点状型(dot型)
形態:小さな円形〜楕円形の黄白色点が散在。
分布:黄斑周囲に不規則に配列。最も一般的な形態。
OCT所見:RPE内表面上の小さな高反射沈着物。

網状ドゥルーゼン(reticular pseudodrusen; RPD、またはsubretinal drusenoid deposits; SDD)は、RPE(網膜色素上皮)の内表面側、すなわち網膜下腔に沈着する黄白色の小体である。眼底写真では黄白色の網状・点状パターンとして観察される。
1990年にMimounらが初めて記載した。通常のドゥルーゼンがBruch膜とRPEの間(RPE下腔)に位置するのとは対照的に、SDDはRPE表面の網膜下腔に存在する。組成上も、通常の軟性ドゥルーゼンに含まれるエステル化コレステロールや石灰化成分を欠き、中性脂質に富む疎水性の沈着物である。
加齢黄斑変性を有する患者の約29%にRPDが認められ、両側性かつ対称性に分布する。萎縮型加齢黄斑変性(地図状萎縮; GA)および網膜色素上皮剥離(RAP; retinal angiomatous proliferation)との関連がとくに強く、軟性ドゥルーゼンと比較してGA・CNV(脈絡膜新生血管)への進行リスクが約2倍高いとされる2)。
加齢黄斑変性に限らず、脈絡膜虚血をきたす全身疾患との関連も報告されている。子癇前症(SDDの有病率32.7%)や悪性高血圧(23.4%)でもSDDが出現し得ることが示された2)。
SDDは動的な構造物であり、病状の変化に伴い退縮・消失しうる。網膜下液(SRF)の介在により溶解されマクロファージに貪食されることで消失した症例1)や、ビタミンA補充により著明に縮小した症例3)が報告されている。
通常の軟性ドゥルーゼンはBruch膜とRPEの間(RPE下腔)に位置するのに対し、SDDはRPE表面の網膜下腔に存在する。組成も異なり、SDDはエステル化コレステロールや石灰化を欠き中性脂質に富む疎水性の沈着物である。加齢黄斑変性進行リスクも軟性ドゥルーゼンの2倍程度高い2)。
SDDの自覚症状は病変の範囲・進行程度により多様である。
眼底検査では黄白色の小体が網状・点状・リボン状に分布する。上方・上耳側黄斑周囲から中間周辺部にかけて広がることが多い。
SDDの形態は以下の3型に分類される。
点状型(dot型)
形態:小さな円形〜楕円形の黄白色点が散在。
分布:黄斑周囲に不規則に配列。最も一般的な形態。
OCT所見:RPE内表面上の小さな高反射沈着物。
リボン型(ribbon型)
形態:点状病変が線状・弧状に連なったパターン。
分布:血管アーケードに沿うように配列することがある。
OCT所見:RPE表面に沿った連続的な高反射帯。
周辺部型
形態:中間周辺部〜周辺部に広がる淡い網状病変。
分布:通常の眼底検査では見落とされやすい。
OCT所見:RPE上の扁平な沈着物。ワイドフィールド撮像で確認。
OCTによるZweifel分類では、SDDは以下の3タイプに分けられる。
| タイプ | OCT所見 | 特徴 |
|---|---|---|
| タイプ1 | RPE表面の顆粒状高反射 | 最早期。FAF/NIRで確認困難 |
| タイプ2 | RPE上の三角帽子状突起 | 典型的所見。各モダリティで確認可能 |
| タイプ3 | RPE上の球形高反射体 | 最も大型。椎体状・コーン状とも称される |
HELLP症候群(溶血・肝酵素上昇・血小板低下)に合併したSDD症例では、黒点状散在病変(Elschnig spots)が同時に観察された2)。
通常のカラー眼底写真では過小認識されやすい4)。FAF(眼底自発蛍光)・NIR(近赤外反射)・SD-OCTの多モーダル撮像を組み合わせることで検出精度が最大となる。とくにNIRではSDDが低反射スポットとして明瞭に描出される。
