開放性眼球損傷(OGI)
定義:眼球壁(角膜または強膜)の全層に及ぶ創。
眼球破裂:鈍的外力による。
穿通性損傷:鋭的外力による一方向性の全層創。
貫通性損傷:入口と出口の両創を有する。
眼内異物(IOFB):鋭的外力により異物が眼内に留まる。
ゾーン分類(I〜III):I=角膜・角強膜輪部、II=輪部から5 mm以内の強膜、III=輪部から5 mm超の後方強膜。

眼には先天的な防御機構が備わっている。眼瞼・睫毛・瞬目反射・虹彩収縮・骨性眼窩がその主体である。しかしこれらの機構を超える外力・化学物質・放射線が加わると眼外傷が生じる。
世界では年間約5,500万件の眼外傷が発生する。世界保健機関(WHO、1998年)の推計では、外傷による片眼失明・ロービジョンを有する者は全世界で約1,900万人にのぼる。入院を要する眼外傷の発生率は人口10万人あたり13人とされ、オーストラリアでは同11.9〜25.5人と報告されている。
米国では眼外傷の既往を持つ者が推定2,400万人おり、そのうち150万人が視覚障害、170万人が部分的失明、14.7万人が完全失明を抱えている。重度視力喪失後には最大40%が以前の仕事に戻れないとされ、社会・経済的損失は甚大である。オーストラリアでの眼外傷入院に伴う直接医療費は年間推計23億5,700万ドルにのぼる。
一方、眼外傷の発生率(入院レベル)は世界で人口10万人あたり3.5〜4.5人と報告されており1)、適切な予防策の普及が急務である。
眼外傷の90%は予防可能とされている。個人・職場・行政の各レベルでの対策が視力を守るうえで最も重要なアプローチとなる。
眼外傷の標準的分類には BETT(Birmingham Eye Trauma Terminology) が用いられる。受傷部位・機序・損傷の深さで体系的に分類し、国際的なデータ比較を可能にする。
力学的外傷と非力学的外傷(化学腐蝕・熱傷・光障害・放射線・気圧・振動)の大分類もある。
開放性眼球損傷(OGI)
定義:眼球壁(角膜または強膜)の全層に及ぶ創。
眼球破裂:鈍的外力による。
穿通性損傷:鋭的外力による一方向性の全層創。
貫通性損傷:入口と出口の両創を有する。
眼内異物(IOFB):鋭的外力により異物が眼内に留まる。
ゾーン分類(I〜III):I=角膜・角強膜輪部、II=輪部から5 mm以内の強膜、III=輪部から5 mm超の後方強膜。
閉鎖性眼球損傷(CGI)
定義:眼球壁に全層創を生じない損傷。
眼球打撲:鈍的外力による閉鎖性損傷。
層状強膜裂傷:鋭的外力による非全層創。
ゾーン分類(I〜III):I=外表面(結膜・強膜・角膜上皮)、II=前眼部(前房・虹彩・水晶体)、III=後眼部(硝子体・網膜・脈絡膜・視神経)。
眼外傷スコアは6つのパラメータ(初期視力・眼球破裂・眼内炎・穿通性損傷・網膜剥離・求心性瞳孔反応異常)から予後を予測するスコアである。
眼外傷スコアの限界として、ゾーンII/IIIの境界の取り扱い・眼付属器損傷・非機械的外傷が含まれない点がある。ゾーンIIIのさらなる細分化(前方/後方)も提案されており、後方ゾーンIIIでは視力転帰不良・網膜剥離・増殖硝子体網膜症(PVR)の発生率が高い。
眼外傷の発生には年齢・性別・場面・国による差異がある。年齢は二峰性のピークを示し、若年層と高齢層に多い。性別では男性の眼外傷率が女性より高いが、歩行前乳児および75歳超の高齢者では例外的に同等か逆転することがある。
以下の表に主な受傷場面と原因を示す。
| 場面 | 主な原因 |
|---|---|
| 職業 | ハンマー打ち・研磨・切断(金属作業)・溶接・化学物質曝露 |
| スポーツ | ボール(サッカー・野球・テニス)・格闘技 |
| 家庭 | 文房具・玩具・洗剤・エアソフトガン・弾性ストラップ |
| 交通事故 | フロントガラス破片・エアバッグ展開 |
| 花火・祭り | 花火・爆竹(大晦日・独立記念日等) |
| 戦闘・爆発 | IED(即席爆発装置)・爆発物 |
林業・漁業・農業・建設業・鉱業など重工業での発生が多い。ハンマー打ち・研磨・切断(金属作業)が職業性開放性眼球損傷の最大原因であり、溶接・人工放射線源による外傷も生じる。金属のグラインダー(サンダー)切断や溶接では角膜異物が、ハンマー打撃では前房内異物・眼内異物が問題となる。
化学眼外傷は職場でのアルカリ曝露が多く、男性に最多で両眼性は12.3%にのぼる。アルカリは組織中の脂質を鹼化して融解壊死を引き起こし、酸より深部まで浸透する(アンモニアは瞬時に角膜を浸透、NaOHは数分で前房到達)。先進国では労働安全衛生規制の整備により職業性眼外傷は減少傾向にある。
スポーツ眼外傷の原因の70〜80%はボールである。サッカー・野球・テニス・ソフトボールでの発生が多い。軟球・サッカーボールは眼窩壁に当たっても変形して眼球に大きな力を与えるため重症例が多い。ゴルフボールは小さく眼窩にはまり込むため眼球破裂をきたしうる。格闘技(ラグビー・ボクシング)では鋸状縁断裂・巨大裂孔による外傷性網膜剥離が問題となる。傷害部位は前眼部が72%、後眼部が59%である。
