれば禁忌 Bモード超音波 網膜剥離 ・硝子体出血・眼底透見不能時眼球破裂疑いではプローブを強く押さえない OCT 外傷性黄斑円孔 ・黄斑下出血 ・角膜裂傷・水晶体 脱臼の検出前眼部OCT は角膜裂傷評価に有用
飛散物外傷の全例で顔面・眼窩CT(1mmスライスの軸位断・冠状断・傍矢状断)を実施する
超音波断層法はCTでは描出されない異物(特に強膜近傍)の検出に有効
Birmingham Eye Trauma Terminology System(BETT)が機械的眼球外傷の標準的分類として用いられる1)
生命を脅かす損傷や眼窩外の損傷は、関連各科(脳神経外科・耳鼻咽喉科・口腔外科・整形外科)と連携して対応する。
開放性眼外傷の疑い :アイシールドで眼球を保護し、眼球への圧迫・さらなる診察を回避する
全身性抗菌薬 :セファゾリン、バンコマイシン、またはモキシフロキサシンを投与する
破傷風予防 :受傷後に確認・実施する
燃焼後の火薬はアルカリ性となるため、熱傷と化学外傷の複合損傷となることがある。
pHを評価し、pH 7.0〜7.4の範囲外であれば生理食塩水または乳酸リンゲル液で大量洗浄を行う
pH 7.0〜7.4の中性になるまで洗浄を継続する。洗眼は20分以上行うことが望ましく、早期の洗眼が最も重要である
開放性眼外傷を除外したうえで粒子状物質(異物)を洗浄または手動で除去する
重症例では急性期に羊膜被覆術を検討する。瘢痕期には眼表面再建術を検討する
眼瞼裂傷 :まず眼球損傷(角膜穿孔・裂傷・強膜裂傷・眼球破裂)の有無を評価し、眼球損傷があれば眼瞼より優先して治療する
洗浄・デブリードマン :アドレナリン入り0.5〜1.0%リドカインで浸潤麻酔後、砂・泥・ガラス片等の異物を生理食塩液で除去する。細かい異物が多い場合は手術顕微鏡下で実施する
眼球裂創の縫合 :水密縫合。強角膜裂傷は角膜輪部 を9-0ナイロンで縫合後、角膜創を10-0ナイロン、強膜創を9-0ナイロンで端々縫合する
角膜異物除去 :点眼麻酔後、異物針または27Gディスポーザブル針で接線方向に掘り起こして除去する。鉄錆除去用ドリルが有用
眼球探査 :眼球破裂・穿通外傷が疑われる場合に実施する
早期硝子体切除術(PPV ) :眼内異物(IOFB)・網膜剥離が疑われる場合に施行する
眼内異物(IOFB)の除去 :眼内液の細菌・真菌培養を施行し、灌流液に抗菌薬を添加する。外科的除去は専門医が実施する
眼内炎 :開放性眼球外傷では眼内炎の頻度が2〜7%。疑われる場合は標準的ガイドラインに基づき管理する
二次的介入・再手術 :増殖硝子体網膜症(PVR)等の後遺症を防ぐため、早期実施の閾値を低く設定する
低眼圧 への対応 :アトロピン点眼液(1%)1日1回就寝前+フルメトロン点眼液(0.1%)1日4回。外科的にはアルゴンレーザー照射・冷凍凝固 術・強膜バックリング 等を検討する
眼球救済不能 :眼球摘出術 または眼球内容除去術 を行い、一次的眼窩インプラントと義眼 床再建を実施する
ベイルート港爆発では39名(48眼)のうち21名(53.8%)が手術介入を要し、14名(35.9%)は受傷当日に緊急手術を要した1) 。
Q 花火で受傷した際にまず行うべきことは何か?
