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小児眼科・斜視

13トリソミー(パトウ症候群)

13トリソミー(パトウ症候群)は、13番染色体が3本存在する染色体異常である。1960年にPatauらが初めて報告した。眼球奇形を含む広範な多発奇形と、重度の精神発達遅滞を伴う。

常染色体トリソミーのなかで3番目に多く、最も致死性が高い。発生頻度は出生児5,000〜12,000人に1人で、欧州では1:5,300、米国では1:14,000と報告されている6)。女性がわずかに高頻度である。ほとんどが非遺伝性で孤発性に発生する。

生存期間の中央値は約10日で、28%が生後1週以内、44%が1か月以内、86%が1年以内に死亡する5)。5年生存率は9.7%、10年生存率は12.9%と報告されている7)。主な死因は心肺停止(69%)、心疾患合併症(13%)、肺炎(4%)である。

Q 13トリソミーの赤ちゃんの生存率はどのくらいか?
A

生存期間の中央値は約10日で、40%が1か月、約10%が1年まで生存する。5年生存率は9.7%、10年生存率は12.9%と報告されている。近年では積極的治療を受けた児の1年生存率は68.6%に達するとの報告もあり、モザイク型・部分型・女児・正期産児では予後が良好な傾向がある。

出生時〜新生児期に外表奇形として発見される。重度知的障害を伴うため、患児自身が視覚症状を訴えることは通常ない。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

眼病変は約50%にみられ、臨床的に有意な所見を呈する6)

高頻度(80〜99%)

小眼球・無眼球:完全型の60〜88%にみられる。モザイク型では23%4)。臨床的に眼球を確認できないがMRIで眼球構造を認めた例も報告されている。

眼距離異常:完全型の83%、モザイク型の67%に眼距離短縮を認める4)

中頻度(30〜79%)

コロボーマ・白内障:完全型の63〜75%、モザイク型の10〜11%に認める4)虹彩コロボーマは通常鼻下側に位置し、全体の約33%にみられる。

その他:睫毛異常、虹彩低形成、深在眼、視神経萎縮網膜異形成。

  • 先天白内障:約6%
  • 眼瞼裂異常:5〜27%4)
  • その他の稀な所見:先天緑内障/牛眼(1%)、PFV(胎児遺残血管)、前眼部形成異常、内眼角贅皮、鼻涙管閉塞、円錐角膜、眼内軟骨、単眼症(cyclopia)
  • 頭部・顔面:小頭症、頭皮部分欠損、耳介異常、鼻根部平坦、口唇口蓋裂
  • 四肢:軸後性多指趾症
  • 合併奇形:全前脳胞症(24〜45%)1)、先天性心疾患(約80%)6)、腎泌尿器異常
  • 発達:重度知的障害、筋緊張低下、発育不全
Q 13トリソミーの眼の異常はどのくらいの頻度で起こるか?
A

完全型の13トリソミーでは、小眼球・無眼球が60〜88%、コロボーマ・白内障が63〜75%、眼距離短縮が83%と極めて高頻度である。モザイク型では小眼球23%、コロボーマ10〜11%と軽度になる。眼病変全体では約50%に臨床的に有意な所見を認める。

13トリソミーは13番染色体の数的異常により発症する。以下の4つの病型がある。

病型頻度機序特徴
完全型約80%減数分裂不分離(91%が母方由来)典型的な重症像
転座型約20%ロバートソン転座遺伝する可能性あり
モザイク型約5%有糸分裂不分離軽症5)
部分型部分的重複軽症

主なリスク因子は母体年齢の上昇であり、35歳以降で顕著に増加する。

長期生存に関連する因子として、モザイク型、部分型、女児、正期産であることが報告されている3)7)

Q モザイク型と完全型で症状の重さは違うか?
A

モザイク型は完全型に比べて軽症であることが多い。小眼球は完全型の60〜88%に対しモザイク型では23%、コロボーマ・白内障は完全型の63〜75%に対しモザイク型では10〜11%にとどまる。生存期間も長い傾向があり、6歳まで生存したモザイク型の症例も報告されている。

検査時期内容
胎児超音波第1〜2三半期全前脳胞症、眼距離短縮、水晶体濃度上昇、心奇形の検出1)
母体血清検査第1三半期NT増大、PAPP-A低下、β-hCG低下
非侵襲的出生前検査(NIPT)第10週以降スクリーニング目的。確定診断には不十分
羊水穿刺・絨毛採取第15〜20週/第10〜13週核型分析による確定診断

臨床的特徴(多発奇形の組み合わせ)に基づき13トリソミーを疑い、末梢血の核型分析で確定する。

臨床的に無眼球と判断された場合でも、MRIで残存眼球構造が認められることがあるため、画像評価が有用である。

13トリソミーは生命予後が不良であるため、従来は積極的治療の適応とされないことが多かった。しかし近年では新生児集中治療と心臓手術の進歩により、予後が改善しつつある。

