眼性の原因
視力向上目的:眼振(null pointへの代償)、眼瞼下垂(視軸確保のため顎を上げる)、屈折異常(特に斜乱視)、同名半盲(残存視野を正面に配置)
眼球運動障害:上斜筋麻痺、デュアン症候群、A-V型斜視、Brown症候群、第3・第6脳神経麻痺、甲状腺眼症、交代性上斜位(DVD)、眼傾斜反応

眼性斜頸(ocular torticollis)は、眼の異常に対する代償機序として採用される異常頭位(abnormal head posture: AHP)である。視力を最適化する、あるいは両眼視を維持する目的で、特定の頭の位置を好む状態を指す。
異常頭位は以下の要素に大別される2)。
これらの組み合わせも生じうる。小児眼科診療における発生率は約3%と報告されている。通常は生後早期に現れ、視覚系の成熟に伴い顕著になることがある。
斜頸全般の病因は眼性、神経性、整形外科的の3つに大別される。ルーチンの小児健診で異常頭位を認めた63例中25例(39.7%)に眼性の病因が確認されており、眼科的評価の重要性が示されている。
小児眼科診療における発生率は約3%である。異常頭位を呈する小児の約40%に眼性の原因が認められるとされる。
眼性斜頸の患児は特定の頭位をとることで視機能を補償しているため、本人は症状を自覚しにくい。保護者が異常な頭の向きに気づくことが多い。
頭位異常のパターンは原因疾患によって異なる。主な頭位異常と関連する眼疾患の対応を以下に示す。
| 頭位異常のパターン | 主な原因疾患 |
|---|---|
| 頭部傾斜 | 上斜筋麻痺、DVD、下斜筋麻痺 |
| 顔面回旋 | デュアン症候群、眼振、A-V型斜視 |
| 顎上げ/顎引き | Brown症候群、上斜筋麻痺、単眼上方注視麻痺 |
上斜筋麻痺では、顎を下げて健側方向を向き、頭を健側へ傾斜する異常頭位をとりやすい。上斜視の患者では頭部傾斜が62.8%、顔面回旋が19.3%、顎上げが16.4%を占める2)。
顔面非対称(facial asymmetry) は長期間の眼性斜頸と関連が深い。両眼を結んだ直線と口角を結んだ直線が健側で交わるパターンを呈する。先天上斜筋麻痺と後天上斜筋麻痺を分類する指標にもなる。
Greenbergらは眼性斜頸患者44例を検討し、写真評価可能であった43例中41例で頭部傾斜/回旋と同側の顔面圧迫(前頭部・上顎部・下顎部の圧縮または質量減少)を確認した2)。
長期間の異常頭位は頸部の筋緊張に加え、成長期の小児では顔面非対称や脊椎側弯症を引き起こすリスクがある。早期の診断・治療による頭位改善が重要である。
眼性斜頸の原因は多岐にわたるが、最も多いのは非共同性斜視と眼振である。188例の前向き研究では非共同性斜視が62.7%、眼振が20.2%を占めた。630例の大規模研究でも非共同性斜視330例(52.4%)、眼振120例(19%)と同様の傾向が確認されている。非共同性斜視の内訳ではA-V型斜視116例(35.2%)、上斜筋麻痺59例(17.9%)の順であった。
眼性の原因
視力向上目的:眼振(null pointへの代償)、眼瞼下垂(視軸確保のため顎を上げる)、屈折異常(特に斜乱視)、同名半盲(残存視野を正面に配置)
眼球運動障害:上斜筋麻痺、デュアン症候群、A-V型斜視、Brown症候群、第3・第6脳神経麻痺、甲状腺眼症、交代性上斜位(DVD)、眼傾斜反応
非眼性の原因
整形外科的:先天性筋性斜頸(CMT)、外傷、炎症性筋炎、骨格異常(Klippel-Feil症候群、斜頭症、頸椎亜脱臼)
神経学的:脊髄空洞症、焦点性ジストニア、脳腫瘍、中枢神経系炎症後遺症、片耳難聴
眼性斜頸の原因として最も重要な疾患の一つである。先天性・特発性・後天性の3つに分類される。
超音波検査でCMTと確認されると他の原因は除外されがちであるが、眼性斜頸が併存する場合がある1)。
Kimらは、3か月男児でCMTと診断後7か月の理学療法で頭位異常が改善しなかった症例を報告した。10か月時の眼科精査で左第4脳神経無形成と左上斜筋低形成が判明し、15か月時の左下斜筋切除術により斜頸は完全に消失した1)。
非共同性斜視が全体の52〜63%を占め最多であり、次いで眼振が19〜20%である。非共同性斜視の中ではA-V型斜視と上斜筋麻痺の頻度が高い。