A 化学損傷(燃焼後の火薬によるアルカリ損傷)の可能性がある場合は、直ちに20分以上の大量洗眼を行う。開放性眼外傷の疑いがある場合はアイシールドで眼球を保護し、眼球を圧迫せずに直ちに眼科を受診する必要がある。
花火外傷は単一の機序ではなく、以下の3つが同時に発生する複合外傷である。
鈍的外傷
機序 :花火・破片の直接衝突による機械的損傷。
結果 :眼球破裂・前房出血・水晶体損傷・網膜剥離・眼窩骨折。高速の破片は眼球および付属器構造に広範な損傷をもたらす1) 。
熱傷
機序 :高熱の爆発ガス・燃焼残渣による直接熱損傷。
結果 :角膜・結膜上皮の熱傷、眼瞼皮膚熱傷。重症例では角膜白斑を残す。
化学損傷
機序 :燃焼後の火薬がアルカリ性となり、角膜・眼表面に化学損傷を引き起こす。
結果 :アルカリは組織深達性が高く、急速な眼内浸透により重篤な損傷をきたしうる。
大規模爆発(テロ・産業事故等)における眼外傷は4段階に分類される。
一次爆傷 :衝撃波(blast wave)による直接的損傷
二次爆傷 :飛散物(ガラス破片・破片金属等)による損傷 — 眼外傷の最も一般的な形態で、軍事戦闘の約80%を占める1)
三次爆傷 :爆風による人体の移動・衝突
四次爆傷 :火災・化学物質・建物崩壊等による複合的損傷
ベイルート港爆発では、火災を窓越しに見ていた人々が爆発時のガラス破片で受傷した。損傷の大部分はガラス窓・建物外壁からの飛散物が主要な損傷源であり、二次爆傷の典型例といえる1) 。
飛入部位 :角膜・角膜輪部・強膜
組織断裂 :大きな異物では毛様体 ・脈絡膜 ・網膜の断裂により眼内出血を生じる
網膜損傷の進展 :網膜損傷→網膜剥離→増殖硝子体網膜症(PVR)
眼球鉄錆症 :鉄含有異物の長期残存により、虹彩 異色症・瞳孔 散大固定・白内障・網膜変性・続発性緑内障をきたす
眼球銅錆症 :銅含有異物では純度が高い場合に全眼球炎 を、慢性例ではKayser-Fleischer ring・前嚢下白内障を生じる
眼球二重穿孔 :貫通した異物が眼窩内異物 となることがある
視力予後は軽微な角膜擦過傷(通常良好)から永続的失明まで幅広い。
Kheir WJら(2021)はベイルート港爆発後の39名(48眼)を分析した。初診時の最高矯正視力が20/200未満は13眼(27.1%)で、うち4眼(8.3%)は光覚なし(NLP)だった。最終の最高矯正視力が20/200未満は7眼(14.5%)に改善し、光覚なし4眼はすべて眼球摘出または眼球内容除去術が施行された1) 。初診時の最高矯正視力が視力予後の最も重要な予測因子であった1) 。
花火による眼球破裂の報告では、18例のうち最終フォローアップ時に10眼(59%)がNLPであり、開放性眼外傷の予後の厳しさを示している。
予後不良の危険因子 は以下の通りである1) 。
初診時の最高矯正視力の低下
硝子体出血
網膜剥離
眼球破裂・穿通
眼球摘出率 の比較(報告間の差異)1) :
ベイルート爆発:8.3%
天津爆発:9.6%
ハリファックス爆発:42%
受傷後数年を経過してから遅発する合併症があるため、長期的な経過観察が必要である。
隅角後退緑内障 :受傷後数年を経てから隅角 後退に伴う眼圧上昇を呈することがある
角膜瘢痕・不正乱視 :視力回復を制限する
外傷性白内障 :水晶体損傷による混濁
増殖硝子体網膜症(PVR) :術後に進展する可能性がある
交感性眼炎 :ぶどう膜が高度に損傷されている場合に発症するリスクがある
露出性角膜症 ・眼球癆 :重症例の長期転帰
外観を損なう失明眼 :心理的・社会的影響も大きい
Q 花火による眼外傷の視力予後はどの程度か?
A 視力は20/20(正常)からNLP(光覚なし)まで幅広い。花火による眼球破裂では59%がNLPに至ったとの報告があり、開放性眼外傷の予後は厳しい。初診時の最高矯正視力が視力予後の最も重要な予測因子とされる1) 。受傷後も隅角後退緑内障などの遅発合併症があるため、定期的な経過観察が重要である。
Kheir WJ, Awwad ST, Bou Ghannam A, et al. Ophthalmic Injuries After the Port of Beirut Blast—One of Largest Nonnuclear Explosions in History. JAMA Ophthalmol. 2021;139(9):937-943.
記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます
下のAIを開いて、チャット欄に貼り付け(ペースト) してください