SDDの主要な基盤疾患・リスク要因を以下に示す。
SDDは通常の眼底検査で過小認識されやすく、多モーダル撮像が診断の要である。
FAF(眼底自発蛍光)・NIR(近赤外反射)・SD-OCTがSDDの描出に最も優れる4)。
FAF
所見:SDDは自発蛍光の低下(低蛍光スポット)として描出。
特徴:広範な病変の分布把握に有用。GAとの関連評価にも使用。
限界:タイプ1の早期病変の検出は困難な場合がある。
NIR(近赤外反射)
所見:SDDが低反射スポットとして明瞭に描出。
特徴:SDDの検出感度が最も高いモダリティの一つ。FAFと組み合わせて使用。
利点:メラニンを含むRPE層深部の変化を捉えやすい。
SD-OCT
所見:RPE表面(網膜下腔)に三角帽子状・球形の高反射沈着物。
特徴:Zweifel分類(タイプ1〜3)による病期評価が可能。EZ(楕円体帯)の断裂・消失も評価。
OCTA所見:脈絡毛細血管板の血管密度低下を伴うことがある3)。
蛍光眼底造影(FA)はSDDの検出感度が低く、第一選択としては推奨されない。ただしCNVの合併評価にはFAおよびICGA(インドシアニングリーン蛍光眼底造影)が有用である。
軟性ドゥルーゼン(RPE下腔に位置)、基底層線状沈着物(BLD)、外層網膜管(ORT)との鑑別をOCTで行う。SDDはRPE内表面上に存在することが鑑別の要点である。
詳細は「病態生理学」の項を参照。
SDDに対する確立された直接的治療は現時点では存在しない。治療の目標は加齢黄斑変性への進行抑制とCNV合併時の視力温存である。
日本の加齢黄斑変性診療ガイドラインでは、中間型〜進行型加齢黄斑変性のリスク低減にAREDS2処方(ビタミンC 500mg・ビタミンE 400IU・ルテイン10mg・ゼアキサンチン2mg・亜鉛80mg・銅2mg)を推奨している。RPDを有する患者は加齢黄斑変性進行のリスク因子を多く持つため、サプリメントの適応を積極的に評価する。
CNV(脈絡膜新生血管)を合併した場合、日本の加齢黄斑変性診療ガイドラインでは抗VEGF薬(ラニビズマブ・アフリベルセプト等)を第一選択治療として推奨している。SDDはRAPとの関連が強く、RAP合併時も抗VEGF療法が適応となる。
ビタミンA欠乏に伴うSDDでは、ビタミンA補充により8か月後にSDDが著明に減少し、EZが再構成された症例が報告されている3)。低栄養患者では血清ビタミンA値の確認が重要である。
HELLP症候群・子癇前症では分娩後に病態が改善し、SDDの自然退縮が認められる場合がある。Van Rysselbergeら(2019)は4年で完全消失した症例を報告している2)。また、孔原性網膜剥離(RRD)術後に網膜下液が介在することでSDDが溶解・退縮した症例が報告されており、SRFによる中性脂質の溶解とマクロファージによる貪食が退縮機序として示唆されている1)。
SDDがあっても、CNVやGAなどの加齢黄斑変性進行所見が認められない段階では直接的な治療介入は困難である。AREDS2サプリメントの適応評価と定期的な眼科受診による経過観察が基本となる。CNV合併時には抗VEGF療法を早期に開始する。
SDDはRPE内表面(網膜下腔)に蓄積する。通常の軟性ドゥルーゼンがBruch膜とRPEの間(RPE下腔)に形成されるのとは根本的に異なる。
組成面では、エステル化コレステロールや石灰化を欠き、中性脂質に富む疎水性の沈着物である3)。この組成の違いが、軟性ドゥルーゼンとは異なる画像所見(OCT上の高反射体)をもたらす。
