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小児眼科・斜視

マキューン・オルブライト症候群における視神経症

1. マキューン・オルブライト症候群における視神経症とは

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マキューン・オルブライト症候群(McCune-Albright syndrome; MAS)は、多骨性線維性骨異形成症(polyostotic fibrous dysplasia: PFD)、性早熟症カフェ・オ・レ斑の古典的3徴で定義される稀な遺伝性疾患である。一般人口における罹患率は10万人〜100万人に1人と推定される。3〜15歳に出現し、約75%は30歳以下で発見される。女性に多く、男女比は3:1である。

本疾患はGNAS遺伝子の受精後変異(post-zygotic mutation)に起因し、体細胞モザイク現象をとる。頭蓋顔面領域の線維性骨異形成症はMASの臨床症状の一つであり、頭部の病変は全病変の約25%を占め、肋骨に次いで多い。蝶形骨の線維性骨異形成症が視神経管を圧迫することで、圧迫性視神経症を合併しうる。

甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、肢端巨大症など多様な内分泌障害を伴うことがある。

Q マキューン・オルブライト症候群はどのくらい稀な疾患か?
A

罹患率は10万人〜100万人に1人ときわめて稀である。多くは3〜15歳に発症し、約75%が30歳以下で診断される。女性に多く男女比は3:1である。

MASにおける視神経症の臨床像は無症状から重度の視機能障害まで幅広い。

  • 顔面腫脹・非対称:線維性骨異形成症による顔面骨変形が初発症状となることが多い。進行すると獅子様顔貌を呈する。
  • 視力低下:急性発症から緩徐進行性まで様々である。片眼性の緩徐に進行する視機能障害が多い。
  • 骨の痛み・変形:罹患骨に疼痛を伴う。
  • 顔面痛・頭痛:副鼻腔に病変が及ぶ症例の81%で主訴となる。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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眼症状

眼球突出・眼球偏位:前頭骨・蝶形骨・篩骨領域の病変による。

両眼隔離症眼窩内壁の骨膨張による眼間距離の増大。

視神経障害:視神経管の狭小化による視力障害・視野狭窄。初期は視神経乳頭腫脹を呈し、治療が遅れると視神経萎縮に進行する。

眼球運動制限外眼筋の圧迫や骨変形により斜視を生じる。

閉瞼障害:眼窩骨の変形により眼瞼閉鎖が不完全となる。

全身所見

カフェ・オ・レ斑:ギザギザの境界を持つ色素斑(「メイン州の海岸線」と称される)。

性早熟症:女児では早発月経、男児では精巣腫大として発現する。

多骨性骨病変:頭蓋骨、肋骨、大腿骨など複数の骨に病変を認める。

内分泌障害:甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、成長ホルモン過剰など。

その他、鼻涙管障害による流涙、頭蓋底病変による三叉神経痛や脳神経麻痺、外耳道・内耳道の狭窄による聴力障害を認めることがある。

MASの原因はGNAS遺伝子の受精後ミスセンス変異である。体細胞モザイクの形をとるため、変異が生じた時期が早いほど罹患組織が広範となり、症状が重症化する。

視神経症発症の機序は以下の通りである。

  • 蝶形骨の線維性骨異形成症:視神経管は蝶形骨を貫通しており、骨の異常増殖により視神経管が狭小化する。
  • 成長ホルモン過剰:肢端巨大症を合併する症例では頭蓋顔面骨の拡大が促進され、視神経症のリスクが高まる。
  • 病変の進行:骨病変は出生直後には通常見られず、数年後に顕著になる。
Q なぜ視神経が障害されるのか?
A

視神経管は蝶形骨を貫通する構造をとる。MASでは蝶形骨に線維性骨異形成症が生じ、異常に増殖した骨組織が視神経管を狭小化させることで、視神経が圧迫される。成長ホルモン過剰の合併がある場合はさらにリスクが高まる。

MASの診断は臨床症状に基づく。多骨性線維性骨異形成症、性早熟症、カフェ・オ・レ斑の古典的3徴を手がかりとする。

各画像検査の所見を以下に示す。

検査法主な所見
X線・CTすりガラス状病変、頭蓋骨非対称性肥厚、囊腫様変化
MRIT1等〜低中等度信号、T2線維性=高信号・石灰化=低信号、造影で著明増強
骨シンチグラフィ多骨性病変の検出に有用

