構造イメージング
NIR(近赤外光反射):脈絡膜病変の星状・樹枝状パターンが高反射として鮮明に描出される。病変範囲の把握に最も有用なモダリティの一つ。
OCT(光干渉断層計):脈絡膜病変上の網膜色素上皮(RPE)不整と、網膜下液の有無を確認できる。脈絡膜厚の評価にも用いられる。
眼底自発蛍光(眼底自発蛍光):病変部に自発蛍光の変化を認め、RPE機能の状態を間接的に反映する。

星状多形無色素性脈絡膜症(Stellate Multiform Amelanotic Choroidopathy; SMACH)は、2021年にvan Dijk & Boonによって初めて報告された稀少な脈絡膜疾患である。
初報告の症例シリーズは18名28眼で構成され、平均発症年齢は28歳(範囲:10〜58歳)と比較的若い。性差に関する明確なデータは現時点では得られていない。疾患名は、病変の形態的特徴である「星状(stellate)・多形(multiform)・無色素(amelanotic)」に由来する。
「無色素(amelanotic)」という名称は、病変がメラニン色素を含まない黄橙色を呈することを示す。脈絡膜のどの層に病変が生じるかは、現時点では病理学的に確認されていない。
初報告(2021年)時点で18名の症例しか報告されておらず、世界的にも症例数が極めて少ない。命名・疾患概念の確立も最近のことであり、見落とされている症例が存在する可能性がある。
SMACHの症状は無症状から軽度の視覚症状まで幅広い。
眼底検査では、脈絡膜に黄橙色の病変を認める。形態は星状・樹枝状であり、複数の指状突起を持つ。この特徴的な外観がSMACHの命名根拠である。病変は単発または多発し、片眼性・両眼性いずれも報告されている。
網膜下液(SRD)を伴う症例では、黄斑部に漿液性網膜剥離を生じることがある。
マルチモーダルイメージングによる所見を以下に示す。
構造イメージング
NIR(近赤外光反射):脈絡膜病変の星状・樹枝状パターンが高反射として鮮明に描出される。病変範囲の把握に最も有用なモダリティの一つ。
OCT(光干渉断層計):脈絡膜病変上の網膜色素上皮(RPE)不整と、網膜下液の有無を確認できる。脈絡膜厚の評価にも用いられる。
眼底自発蛍光(眼底自発蛍光):病変部に自発蛍光の変化を認め、RPE機能の状態を間接的に反映する。
蛍光造影
FA(フルオレセイン蛍光眼底造影):病変部に過蛍光を認めることが多い。中心性漿液性脈絡膜症(CSC)類似の漏出点を示す症例もある1)。
ICGA(インドシアニングリーン造影):脈絡膜循環の評価に優れ、病変の脈絡膜内局在の詳細を把握できる。過蛍光・低蛍光パターンが報告されている。
血流評価
OCTA(光干渉断層血管造影):病変部の脈絡膜毛細血管板(CC)血流を非侵襲的に評価できる。CC血流低下域が星状病変に対応する部位に認められる症例がある。
単一の検査で診断が確定するわけではなく、NIR・OCT・FA・ICGAを組み合わせたマルチモーダルイメージングが診断の基本となる。特にNIRは病変の星状パターンを視覚的に把握しやすい。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。
SMACHの病因は現時点では不明である。
報告されている症例数が17〜18例と少なく、系統的な疫学研究は行われていない。明確なリスク因子も特定されていない。
発症機序として、先天性脈絡膜形成異常の可能性が提唱されている。これは若年発症例が多いこと、病変の形態が発生・形成異常のパターンと類似することが根拠となっている。ただし、病理組織学的データは現時点では存在しない。
SMACHの診断は、特徴的な眼底所見とマルチモーダルイメージング所見の組み合わせによる。確定診断のための統一された国際的診断基準は現時点では存在しない。
以下の所見の組み合わせが診断の手がかりとなる。
SMACHと鑑別すべき主な疾患を以下に示す。
| 疾患 | 類似点 | 鑑別のポイント |
|---|---|---|
| 中心性漿液性脈絡膜症(CSC)1) | 網膜下液・RPE変化 | CSCは病変形態が星状でない |
| APMPPE(多発性消退性白点症候群)1) | 多発性脈絡膜病変 | APMPPEは炎症性・急性経過 |
| Best病 | 黄橙色卵黄様病変 | Best病は黄斑中心部・EOGで診断 |
| 脈絡膜腫瘍 | 黄橙色隆起病変 | 腫瘍はより隆起が高く不整 |
CSCとの鑑別は臨床上重要である。CSCはパキコロイド疾患スペクトラムに含まれ、脈絡膜血管拡張を背景とする2)。SMACHの星状樹枝状形態はCSCには見られず、ICGAおよびOCTAでの所見の違いが鑑別に有用である。
SMACHに対する確立された標準治療は存在しない。現時点で報告されている治療の試みはいずれも限られた症例数に基づく。
多くの症例では病変が慢性安定的に経過する。ただし網膜下液が黄斑に及んだ場合には視力に影響することがある。定期的な経過観察により変化を早期にとらえることが重要である。
SMACHの発症機序は未解明であるが、脈絡膜の循環障害に基づくモデルが提唱されている。
星状の脈絡膜病変が脈絡膜毛細血管板(choriocapillaris; CC)を外側から圧迫し、CC内の静水圧が上昇すると考えられる。この静水圧の上昇がBruch膜およびRPEを通じた液体の漏出を促し、網膜下液の貯留をもたらす。
脈絡膜の静脈流出障害がSMACHの病態に関与する可能性がある。Cheungらはパキコロイド疾患スペクトラムにおいて、ハーラー静脈を含む脈絡膜大型血管の拡張が脈絡膜静脈流出障害を反映すると論じた2)。SMACHでも類似の機序が働き、星状病変部位での局所的な脈絡膜循環不全が生じている可能性がある。
段階1:病変形成
先天性形成異常:脈絡膜の形態・構造の先天的な異常が基盤となる可能性。
星状病変の発生:黄橙色の無色素性病変が脈絡膜内に形成される。
段階2:圧迫・閉塞
CC圧迫:星状病変が脈絡膜毛細血管板を圧迫し、局所血流が低下する。
静脈流出障害:脈絡膜の静脈循環が障害され、静水圧が上昇する2)。
段階3:液体貯留
RPE障害:静水圧上昇によりRPEポンプ機能が障害される。
SRD形成:Bruch膜・RPEを通じて液体が網膜下腔に貯留し、漿液性網膜剥離を生じる。
SMACHは2021年の初報告以来、報告症例数は17〜18例にとどまる極めて稀少な疾患である。疾患概念の確立・命名自体が最近のことであり、認知度の低さから見逃されている症例が一定数存在する可能性がある。
初報告(van Dijk & Boon, 2021)の時点から疾患名や概念の検討が続いており、確立した国際的統一名称はまだない。「無色素性脈絡膜症」「星状脈絡膜症」などの記述も文献上に散見される。
現時点では症例数が少なく、単一施設での研究には限界がある。国際的な症例レジストリの構築と多施設共同研究が、疾患の自然経過・病態・治療法の解明に向けた次のステップとなる。