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小児眼科・斜視

若年性黄色肉芽腫

若年性黄色肉芽腫(Juvenile Xanthogranuloma; JXG)は、非ランゲルハンス細胞組織球症(non-LCH)の中で最も一般的な疾患である。1905年にAdamsonによって初めて報告され、1948年にはFryによって虹彩JXGが初めて記載された。

疫学的には、皮膚JXGの平均発症年齢は3.3歳(中央値1歳)であり、眼球JXGは平均4.3歳(中央値1.3歳)とやや遅い。発生率は小児100万人あたり約1例であり、小児腫瘍全体の0.5%を占める9)。20〜35%が1歳未満で診断される先天性JXGとして発症する9)。性差は軽度で、男女比は1.1〜1.4:1である。

Q 若年性黄色肉芽腫は大人にも発症しますか?
A

成人発症の報告もある。眼瞼JXGの32例を集積した研究では、自施設症例の年齢中央値が9歳であり、成人例も含まれていた。ただし、乳幼児期の発症が圧倒的に多い。

皮膚JXGは無痛性の黄色〜赤色〜茶色の丘疹として出現する。眼球JXGでは以下の症状が生じる。

  • 前房出血による視力低下:自然出血が生じ、急性視力障害をきたす
  • 眼圧上昇:二次緑内障による
  • 虹彩異色症:虹彩びまん性浸潤により罹患眼の虹彩色が変化する

眼球病変

虹彩病変:眼内JXGの68%を占める。片眼性に生じ、黄色の腫瘤形成またはびまん性浸潤の形態をとる。自然前房出血から二次緑内障へ進行する。

結膜病変:眼内JXGの19%。球結膜上に黄色結節として出現する。

眼瞼病変:上眼瞼に62.5%が生じる。全層型が75%、霰粒腫様皮下型が25%を占める。1)

皮膚外病変

皮膚病変:全症例の75%。1〜20mmの丘疹で、1〜5年以内に自然退縮することが多い。

口腔病変:文献上42例と稀。歯肉(29.8%)・舌(27%)に多い。4)

深部・筋肉内病変:全JXGの0.6%、文献上15例のみ。切除断端陽性でも再発しない場合がある。7)

全身性病変:皮膚JXG患者の0.75%に発症。肝浸潤が31.4%に認められる。8)

Q 前房出血がみられたら必ずJXGを疑うべきですか?
A

小児の自然前房出血ではJXGを鑑別の筆頭に置く必要がある。ただし、網膜芽細胞腫、白血病、外傷なども重要な鑑別疾患であり、それらを除外したうえでJXGを診断する。

JXGの発症機序は、何らかの刺激に対する組織球黄色腫性反応(反応性起源)と考えられている。真の腫瘍性疾患ではないとされるが、近年の分子生物学的研究により遺伝子変異の関与が明らかになっている。

  • MAP kinase / PI3K / JAK-STAT経路変異:JXGの分子病態の基盤をなす3)
  • NTRK1遺伝子融合:JXGの28.6%に検出された3)
  • MAP2K1 / NRAS / KRAS / ARAF / CSF-1R変異:先天性JXGで報告されている9)
  • 神経線維腫症1型(NF1):NF1生殖細胞変異を持つ2歳未満の約30%でJXGが発症する3)。NF1とJXGの併発は若年性骨髄単球性白血病(JMML)の発症リスクを20〜32倍に高める
  • ニーマン・ピック病・色素性蕁麻疹:JXGとの関連が知られている
Q NF1とJXGが併発するとなぜ危険ですか?
A

NF1+JXGの三重徴候にJMMLが加わると「三疾患三重徴(triple association)」と呼ばれる。NF1単独と比べてJMMLリスクが20〜32倍に上昇するため、NF1患者でJXGを認めたときは血液内科との連携が必須である。

典型例では臨床所見のみで診断が可能である2)。乳幼児の無痛性黄橙色丘疹を認めた場合、生検なしに臨床診断されることもある。

  • ダーモスコピー:「setting-sun appearance(夕日様所見)」が特徴的5)
  • 前眼部OCT:虹彩JXGの腫瘤形状や浸潤範囲の評価に有用
  • 細隙灯顕微鏡:前房出血・虹彩腫瘤・眼圧上昇を確認

眼瞼・結膜JXGでは切除生検が確定診断となる1)。治療に反応しない症例では細針吸引生検(FNAB)が選択肢となる。

マーカーJXGLCH意義
CD68陽性陽性組織球系マーカー
CD163陽性陰性〜弱陽性M2マクロファージマーカー
Factor XIIIa陽性〜陰性陰性樹状細胞マーカー
CD1a陰性陽性JXGとの鑑別に必須
S100陰性陽性JXGとの鑑別に必須
CD207(Langerin)陰性陽性JXGとの鑑別に必須

典型的な組織像はTouton型巨細胞と泡沫状組織球の浸潤である。ただし深部JXGではTouton型巨細胞が認められないこともある7)。口腔JXGでは非脂質化変異型(non-lipidized variant)が報告されており、Ki-67陽性率が約25%と比較的高い4)。BRAF V600E変異は口腔JXG5例すべてで陰性であった4)

治療方針は病変部位によって大きく異なる。

皮膚病変

第一選択は経過観察。大半の皮膚病変は1〜5年以内に自然退縮する。外科的切除は審美的理由や診断目的に限定される。

切除後の転帰:83%で再発なし、10%で再発、7%で近傍新病変出現。

眼瞼・結膜病変

切除生検が第一選択。32例の眼瞼JXG集積研究では75%で外科切除が施行され、中央値27か月の追跡で再発は認められなかった。1)

