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小児眼科・斜視

白色瞳孔(Leukocoria)

白色瞳孔(Leukocoria)は「白い瞳孔」を意味し、ギリシャ語の leukos(白)と kore(瞳孔)に由来する。瞳孔を通じた眼底照明において、通常の赤色反射(red reflex)に代わり白い光の反射が認められる状態を指す。

角膜から後極部に至る光学経路のどこかに混濁や異常構造物が存在すると、脈絡膜血管からの赤色反射が遮断され、白色瞳孔反射が生じる。原因疾患は腫瘍、先天異常、血管疾患、炎症性疾患、中間透光体混濁など多岐にわたる。

白色瞳孔の鑑別で最も重要な疾患は網膜芽細胞腫である。網膜芽細胞腫は小児の最多眼内悪性腫瘍であり、推定発生率は出生17,000人に1人とされる2)。白色瞳孔と斜視が主要な初発徴候であり2)、早期発見が生命予後と視覚予後に直結する。

そのほか、有髄網膜神経線維(myelinated retinal nerve fiber layer: MRNFL)は人口の約1%に認められる先天異常であり、白色瞳孔として発見される場合がある1)3)

Q 白色瞳孔で最も除外すべき疾患は何か?
A

網膜芽細胞腫である。小児の最多眼内悪性腫瘍であり、生命予後に直結するため、白色瞳孔を認めた場合は最優先で除外する必要がある。詳細は「診断と検査方法」の項を参照。

白色瞳孔の原因となる網膜芽細胞腫の眼底像
白色瞳孔の原因となる網膜芽細胞腫の眼底像
Aerts I, Lumbroso-Le Rouic L, Gauthier-Villars M, et al. Retinoblastoma. Orphanet J Rare Dis. 2006 Aug 25;1:31. Figure 2. PMCID: PMC1586012. License: CC BY.
眼底に白色で隆起した腫瘍病変がみられる。白色瞳孔の代表的原因である網膜芽細胞腫を、眼底レベルで示す補助画像である。

白色瞳孔は通常、乳幼児に発見されるため自覚症状の訴えはない。以下のような状況で保護者が気づくことが多い。

  • 瞳孔の白色反射: フラッシュ撮影で片眼だけ白く写る、暗所で瞳孔が白く光るなどの異常に保護者が気づく
  • 斜視: 網膜芽細胞腫では黄斑部に腫瘍が生じると視力不良となり、斜視を発症して発見される
  • 視力低下の徴候: 乳幼児では眼をこするしぐさ、哺乳低下、注視の左右差が手がかりとなる

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”

正常の赤色反射が白色または灰白色に置換される。両眼の反射の非対称性(Bruckner反射陽性)も重要な所見である。

原因疾患に応じて以下を認めることがある。

  • 小眼球・小角膜: 胎生期血管遺残(PFV)で認める
  • 瞳孔膜遺残・虹彩コロボーマ: 先天異常の合併所見
  • 白内障: 先天白内障による白色瞳孔
  • 新生血管・炎症: 進行した網膜芽細胞腫やぶどう膜炎

原因疾患に特異的な所見を呈する。

  • 網膜芽細胞腫: 血管に富む白色隆起病変。内部に石灰化を伴う。硝子体播種を認めることがある
  • Coats病: 網膜血管拡張症(light bulb telangiectasias)。下方・耳側に好発し、黄色の脂質滲出を伴う6)
  • 有髄網膜神経線維(MRNFL): 非隆起性の白色線条病変が神経線維走行に沿って分布する1)3)
  • その他: 硝子体混濁視神経奇形、網膜剥離、索状物、線維化など
Q フラッシュ撮影で片眼だけ白く写ったら受診すべきか?
A

赤色反射の非対称性は眼科受診の適応である。米国小児科学会(AAP)はすべての新生児・乳児・小児に赤色反射検査を推奨しており、白色反射や反射の非対称性は速やかに眼科医への紹介が必要である。

白色瞳孔の原因は多岐にわたる。主要な原因疾患をカテゴリ別に示す。

腫瘍

網膜芽細胞腫:最重要。RB1遺伝子変異(13q14)による。95%が5歳までに発症。

髄上皮腫毛様体由来の稀な腫瘍。

網膜・RPE複合過誤腫:網膜と網膜色素上皮の過誤腫性病変。

網膜星細胞性過誤腫:結節性硬化症に伴うことがある。

先天異常

胎生期血管遺残(PFV):小眼球と水晶体後面の線維性膜を伴う。

コロボーマ:眼杯裂閉鎖不全による。視神経・脈絡膜に及ぶ場合がある。

有髄神経線維(MRNFL):人口の約1%。高度近視弱視を合併しうる。

その他ノーリー病色素失調症、網膜異形成、モーニンググローリー症候群。

血管疾患

未熟児網膜症(ROP):早産・低出生体重児に発症。両眼性。

Coats病:網膜血管拡張症と滲出。10万人あたり約0.09。85%が若年男性6)

