FAF所見
密集した斑点状パターン:黄斑部に密集した過蛍光と低蛍光が混在する斑点が出現する。PPMに高度に特異的な所見である。
乳頭周囲ハロー:視神経乳頭周囲に低蛍光帯が形成される。遺伝性黄斑疾患との鑑別に有用。
偽足状拡大:経過とともに病変辺縁が不規則に拡大する。疾患活動性の指標となる1)。

ペントサンポリ硫酸黄斑症(Pentosan Polysulfate Maculopathy; PPM)は、間質性膀胱炎(IC)の治療薬であるペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)の長期使用に伴い生じる進行性の色素性黄斑症である。2018年にPearceらにより初めて報告された。
PPSは米国でElmiron(エルミロン)の商品名で販売されている半合成ヘパリン類似グリコサミノグリカン(GAG)化合物であり、ICに悩む約100万人以上が長期にわたり服用している1)。標準用量は200mg/日(1日2〜3回分割投与)である。
累積投与量と有病率の関係について、大規模な解析では以下が報告されている1)。
| 累積投与量 | 有病率 |
|---|---|
| 500〜999 g | 12.7% |
| 1000〜1500 g | 30% |
| 1500 g 超 | 41.7% |
罹患者の平均服用期間は15.0±5.7年、平均累積投与量は1824±1042gと報告されている1)。初診時の視力中央値は20/25(小数換算0.8相当)であり、多くの症例で発見時にすでに視機能障害を有する1)。
PPSは間質性膀胱炎の慢性疼痛・膀胱不快感を和らげる目的で処方される半合成グリコサミノグリカン化合物である。米国ではElmiron(エルミロン)の商品名で広く使用されており、標準用量は200mg/日で長期にわたり継続投与されることが多い。
初期は無症状のことが多く、検査で偶然発見される例もある。病変が進行すると以下の自覚症状が現れる。
PPMに特徴的な画像所見は複数のモダリティで確認される。
FAF所見
密集した斑点状パターン:黄斑部に密集した過蛍光と低蛍光が混在する斑点が出現する。PPMに高度に特異的な所見である。
乳頭周囲ハロー:視神経乳頭周囲に低蛍光帯が形成される。遺伝性黄斑疾患との鑑別に有用。
偽足状拡大:経過とともに病変辺縁が不規則に拡大する。疾患活動性の指標となる1)。
OCT・OCTA所見
RPE結節:網膜色素上皮(RPE)レベルの高反射結節性変化。下層の脈絡膜に影を落とす。
外層網膜管腔(ORCs):光受容体外節〜RPE間に生じる管腔構造1)。
脈絡膜毛細血管板flow deficit:OCTAで脈絡膜毛細血管板の血流欠損が検出される。他の画像異常に先行して出現し得る最早期のマーカーである1) 2)。
3型MNV(脈絡膜新生血管)の合併:PPM患者への3型MNV発生が初めて報告されている2)。OCTAで過反射焦点(HRF)が外顆粒層(ONL)から内顆粒層(INL)へ移動し、その後flow signalが出現する経過が観察された2)。
多焦点網膜電図(mfERG):黄斑部の機能障害を客観的に評価できる。病変の広がりに対応した振幅低下が認められる1)。
OCTAによる脈絡膜毛細血管板のflow deficitが最早期のマーカーになり得ると報告されている。自覚症状や視力低下よりも先行して検出されることがあり、定期的なOCTA検査が早期発見に有用である1) 2)。
PPMの唯一の原因はPPSの長期服用である。用量依存性の毒性が示唆されており、累積投与量が最大のリスク因子である。
PPMの診断には複数のモダリティを組み合わせた画像評価が重要である。Macula Societyはスクリーニングプロトコールを公表しており、眼底写真・FAF・SD-OCT・多焦点網膜電図による評価を推奨している1)。
各検査の位置づけを以下に示す。
| 検査 | 主な所見 | 位置づけ |
|---|---|---|
| FAF | 密集斑点状パターン | 最も診断的 |
| SD-OCT | RPE結節・外層管腔 | 構造評価 |
| OCTA | 脈絡膜毛細血管板欠損 | 最早期マーカー |
以下の疾患との鑑別が必要である。
PPS服用歴の詳細な聴取(服用期間・1日量・累積投与量の概算)が正確な診断に不可欠である。
PPMはドルーゼンに乏しい点、FAFでの密集した斑点状パターンと乳頭周囲ハローがある点、OCT上のRPE結節がドルーゼンと異なる特徴を示す点でAMDと区別される。PPS長期服用歴の確認が最重要の鑑別ポイントである。
PPMに対する根本的な治療法は現時点では存在しない1)。治療の中心はPPS中止・漸減と合併症への対症療法である。
3型MNV合併例に対して抗VEGF薬投与が有効である2)。
BousquetらはPPS11年・累積1205g服用後にPPS中止1年で3型MNVを発症した72歳女性に対し、アフリベルセプト硝子体内注射を2回施行した。視力は20/60から20/30へ改善し、MNVの退縮が確認された2)。
PPM病変は不可逆的であり、薬剤中止後も進行する症例が報告されている1) 2)。早期発見して中止することで進行を遅延させる可能性があるため、定期的なスクリーニングと早期介入が重要である。
PPMの正確な発症機序は未解明の部分が多いが、PPSのGAG類似構造が関与する複数の機序が提唱されている。
GAG類似構造による光受容体間マトリックスの撹乱:PPSは硫酸化GAGに類似した構造を持ち、網膜の細胞外マトリックスに蓄積してこれを撹乱する。視細胞外節の維持に不可欠な光受容体間マトリックス(IPM)が損なわれ、光受容体の変性が生じると考えられる1)。
FGF(線維芽細胞増殖因子)の阻害:PPSはヘパリン結合性増殖因子であるFGFに結合・阻害することで、RPEや脈絡膜毛細血管板の細胞維持に必要なシグナル伝達を障害する可能性がある1)。
脈絡膜毛細血管板の障害:PPSは脈絡膜毛細血管板の灌流を障害し、RPEおよび光受容体への栄養・酸素供給を低下させる。OCTAで確認されるflow deficitはこの脈絡膜微小循環障害を反映している1) 2)。
3型MNV発生機序:PPSにより障害されたRPEが局所的に代償機能を失い、深部網膜毛細血管叢からの内向き新生血管(3型MNV)が誘発されると推測される。OCTAでHRFがONLからINLへ移動しその後flow signalが出現するという経過は、新生血管の成長過程を示唆する2)。
Pinto AMらは13年間の長期経過を観察し、FAFで偽足状拡大(pseudopodial pattern)が持続して進行することを初めて記録した1)。視力は13年間で20/25から20/100へ低下し、PPS中止後も病変が持続・進行することが確認された。
OCTAによる脈絡膜毛細血管板のflow deficit定量化が早期診断マーカーとして注目されている。
Bousquetらは3型MNV発症前の段階から脈絡膜毛細血管板のflow deficitが存在していたことを記録し、OCTAが構造変化の最早期マーカーになり得ることを示した2)。これにより、MNVへの進行を事前に予測できる可能性がある。
Macula Societyは2019年にスクリーニングガイドラインを策定した1)。OCT定量化や画像解析AIの応用など、より精度の高いスクリーニング手法の研究が継続している。
Macula Societyのガイドラインに従い、FAF・SD-OCT・OCTAを含む定期的なスクリーニングが推奨される1)。OCTAによる脈絡膜毛細血管板評価が最早期の変化を捉えられると報告されており、PPS服用患者では年1回以上の眼科的精査が望ましい。