虹彩JXGは自然前房出血から失明に至りうるため、迅速な治療が必要である。

  1. 高用量局所ステロイド点眼:第一選択。3〜4か月かけて漸減する
  2. 眼球周囲ステロイド注射:点眼で効果不十分な場合
  3. 全身ステロイド投与:さらに重症な場合
  4. 低用量放射線療法:ステロイド抵抗性症例(本邦での選択肢)

全身性JXGや肝・中枢神経系浸潤を伴う重症例では、LCH治療プロトコール(cytarabine+vincristine+prednisolone)が使用される6)。肝・CNS浸潤例は死亡率が高く、集学的管理が必要である。

Q 皮膚のJXGは放置してよいのですか?
A

皮膚JXGは大半が1〜5年で自然退縮するため、経過観察が基本方針となる。ただし、眼球JXGは自然退縮を期待できず、放置すると失明のリスクがある。皮膚病変を認めた乳幼児では、必ず眼科受診を行い眼球病変の有無を確認することが重要である。

JXGは反応性組織球増殖を基盤とするが、近年の分子解析により腫瘍性変化に準じた遺伝子異常の存在が示されている。

皮膚JXGの組織像は、泡沫状組織球(xanthoma細胞)とTouton型巨細胞(核が花冠状に配列し周囲に泡沫状細胞質を持つ多核巨細胞)からなる肉芽腫性浸潤を特徴とする。

分子異常頻度備考
NTRK1遺伝子融合28.6%(6/21例)TPM3::NTRK1が最多(3例)、IRF2BP2::NTRK1(2例)3)
MAP kinase経路変異一部の先天性JXGMAP2K1, NRAS, KRAS, ARAF9)
BRAF V600E稀(口腔JXG5例では陰性)LCHとの鑑別に有用4)
CSF-1R変異一部の先天性JXG分子標的治療の候補9)

LCHとJXGは組織球系腫瘍として密接に関連する。LCH治療後にJXGが発症する症例が報告されている。肝浸潤の組織像では、LCHが胆管破壊をきたすのに対し、JXGでは胆管が保存されることが対比的な特徴である8)

NTRK1融合とTRK阻害薬(Schloegl et al., 2025)3)

35例のJXGを対象とした解析で、NTRK1遺伝子融合が21例中6例(28.6%)に検出された。最も多かったのはTPM3::NTRK1(3例)で、次いでIRF2BP2::NTRK1(2例)であった。この知見は、larotrectinibやentrectinibといったTRK阻害薬がJXGの分子標的治療候補となりうることを示唆する。先天性JXGの1例ではデキサメタゾン10 mg/m²投与により改善が得られた。

外用ラパマイシン1%によるJXG治療(Effendi et al., 2022)5)

2歳男児のJXGに対し1%外用ラパマイシンを1日2回塗布したところ、12週で病変が25×10×3mmから10×8×1mmに縮小し、24週時点で顔面病変の平坦化が確認された。mTOR阻害を介した機序と考えられ、皮膚JXGに対する非侵襲的治療として注目される。

LCH vs JXGの肝組織学的対比(Daeniker et al., 2025)8)

全身性JXG患者の31.4%に肝浸潤が認められた。JXGの肝組織では胆管が保存されるのに対し、LCHでは胆管破壊が起こるという対照的なパターンが示された。BRAF阻害薬(vemurafenib)もLCH合併例での治療選択肢として言及されている。

若年性黄色肉芽腫は、乳幼児に好発する非ランゲルハンス細胞組織球症の代表疾患である。皮膚病変は自然退縮するが、眼球・全身性病変は失明・死亡のリスクがあり、迅速な評価と治療が求められる。NF1合併例ではJMMLリスクの増大に注意が必要である。近年のNTRK1遺伝子融合の発見により、TRK阻害薬という新たな治療標的が浮上しており、今後の臨床応用が期待される。

  1. Chen R, Liu S, Tang L, et al. On the knowledge of solitary juvenile xanthogranuloma of the eyelid: a case series and literature review. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2022;260:2339-2345.

  2. Santos R, Barros AM, Carvalho M. Juvenile Xanthogranuloma: A Visual Clinical Diagnosis. Cureus. 2025;17(12):e98625.

  3. Schloegl E, Hoerner-Unterberger H, Simonitsch-Klupp I, et al. NTRK1 Gene Fusions Are Frequent in Juvenile Xanthogranuloma. Am J Surg Pathol. 2025;49:763-769.

  4. Mota CP, Cunha JLS, Magalhaes MCSV, et al. Oral Juvenile Xanthogranuloma: A Clinicopathological, Immunohistochemical and BRAF V600E Study of Five New Cases, with Literature Review. Head Neck Pathol. 2022;16:407-415.

  5. Effendi RMRA, Rizqandaru T, Yuliasari R, et al. Successful Treatment of Non-Langerhans Cell Histiocytosis With Topical Rapamycin in Two Pediatric Cases. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:1575-1582.

  6. Uehara Y, Wada YS, Iwasaki Y, et al. Neonatal systemic juvenile Xanthogranuloma with Hydrops diagnosed by Purpura skin biopsy: a case report and literature review. BMC Pediatr. 2021;21:161.

  7. Maejima A, Okuno K, Miyaishi M, et al. Deep juvenile xanthogranuloma invading the left tensor fasciae latae muscle: a case report and a literature review. J Clin Exp Hematop. 2024;64:323-327.

  8. Daeniker M, Baleydier F, Rock NM, et al. Bile Duct Targeting or Preservation: Contrasting Liver Histology in Langerhans Cell Histiocytosis and Disseminated Juvenile Xanthogranuloma. Pediatr Dev Pathol. 2026;29:38-50.

  9. Maldonado A, Munoz R, Alarcon N, et al. Congenital Juvenile Xanthogranuloma in the Perioral Region: A Case Image. Head Neck Pathol. 2024;18:35.

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