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小児眼科・斜視

小児視力スクリーニング

1. 小児視力スクリーニングとは

Section titled “1. 小児視力スクリーニングとは”

小児視力スクリーニングは、弱視(amblyopia)、斜視(strabismus)、有意な屈折異常(refractive error)、およびその他の眼異常を持つ子供を早期に発見することを目的とした検査体制である。

弱視と視力スクリーニングの意義

Section titled “弱視と視力スクリーニングの意義”

弱視は視覚発達期における異常な視覚入力により生じる視力障害であり、以下の4型に分類される1)

  • 屈折異常弱視:両眼同程度の高度な屈折異常により中心窩網膜上への結像が妨げられた状態
  • 不同視弱視:屈折に左右差がある状態。弱視の中で最も頻度が高い
  • 斜視弱視:眼位ずれにより非固視眼が慢性的に抑制された状態
  • 形態覚遮断弱視:先天白内障や重度の眼瞼下垂などによる視性刺激遮断。最も重篤で治療抵抗性を示す1)

弱視の有病率は、日本では3歳児健診の要精査率を基にしたメタアナリシスから0.58%と推測されている。海外では0.14〜4.8%と報告に幅があり、米国ではアフリカ系で1.5%、ヒスパニックで2.6%との疫学データがある。

弱視は幼児期に適切な治療を行えば回復の可能性があるが、治療せずに放置すると片眼または両眼の視力が永久的に低下し、40歳未満の成人における視力障害の主因となる。弱視がなくとも、未矯正の屈折異常は学習や学校での成績に悪影響を及ぼす可能性がある。

日本では3歳児健診が最も重要なスクリーニングの機会である。

  • 一次検査:自宅での視力検査(視力0.5の視標を使用)と問診票
  • 二次検査:保健センター等での集団健診。全員に屈折検査を実施し、視力再検査、小児科医による診察を行う
  • 三次健診:要精検児は眼科医療機関で精密検査を受ける

3歳児健診に漏れた場合でも、保育園・幼稚園での年次眼科健診、就学時健診、小学校での年次眼科健診が発見の契機となる。しかし、日本眼科医会の調べでは、要精検となった幼児の約25%が眼科を受診していないことが報告されている。

米国では、米国予防医学作業部会(USPSTF)が3〜5歳の子供に少なくとも1回の弱視スクリーニングを推奨している。米国小児眼科・斜視学会(AAPOS)は5歳以降も1〜2年ごとの継続的なスクリーニングを推奨している。

Q 視力スクリーニングは何歳から受けるべきか?
A

日本では3歳児健診が主要な機会であるが、赤外線ビデオレフラクトメーターなどの機器を用いれば生後6か月からスクリーニングが可能である。USPSTFは3〜5歳での受検を推奨し、AAOPOSは5歳以降も1〜2年ごとの継続を推奨している。

自覚症状(保護者・本人が気づくサイン)

Section titled “自覚症状(保護者・本人が気づくサイン)”

弱視や斜視は自覚症状に乏しく、本人が気づかないことが多い。3歳児健診の問診票に含まれる以下の項目は、家庭での早期発見の手がかりとなる。

  • 目つきや目の動きの異常:目が揺れている(眼振)、まぶたが下がっている(眼瞼下垂)
  • 眼位の異常:黒目が内側に寄る、外上や斜め上にずれる
  • 頭位異常:ものを見るとき頭を傾けたり、横目で見たりする
  • 行動の異常:物に近づいて見る、明るい屋外で片目をつぶることがある
  • 瞳孔の異常:黒目の中心が白っぽく見える(白色瞳孔=leukocoria)、黒目の大きさが左右で違う

臨床所見(スクリーニングで検出される異常)

Section titled “臨床所見(スクリーニングで検出される異常)”
  • 赤色反射異常:検影器や直像鏡で瞳孔に光を当て、眼底からの反射を観察する。両眼の瞳孔が等しく明るく対称的な黄橙色であれば正常である。反射が暗い場合は強度屈折異常、非対称は不同視、反射が得られない場合は全白内障を示唆する。先天白内障や網膜芽細胞腫の早期発見に不可欠な検査である
  • 眼位異常:Hirschberg法(眼前33cmからペンライトで角膜反射光の位置を観察)やBruckner法(red reflexによる瞳孔輝度と角膜反射像の関係を観察)で評価する。Bruckner法は偽陽性が少なく、より適している
  • 有意な屈折異常:弱視リスクとなる屈折異常の基準値がAAOにより示されている1)。0〜1歳では、近視≧-5.00D、遠視(斜視なし)≧+6.00D、乱視≧3.00Dが屈折異常弱視のリスクとなる。不同視については近視≧-4.00D、遠視≧+2.50D、乱視≧2.50Dがリスクとされる
  • 固視異常:中心窩以外の網膜部位で固視している偏心固視は弱視の存在を示唆する
  • 嫌悪反射陽性:片眼遮閉時の反応の左右差で判定する。片眼に強い弱視がある場合、非弱視眼を隠した際に手をはねのける等の嫌悪反射がみられる
Q 家庭で子供の視力の問題に気づくにはどうすればよいか?
A