家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)常染色体優性遺伝が多い。

  • 網膜芽細胞腫: RB1遺伝子の生殖細胞系列変異を有する場合、常染色体優性遺伝で発症する。遺伝型は全体の35〜45%を占めるが、家族歴を有するのは約10%にすぎず、多くがde novo変異である4)
  • Coats病: 非遺伝性・散発性であり、75%以上が片眼性である6)
  • ROP: 低出生体重、低在胎週数、酸素投与が主要リスク因子4)
  • MRNFL: 先天性で、約7%が両側性3)

2008年の米国小児科学会(AAP)の推奨では、すべての新生児・乳児・小児に退院前および定期健診で赤色反射検査を実施すべきとされている。

  • 手技: 直像検眼鏡のレンズ度数を「0」に設定し、暗室で約45 cm離れた位置から両眼に同時に照射する
  • 正常所見: 両眼から対称性の赤色反射が得られる
  • 異常所見: 赤色反射内の暗点、反射の著明な減弱、白色反射、反射の非対称性(Bruckner反射)

上記の異常はいずれも眼科医への紹介適応である。なお、徹照法は白内障の診断に有用であり、乳児の白内障の手術適応判断にも重要となる。

  • 超音波検査(Bスキャン): 中間透光体の混濁で後極部を直接視認できない場合に特に有用である。網膜芽細胞腫では実質性腫瘍と内部の石灰化を検出する。Coats病では石灰化を認めず、脈絡膜腫瘤を伴わない漿液性網膜剥離を呈する6)
  • MRI: 網膜芽細胞腫とCoats病の鑑別にCT・超音波より優れる6)。網膜芽細胞腫はT1強調画像で脳実質と同程度の信号、T2強調画像で軽度低信号を示し、造影効果を認める。Coats病では網膜下液がT1高信号・T2低信号を示し、造影増強を伴わない6)。両側性網膜芽細胞腫の約3%に三側性網膜芽細胞腫を生じるため、頭部MRIによるスクリーニングが推奨される
  • フルオレセイン蛍光眼底造影(FA): Coats病の血管拡張症の範囲評価に有用6)
  • 光干渉断層計(OCT): MRNFLでは過反射の神経線維層を認め、黄斑構造の評価にも有用1)3)

白色瞳孔を生じる主要疾患の鑑別点を以下に示す。

疾患側性好発年齢超音波の特徴
網膜芽細胞腫片眼約70%5歳まで95%腫瘍+石灰化
胎生期血管遺残片眼優位先天性乳頭への索状陰影
未熟児網膜症両眼出生直後末梢血管未発達
Coats病主に片眼学童期網膜剥離、石灰化なし
眼トキソカラ症片眼多様石灰化なし腫瘤
Q 超音波検査とMRIはどう使い分けるか?
A

超音波検査は石灰化の検出に優れ、外来で迅速に施行できる初期スクリーニングとして適する。MRIは網膜芽細胞腫とCoats病・胎生期血管遺残などの鑑別に最も優れ、視神経浸潤や脈絡膜浸潤の評価も可能である。

白色瞳孔の治療は原因疾患により大きく異なる。主要な原因疾患ごとの治療を示す。

網膜芽細胞腫

全身化学療法:vincristine 1.5 mg/m²、etoposide 150 mg/m²、carboplatin 560 mg/m² の3剤併用が標準的レジメンである2)

局所療法:経瞳孔温熱療法(TTT)、レーザー光凝固冷凍凝固を化学療法と併用する2)

眼球摘出:進行例(Murphree分類Group E等)では眼球摘出を行う2)。眼内腫瘍の生検は腫瘍細胞の眼球外散布リスクがあるため原則として行わない。

Coats病

初期(Stage 1-2):レーザー光凝固により拡張血管を閉塞させる6)

中期(滲出多い場合):冷凍凝固により異常血管を破壊する6)

進行期(網膜剥離合併)硝子体手術等による網膜剥離手術。未治療では続発緑内障から眼球摘出に至る可能性がある6)

MRNFL・弱視

MRNFL自体:良性の先天異常であり治療は不要3)

合併する弱視屈折矯正(眼鏡またはコンタクトレンズ)とパッチング(健眼遮閉)が基本。視覚発達の臨界期(10歳頃まで)に早期介入が重要1)3)

合併する斜視外斜視等が大角度の場合は眼筋手術を行う3)

そのほかの原因疾患では、未熟児網膜症(ROP)に対してはレーザー光凝固や抗VEGF薬硝子体内注射4)、先天白内障に対しては白内障手術、胎生期血管遺残(PFV)に対しては水晶体切除・硝子体切除等が行われる。

Q 有髄神経線維による白色瞳孔は治療が必要か?
A

有髄網膜神経線維(MRNFL)自体は良性の先天異常であり治療は不要である。ただし、高度近視や弱視を高率に合併するため、屈折矯正とパッチングによる早期の弱視治療が視覚予後を左右する。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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検眼鏡の光は角膜→前房→水晶体→硝子体を通過して網膜に到達する。網膜下の脈絡膜に豊富に存在する血管が光を反射し、赤色反射(red reflex)として観察される。この光学経路のどこかに混濁、腫瘤、または異常構造物が存在すると赤色反射が遮断され、白色瞳孔反射が生じる。

