11歳未満
ADEM(急性散在性脳脊髄炎):最多表現型(40〜50%)。多巣性脱髄と脳症を呈する。
皮質脳炎(CCE/FLAMES):MOGADの小児13.5%で認められる。片側性皮質T2-FLAIR高信号と髄膜造影増強が特徴。ウイルス性脳炎との誤診に注意。
視神経炎(ON):年齢が低いほど頻度が低く、成長とともに増加する。

髄鞘オリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連疾患(MOGAD)は、MOG-IgG抗体を特徴とする中枢神経系(CNS)脱髄疾患の総称である。MOGは髄鞘の最外層と乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)表面に発現する糖蛋白であり、CNS全体に広く分布する。
MOGADはオリゴデンドログリオパチーに分類される。これはアクアポリン4(AQP4)抗体陽性NMOSDがアストロサイトを標的とするのと対照的である。年間発症率は1.6〜4.8/百万人、有病率は1.3〜2.5/10万人と推定される。オランダのデータでは小児の有病率(0.31/10万人)が成人(0.13/10万人)を上回る。
発症年齢は二峰性分布を示し、5〜10歳と20〜45歳にピークがある。全症例の約50%が小児であり、11歳未満の急性脱髄症候群の約50%がMOGADに相当する。男女比は1:1である。
小児ではADEM(急性散在性脳脊髄炎)が最多表現型(40〜50%)であり、成人で多い視神経炎(ON)や脊髄炎は年齢とともに増加する。小児は成人より完全回復率が高く(75〜96%)、再発率も低い傾向にある。詳細は「主な症状と臨床所見」および「予後」の項を参照。
MOGADの自覚症状は表現型によって異なる。
MOGADの表現型は年齢依存的に変化する。
11歳未満
ADEM(急性散在性脳脊髄炎):最多表現型(40〜50%)。多巣性脱髄と脳症を呈する。
皮質脳炎(CCE/FLAMES):MOGADの小児13.5%で認められる。片側性皮質T2-FLAIR高信号と髄膜造影増強が特徴。ウイルス性脳炎との誤診に注意。
視神経炎(ON):年齢が低いほど頻度が低く、成長とともに増加する。
11歳以上
視神経炎(ON):11歳以上で頻度が増加し成人と同様のパターンへ移行。初発ADEMの患者が成長後にONとして再発する例もある。
ADEM-ON:再発性MOGADの最大40%を占める。再発の94%がONの形をとる。
NMO(視神経脊髄炎):小児MOGADの約4%。小児NMOSDの58%がMOG陽性である。
MOGAD-ONの特徴的所見を以下に示す。
皮質脳炎については、小児5例の症例シリーズで全例痙攣・4/5例で前駆発熱・全例で前頭葉病変を認め、治療遅延の中央値は12日であった1)。5例中4例(80%)が慢性てんかんへ移行し、レベチラセタム単剤で維持された1)。
その他の表現型として、辺縁系脳炎(認知障害が後遺症となりやすい)8)、白質ジストロフィー様パターン(7歳未満の小児に多い)3)、MOGAD-NMOSスペクトラム(MNOS)9)が報告されている。
鑑別診断としては、多発性硬化症(MS)、AQP4陽性NMOSD、ウイルス性脳炎、CNS血管炎、悪性腫瘍、血球貪食症候群(HLH)が挙げられる。
発熱・頭痛に続く痙攣の出現が典型的であり、MRIで片側性皮質のT2-FLAIR高信号と髄膜造影増強を認める場合に疑う。ウイルス性髄膜脳炎との誤診が問題となるため、治療抵抗性の脳炎ではMOG-IgG検査を積極的に検討すべきである1)。
MOGADの病因は完全には解明されていないが、感染後・ワクチン後発症が約20%を占める。
MOG-IgGの検出にはライブ(生)セルベースアッセイ(CBA)がゴールドスタンダードである。固定CBAも広く使用されるが力価情報が得られず、支持的特徴との組み合わせが必要とされる。
MOG-IgGは主にIgG1サブクラスだが、IgG3単独陽性例も存在する7)。使用する二次抗体の種類によってIgG3の検出感度が変わるため、サブクラス特異的な解析が重要である7)。
2023年に策定されたMOGAD診断基準の性能を以下に示す。
| 指標 | 小児 | 成人 |
|---|---|---|
| 感度 | 100% | 91.9% |
| 特異度 | 98.9% | 98.9% |
| 硝子体切除術(陽性的中率) | 98.0% | 89.4% |
| NPV(陰性的中率) | 100% | — |
| 精度 | 99.2% | — |