おもちゃで集中して遊んでいるときに、片眼ずつそっと手で隠して反応の左右差を観察する。極端に嫌がる側があれば、弱視の可能性がある。テレビ視聴時の頭位異常や片目つぶり、物に極端に近づく行動にも注意する。

弱視を生じるリスクが高い因子として、以下が知られている。

  • 未熟児
  • 発達遅滞
  • 弱視の家族歴:1親等(両親・きょうだい)に弱視がある場合
  • 不同視:弱視のオッズ比が最も高い
  • 斜視:不同視に次いでリスクが高い
  • 環境因子:妊娠中の喫煙・飲酒歴との関連を示す報告があるが、喫煙と弱視の関連はないとする疫学研究も存在する

屈折異常弱視

原因:両眼同程度の高度な屈折異常

機序:中心窩網膜上への結像障害により視力が発達しない。遠視性、近視性、乱視性がある。

特徴:眼鏡矯正で比較的良好に改善する。

不同視弱視

原因:屈折の左右差

頻度:弱視の中で最も多い。

特徴:遠視性では左右差1D程度でも発症しうる。より正視に近い眼が優位眼となる。

斜視弱視

原因:眼位ずれによる非固視眼の抑制

機序:両眼からの非融像性入力の競合により固視眼が優位になる1)

特徴:固視検査が診断に重要である。

形態覚遮断弱視

原因:先天白内障、重度の眼瞼下垂、角膜混濁など

機序:視軸の遮断により劣化した網膜像が形成される1)

特徴:最も稀だが最も重篤で、治療に強い抵抗性を示す。

スクリーニング不足に関わる社会的要因

Section titled “スクリーニング不足に関わる社会的要因”

マイノリティや低所得層の子供では、視覚障害の未診断率が有意に高い。学齢期の子供の7〜20%に視覚的な欠陥があるとされるが、社会経済的に不利な環境にある子供では診断・治療を受けていない割合がさらに高い。視力スクリーニングの普及率は2016年以降低下傾向にあり、パンデミック以降もその傾向が続いている。

小児の視力検査は年齢・発達に応じて方法を選択する必要がある。

年齢推奨される検査法
2歳未満瞬目反射、固視・追視、嫌悪反射、OKN、PL法
2歳森実式ドットカード、絵視標
3〜6歳字ひとつ視標、Landolt環
6歳以上字づまり視標、Landolt環

子供からの応答を必要とする検査法であり、5歳以上の言語能力のある子供に最も効果的である。

乳幼児期の検査(2歳未満〜3歳未満)

Section titled “乳幼児期の検査(2歳未満〜3歳未満)”
  • 固視・追視検査:生後2か月頃から可能。ペンライトや原色のおもちゃを用い、角膜反射の位置と安定性を確認する。固視が不良で眼振があっても追視ができていれば手動弁以上の視力があると判断する
  • 嫌悪反射:片眼ずつ遮閉し反応の左右差をみる。子供がおもちゃに集中しているときに上からそっと手で隠すと判定しやすい
  • PL法(preferential looking法):乳幼児が縞模様の画面を無地より好んで見る性質を利用する。縞模様を徐々に細かくし、識別限界から視力を推定する。1歳6か月頃まで有用である
  • 縞視力カード法:TAC(Teller Acuity Cards)やCardiff acuity testなど。PL法と同原理で外来で簡便に実施できる
  • OKN(視運動性眼振):縦縞ドラムを回転させ眼振を誘発する。生後2か月頃から可能である。スクリーニング検査として用いられることが多い
  • 森実式ドットカード:ウサギやクマの顔の絵の中にある目を指さしてもらう。2歳頃から可能。検査距離30cmで実施する。最小視認閾による測定であり、通常の最小分離閾による視力とは評価法が異なる点に注意が必要である
  • 絵視標:犬、蝶、魚、鳥の影絵を用いる。Landolt環ができない2〜3歳児に使用する
  • Landolt環:3歳半〜4歳くらいから可能となる。日本の標準的な視力検査法である。小児では8〜10歳頃まで、字づまり視力が字ひとつ視力より低下する読み分け困難現象(crowding phenomenon)があるため、小学校低学年までは字ひとつ視標を用いる
  • 海外で使用される視標:Snellen、Sloan、HOTV、Lea symbolsなどがある。孤立した視標は混雑現象により視力を過大評価するため、一列提示または混雑バー付き単一視標で検査することが推奨される