腫瘍抑制遺伝子RB1(染色体13q14に位置)の両アレル不活化により、網膜細胞が無制御に増殖する2)4)

  • 遺伝型(heritable form): 生殖細胞系列に片アレルの変異を有し(第1ヒット)、出生後に体細胞変異(第2ヒット)が加わって発症する。両側性が多い4)
  • 散発型(sporadic form): 両アレルとも体細胞変異で不活化される。片眼性が多い

白色の網膜腫瘤が赤色反射を直接遮断し、白色瞳孔を呈する。

非遺伝性・散発性の疾患であり、2つの病因経路が提唱されている6)

  • 内皮変性経路: 網膜血管の内皮細胞が変性し、血液網膜関門が破綻する。血漿が血管壁に漏出し、血管壁の肥厚(ソーセージ様血管)を生じる
  • 血管瘤形成経路: 異常な内皮細胞と周皮細胞の相互作用により血管瘤が形成される。脂質の滲出により網膜が肥厚し、嚢胞形成や滲出性網膜剥離に至る

進行した滲出性網膜剥離が白色瞳孔の原因となる。

正常では視神経板(篩状板)より後方でのみ神経線維の髄鞘形成が生じ、網膜内の神経線維は無髄である。MRNFLでは篩状板の未成熟または欠損により、オリゴデンドロサイト様細胞が網膜内に侵入し、網膜神経節細胞の軸索に髄鞘を形成する3)。髄鞘は光の透過を阻害するため、広範なMRNFLは白色瞳孔として認識される。

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

家族性網膜芽細胞腫のスクリーニング最適化

Section titled “家族性網膜芽細胞腫のスクリーニング最適化”

Badalovaら(2025)は、オランダ全国網膜芽細胞腫レジストリ(1991〜2019年)を用いた後方視的コホート研究で、出生時から完全にスクリーニングされた家族性網膜芽細胞腫28例は全例1歳未満で診断されたことを報告した(診断年齢中央値18日、範囲3〜352日)。57.1%が生後1か月以内、82.1%が6か月以内に診断されていた。不完全スクリーニング群10例では診断年齢中央値が420日であった。これらの結果から、低リスク群(推定リスク3%未満)のスクリーニングを2歳までに短縮するプロトコール改訂が行われた7)

先天性脳奇形と網膜芽細胞腫の合併

Section titled “先天性脳奇形と網膜芽細胞腫の合併”

Lomiら(2025)は、Dandy-Walker症候群(DWS)を有する乳児に両側性網膜芽細胞腫が発症した症例を報告した。DWSと網膜芽細胞腫はいずれも染色体13q異常との関連が示唆されているが、両疾患の合併は極めて稀である。Rodjanらによる168例の網膜芽細胞腫児のMRI検討でも、Dandy-Walker変異型は1例のみであった。先天性脳奇形を有する小児における眼内悪性腫瘍スクリーニングの重要性が示唆される2)

体外受精と網膜芽細胞腫のリスク

Section titled “体外受精と網膜芽細胞腫のリスク”

体外受精(IVF)がエピジェネティック異常を介して網膜芽細胞腫の発症リスクを高める可能性が議論されている。オランダの研究ではIVF後の網膜芽細胞腫発生率の増加が示唆されたが、複数の大規模疫学研究では有意な関連は認められておらず、結論は未確定である4)

有髄網膜神経線維(MRNFL)に伴う近視と弱視の三徴をStraatsma症候群と呼ぶ。視覚予後に関連する因子として、MRNFLの型(type 1:上方アーケードのみ、type 2:上下両アーケード、type 3:視神経乳頭と連続しない)、不同視の程度、OCTにおける黄斑部楕円体ゾーンの構造が報告されている。type 2が最も予後不良であり、弱視治療への反応も不良であった1)


  1. Altamirano F, Gonzalez E, Oke I. Leukocoria in a 4-year-old boy. Dig J Ophthalmol. 2024;30:42-44.
  2. Lomi N, Das D, Chawla B, et al. Retinoblastoma in Dandy-Walker Syndrome. Cureus. 2025;17(8):e89663.
  3. Kera J, Fasiuddin AF. Ocular Findings Associated With Myelinated Retinal Nerve Fibers. Cureus. 2021;13(4):e14552.
  4. Alghofaili RS, Almesfer SA. Bilateral Retinoblastoma Presenting in an in vitro Fertilization Infant with Retinopathy of Prematurity. Case Rep Ophthalmol. 2021;12:306-310.
  5. Bafna RK, Mahalingam K, Bansal B. Hyperoleon masquerading as leukocoria. BMJ Case Rep. 2021;14:e246135.
  6. Laasri K, El houss S, Halfi IM, et al. Coats’ syndrome: A rare cause of infant leukocoria to keep in mind. Radiol Case Rep. 2024;19:7-11.
  7. Badalova NA, van Hoefen Wijsard M, Dommering CJ, et al. At What Age Could Screening for Familial Retinoblastoma Be Stopped? Ophthalmology. 2025;132:1152-1160.

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