前眼部所見
小眼球症・小角膜:最も頻度の高い眼所見。34名52眼で報告されている。Al Dhoyanらの17名シリーズでは全員に両側性小角膜(水平角膜径7.5〜10.5mm)を認めた。眼軸長は15.93〜17.8mm(4〜10歳)。
角膜病変:帯状角膜変性、角膜パンヌス、角膜実質浮腫、その他角膜混濁(16名20眼)。低カルシウム血症の過剰補正が帯状角膜変性の一因となりうる。
白内障:6名で報告。小眼球に伴う白内障手術はZinn小帯欠損・散瞳不良で困難な場合が多い。

サンジャド・サカティ症候群(Sanjad-Sakati syndrome; SSS)は、先天性副甲状腺機能低下症・発育遅滞・奇形症候群(HRD症候群)としても知られる常染色体劣性遺伝疾患である。OMIM #241410に分類される。
1988年にSanjadらがサウジアラビアで最初の症例を報告し、1991年に12名の症例シリーズを発表した。原因遺伝子は第1染色体長腕1q42-43に位置するTBCE遺伝子で、12塩基対欠失(c.155-166del12)が最も高頻度の変異である2)。
主にアラビア半島に遺伝的ルーツを持つ人々に発症し、近親婚の子孫に多い。クウェートでの発生率は出生10万人あたり7〜18人3)、サウジアラビアでは出生40,000〜100,000人に1人と推定されている5)。中東の一部集団では出生5,000人に1人との報告もある。非アラブ諸国(ベルギー、インド)やモロッコ、エジプト、チュニジア、ヨルダン、オマーン、カタールからも報告がある2)5)。文献上、56症例以上が集計されている5)。
主にアラビア半島に遺伝的ルーツを持つ集団に多く、サウジアラビアやクウェートで比較的高頻度にみられる。近親婚の慣習が高頻度の一因とされている。ただしベルギーやインドなど非アラブ諸国からの報告もあり、アラブ系以外の集団でも発症しうる。
前眼部所見
小眼球症・小角膜:最も頻度の高い眼所見。34名52眼で報告されている。Al Dhoyanらの17名シリーズでは全員に両側性小角膜(水平角膜径7.5〜10.5mm)を認めた。眼軸長は15.93〜17.8mm(4〜10歳)。
角膜病変:帯状角膜変性、角膜パンヌス、角膜実質浮腫、その他角膜混濁(16名20眼)。低カルシウム血症の過剰補正が帯状角膜変性の一因となりうる。
白内障:6名で報告。小眼球に伴う白内障手術はZinn小帯欠損・散瞳不良で困難な場合が多い。
後眼部・その他
網膜血管蛇行:21名42眼。Al Dhoyanらの17名シリーズでは全員に両側性に認められた。
視神経病変:視神経腫脹、視神経萎縮、分類不能の視神経異常(12名7眼)。埋没視神経乳頭ドルーゼンの可能性も示唆されている。
斜視:23名で報告。
Al Dhoyanらの17名のシリーズでは全員が正常固視を示した。一方、帯状角膜変性例では視力 20/100〜20/125、重症角膜混濁例では不良固視と報告されており、合併症の有無により視力は大きく異なる。定期的な眼科評価が重要である。
サンジャド・サカティ症候群の原因遺伝子はTBCE(tubulin-specific chaperone E)遺伝子で、第1染色体長腕1q42-43に位置する。TBCEタンパク質はα-チューブリンの適切な折り畳みとα/β-チューブリンヘテロ二量体の形成に必要なシャペロンである。
最も高頻度の変異はexon 3の12塩基対欠失(c.155-166del12)である2)6)。アラブ系民族に共通の創始者変異(founder mutation)と考えられており、7世紀のBanu Hilalによる北アフリカ征服時にチュニジアに変異が伝播した可能性が示唆されている6)。