  • 緩和ケア・支持療法:病状に応じた対症療法が基本となる
  • 心臓手術:心疾患手術を受けた児では24か月死亡率が50%超低下したとの報告がある7)
  • 手術全般:手術を受けた児の1年生存率は68.6%と報告されている
  • 眼科的管理:予後良好で介入可能な眼疾患(緑内障、白内障など)には個別に治療が検討される
  • 長期フォロー:長期生存例では小眼球・緑内障・白内障に対する眼科的フォローアップが実施されている3)

2023年のAATS(米国胸部外科学会)では、13トリソミー児に対しても個別化された治療計画を推奨する方針が示された。

Q 13トリソミーの眼に対して治療は行われるか?
A

生命予後の問題から積極的な眼科治療が行われないことも多いが、近年では生存期間の延長に伴い、緑内障や白内障など介入可能な眼疾患に対して治療が検討されるようになってきている。個々の児の全身状態と予後を考慮し、個別に判断される。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

13トリソミーの表現型は、重複した13番染色体上の遺伝子が異常なレベルで発現することにより引き起こされる。眼の発生過程における異常は、障害される時期によって異なる表現型を呈する。

胎生第3〜4週

視窩→視胞の形成期:この時期の障害は無眼球症につながる。視溝が外方へ伸展し眼胞を形成する過程が阻害される。

胎生第4〜6週

水晶体胞・眼杯の形成期:無水晶体症、嚢胞眼、網膜層構造の乱れが生じうる。第6週に生じる胎生裂の閉鎖不全はコロボーマ、小眼球、核白内障の原因となる。

胎生第7〜12週

二次水晶体線維・硝子体・神経堤細胞の発達期:前眼部形成異常が生じる。第10〜12週には虹彩・毛様体が発達し、帯状白内障や前眼部奇形を生じうる。

水晶体血管膜の退化不全は胎児遺残血管の原因となる。

全前脳胞症は前脳の分割障害であり、13トリソミーの24〜45%に合併する1)。眼距離短縮はこの全前脳胞症と密接に関連しており、超音波検査で眼距離短縮と水晶体濃度の上昇が検出されることがある1)


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

モザイク型・長期生存例の知見

Section titled “モザイク型・長期生存例の知見”

Moran-Barrosoら(2021)は、モザイク型と部分型が混在する12歳女児の症例を報告した。複雑な核型を示し、クロモスリプシス(染色体の破砕と再配列)の関与が示唆された4)

Albarら(2021)は、モザイク型13トリソミーの6歳男児で深在眼と小眼瞼裂のみの軽度眼所見を報告した5)。モザイク型の表現型の多様性を示す症例である。

Kramerら(2022)は、完全型13トリソミーでありながら思春期まで生存した長期生存例を報告し、積極的管理の効果を示した7)

McTaggartら(2021)は、小眼球・緑内障・白内障のため眼科フォロー中の35か月児の症例を報告した3)。長期生存例では眼科的管理の重要性が増してきている。

今後、積極的治療の適応拡大に伴い、長期生存例に対する眼科的ケアの需要が増加する可能性がある。


  1. Schlosser AS, Costa GJC, Silva HS, et al. Holoprosencephaly in Patau Syndrome. Rev Paul Pediatr. 2023;41:e2022027.
  2. Al Rawi WN, Al-Safi W, Abuobayda AN, et al. Rare association of trisomy 13 with ectrodactyly and congenital diaphragmatic hernia. Clin Case Rep. 2021;9:e04264.
  3. McTaggart JS, Sivasubramaniam S, Jewell R, Yong J. Type 1 diabetes mellitus presenting with diabetic ketoacidosis in a child with Patau syndrome (trisomy 13) and persistent fetal haemoglobin. BMJ Case Rep. 2021;14:e243077.
  4. Moran-Barroso VF, Cervantes A, Rivera-Vega MR, et al. Mosaic proximal trisomy 13q and regular trisomy 13 in a female patient with long survival. Mol Genet Genomic Med. 2021;9:e1762.
  5. Albar RF, Alghamdi MS, Almasrahi AM, et al. A Six-Year-Old Child With Mosaic Trisomy 13. Cureus. 2021;13(9):e18346.
  6. Khan U, Hussain A, Usman M, Abiddin ZU. An infant with patau syndrome associated with congenital heart defects. Ann Med Surg. 2022;80:104100.
  7. Kramer BCE, Abdullahi NS, ten Have LC, van den Elzen APM. Young adolescent with trisomy 13. BMJ Case Rep. 2022;15:e246514.

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