OMD(典型型)
眼底所見:正常
OCT所見:EZ不鮮明・IZ消失
遺伝形式:主に常染色体優性
視力:緩徐に低下

オカルト黄斑ジストロフィ(occult macular dystrophy; OMD)は、眼底所見が正常であるにもかかわらず中心視力が進行性に低下する遺伝性の黄斑ジストロフィである。1989年に三宅により初めて報告され、発見者の名前にちなんで三宅病(Miyake disease)とも呼ばれる。
原因遺伝子としてRP1L1(retinitis pigmentosa 1-like 1)遺伝子が同定されている。遺伝形式は常染色体優性が最も多いが、常染色体劣性遺伝や孤発例も報告されている。RP1L1変異には不完全浸透が認められる1)。患者の約50%でしか検出可能な遺伝的原因が特定されない。
最も一般的な変異はc.133C>T(p.Arg45Trp)である。発症年齢は10歳から70歳まで広く分布し、平均は25〜30歳とされる1)。従来は東アジア系の患者に多いと考えられてきたが、スイス人やドイツ人での報告もあり、他の民族での見逃しの可能性が指摘されている1)。
黄斑ジストロフィに含まれる疾患の一つであり、卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)、Stargardt病、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィなどと並ぶ位置づけである。
同一の疾患である。発見者の三宅にちなんでMiyake diseaseとも呼ばれる。RP1L1遺伝子変異による常染色体優性遺伝のOMDを特にRP1L1関連OMD(三宅病)と呼ぶことがある。
主症状は両眼性の緩徐な視力低下である。進行速度は個人差が大きい。
本疾患の名称の由来の通り、通常の眼底検査では異常を認めない。
中村らの研究では、OCT上の視細胞構造に基づく3つの臨床病期が提案されている。
Zabekら(2022)は、34歳スイス人男性のOMD症例を報告した1)。BCVA は右眼20/125、左眼20/160であり、OCTでEZの不連続とONLの菲薄化を認め、FAFはほぼ正常で軽微なmottlingのみであった。
OMDの主な原因はRP1L1遺伝子の変異である。
RP1L1遺伝子は視細胞外節のaxoneme(繊毛の中心構造)の構成要素をコードしており、外節の構造と機能の維持に関与すると考えられている2)。RP1L1は桿体と錐体の両方で発現している。
RP1L1変異はOMDのほか、常染色体劣性網膜色素変性症や錐体ジストロフィとも関連することが知られている2)。
OMD患者の約50%でしか遺伝子変異が検出されない。RP1L1以外の未同定の原因遺伝子が存在する可能性がある。臨床所見と電気生理学的検査の組み合わせで診断を確定させることが重要である。
OMDは通常の眼科検査では異常を捉えにくいため、診断が困難である。原因不明の両眼性視力低下をみた場合には本疾患を念頭に置く必要がある。
主な検査法の特徴を以下に示す。
| 検査法 | OMDでの所見 | 診断的意義 |
|---|---|---|
| 全視野網膜電図 | 完全に正常 | 除外に有用 |
| 局所網膜電図/mfERG | 黄斑部反応の著明低下 | 診断の鍵 |
| OCT | EZ不鮮明・IZ消失 | 構造評価に有用 |
眼底が正常で視力が低下している患者では以下を鑑別する。
OMDでは視細胞(特に錐体)の機能障害が黄斑部に限局しており、検眼鏡で認識できるほどの構造変化を初期には伴わない。OCTでは微細な外層構造の異常が検出可能であり、電気生理学的検査で黄斑機能の低下が客観的に証明される。
現在、OMDに対する有効な治療法は存在しない。
治療の中心はロービジョンケアであり、以下の対応が行われる。
多くの患者で視力は10〜15年かけて緩徐に低下した後、安定する傾向がある。最終的に重度の視力障害に至ることはまれであり、高齢になっても少なくとも片眼は0.1以上の視力を維持できる例が多い。
RP1L1遺伝子は視細胞外節のaxoneme(繊毛の中心構造)の構成要素をコードしている2)。正確な機能は解明されていないが、視細胞外節の構造維持と機能に関与することが示唆されている。
疾患の初期または軽症例では錐体細胞が先に障害される。進行例では黄斑部の桿体機能も影響を受ける。なぜ本疾患が主に中心窩を侵し、より広範な錐体機能不全が現れないかは不明である。
OMD(典型型)
眼底所見:正常
OCT所見:EZ不鮮明・IZ消失
遺伝形式:主に常染色体優性
視力:緩徐に低下
RP1L1黄斑症
眼底所見:vitelliform病変や地図状萎縮
OCT所見:EZ/IZ肥厚・網膜下沈着物
遺伝形式:優性または劣性
経過:増大と縮小の繰り返し
RP1L1変異の表現型スペクトラムは広範である。典型的なOMD(眼底正常)のほかに、RP1L1黄斑症として、vitelliform病変、地図状萎縮など眼底に明らかな異常を伴う表現型が報告されている2)。
Amato & Yang(2025)は、RP1L1ホモ接合変異(c.831del)を有する8歳男児を5年間追跡し、EZ/IZ肥厚から始まりvitelliform病変への進行と部分的吸収を観察した2)。13歳時点でBCVAは20/20と良好であったが、microperimetryで軽度の黄斑機能低下が認められた。
OMDは遺伝子治療の将来的な対象として注目されている。他の多くの遺伝性網膜変性症と異なり、OMD患者は成人になってから発症することが多く、弱視を伴わず、進行が緩徐で予測可能である。このため治療介入の窓が広いと考えられている1)。
ただし、疾患の稀少性とRP1L1遺伝子の機能が十分に解明されていないことが、遺伝子治療開発における大きな課題である1)。
近年、RP1L1変異が引き起こす表現型が従来のOMDの範囲を超えて拡大していることが報告されている2)。vitelliform病変や地図状萎縮など、従来のOMDの定義に当てはまらない表現型の存在は、RP1L1の機能や疾患メカニズムの理解をさらに複雑にしている。
mutational load(複数遺伝子の変異量負荷)が不完全浸透や発症年齢の変動に関与する可能性も指摘されている2)。今後、大規模な遺伝子型-表現型相関研究により、予後予測の精度向上が期待される。