乳幼児(0〜4歳)では掃除用洗剤が最多原因となる。学童期(5〜9歳)ではペン・鉛筆・ナイフ・フォーク・玩具が多く、箸・鉛筆による眼窩内異物も比較的多い。エアソフトガン・ヨーヨー・弾性ストラップも原因となる。文房具(ハサミ・ペン・鉛筆)は台湾・オーストラリアでも子供の穿通性眼外傷の原因として報告されている。
日本では1985年のシートベルト義務化・1987年の高性能合わせガラス装備義務化によりフロントガラス由来の眼外傷は減少した。エアバッグは0.03秒で膨張・0.07秒で収縮するため瞬目では防御できず、角膜上皮びらん・熱傷・アルカリ外傷を起こしうる。屈折矯正手術後(RK・LASIK)の患者では角膜破裂やフラップ偏位のリスクがある。
インド・米国・コロンビア等で花火関連眼外傷が頻繁に発生する。大晦日・ディワリ・旧正月・独立記念日に集中する。
IEDの使用増加に伴い戦闘関連の眼外傷プロファイルが変化し、1990年代には入院傷者の13%が眼外傷(第一次世界大戦の2%から大幅増加)であった。2020年のベイルート港爆発では39患者・48眼が受傷し、表面損傷54.2%・眼瞼裂傷41.6%・眼窩骨折29.2%・開放性眼球損傷20.8%・53.8%が手術介入を要した2)。
年齢によって異なる。0〜4歳では掃除用洗剤など家庭内化学物質が多く、5〜9歳ではペン・鉛筆・ナイフ・フォークなど文房具や玩具が主要原因となる。箸・鉛筆による眼窩内異物も小児に比較的多い。
すべてのスポーツでポリカーボネート製スポーツ用保護眼鏡の着用をアメリカ眼科学会(AAO)が推奨している。日常の眼鏡レンズはプラスチックが主流だが穿孔性眼外傷の可能性があり、スポーツ専用の保護眼鏡への交換が有効である。
眼外傷の診察は「外見→簡便な視機能検査→眼の形態検査→精密な視機能検査」の順で系統的に進める。
主な画像検査法の比較を以下に示す。
| 検査法 | 主な適応 | 注意事項 |
|---|---|---|
| 超音波Bモード | 眼底透見不能時 | 眼球穿孔が疑われる場合は慎重に |
| OCT | 外傷性黄斑円孔の診断 | 非侵襲的 |
| X線 | 金属異物の位置確認 | 詳細把握には限界あり |
| CT | 眼窩底骨折・眼内異物 | 外傷既往があれば積極的に撮影 |
| MRI | 軟部組織の詳細評価 | 金属異物が疑われる場合は禁忌 |
外傷の既往がある場合は、前眼部が正常に見えてもCTを撮影することで眼球破裂や眼内異物の見逃しを防ぐ。
眼外傷の予防は 管理の階層(Hierarchy of Controls; HOC) に基づいて体系化される。上位の対策ほど効果が大きく根本的である。
① 除去
ハザードそのものをなくす:危険な作業工程・製品を排除する。最も効果的な予防策。
② 代替
より安全な方法に置き換える:危険な化学物質を低毒性のものに代替する。製品設計段階での安全性確保。
③ 工学的対策
物理的バリアを設ける:機械ガード・防護スクリーン・安全容器の設置。ハザードと人の間に物理的な隔離を置く。
④ 管理的対策・⑤ PPE
作業手順の改善:安全教育・ラベル表示・作業マニュアルの整備。
個人用保護具(PPE):安全眼鏡・フェイスシールドなど。最後の砦として位置づけられる。
製品販売禁止・安全性の最低基準設定・ラベル表示と使用説明の義務化などの立法措置も眼外傷のハザード低減に有効である。
開放性眼球損傷の一次修復を受傷後24時間以内に施行することで、眼内炎の発症リスクが低減する(オッズ比0.30、15研究・8,497眼)1)。視力予後については24時間以内と超で有意差は認められない1)。
受診前に流水500 mL以上で直ちに持続洗眼を行う。アルカリは酸より深部に浸透するため、迅速な洗眼が予後に直結する。洗眼後はすみやかに眼科を受診し、化学物質の種類・量・受傷時刻を伝える。
化学熱傷の重症度はRoper-Hall分類または木下分類で評価する。
眼内異物の摘出までの時間は視力予後に大きく関わるため、可及的速やかに摘出する。鉄異物が残留すると鉄イオンが眼組織に沈着して眼球鉄症(白内障・網膜変性・緑内障・眼球ろう)をきたす。
一期的修復後に以下の合併症が生じた場合、二期的手術を検討する。
眼外傷の疫学研究においては、用語体系の不統一・測定システムの欠如が系統的なデータ収集の障壁となっている。IGATES(国際眼球・眼付属器外傷疫学研究)はAPOTSの一部として複数国からオンラインでデータを収集する取り組みであり、グローバルな疫学把握を目指している。
Mackinら(2025)は、開放性眼球損傷の一次修復タイミングを検討した15研究・8,497眼のシステマティックレビュー・メタアナリシスを報告した1)。受傷後24時間以内の一次修復は24時間超に比べて眼内炎のオッズを0.30に低減した。ただし視力予後には有意差は認められなかった。穿通性損傷(眼内異物を含む)では24時間超の遅延が眼内炎リスクを上昇させるエビデンスも示された。全研究が後方視的・非ランダム化であり、エビデンスの確実性は低く、今後のランダム化比較試験が待たれる1)。
眼外傷スコアについては小児への適用限界が指摘されており、小児専用の代替スコアリングシステムも提案されているが、十分な検証には至っていない。ゾーンIIIの細分化(前方/後方)により後方ゾーンIIIでの予後不良が示されており、より精緻な予後予測に向けた研究が進行中である。