乳児期(2歳未満)
瞬目反射・固視・追視:最も基本的な視反応の確認。
嫌悪反射:片眼遮閉への抵抗で視力左右差を推定。
OKN・PL法(FPL):縞模様への選好反応による客観的測定。
VEP:皮膚電極で3〜4歳から。全身麻酔下では年齢不問。

WHO統計によると、難聴は世界で約6億5,000万人に影響しており、地球上のおよそ9人に1人に相当する。半数以上が日常生活に支障をきたすレベルの難聴(disabling hearing loss)を有する。ロシアでは1,300万人以上の難聴者が存在し、うち100万人以上が小児とされる。
難聴患者の4分の1以上で視覚障害が認められ、屈折異常が最も多い。視覚は新生児・小児の発達において中心的な役割を果たしており、早期の視覚障害は運動能力・認知機能・社会的コミュニケーション能力・社会的関係構築に広く影響する。中心視力(central vision)の鋭敏さは主要な診断指標の一つである。
従来の視力検査は、視標を見た結果を言語で回答する主観的検査を前提としている。ろう・難聴児では言語コミュニケーションの欠如または発達不全があるため、こうした検査の実施に大きな困難を伴う。
加えて、ろう・難聴児では空間識の発達が健聴児と比較して遅れる傾向がある。物体の大きさ・色・形・空間的関係への注意は健聴児より約1年遅れて発達し、ランドルト環の切れ目方向の判断は空間識に依存するため、低年齢のろう・難聴児には特に困難となる。
従来の視力検査はランドルト環の切れ目方向を言葉や指差しで答えることを前提とした主観的検査であり、言語コミュニケーションが困難なろう・難聴児には実施しにくい。さらに、ろう・難聴児では空間識の発達が健聴児より約1年遅れる傾向があり、ランドルト環の切れ目方向の判別自体が低年齢では困難である。
ろう・難聴児への視力検査においては、年齢・発達段階・言語能力に応じて適切な手法を選択することが重要である。以下に各検査法の特徴を示す。
年齢ごとの正常視力の目安は以下のとおりである。
| 年齢 | 正常視力の目安 |
|---|---|
| 3か月 | 0.05 |
| 1歳 | 0.1〜0.2 |
| 2歳 | 0.3〜0.5 |
| 3歳 | 0.5〜0.8 |
| 6歳 | 1.0 |
小児の視力は発達途上にあり、検査方法や児の機嫌によっても結果が変動する。一度の検査で正確な測定値を得ることは難しく、複数回の検査を考慮することが望ましい。
3歳以上の幼児で実施可能。切れ目の方向を言葉・指差し・ハンドルで応答する。
Landolt環での検査が困難な2〜3歳児に使用する。蝶・魚・鳥・犬などの影絵が視力値に相当する大きさで描かれており、言葉で答えるか、手元の影絵から同じものを指差し・手に取る方法でも回答できる。2歳半〜3歳半の小児で楽しく測定可能。なお、絵視標で測定した視力0.7はLandolt環の視力0.7より低く評価されることに注意する。
ウサギやクマの顔の絵の中にある目(ドット)を指差しで回答する。最小視認閾に基づいた測定(最小分離閾ではない)で、検査距離は30cm(近見)。2歳頃から測定可能で、1〜3歳の幼児に有用。カード自体が小型で持ち運びやすく、外来以外での使用にも適する。
乳幼児が均一な画面より縞模様を好んで見る性質を利用した検査法。
FPL法を臨床応用した簡便法。明室で検査可能で所要時間は約10分。TAC視力はLandolt環視力より良い値を示しやすい点に留意する。
PL法と同原理で外来にて簡便に実施できる。TAC・grating acuity・lea grating paddles・Cardiff acuity testなど複数の手法がある。Cardiff acuity testは線画(魚・アヒル・車・汽車等)を使用し、児の注意を引きやすい。精神発達遅滞があり絵視標やLandolt環が実施不可能な年長児でも視力推定が可能である。
視覚刺激に対する後頭葉視中枢の電位変化を測定する客観的検査法。pattern VEPを用い、市松模様や格子縞のサイズを小さくしていくことで閾値を求める。
回転ドラムの縦縞模様により誘発される眼振を記録する。生後2カ月頃から有効で、成人の詐病疑い例にも使用できる。
3歳未満の児や精神発達遅滞のある児に使用する。視反応の発達は生後1カ月で単眼固視・正中線までの追視、2カ月で両眼固視・正中線を越える追視が見られる。片眼遮閉を嫌がる「嫌悪反射」がある場合は、視力に左右差があるサインである。