CTでは骨ウィンドウにて視神経管の狭窄度を評価する。MRIは視神経の状態評価に優れる。

  • GNAS遺伝子検査:確定診断に有用であるが、モザイク変異のため偽陰性の可能性がある。
  • OCT(光干渉断層計)網膜神経線維層厚の測定により視野変化の予測が可能である。小児における術後経過の評価にも有用とされる。
  • 組織病理学:類骨過剰、骨小柱の細胞・血管減少、線維性置換が特徴的である。診断困難な症例では骨生検を検討するが、生検不能な部位では病歴・検査・画像所見から総合的に診断する。
  • 内分泌スクリーニング:甲状腺機能、成長ホルモン、コルチゾールなどの内分泌障害の積極的スクリーニングが推奨される。

MASにおける視神経症の管理は多職種チーム(眼科・脳外科・耳鼻科・内分泌科)での連携が推奨される。

視力低下を伴う症例では視神経管減圧術が適応となる。

  • 手術タイミング:病変が安定している場合は骨格成熟後まで延期するのが原則である。術後約1/4の症例が3年以内に再発する。
  • 内視鏡下減圧術:低侵襲なアプローチとして有用である。

外科的治療

視神経管減圧術:視力障害を伴う場合に適応。メタ解析で67.4%に視力改善が報告されている。

手術適応の判断:視力低下の進行が確認された場合に実施する。

術後再発:約25%が3年以内に再発するため、長期的な経過観察が必要である。

保存的治療

経過観察:無症候性の視神経管狭窄では、経過観察が合理的な選択肢である。

成長ホルモン過剰の治療:成長ホルモン過剰の早期治療が視神経症予防に寄与する可能性がある。

ビスホスホネート:骨痛の疼痛緩和に用いられるが、骨病変そのものの縮小効果は限定的である。

Q 視神経管が狭くなっていても手術は不要か?
A

視神経管の狭窄があっても視力障害がなければ、経過観察が推奨される。予防的減圧術は推奨されず、失明の最大原因は医原性とされる。視力低下の進行が確認された場合に手術を検討する。

Q 成長ホルモンの治療で視神経症は予防できるか?
A

成長ホルモン過剰を伴う症例では、成長ホルモン過剰の早期治療が頭蓋顔面骨の拡大を抑制し、視神経症の予防に寄与する可能性が報告されている。ただし、確立されたエビデンスはまだ十分ではない。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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MASの分子機序はGNAS遺伝子変異に由来する。GNASがコードするGsαタンパク質が恒常的に活性化し、アデニル酸シクラーゼを介してcAMPの過剰産生が生じる。この細胞内シグナルの調節不全が多臓器に影響を及ぼす。

骨病変の発生機序は以下の通りである。

  • 骨髄間質細胞の分化障害:cAMP過剰により間質細胞が正常な骨芽細胞へ分化できず、線維芽細胞性組織に置換される。
  • 骨小柱の減少と線維化:正常な骨構造が失われ、すりガラス状の線維性骨病変を形成する。
  • 囊胞形成:骨内に囊胞様変化を生じることがある。

視神経管は蝶形骨を貫通する構造をとるため、蝶形骨の線維性骨異形成症が進行すると管腔が狭小化し、視神経が圧迫される。これが圧迫性視神経症の本態である。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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DeKlotzら(2017)は、MASに伴う視神経症に対し内視鏡下減圧術を施行した4名5件の症例を報告した。全例で視力改善が得られた。

メタ解析による減圧術の有効性

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27研究のメタ解析では、線維性骨異形成症に伴う視神経症に対する減圧術により、67.4%の症例で視力改善が報告された。

成長ホルモン過剰の早期治療が視神経症の予防に寄与する可能性がレトロスペクティブ解析で示されている。成長ホルモン過剰が頭蓋顔面骨の拡大を促進することから、その制御が視神経管狭窄の進行抑制につながると考えられている。

ビスホスホネートの骨病変への効果

Section titled “ビスホスホネートの骨病変への効果”

ビスホスホネートは現時点では疼痛緩和目的で使用されているが、骨病変そのものの縮小効果については今後の調査課題とされている。


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