微小管は繊毛・鞭毛・有糸分裂紡錘体などの構成要素であり、ほぼ全身の細胞に存在する。微小管組み立て不全が胚発生を広範に障害し、多臓器にわたる表現型を説明する2)。
近親婚がアラブ人口における本疾患の高頻度の主要因である5)6)。
特徴的顔貌奇形+先天性副甲状腺機能低下症(低Ca・高P・PTH低値/欠乏)+子宮内発育不全+発達遅滞の組み合わせで臨床的に疑う。
| 疾患 | サンジャド・サカティ症候群との相違点 |
|---|---|
| DiGeorge症候群 | 心欠損・胸腺形成不全(T細胞免疫欠如)を伴う。サンジャド・サカティ症候群にはこれらがない |
| ケニー・カフェイ症候群1型 | 同じTBCE変異だが骨硬化症が加わる。臨床的重複が大きい |
| ケニー・カフェイ症候群2型 | 常染色体優性、正常知能、大頭症 |
| 家族性副甲状腺機能低下症 | サンジャド・サカティ症候群の特徴的顔貌奇形がない |
| Barakat症候群 | 腎異常・感音難聴を伴う2) |
両疾患とも同じTBCE遺伝子変異が原因であり、臨床的重複が大きい。ケニー・カフェイ症候群1型は骨硬化症(長管骨髄腔狭小化)が加わる点で区別されるが、正確な鑑別には遺伝子検査と画像診断が重要である。KCS2型は常染色体優性遺伝で正常知能・大頭症を呈し、サンジャド・サカティ症候群とは遺伝形式が異なる。
多診療科チーム(遺伝学、内分泌学、眼科学を含む)による集学的管理が必須である。
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| 急性期 | 静注カルシウムによる急速補正(Ca <1.80 mmol/Lの場合)2) |
| 維持療法 | 経口カルシウム+活性型ビタミンD(アルファカルシドール/カルシトリオール)1) |
| 難治例 | テリパラチド(PTH 1-34)皮下注射(1日1〜2回)1) |
| さらなる難治例 | PTHポンプ持続皮下注入(用量62%削減が可能)1) |
高用量のカルシウム・ビタミンD補充は高カルシウム尿症を引き起こし、腎石灰化症や腎結石のリスクとなる。定期的な腎超音波によるモニタリングが必要である。PTHポンプ持続皮下注入はカルシウム・ビタミンDの必要量を削減でき、腎合併症リスクの軽減が期待される。
TBCE遺伝子は第1染色体長腕1q42-43に位置し、チューブリン特異的シャペロンE(TBCE)をコードする。TBCEタンパク質はα-チューブリンの折り畳みを補助し、α/β-チューブリンヘテロ二量体を形成する。
12bp欠失(c.155-166del12、exon 3)が最も一般的な変異であり6)、TBCE機能の喪失は微小管の組み立て不全を引き起こす2)。
Bali & Al Khalifah(2024)は、サンジャド・サカティ症候群新生児の難治性低カルシウム血症に対しPTHポンプ持続皮下注入を使用し、カルシウム・ビタミンD必要量を50%以上削減して退院を促進したと報告した1)。ただし医原性高カルシウム血症に注意が必要である。
Winerらのランダム化クロスオーバー試験(7〜20歳)では、ポンプ投与は注射に比べて1日PTH用量が62%削減(ポンプ0.32±0.04 mcg/kg/日 vs 注射0.85±0.11 mcg/kg/日)され、血清・尿中カルシウムの変動が少ないことが示された1)。
Linglartらは重症副甲状腺機能低下症の小児3名に連続皮下PTH注入を行い、開始量1〜2.6 mcg/kg/日→維持量0.1〜0.5 mcg/kg/日で3年間正常カルシウムを維持した1)。
rhPTH 1-84は成人の慢性副甲状腺機能低下症にFDA承認済みであり、小児への使用にも有望な結果が報告されている1)。ただし小児へのテリパラチド慢性使用はまだ承認されていない2)。