腫瘍
網膜芽細胞腫:最重要。RB1遺伝子変異(13q14)による。95%が5歳までに発症。
髄上皮腫:毛様体由来の稀な腫瘍。
網膜・RPE複合過誤腫:網膜と網膜色素上皮の過誤腫性病変。
網膜星細胞性過誤腫:結節性硬化症に伴うことがある。

白色瞳孔(Leukocoria)は「白い瞳孔」を意味し、ギリシャ語の leukos(白)と kore(瞳孔)に由来する。瞳孔を通じた眼底照明において、通常の赤色反射(red reflex)に代わり白い光の反射が認められる状態を指す。
角膜から後極部に至る光学経路のどこかに混濁や異常構造物が存在すると、脈絡膜血管からの赤色反射が遮断され、白色瞳孔反射が生じる。原因疾患は腫瘍、先天異常、血管疾患、炎症性疾患、中間透光体混濁など多岐にわたる。
白色瞳孔の鑑別で最も重要な疾患は網膜芽細胞腫である。網膜芽細胞腫は小児の最多眼内悪性腫瘍であり、推定発生率は出生17,000人に1人とされる2)。白色瞳孔と斜視が主要な初発徴候であり2)、早期発見が生命予後と視覚予後に直結する。
そのほか、有髄網膜神経線維(myelinated retinal nerve fiber layer: MRNFL)は人口の約1%に認められる先天異常であり、白色瞳孔として発見される場合がある1)3)。
網膜芽細胞腫である。小児の最多眼内悪性腫瘍であり、生命予後に直結するため、白色瞳孔を認めた場合は最優先で除外する必要がある。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。

白色瞳孔は通常、乳幼児に発見されるため自覚症状の訴えはない。以下のような状況で保護者が気づくことが多い。
正常の赤色反射が白色または灰白色に置換される。両眼の反射の非対称性(Bruckner反射陽性)も重要な所見である。
原因疾患に応じて以下を認めることがある。
原因疾患に特異的な所見を呈する。
赤色反射の非対称性は眼科受診の適応である。米国小児科学会(AAP)はすべての新生児・乳児・小児に赤色反射検査を推奨しており、白色反射や反射の非対称性は速やかに眼科医への紹介が必要である。
白色瞳孔の原因は多岐にわたる。主要な原因疾患をカテゴリ別に示す。
腫瘍
網膜芽細胞腫:最重要。RB1遺伝子変異(13q14)による。95%が5歳までに発症。
髄上皮腫:毛様体由来の稀な腫瘍。
網膜・RPE複合過誤腫:網膜と網膜色素上皮の過誤腫性病変。
網膜星細胞性過誤腫:結節性硬化症に伴うことがある。
先天異常
血管疾患
未熟児網膜症(ROP):早産・低出生体重児に発症。両眼性。
Coats病:網膜血管拡張症と滲出。10万人あたり約0.09。85%が若年男性6)。
家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR):常染色体優性遺伝が多い。
炎症・その他
眼トキソカラ症:イヌ回虫感染による肉芽腫性病変。片眼性。
先天性トキソプラズマ症:胎内感染による脈絡網膜炎。
白内障:先天白内障による中間透光体混濁。
その他:サイトメガロウイルス網膜炎、角膜混濁、器質化硝子体出血、シリコーンオイル乳化5)。
2008年の米国小児科学会(AAP)の推奨では、すべての新生児・乳児・小児に退院前および定期健診で赤色反射検査を実施すべきとされている。
上記の異常はいずれも眼科医への紹介適応である。なお、徹照法は白内障の診断に有用であり、乳児の白内障の手術適応判断にも重要となる。
白色瞳孔を生じる主要疾患の鑑別点を以下に示す。
| 疾患 | 側性 | 好発年齢 | 超音波の特徴 |
|---|---|---|---|
| 網膜芽細胞腫 | 片眼約70% | 5歳まで95% | 腫瘍+石灰化 |
| 胎生期血管遺残 | 片眼優位 | 先天性 | 乳頭への索状陰影 |
| 未熟児網膜症 | 両眼 | 出生直後 | 末梢血管未発達 |
| Coats病 | 主に片眼 | 学童期 | 網膜剥離、石灰化なし |
| 眼トキソカラ症 | 片眼 | 多様 | 石灰化なし腫瘤 |
超音波検査は石灰化の検出に優れ、外来で迅速に施行できる初期スクリーニングとして適する。MRIは網膜芽細胞腫とCoats病・胎生期血管遺残などの鑑別に最も優れ、視神経浸潤や脈絡膜浸潤の評価も可能である。
白色瞳孔の治療は原因疾患により大きく異なる。主要な原因疾患ごとの治療を示す。
網膜芽細胞腫
