タイプ1
乳頭の拡大:正常な構成を保ちながら乳頭全体が拡大する。
C/D比:高いC/D比を示す。
外観:乳頭表面・乳頭縁の蒼白を認める。
両眼性:片眼性・両眼性ともに存在する。

巨大視神経乳頭(Megalopapilla; MP)は、視神経乳頭が2.5mmを超えて拡大し、異常な乳頭形状を呈する稀な先天異常である。非進行性の良性疾患で、片眼性または両眼性に発症する。
除外診断であり、他の構造的異常が認められないことが診断の条件となる。緑内障に類似した所見を示すことから「偽緑内障性の状態」とも呼ばれ、生理的陥凹の極端な正常変異の一つと考えられている。
正常視神経乳頭の大きさは直径1.5〜1.9mm、面積1.7〜2.8mm²である。乳頭サイズの評価指標としてDM/DD比(円板直径と黄斑部〜乳頭中心間距離の比)が用いられる。正常値は2.1〜3.2で、DM/DD比2.2以下が巨大乳頭の目安となる。
タイプ1
乳頭の拡大:正常な構成を保ちながら乳頭全体が拡大する。
C/D比:高いC/D比を示す。
外観:乳頭表面・乳頭縁の蒼白を認める。
両眼性:片眼性・両眼性ともに存在する。
タイプ2
陥凹の偏位:陥凹が上方に偏位し、乳頭縁の一部が消失したように見える。
毛様網膜動脈:出現頻度が高い。
片眼性:通常片眼性に発症する。
先天緑内障・基底脳瘤・粉状白内障を合併した患者での報告例もある。
タイプ1は乳頭全体が均等に拡大し正常な構成を保つのに対し、タイプ2は陥凹が上方に偏位して乳頭縁の一部が消失したように見える。タイプ2は通常片眼性で、毛様網膜動脈の出現頻度が高い点も特徴である。
通常は無症状である。一部の症例で生理的盲点の拡大を自覚することがある。視力低下は稀であり、認められた場合は他の原因を検索する必要がある。
通常は無症状だが、高いC/D比や大きな乳頭は緑内障と誤認されやすい。緑内障を確実に除外するためには専門的な検査が必要であり、偶発的に指摘された場合は眼科で精査を受けることが重要である。
病因は現時点で不明である。以下の仮説が提唱されている。
遺伝的要因も示唆されている。一卵性双生児での発症報告や、マーシャル諸島における高い有病率(54眼中22眼で乳頭径2.10mmを超え、36名でC/D比0.6超)が遺伝的素因の関与を示唆している。
MPの診断において最も重要なのは、緑内障との確実な鑑別である。大きな乳頭では乳頭の大きさを念頭に置いたC/D比の判定が不可欠であり、C/D比のみで緑内障リスクを評価することは適切ではない1)。
HRT(ハイデルベルグ網膜断層計; Heidelberg Retina Tomograph)を用いた乳頭定量評価では、MPでは乳頭縁面積と乳頭縁容積が正常に保たれることが鑑別のポイントとなる2)。
小児MP50眼と正常80眼のHRT比較研究では以下の結果が得られている。
| 指標 | MP群 | 正常群 | p値 |
|---|---|---|---|
| 乳頭縁面積(mm²) | 1.96±0.36 | 1.90±0.22 | 0.25(有意差なし) |
| 乳頭縁容積(mm³) | 0.15±0.07 | 0.14±0.07 | 0.48(有意差なし) |
乳頭縁面積・容積に有意差がないことが、緑内障との鑑別における重要な根拠となる。
OCTによる乳頭周囲RNFL(pRNFL)厚の測定では、MPにおいて正常〜増加を示す2)。
小児MP群と正常群の比較では、平均RNFL厚はMP群117.34±11.88μm、正常群106.83±13.48μm(p<0.01)と、MP群で有意に厚い結果が示された。RNFLの菲薄化がないことが緑内障を否定する根拠となる。
また小児MP39名と成人MP39名の比較では、小児MPは成人MPに比べて乳頭縁面積が大きく、陥凹が小さい傾向が示されている。
生理的盲点の拡大を認めることがある。周辺視野欠損は認められないのが原則であり、緑内障様の視野欠損が認められた場合は緑内障の合併を疑う必要がある。
MPと類似した所見を呈する疾患との鑑別が重要である。
HRTで乳頭縁面積・乳頭縁容積が正常に保たれていること、OCTでRNFLが正常〜増加を示すことが最大の鑑別点である。緑内障では乳頭縁面積の減少とRNFL菲薄化を認めるため、これらの検査を組み合わせて評価することが重要である。
MPに対する特異的な治療は存在しない。良性の非進行性疾患であり視機能障害が生じるわけではないが、緑内障との鑑別を継続することが管理の中心となる。
MPそのものに対する治療は不要である。ただし、緑内障との鑑別を継続するために定期的な受診と検査が必要である。経過中に視野変化やRNFLの菲薄化が生じた場合は、緑内障の合併を考慮して対応を見直す。
MPの病態生理は完全には解明されていない。以下の機序が考えられている。
乳頭縁面積・乳頭縁容積が正常に保たれるという所見は、MPが視神経線維の喪失を伴わない状態であることを示しており、緑内障とは本質的に異なる病態である。
MPは非進行性であり、視神経線維の進行性喪失は起こらない。適切に管理された症例では視機能が維持される。
小児MP39名と成人MP39名を比較した研究では、小児は成人に比べて乳頭縁面積が大きく、陥凹が小さい傾向があることが示された。加齢に伴う形態変化は起こりうるが、病態が進行するわけではないと考えられている。
長期的な管理においては以下の点に注意する。