手で覆う方法は指の隙間から覗き見ることが多いため推奨されない。貼り付け式のアイパッチまたは不透明の遮蔽板を使用する。小児用遮蔽眼鏡(片眼が不透明なプラスチック)も有用である。

子供の応答をほとんど必要とせず、より低年齢の児にも適用できる。

赤色反射検査(Red reflex testing)

Section titled “赤色反射検査(Red reflex testing)”

患者の協力を必要とせず、乳児期から実施可能な最も基本的な検査である。検影器や直像鏡で瞳孔に光を当て、反射の色調・明るさ・対称性を観察する。暗室で実施するほうが判定しやすいが、半暗室や明室でも可能である。赤色反射の異常は先天白内障や網膜芽細胞腫などの早期紹介の契機となる。

散瞳下の眼に使用し、子供の屈折異常の推定値を示す。言語習得前の子供にも実施でき、視力検査よりはるかに迅速である。主な装置にGrand Seiko双眼オートレフラクタ、Retinomax、SureSightがある。ただし多くは単眼検査であるため、斜視のスクリーニングにはならない。

小児では調節力が強いため、スクリーニングで異常が疑われた場合は調節麻痺薬を用いた屈折検査が不可欠である。調節麻痺薬には1%アトロピン点眼薬と1%シクロペントラート点眼薬があり、内斜視や弱視の例では1度はアトロピン点眼薬で検査すべきとされる。

瞳孔からの角膜反射像を撮影し、斜視・屈折異常・不同視を検出する。両眼同時に検査を行うため、オートレフスクリーニングとは異なり顕性斜視の直接的なスクリーニングが可能である。赤色反射の変化により、白内障やコロボーマ、眼瞼下垂などの解剖学的異常も検出できる。

主な装置にiScreen、MTI、plusoptiX、Spot、Visiscreenがある。MTI、iScreen、Visiscreenは可視光のフラッシュを使用し、plusoptiXとSpotは赤外線を使用する。

近年は両眼開放型の赤外線ビデオレフラクトメーターが開発され、生後6か月から使用可能なものがある。小児科でも多用され始めており、弱視の発見年齢が引き下がる傾向にある。

フラッシュ刺激やパターン刺激(市松模様・格子縞)を見せたときに生じる脳波を記録し、視力を推定する。網膜から後頭葉視覚野までの視路の機能を反映する。VEP視力はPL法やOKNによる視力に比べて高値を示しやすい。これはVEPが後頭葉皮質の反応を直接評価するためである。検査には児が落ち着いている状態が必要であり、検査に慣れた施設での実施が望ましい。

一次検査では自宅で0.5の視標を用いた視力検査と問診票の記入を行う。二次検査は保健センター等での集団健診で、全員に屈折検査を実施し、必要に応じて視力再検査を行った後、小児科医等の診察を受ける。「屈折検査異常・検査不可」「視力不良」「問診票にチェックあり」など弱視や眼疾患が疑われる場合は「要精検」として眼科医療機関での精密検査(調節麻痺下屈折検査を含む完全な小児眼科検査)に進む。

年齢視力
3か月0.05
1歳0.1〜0.2
2歳0.3〜0.5
3歳0.5〜0.8
6歳1.0

検査方法により視力は異なり、個人差も大きいため、これらの値はあくまで目安である。

Q フォトスクリーナーとオートレフラクタの違いは何か?
A

オートレフラクタは多くが単眼検査であり屈折異常の推定に特化している。一方、フォトスクリーナーは両眼同時に検査を行うため、屈折異常に加えて顕性斜視の直接的なスクリーニングも可能である。白内障やコロボーマなどの解剖学的異常も検出できる点が異なる。

小児視力スクリーニングは検査体制であり、スクリーニング自体の「治療」は存在しない。ここではスクリーニングで発見された主な疾患の治療の概要を述べる。

弱視・斜視治療の基礎となる。日本では内斜視・弱視の治療用眼鏡は8歳まで保険適用がある。屈折検査は必ず調節麻痺を行って評価する。小児の屈折値は特に乳幼児期に変化が大きく、経過観察中にも調節麻痺薬を用いた確認が必要である。

弱視治療の中心的手法である。健眼をアイパッチで遮閉し、弱視眼を積極的に使用させることで視力の発達を促す。健眼遮閉に伴う遮閉弱視(健眼の視力発達障害)のリスクがあるため、定期的な視力評価が不可欠である。