全身化学療法:vincristine 1.5 mg/m²、etoposide 150 mg/m²、carboplatin 560 mg/m² の3剤併用が標準的レジメンである2)。
局所療法:経瞳孔温熱療法(TTT)、レーザー光凝固、冷凍凝固を化学療法と併用する2)。
眼球摘出:進行例(Murphree分類Group E等)では眼球摘出を行う2)。眼内腫瘍の生検は腫瘍細胞の眼球外散布リスクがあるため原則として行わない。
Coats病
初期(Stage 1-2):レーザー光凝固により拡張血管を閉塞させる6)。
中期(滲出多い場合):冷凍凝固により異常血管を破壊する6)。
進行期(網膜剥離合併):硝子体手術等による網膜剥離手術。未治療では続発緑内障から眼球摘出に至る可能性がある6)。
MRNFL・弱視
MRNFL自体:良性の先天異常であり治療は不要3)。
合併する弱視:屈折矯正(眼鏡またはコンタクトレンズ)とパッチング(健眼遮閉)が基本。視覚発達の臨界期(10歳頃まで)に早期介入が重要1)3)。
合併する斜視:外斜視等が大角度の場合は眼筋手術を行う3)。
そのほかの原因疾患では、未熟児網膜症(ROP)に対してはレーザー光凝固や抗VEGF薬硝子体内注射4)、先天白内障に対しては白内障手術、胎生期血管遺残(PFV)に対しては水晶体切除・硝子体切除等が行われる。
有髄網膜神経線維(MRNFL)自体は良性の先天異常であり治療は不要である。ただし、高度近視や弱視を高率に合併するため、屈折矯正とパッチングによる早期の弱視治療が視覚予後を左右する。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
検眼鏡の光は角膜→前房→水晶体→硝子体を通過して網膜に到達する。網膜下の脈絡膜に豊富に存在する血管が光を反射し、赤色反射(red reflex)として観察される。この光学経路のどこかに混濁、腫瘤、または異常構造物が存在すると赤色反射が遮断され、白色瞳孔反射が生じる。
腫瘍抑制遺伝子RB1(染色体13q14に位置)の両アレル不活化により、網膜細胞が無制御に増殖する2)4)。
白色の網膜腫瘤が赤色反射を直接遮断し、白色瞳孔を呈する。
非遺伝性・散発性の疾患であり、2つの病因経路が提唱されている6)。
進行した滲出性網膜剥離が白色瞳孔の原因となる。
正常では視神経板(篩状板)より後方でのみ神経線維の髄鞘形成が生じ、網膜内の神経線維は無髄である。MRNFLでは篩状板の未成熟または欠損により、オリゴデンドロサイト様細胞が網膜内に侵入し、網膜神経節細胞の軸索に髄鞘を形成する3)。髄鞘は光の透過を阻害するため、広範なMRNFLは白色瞳孔として認識される。
Badalovaら(2025)は、オランダ全国網膜芽細胞腫レジストリ(1991〜2019年)を用いた後方視的コホート研究で、出生時から完全にスクリーニングされた家族性網膜芽細胞腫28例は全例1歳未満で診断されたことを報告した(診断年齢中央値18日、範囲3〜352日)。57.1%が生後1か月以内、82.1%が6か月以内に診断されていた。不完全スクリーニング群10例では診断年齢中央値が420日であった。これらの結果から、低リスク群(推定リスク3%未満)のスクリーニングを2歳までに短縮するプロトコール改訂が行われた7)。
Lomiら(2025)は、Dandy-Walker症候群(DWS)を有する乳児に両側性網膜芽細胞腫が発症した症例を報告した。DWSと網膜芽細胞腫はいずれも染色体13q異常との関連が示唆されているが、両疾患の合併は極めて稀である。Rodjanらによる168例の網膜芽細胞腫児のMRI検討でも、Dandy-Walker変異型は1例のみであった。先天性脳奇形を有する小児における眼内悪性腫瘍スクリーニングの重要性が示唆される2)。
体外受精(IVF)がエピジェネティック異常を介して網膜芽細胞腫の発症リスクを高める可能性が議論されている。オランダの研究ではIVF後の網膜芽細胞腫発生率の増加が示唆されたが、複数の大規模疫学研究では有意な関連は認められておらず、結論は未確定である4)。
有髄網膜神経線維(MRNFL)に伴う近視と弱視の三徴をStraatsma症候群と呼ぶ。視覚予後に関連する因子として、MRNFLの型(type 1:上方アーケードのみ、type 2:上下両アーケード、type 3:視神経乳頭と連続しない)、不同視の程度、OCTにおける黄斑部楕円体ゾーンの構造が報告されている。type 2が最も予後不良であり、弱視治療への反応も不良であった1)。