眼性斜頸は病歴聴取と詳細な神経眼科的診察により診断される。眼位検査では正しい頭位で行うことが不可欠であり、異常頭位のまま検査すると斜視が隠されてしまう。乳幼児では保護者に日頃の頭位の好みを聴取することも参考になる。
| 検査法 | 目的 |
|---|---|
| Parks 3段階法 | 麻痺筋の同定 |
| HESS赤緑試験 | 眼球運動異常の定量評価 |
| 大型弱視鏡 | 9方向むき眼位の評価 |
| MRI/CT | 先天性vs後天性の鑑別 |
| 牽引試験 | 上斜筋の弛緩度の評価 |
| 立体視検査 | 両眼視機能の評価 |
Parks 3段階法(Parks-Bielschowsky three step test) は上下斜視における麻痺筋同定の基本手技である。
軽度の上斜筋麻痺では、大型弱視鏡による第3眼位の外方回旋が診断の決め手になることがある。先天上斜筋麻痺ではMRIで筋付着部異常や筋低形成が後天性よりも高度に認められる。
以下の所見がある場合は非筋性の原因を積極的に精査する1)。
片眼遮閉で異常頭位が消失すれば眼性の原因が示唆される。また、座位で物を注視する際に症状が悪化する場合も眼性を疑う手がかりとなる。理学療法への無反応は眼性を含む非筋性原因の重要なRed flagである。
治療の基本は眼性斜頸の原因疾患に対する介入である。頸部や顔面の非対称といった筋骨格系の二次的変化を防ぐため、早期診断と基礎疾患の矯正が重要である。
眼性斜頸によって両眼視を維持している症例では両眼視機能が良好であることが多い。しかし長期放置は顔面非対称や脊椎側弯症につながるため、頭位改善を目標に手術を行う。
水平直筋の手術に加え、水平直筋付着部の上下移動術(Trick法)を併施する。
日常生活で上下斜視が目立つ場合に手術を考慮する。上直筋後転や下斜筋前方移動などの術式があるが、現時点で決定的な術式は確立されていない。
眼振手術の主目的は異常頭位の改善であり、眼振が減弱する眼位(中和点)を正面に移動させることにある。固視眼と中和点の特定が術前評価の要点である。
現時点では完全に眼振を停止させる治療法は存在しない。
眼振手術は中和点を正面に移動させることで異常頭位を改善する。ただし眼振そのものを完全に停止させる方法は現時点で存在しない。
眼性斜頸は、視覚系の障害に対する中枢性代償反応として生じる。代償の目的は原因疾患によって異なる。
先天性運動性眼振では、眼振の強さ(振幅・振動数)が眼位によって変化する(眼位性眼振)。眼振が最も減弱する眼位を中和点(null point)と呼び、患者はこの中和点が正面にくるように頭位を調整する。例えば右向き眼位で眼振が強くなる場合、患者は左向き眼位を好むため顔を右へ回す。
先天性運動性眼振の一部では輻凑により眼振が軽減する。この場合、患者は極端な内転位で固視するため、見かけ上の内斜視を呈する(眼振阻止症候群)。
非共同性斜視では、眼位ずれが最小となる注視方向が存在する。患者は複視を解消し両眼視を維持するため、その方向を正面にもってくる頭位をとる。上斜筋麻痺では内転位で偏位量が最大となるため、健側方向を向き頭を健側へ傾斜させることで上下斜視を最小化する。
上斜視患者のAHP分析では、頭部傾斜が62.8%と最も多く、顔面回旋が19.3%、顎上げが16.4%であった。下斜視では顔面回旋が41.5%、頭部傾斜が37%と、上斜視とは異なるパターンを示す2)。
Al-Dabetら(2025)は異常頭位(AHP)と眼疾患の因果関係を系統的に分析した。Cramer’s V統計量を用いてAHP・眼疾患・眼位異常の関連強度を定量化し、デュアン症候群と頭部傾斜+外斜視/内斜視、上斜筋麻痺と顔面回旋+上斜視、下斜筋麻痺と頭部傾斜+上斜視/下斜視の間に強い関連を同定した。これらの知見は眼性斜頸の診断精度向上やリハビリテーション戦略の改善に寄与すると期待される2)。
Goodmanらの後方視的検討(119例、1981〜1991年)では、乳児期からの長期頭部傾斜を有する59例のうち45例が上斜筋麻痺、14例が交代性上斜位であった。先天性上斜筋麻痺群で有意な顔面非対称が認められたが、交代性上斜位群では認められなかった。顔面非対称の予防を目的とした早期手術介入の意義が検討されている2)。
Kimら(2021)は先天性筋性斜頸(CMT)に眼性斜頸または骨性斜頸が併存した2症例を報告した。CMTの治療に反応しない場合、鑑別診断だけでなく他の原因との併存も考慮すべきであることを提唱している1)。