視覚感受性は生後1〜18か月が最も高く、その後徐々に減衰するが8歳頃まではかなりの感受性が残存する。一般に弱視のリスク因子が早期に特定され治療が早期に開始されるほど、正常な視力が発達する可能性が高い。

ただし、12歳以降に治療を開始し視力が改善した症例や、僚眼の障害により弱視眼の視力が改善した成人症例も報告されており、明確なcritical periodを定めることは難しい。

形態覚遮断弱視を防ぐため、片眼性では生後6〜8週まで、両眼性では生後10〜12週までに手術で光刺激を回復させる必要がある。

Q 弱視の治療は何歳まで効果があるか?
A

視覚感受性は8歳頃までかなり残存するとされるが、加齢とともに減衰する。12歳以降でも治療により視力が改善した報告があり、絶対的な上限年齢は確定していない。早期治療ほど効果が高いことは確立されている。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

ヒトの視力は出生直後からの視覚経験により発達する。

  • 視力は1歳で0.1、2歳で0.5、3歳で1.0に達するとされる
  • ただし視力は自覚的数値であり乳幼児での測定は困難で、実際の検査で1.0に達するのは平均4歳後半との研究もある
  • 他覚的測定法ではより早期に潜在的視力の向上がみられ、1歳で1.0相当との報告がある
  • 追視は生後1か月頃からみられ、3か月健診の確認項目となっている。水平性追視が垂直性より先に可能となり、3か月頃に全方向への追視が完成する
  • 乳幼児の視力は生後から3歳までに急速に発達し、6〜8歳頃までにほぼ完成する

小児の正常視力の発達過程を以下に示す。

月齢・年齢視覚発達の指標
生後1か月追視の出現
生後2か月両眼固視、正中線を越える追視
生後3か月全方向への追視完成。3か月健診で確認
1歳視力0.1〜0.2
2歳視力0.3〜0.5
3歳視力0.5〜0.8(1.0に達する場合も)
6〜8歳視力発達がほぼ完成

視覚感受性期間(critical period)

Section titled “視覚感受性期間(critical period)”

視覚発達期に視覚刺激の遮断が起こった場合、時期が早く、期間が長く、遮断の程度が強いほど不可逆的な視力障害が生じる。動物実験では、機能面のみならず器質的にも網膜から視索・視路に及ぶ変性・萎縮を伴うことが知られている。

粟屋の説によれば、ヒトの視覚感受性は生直後は低く、生後1か月〜18か月で非常に高くなり、その後徐々に減衰するが8歳頃まではかなりの感受性が残存すると考えられている。

弱視は視覚情報の異常な処理から生じる中枢神経系の機能障害であり、視力低下のみならずコントラスト感度や調節の障害も伴う。僚眼にも微妙な機能障害が認められることがある1)

  • 斜視弱視:両眼からの非融像性入力が競合・抑制し合い、固視眼が大脳皮質の視覚中枢で優位となる。非固視眼への反応が慢性的に低下し、弱視が成立する1)
  • 形態覚遮断弱視:視軸の完全または部分的な遮断により劣化した網膜像が形成され、視力発達が障害される。先天白内障が最も一般的な原因である1)

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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偏光レーザースキャン(blinq™)

Section titled “偏光レーザースキャン(blinq™)”

Rebion社が開発したblinq™小児視力スキャナーは、偏光レーザースキャンにより網膜神経線維を調べ、小角度の斜視および中心窩のわずかなずれを検出する新しいスクリーニング技術である。子供の目から約35cm離して保持し、2.5秒間で両方の網膜を同時にスキャンする。

初期モデルのPediatric Vision Scannerを用いた研究では、感度100%(95% CI, 54%-100%)、特異度85%(95% CI, 80%-89%)が報告され、測定時間の中央値は28秒であった。最新モデルblinq™はFDA承認を取得しており、国立眼科研究所(NEI)の資金提供を受けている。1〜20歳の200人を対象とした前向き横断的研究では、紹介が必要な弱視・斜視の検出において感度100%、特異度91%が示された。

スマートフォンベースのディープラーニングシステムが、不同視、斜視、白内障、先天異常を含む様々な病因による幼児の視覚障害を特定することが示されている。将来的にはスクリーニングの効率性と到達範囲を大きく向上させる可能性がある。

Diopsys社から提供されるスウィープVEP装置は、sweep VEPを利用して視力または両眼の視力差を推定し、合格/紹介の判定を自動出力する。


  1. American Academy of Ophthalmology. Amblyopia Preferred Practice Pattern. San Francisco, CA: American Academy of Ophthalmology; 2024.

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