OCT所見
高反射壁を持つ囊胞様空間:内腔が暗く、壁が高反射を示す動脈瘤様構造が特徴的である1)2)3)4)。
周囲の網膜浮腫:黄斑部に滲出を伴う網膜内浮腫が認められる。
血栓化所見:疾患経過中に内腔が血栓化し、消退する例が報告されている2)。

中心窩周囲滲出性血管異常複合体(Perifoveal Exudative Vascular Anomalous Complex; PEVAC)は、中心窩周囲の毛細血管床に生じる孤立性の動脈瘤様血管異常である。滲出性変化を伴い、視力低下や変視症の原因となる。
2011年にQuerquesらにより初めて報告された比較的新しい疾患概念であり、症例数は少ない。疾患経過は2相モデルで説明される。第1相(非滲出期; nePVAC)から第2相(滲出期; ePVAC)への移行が提唱されている2)3)。
発症年齢は中高年が多く、報告例の平均は70歳前後である。両側性発症の報告も存在する1)。
中高年、とくに高血圧や脳卒中の既往を持つ患者に多いとされる。ある報告では、対象患者の約70%が高血圧を有し、約40%が脳卒中の既往を有していた4)。
細隙灯顕微鏡および各種画像検査で以下の所見が認められる。
OCT所見
高反射壁を持つ囊胞様空間:内腔が暗く、壁が高反射を示す動脈瘤様構造が特徴的である1)2)3)4)。
周囲の網膜浮腫:黄斑部に滲出を伴う網膜内浮腫が認められる。
血栓化所見:疾患経過中に内腔が血栓化し、消退する例が報告されている2)。
FA/ICGA所見
OCTA所見
深部毛細血管層(DCP)優位の異常:光干渉断層血管造影(OCTA)では深部毛細血管層に異常血管構造が検出されやすい2)4)。
血管異常の可視化:動脈瘤様拡張を非侵襲的に評価できる。最大径は216μmに達する例も報告された4)。
OCTにより高反射壁と暗い内腔を持つ動脈瘤様構造の形態を把握でき、OCTAにより深部毛細血管層の異常を非侵襲的に評価できる2)4)。両者を組み合わせることで、FAなどの蛍光造影と補完的に診断精度を高められる。
PEVACの病因は未解明な部分が多いが、いくつかの仮説が提唱されている。
細隙灯顕微鏡での眼底観察を基本とし、OCT・FA・OCTAを組み合わせて診断する。深部毛細血管層に孤立性の動脈瘤様構造が認められ、滲出を伴う場合に本疾患を疑う。
各検査の役割は以下の通りである。
類似疾患との鑑別が診断の重要なステップとなる。
| 疾患 | 主な相違点 |
|---|---|
| 1型黄斑毛細血管拡張症 | 両側性・瀰漫性拡張4) |
| 3型MNV | 深部新生血管・進行性 |
| 毛細血管マクロ動脈瘤 | 動脈幹近傍に局在4) |
PEVACの確立された標準治療は存在しない。以下に現時点での主な治療選択肢を示す。
抗VEGF薬は典型的には無効とされる。アフリベルセプト3回投与でも反応しなかった例が報告されている2)。ラニビズマブ3回投与で完全消失し5年間再発なしとなった例もあるが4)、奏功例は例外的と考えられている。
Savastanoら(2025)は57歳男性にアフリベルセプト3回投与が無効であった後、全閾値黄色レーザー(100mW/300ms/100μm)を施行し、完全寛解(視力20/20)を達成したと報告した2)。病変の血栓化が確認され、長期寛解が得られた。
Tomboliniら(2022)は74歳男性にジクロフェナク0.1%点眼を1日2回1か月間投与し、病変が消失したと報告した3)。COX-2阻害を介したVEGF・アンジオポエチン2(Ang2)の抑制が機序として考えられている。
一部の症例では治療なしに自然消退が起こる。ただし再発する場合もある1)4)。
全閾値レーザー光凝固が有力な選択肢となる。完全寛解の報告がある2)。NSAIDs点眼(ジクロフェナク0.1%)による消退例も報告されており3)、個々の症例に応じた治療選択が求められる。
PEVACの病態は内皮細胞障害と周皮細胞喪失の2つの仮説で説明される。
PEVACの滲出はVEGF依存性が低いと考えられ、抗VEGF薬の無効に繋がる2)。COX-2を介したVEGFおよびAng2の上昇が滲出に関与するとする仮説も提唱されており3)、NSAIDs点眼の奏功例と矛盾しない。
Sacconilらの2相モデルでは、病態が以下のように進行するとされる2)。
血栓化による自然消退もこのモデルの枠組みで説明される2)。
Savastanoら(2025)は、抗VEGF薬3回投与が無効であった症例に対し、全閾値黄色レーザー(100mW/300ms/100μm)を動脈瘤様構造に直接照射し、完全寛解を達成した2)。病変の血栓化が組織学的に示唆され、視力20/20を維持した。
Tomboliniら(2022)は、ジクロフェナク0.1%点眼によるPEVAC消退例を報告し、COX-2阻害→VEGF・Ang2の低下という機序を提唱した3)。抗VEGF療法と異なる経路への介入として注目される。疾患概念の呼称としてPVAC(Perifoveal Vascular Anomalous Complex)を提唱している。
Torrell-Belzachら(2022)はラニビズマブ3回投与後に完全消失し、5年間再発なしとなった症例を報告した4)。抗VEGF薬が奏功する稀な例の存在は、病態の異質性を示唆する。
Jadnannansingら(2024)は多発性骨髄腫合併の56歳男性に両側性PEVACが生じた症例を報告した1)。Fernandez-Vigoらによる両側性症例の初報告と並び、全身疾患との関連および両側性発症の存在が示唆される。一方で自然消退後3か月での再発も記録された1)。
全閾値レーザーは複数の症例で奏功しており、今後の症例集積と比較研究が期待される2)。NSAIDsによるCOX-2経路への介入も新たな方向性として注目される3)。疾患の稀少性から、多施設共同研究によるエビデンス構築が課題である。