小児は成人より多くの支持的特徴を満たす傾向がある(p=0.0011)。
ADEMの診断にはIPMSSGのADEM診断基準を用いる。初発の多巣性CNS症状と脳症が必須要件であり、MRI所見とMOG-IgG検査を組み合わせて総合的に判断する。
急性期の第一選択はメチルプレドニゾロン静注療法(IVMP)である。日本では小児視神経炎に対してステロイドパルス療法が標準治療とされている。
7日以内の免疫療法開始で再発リスクが6.7倍減少することが75例の後方視的研究で示されている。
IVMP
用量:20〜30 mg/kg/日(最大1 g/日)
期間:3〜5日間
漸減:合計3ヶ月以内。5週間以上の漸減で再発リスク低減。
IVIG
用量:1〜2 g/kg(1日1 g/kgを超えない)
期間:1〜5日間
適応:IVMPへの迅速反応がない場合に早期移行。
PLEX(血漿交換)
位置づけ:IVMP後のエスカレーション治療
ポイント:PLEXまでの時間短縮が完全回復の最強予測因子
適応:IVMP・IVIGに不応の重症例
再発性・多相性例には長期免疫抑制療法を行う。
小児神経科・眼科・リハビリテーション科・心理職による多職種チームでの管理が推奨される。
急性期はIVMPを中心に、迅速な治療開始(7日以内)と十分な漸減期間(5週間以上)が再発リスク低減につながる。免疫抑制薬開始後3〜6ヶ月は再発しやすく、経口ステロイドとの併用が推奨される。小児では長期免疫抑制による成長への影響にも留意する必要がある。
MOGは乏突起膠細胞と髄鞘最外層に発現する糖蛋白であり、CNSの有髄神経線維に広く分布する2)。MOGADはオリゴデンドログリオパチーであり、AQP4陽性NMOSDのアストロサイトパチーとは病態が異なる。
病理所見としては、マクロファージ・ミクログリアの活性化、MOG含有マクロファージの出現、補体・免疫グロブリンの沈着が認められる。プレミエリン化乏突起膠細胞が残存することが、MOGADで再髄鞘化と良好な回復が得られやすい理由の一つと考えられている。
乏突起膠細胞表面にはNMDA受容体とMOGの両抗原が発現しており、ウイルス感染による血液脳関門(BBB)破壊が両抗原への曝露を引き起こし、二重抗体産生につながるという仮説が提唱されている9)。免疫抑制減量時には自己反応性免疫細胞が再活性化し再発を来す。ステロイドへの良好な反応性が報告されている9)。
MOG-IgGのIgG3単独陽性例が報告されている7)。IgG3の臨床的意義は未解明であるが、使用する二次抗体の選択がIgG3の検出に影響するため、陰性結果の解釈には注意が必要である7)。
Schiroら(2024)はTCZ 8 mg/kg 4週ごとの投与を受けた25例を報告した3)。79%(19/25例)が再発なしを達成し、NEDA-3(疾患活動性の指標)を達成した。副作用は2/25例(8%)と良好な安全性プロファイルを示した。COVID-19パンデミック下でも安全に使用可能であった。
テリタシセプトはTACI-Fc融合蛋白であり、BLySとAPRILを同時に遮断することでB細胞・形質細胞を抑制する。
Zhangら(2025)はRTX抵抗性MNOS例に対してテリタシセプト160 mg/週(後に隔週)を投与し、13ヶ月間再発なしを達成したことを報告した10)。RTX後にCD19が低値であっても形質芽球の増加により再発が生じていたが、テリタシセプトはこの経路を遮断することで有効性を示した10)。
Fettaら(2026)は12歳男児(EDSS 8)のMOG-IgG3単独陽性例を報告した7)。髄液細胞増多304個/mm³・IL-6 310 pg/mLを認め、IVMP 30 mg/kg+IVIG 2 g/kgでEDSS 2.5まで改善し、2年間再発なしであった。IgG3の臨床的意義の解明が今後の課題である7)。
Kanekoら(2026)はMOG関連辺縁系脳炎14例を報告した8)。認知障害が後遺症として4例に残存し、辺縁系脳炎が他のMOGAD表現型より予後不良である可能性を示した8)。
COVID-19ワクチン後MOGADの報告が蓄積している4)5)。発症機序・最適治療・長期転帰の解明に向けた研究が進行中である。小児を対象とした無作為化比較試験(RCT)はいまだ存在せず、エビデンスの質向上が課題である。
小児MOGADの予後は成人より全般的に良好である。
初発12ヶ月以内の早期再発、MOG-IgG持続陽性、再発性・多相性の経過がリスク因子として報告されている。MDEM患者では認知機能問題を生じやすく、皮質脳炎(CCE)では慢性てんかんへの移行に注意が必要である1)9)。