乳児期(2歳未満)
瞬目反射・固視・追視:最も基本的な視反応の確認。
嫌悪反射:片眼遮閉への抵抗で視力左右差を推定。
OKN・PL法(FPL):縞模様への選好反応による客観的測定。
VEP:皮膚電極で3〜4歳から。全身麻酔下では年齢不問。
幼児期(2〜5歳)
森実ドットカード:2歳頃から。指差し回答。近見30cm。
絵視標:2歳半〜3歳半。影絵のマッチング方式で実施可能。
TAC法・縞視力カード:FPL法の臨床簡便版。約10分で測定。
Landolt環(字ひとつ):3歳以上が目安。成功率は3歳60%・4歳95%。
学童期(6歳以上)
Landolt環(字づまり):標準的な視力検査。混雑棒付き視標を推奨。
LEA SYMBOLS・HOTV:応答が4択のため幼児〜低学年にも対応。
Sloan文字:年長児に推奨される標準的な視力表。
ロシアをはじめ旧ソ連圏では、以下の視力検査表が用いられてきた。
リー視標(Lea chart)の類似版。白背景に黒の絵記号(星・キノコ・クリスマスツリー・円・鶏・車・馬・飛行機・象・オートバイ)を使用。2枚のシートで構成され、左5列が視力0.1〜0.3、右7列が視力0.4〜1.0に相当する。視標数は視力0.1〜0.2が各3個、0.3が4個、0.4〜0.5が5個、0.6〜0.7が6個、0.8〜0.9が7個、1.0が8個。
難聴・発話障害患者に最も一般的に使用されてきた視力測定法。1923年にソビエト眼科医セルゲイ・ゴロビンとD.A.シフツェフが開発した。左列はキリル文字(Ш・Б・М・Н・К・Ы・И)、右列はランドルト環で構成され、各12列。視力値0.1〜2.0を測定可能。検査距離は5m。ランドルト環の切れ目方向(上・下・左・右)の判断が必要なため、ろう・難聴児では困難を伴う。
ウズベキスタンの眼科医Eldor Jonnazarov, MDが開発。ロシア連邦特許 RU 2,703,697 C1(2018年9月3日)を取得。正式名称はJust Evident Images / Jonnazarov Eldor Ikhtiyorovich(JEI/JEI)。
13種類のカラーおよび黒の視標(太陽・花・クリスマスツリー・家・鶏・子供・星・馬・熊・車・子猫・ボール・ウサギ)を使用。幅と高さが等しい視標を採用している。
検査距離は2.5m(従来の5mより短い)。子供に視標を複製したカードを渡し、検査表で視標が示された際に対応するカードを掲げる方式(言語的応答不要)。
各画像の高さと幅は等しく(第1列=35mm、第2列=17.5mm、第10列=3.5mm)、検査表の下端は床面から60cm、検査表中段の記号が子供の目の高さに位置するよう配置する。
検査手順:
視力0.1未満・1.0超の場合の計算式:
V2 = (d × V1) / D
(V1:正常視力、D:正常視力の児がその列を識別できる距離、d:被検児が見える距離、V2:被検児の視力)
Landolt環による視力検査は3歳以上から実施可能とされている。ただし成功率は3歳で60%、4歳で95%と年齢によって大きく異なる。特にろう・難聴児では空間識の発達が健聴児より遅れる傾向があるため、同年齢の健聴児と同様の結果が得られない場合がある。
言語応答に依存しない複数の検査法が利用可能である。森実ドットカード(指差し回答・2歳頃から)、絵視標(影絵マッチング・2歳半〜)、PL法(縞模様への選好反応)、VEP(脳波による客観的測定)などが代表的である。ろう・難聴児にはJEI/JEI検査表(カードマッチング方式・検査距離2.5m)も有効で、2歳から実施できる。
JEI/JEI検査表はカードマッチング方式を採用しているため言語的応答が一切不要である。検査距離が2.5mと短く、2歳からすべてのろう・難聴児に禁忌なく実施できる。また異なる言語環境でも使用可能で、検査室外(自宅・施設)での実施にも対応している。ゴロビン・シフツェフ表のようにランドルト環の切れ目方向判断を必要とせず、空間識の発達が遅れるろう・難聴児に適している。
発達遅滞を伴う児では、視力が同年齢の健常児より低くなることがあるが、発達年齢に置き換えると同等の視力を示すことが多い。検査法の選択は暦年齢ではなく発達年齢に応じて判断する。また、小児の視力は発達途上にあるため、一度の検査で正確な測定値を得ることは困難な場合も多く、複数回の検査結果を総合的に評価することが重要である。視覚障害が確認された場合は、早期の屈折矯正(眼鏡処方)が視力発達にとって重要となる。