脈絡毛細血管板(CC)の血流低下がSDDの主要な病態と考えられている。OCTA(光干渉断層血管造影)を用いた研究では、SDD症例において脈絡毛細血管板の血管密度低下が確認された3)。HELLP症候群・子癇前症・悪性高血圧においてSDDが出現する事実は、脈絡膜虚血がSDD形成の共通メカニズムであることを支持する2)。
SDDの上方黄斑への好発は、桿体光受容体密度が最も高い領域と一致する3)。桿体外節の脂質成分(主にDHA; ドコサヘキサエン酸)はRPEで処理された後、Müller細胞を介して桿体に再供給されるリサイクル経路が存在する。ビタミンA欠乏やRPE機能低下によりこの経路が障害されると、脂質がRPE表面に蓄積しSDDを形成するとの仮説が提唱されている3)。
SDDは動的な構造物であり、以下のメカニズムで退縮しうる。
孔原性網膜剥離(RRD)後に網膜下垂直空隙(void)が形成され、3か月でSDDが消失した症例が報告された1)。SRF中の脂質溶解性成分がSDDの中性脂質を溶解し、マクロファージがその残渣を貪食することで消失に至ったと推察されている。FAFでは2年後にほぼ完全な消失が確認された1)。
ビタミンA補充による退縮では、RPE-Müller細胞間の脂質リサイクル経路の回復がSDDの消失に寄与したと考えられている3)。
AREDS2024更新版では、RPDを加齢黄斑変性進行の独立したリスク因子として明確に位置づけた4)。
AREDS2024の解析では、RPDを有する患者においてリスク因子が4つある場合、5年間の加齢黄斑変性進行率は72%に達することが示された。RPDのない症例(50%)と比較して明らかに高く、RPDが独立したリスク因子であることが確認された4)。RPDは通常の眼底検査では過小認識される可能性があり、FAF・NIR・SD-OCTを用いた積極的なスクリーニングの重要性が強調された4)。
この知見はSDDのある患者に対してより積極的なモニタリングと早期介入の根拠を提供するものとして注目されている。
Forsaaら(2023)は76歳男性のRRD術後にSDDが退縮した症例を詳細に記録した1)。術後3か月で網膜下垂直空隙(void)がOCTで確認され、SDDは段階的に消失した。FAFでは2年後にほぼ完全なSDD消失が確認された。この偶発的なモデルは、SRFがSDD構成成分(中性脂質)の溶媒として機能しうることを示唆し、将来的な薬理学的アプローチの標的となりうる知見として注目されている。
Durmaz Enginら(2024)は17歳の初産婦に発症したHELLP症候群に伴うSDD症例を報告した2)。OCT上の網膜厚は438/443μmと著明な肥厚を示し、Elschnig spotsを伴っていた。分娩後の追跡では、Van Rysselbergeら(2019)の先行報告と同様に4年での完全消失が確認された。脈絡膜虚血の解除がSDD退縮に寄与することを示すとともに、SDDが若年者にも発症しうることを示した症例である。
Zatreanuら(2021)は血清ビタミンA値<2.5μg/dLの67歳患者においてSDD+EZ断裂を報告した3)。ビタミンA補充後8か月でSDDは著明に減少し、EZの再構成が確認された。OCTA上では脈絡毛細血管板の血管密度低下が同時に観察された。この症例はSDDが潜在的に可逆的であることを示す初期的エビデンスとして、RPE-Müller細胞間の脂質リサイクル経路を標的とした治療開発への示唆を与えている。
現在の研究は、(1) 脈絡毛細血管板血流の改善、(2) RPE-Müller細胞間脂質リサイクル経路の回復(ビタミンA等)、(3) SRF類似の薬理学的溶解アプローチ、の3方向が注目されている。いずれも実験・症例報告の段階であり、標準治療として確立されたものではない1)3)。